今年の早大RBユニットはスターター争いが白熱中だ。1つしかないポジションを4人で争っている状況に試合中も誰がいつ出ているのか目が離せない。切磋琢磨し合うライバル関係にあるが、普段はとても仲良し。RB中野玲士(商4=東京・早大学院)、RB荒巻俊介(法3=東京・早大学院)、RB広川耕大(社3=東京・早実)、RB吉澤祥(スポ2=東京・成蹊)の4人がそれぞれの特徴を武器に、RBユニットとして総力戦で関学大に走り勝つ。
「1人で頑張るよりも成長できる」(中野)
RBの競争について語る中野選手
――リーグ戦優勝を果たしましたが振り返っていかがでしたか
中野 自分はリーグ戦、長いなと思っていたんですがRBは誰がでるかわからない状況で最後にチャンスをいただけました。みんなで切磋琢磨していくことは辛いとも言えますし、楽しかったとも思います。
荒巻 チームが優勝できたということはとてもうれしいことなんですが、自分個人としては終盤戦試合に出て活躍できなかったので、その部分の悔しさがチームが優勝したうれしさよりも上回っているので、甲子園で活躍できたらなと思っています。
広川 優勝したっていうのはうれしいんですが、6戦戦ってきた中で、RBで勝てた試合っていうのがあまりないので、甲子園ではRBの力を全部出して「RBがいたから勝てた」と言われるような試合にしたいです。
吉澤 僕は昨年ユニフォームを全く着られない中での優勝だったので、優勝の実感が全然なくて。でも今年はユニフォームを着させてもらえて、試合にも出させてもらった中での優勝だったので、そこは素直にうれしかったのと、すごく実感があって楽しかったというのが印象ですね。
――RBのポジションは非常に競争が激しくなっていますが、その点はどのように捉えていますか
中野 試合に出られないというリスクが4年目にしてあるんですが、それでもRBユニットが一つとなって試合に勝つという目標のもと、みんなで努力していくという部分が、自分としては下級生の突き上げというのもありますし、1人で頑張るよりも成長できる環境なのかなと考えています。そういった面で考えると試合に出るどうこうよりも、甲子園で勝つという目標に対して良い環境なのかなと思います。
荒巻 高校の時はRBが自分1人しかいなかったので結構試合にも出られてそれなりに走れてもいたんですが、こうやって4人のゲームメンバーで競っている中での緊張感や、試合に出るとしても高校の時とは違ってRBを代表して出るんだという気持ちがあって、自分の成長という面では1人しかいないっていうよりも、みんながいるっていうのはポジティブに捉えられています。
広川 僕も荒巻と一緒で、4人のRBがいたから自分が成長できたというのがあるので、このRBユニットがいなかったら今の自分の成長はないですし、この緊張感の中で切磋琢磨してライバル意識を持ってやるというのがすごく良い成長になったと思います。
吉澤 前の3人と一緒なんですが、緊張感が抜けない練習をずっと続けてこられたのと、4人とも色が違うRBなので他人のプレーを見て「ここすごいな」とか「いいな」と思える部分をたくさん吸収して成長できたので、そこも良かった点かなと思います。
「良い意味で上下関係の境がない」(荒巻)
RBユニットの雰囲気について笑顔で語る荒巻選手
――RBユニット内の雰囲気を教えてください
荒巻 とりあえず超仲良いです。練習後とかも他のポジションよりも話している時間が長くて、アメフトのこともそれ以外のことも話しますね。あとは良い意味で上下関係の境がないですね。それは4年生が良い雰囲気を作り出してくれているのかなと思います
中野 なんでも相談してもらって構わないっていう良い雰囲気を作ってますね。(笑)
広川本当に仲は良いですね
――RBコーチの中村多聞コーチの指導はいかがですか
荒巻 今までの僕が知っているコーチとは違うという印象があって、自分は技術とかを教えてくれるのがコーチだと思っていたんですが、人間性やモラル面をすごく厳しく教えてくれていて、そういった部分で人間的に成長できたなと思います。フットボールのスキルだけじゃなくて、そもそもアスリートとしてどういう生活をしなければいけないかということや、どういう心持ちでいないといけないかを多聞さんとお話しする時に仰ってくれるので、今までの高校人生にはなかった考え方が身についたかなと思います。
吉澤 引き出しが多いですよね
荒巻 例え話が上手で伝えたいことがわかりやすいですね。
広川 チームで一番ストイックな方で、試合に勝ちたいという情熱が強いので、すごく熱のあるコーチングをしてくれますね。
――RBコーチとして昨年までチームでプレーされていた元山伊織さん(令元商卒=大阪・豊中))が新たに加入されましたが、昨年の元山選手と比べて自分に足りない点はどういったところでしょう
荒巻 伊織さんはストイックさが一番あってRBとしても、オフェンスリーダーとしてもすごく厳しさを持ってやっていたので、その部分は僕らはまだまだ選手としても、チームに与える影響力も足りていないなというのは感じます。
中野 (元山選手は)リーダーシップがすごくあったなと思いますね。4年生になって引っ張っていく立場で色々思うことがあって、単純に引っ張っていくって難しいなと思うのですが、全体もオフェンスもチームもポジションも引っ張ってたあの人はどれだけすごいのかというのを感じますね。
――逆に勝ってると思われるところはありますか
中野 吉澤はウエートは勝ってますよ。
吉澤 ウエートは勝ってますけどそれだけですね。昨年は(元山選手は)ただすごい人だなぐらいだったんですが、自分が試合に出始めてよりすごさが分かるようになりました。
荒巻 多聞さんと関われば関わるほど伊織さんがどれだけすごかったのかがわかりますね。
広川 多聞さんが言ったことをすぐに実行できるというのがすごいなと思います。
荒巻 僕たちは言われたことをすぐできる力っていうのがまだまだ足りないなって思います。
――昨年までのエースRBであった元山コーチや片岡遼也さん(平31法卒)が抜けた穴をどのように捉えていますか
中野 それはもちろんチャンスだなと思っています。自分は昨年、片岡さん、伊織さんという偉大な4年生の下で頑張らせてもらっていて、2人がいなくなったら試合に絶対出ようと思っていたので、そこはチャンスだなと捉えていますね。
広川 試合に出ないことには始まらないと思うので、あの2人がいなくなれば試合に出られるチャンスだと思ってましたね。
――QB吉村優選手(基理3=東京・早実)がQBの中でも走る役割を担っていますが、吉村選手というランの選択肢が増えたことをどのように捉えていらっしゃいますか
中野 僕らの捉え方は彼はRBという感じですね。
吉澤 同じ様に練習しているし、RBのポジション練習に混ざって練習されているので同じポジションの人って感じです。
中野
ただ、試合の時、ゴール前でTD取れるチャンスを持っていかれているような気がしますね。(笑)
一同 (笑)
荒巻 一番練習をしていて、僕らの練習にも付き合ってくれていますし、自分の練習も電気が消えた後もするぐらいすごく練習熱心で、僕らも見習わないといけないなって思います。
「荒巻が頑張れば頑張るほど自分ももっと頑張らなければなっていう気持ち」(広川)
大学に入って初めてできた同ポジションの同期の存在について語る広川選手
――ここからは個人個人の質問に移らせていただきます。まず、中野選手は下級生が大きく成長してきている状況をどう捉えていますか
中野 競争が激しいという面で環境としてはすごく良いなと思っていて、1人だと慢心とかがあると思うのですが、1人ではなく頑張らないとなと思える環境があるので、下級生が成長しているのは自分のためにもチームのためにも、これからのチームのためにも良いことだなと思っています。
――広川選手と荒巻選手は高校時代、早実、早大学院の主将をそれぞれ務めていましたが、大学に入ってから同期としてプレーされているお互いの存在をどのように捉えていますか
広川 RBとしてのタイプが違いすぎるので、ライバルですけど友達って感じでもありますね。
荒巻 それはもちろん。
広川 僕は高校の時、RBの同期がいなかったので、同期ができたっていうのは大学に入ってすごく大きくて、荒巻が頑張れば頑張るほど自分ももっと頑張らなければなっていう気持ちにさせてくれるのですごく良い存在ですね。
荒巻 小さな事でも相談できる相手がいるっていうのはすごく大きなことかなと思っています。
――吉澤選手はアメフト歴や経験で上回る先輩たちとスターター争いをしていますがどのような点でアピールしていますか
吉澤 体の強さだったり、走るスピードというのは小さい頃から自信があってずっとここまで来たので、それは自分の強みだということを忘れないようにやっています。
中野 吉澤は思い切りがいいですよ。一番思い切りがいいと思います。
広川 あと賢いですね。実行力という部分では吉澤が一番だと思いますね。体の動かし方などがいいので。スピードという面では荒巻も速いですが同じぐらい吉澤も速いですね。
――お一人ずつのプレーヤーとしての印象を伺っていきます。お三方からみた吉澤選手の印象はいかがですか
吉澤 恥ずかしいですね。
一同 (笑)
中野 めちゃくちゃアスリートですね。
広川 身体能力がすごいですね。
荒巻 体も強いし持久力もあるし。なんでもできちゃう感じですね。パスキャッチも上手いです。
広川 アメフトを2年しかやっていなくてここまで上手くなるってことは頭も良くないといけないし、体も強くなければいけないので素晴らしいと思います。
吉澤 ありがとうございます。(笑)
――続いてお三方から見た広川選手の印象をお願いします
吉澤 タイミングが上手だなと思います。
荒巻 けがしないし丈夫だなと思います。
中野 一番ゴリゴリ系のRBだと思います。相手に突っ込んでいけるうえに上手くタイミングをずらして穴を作ってから走ることもできるので、上手さも兼ね備えていると思います。それに加えて勝負勘が強いなと思います。要所の時に出せる力とかを持っていて、流れを感じているんじゃないかなと思っています。そういうことをコーチも言っていましたし僕も思います。
――次にお三方から見た荒巻選手の印象を教えてください
広川 足が速いですね
中野 爆発力が一番あるんじゃないですかね。高校の時からずっと一緒にやってきたのですが、一発でTDを決めちゃうという様なことがよくあって、僕は爆発力がある選手だなと思っています。
吉澤 駆け引きもよく知ってると思います。
広川 あとは、試合中めちゃくちゃ怖いよね。(笑)
一同(笑)
広川 普段はそんなことないんですが、試合中はピリピリしてて、アメフト選手っぽいというか、常に行けるぜ、みたいな雰囲気がありますね。
中野 あとすごく真面目だと思いますね。私生活も運動選手としても真面目です。
――高校時代はキッカーもやられていたと思いますが、現在も練習はされていますか
荒巻 そうですね。キックもやっていたんですが今はRBとして活躍したいという思いがあるので、練習をしてはいるのですが、高校時代ほどキックに力は入れていないですね。
――最後にお三方からみた中野選手の印象を教えて下さい
吉澤 顔もプレーもイケメンです。
広川 かっこいい。
荒巻 かっこいいですね。
中野 薄いな!(笑)
吉澤 玲士さんは重心が低くて、速いまま曲がったりセーフティーと勝負したりできるので、荒巻さんと同様に玲士さんも駆け引きが上手だなと思います。
中野 ありがとう。
荒巻 パワーがある走りをしているなという印象です。ストライドも4人の中で一番大きくて、それはパワーがないとできないことだし、走っている姿がかっこいいという言葉に全て集約されていると思います。
中野 ありがとう。かっこいいらしいです。(笑)
――フォームが綺麗ということですか
吉澤 陸上選手のようなかっこよさではなくて躍動感があるんですよね。
中野 ありがとう。
――それぞれここだけは他の三人に負けていないというストロングポイントはありますか
中野 さっき三人に言ってもらったことと重なると思うんですけど、自分だったらかっこ良さという表現になってしまうんですけど(笑)
一同 (笑)
中野 パワーというか出力というか、馬力の様なものは負けたくないなと思っています。
吉澤 玲士さんは一番地面を掴んで走っているなと感じます。グイグイ走ってく感じですかね。
荒巻 僕のストロングポイントとしては、さっきも言ってもらったんですが、スピードは絶対に落とさずに走りたいという部分と一瞬の加速は、スピードを売りにしている選手としては負けてはいけないストロングポイントかなと思います。
広川 僕はスピードも別に出ているわけでもないので、気持ちの部分かなと思っています。一番ヤード数を稼いでやるといったような、そういう気持ちは負けたくないなって思ってます。身体能力ではこの三人に劣っているので、それよりも気持ちで負けないということがストロングポイントだと思います。
吉澤 僕は全然アメフトを知らないので、逆に知らないからできるプレーもあると思っています。さっき先輩が、身体能力が高いと言ってくれたのですが、だからこそできるアッと驚くプレーというのができれば良いなと思います。
「試合でも4人で勝てたら良いなと思います」(吉澤)
自身初出場となる甲子園ボウルへの意気込みを語る吉澤
――ここからは甲子園ボウルについてお聞きします。皆さん、RBとして甲子園に出場されるのは初になると思いますが、今の気持ちをお願いします
中野
4年目で、僕の代で甲子園に行くことができることが決まって、僕はこのメンバーがすごく好きですし、このメンバーで甲子園に挑戦したいと思っていたので、率直にめちゃくちゃうれしいです。今まで甲子園にいって全部負けているので、絶対勝ってやるという強い思いも同時にあります。そのために今めちゃくちゃ練習してます。
荒巻 昨年までは試合に出られる機会というのが全然なくてRBとしても4番手ぐらいだったので、昨年とは違って今年は今も誰が出るかわからない状況ですが、試合に出る可能性があるのですごく気合が入っていて普段の練習から気合いを入れて練習して、甲子園で活躍してやろうという気持ちが大きいですね。
広川 誰が試合に出るかはまだ決まっていないので、ここから全員がアピールして誰かが出ることに決まると思うのですが、誰が出ても2年間、3年間と一緒にやってきた仲間が誰かしら出るというのもうれしいですし、自分が出られたら一番うれしいんですけど、RBユニットとして甲子園を勝ってやるという気持ちですね。
吉澤 僕は楽しみなのが一番大きいですね。僕は高校時代野球をやっていたので、甲子園というのが野球では憧れの場所ですし、そこにアメフトで行けるっていうのは面白いことだなと思います。そのワクワク感に加えてあとは法政戦以上の総力戦になると思うので、全員で練習から気合を入れてやって、試合でも4人で勝てたら良いなと思います。
――甲子園は芝が深く普段以上に足に疲労がかかると思うのですが、体力面での自信の程はいかがですか
中野 他のどこのRBよりも僕たちは走って、練習しているという意味では自信がありますね。
広川 どこのチームにも負けない量を走っていると思うので、そこは全然自信があります。
中野 走り負けないと思います。
――今年1年間、チームとしてスピードを意識してトレーニングを重ねてこられましたが、そこに関してはいかがですか
荒巻 竹トレですかね。
吉澤 プレー自体、多聞さんからめちゃくちゃスピードを出してプレーするように言われているので、ロス前のスピードとかは上がってきたのかなと思います。多聞さんの教えも竹トレの教えもどちらもスピードをあげることなのでスピードの二乗のようなものはあると思います。
――それぞれご自身のここに注目して見てほしいという点があれば教えてください
吉澤 キックのリターナーもやっているので、リターンTDをしていないのでそれもしたいですし、あとはスピードですかね。見ている人に驚かれるようなスピードのあるプレーができたらそこを見て欲しいですね。
広川 僕のプレースタイルとしては当たってなんぼという感じなので、当たりにいくところを見ていただければなと思います。
荒巻 今までの試合よりも簡単に走れる部分というのは少ないと思うので、逃げずに相手にぶち当たっていけているか、走れているかという部分に注目していただければと思います。それができていれば良いプレーができると思いますし、そうじゃなかったら良いプレーはできないと思うので、そこの部分にぜひ注目していただけたらなと思います。
中野 試合の中で現れる要所、RBとして絶対に取り切らなければならない場面で、気持ちを出して絶対取るという部分をぜひ見て欲しいですね。
――最後にそれぞれの甲子園ボウルへの意気込みをお願いします
中野 ラストイヤーでここまでチャンスをつかんだということで、昨年やその前は全て負けてきたので、RBで絶対勝つという思いが僕は強いです。非常に辛い1年間だったのですが、3人がいて頑張ってこられたので勝って終わりたいなと思います。絶対勝ちたいです。
荒巻 何がなんでもチームとして勝ちを目指すというのは、創部して以来ずっと悲願のことだと思うので、RBが活躍するということと同じぐらいチームが勝つという気持ちを持っているので、絶対勝ちたいという気持ちでいます。
広川 3年間の努力というのが認められるのは勝つこと以外に無いと思うので、絶対に勝たなければいけない試合ですし、自分のやってきたことを肯定してくれるのは優勝しかないと思うので勝つしかないです。勝つこと以外考えていないです。
吉澤 ラストイヤーというわけではないので、この後もチャンスがあるかもしれないですけど、やっぱり今の4年生の先輩が好きですし、4年生の先輩と共にできる学生との最後の試合なので、勝って笑って東京に帰りたいなと思います。
――ありがとうございました!
最後に、甲子園ボウルへの意気込みを色紙に書いてくださりました!
(取材・編集 黒田琴子、涌井統矢 写真 朝岡里奈)
◆中野玲士(なかの・れいじ)
1997(平9)年10月25日生まれ。174センチ78キロ。東京・早大学院高出身。商学部4年。RB。『パワー』のある走りが強みの中野選手。力強い走りで相手のタックルを受けてからも1ヤードでも前に進み続ける姿に注目です
◆荒巻俊介(あらまき・しゅんすけ)
1998(平10)年5月7日生まれ。170センチ76キロ。東京・早大学院高出身。法学部4年。RB。『スピード』が強みという荒巻選手。東北大戦でもそのスピードで相手を抜き去り74ヤードの独走TDを決めました!甲子園でも相手を抜き去り、エンドゾーンまで駆け抜けてくれるでしょう!
◆広川耕大(ひろかわ・こうだい)
1998(平10)年7月21日生まれ。165センチ76キロ。。東京・早実高出身。社会科学部4年。RB。相手のタックルを受けてもすぐには倒れない粘り強いランが持ち味の広川選手。『気持ち』を武器に、甲子園での『闘志』あふれる走りに期待です!
◆吉澤祥(よしざわ・しょう)
1998(平10)年12月3日生まれ。168センチ、78キロ。東京・成蹊高出身。スポーツ科学部2年。RB。4人の中で一番身体能力が高いという吉澤選手。高い運動能力を存分に生かした思いっきりの良いプレーに注目です!
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