第6節法大戦で勝利を挙げ、シーズン最終節を残し2年連続6度目となる関東大学秋季リーグ戦(リーグ戦)優勝を決めた早大BIG BEARS。勝利を収めた法大戦であったが、第4クオーター(Q)中盤までリードを許す苦しい試合展開からの逆転勝利であった。後半3TDを挙げたオフェンスの活躍にも光るものがあったが、逆転劇の裏側には後半無失点に抑えたディフェンスの奮闘があった。そんなディフェンスの空中戦を支えるDB永井雄太(商4=東京・早大学院)、DB大西郁也(法3=東京・早大学院)のお二人にお話しを伺った。
※この取材は11月16日に行われたものです。
「この試合を生かして成長につなげていきたい」(大西)
法大戦の勝利を振り返る大西選手
――リーグ戦優勝おめでとうございます
永井、大西 ありがとうございます!
――チームとして目標とする『学生日本一』へ向け、まず最初のステップを突破しました。今のお気持ちとしてはいかかですか
大西 自分としては、接戦の試合を制したということが良かったと思っています。昨年の甲子園ボウルで前半大差をつけられてそのままずるずる敗れた時と似た状況の中で、後半ギアを変えられて勝てたのは成長につながったなと思います。
永井 勝てたことはすごい良かったことなんですけど、今年のチームは「甲子園ボウルで関西のチームにリベンジする」っていうのを初めにチームとして目標に決めて1年間やってきているので、やっとそのスタートラインが見えてきたかなといった印象です。ここから更に気持ちを高めて練習していかなければいけないなと思っています。
――法大戦を振り返っていかがでしたか
永井 前半はオフェンスも、ディフェンスもキックも噛み合わずに負け試合の内容でした。ゲームスローガンが『全員で勝つ』だったんですけど、後半からはよく池田(LB池田直人主将、法4=東京・早大学院)が言っているみたいにオフェンスもディフェンスもキックもスタッフもコーチも、チーム全員で勝つというのを体現できた試合だったなと思います。
大西 その通りですね。
――法大のWR陣には苦しめられましたが、対峙(たいじ)した印象としてはいかがでしたか
永井 試合前の段階から身体能力が高くて要注意な選手だと捉えていたんですけど、その相手に対して活躍を許してしまったというのはまだまだCBとしては実力不足で、ここから日々練習していかなければいけないなと課題が見つかった試合になりました。
――第4クオーター(Q)終盤、チームが逆転したあとのディフェンスでもパスを中心にゴール前まで攻め込まれましたが、その時の心境としてはいかがでしたか
大西 これをしっかり止めないと甲子園にはつながらないから、どこかで流れを切るというのはDBの自分たちに与えられた使命で、思い切りの良いプレーをしていかないとなと思っていました。
永井 自分は常に81番のWR神優成選手(法大)の前でプレーしていたんですけど、特に終盤だからといって特別なことを考えることはなく、自分の全力を1プレー1プレー出すことだけを考えて、平常心でプレーしていました。
――右奥のパスでフラッグ(反則があった際に審判が投げる黄色い布)が飛んだ場面、どちらの反則でもおかしくない状況でしたが心境としてはいかがでしたか
永井 そうですね。さすがに、さすがにまたかと。(笑)でも相手の反則だったので安心しました。あのシリーズは本当にお互いが全力を出し合ってというか、反則ギリギリの中での駆け引きをしていたので、正直どちらにフラッグが飛んでも仕方ないなというプレーをしていたので、たまたまオフェンスにフラッグが出て、こっちに有利な判断がされただけでした。その次のプレーでまたゲインされてしまったので、その点はチームには申し訳ないなと思っています。
――その直後の大西選手のインターセプトでしたが、振り返っていかがでしたか
大西 1プレー前のナローサイドの神選手へのスラントパスは結構狙っていて、あそこで仕留めたかったなという気持ちはありますけど、そのあとのプレーで飛んできたボールをしっかりと取れたので良かったなと思います。
――インターセプトの直後は喜びを爆発させられていました
大西 とりあえず試合を決められて、うれしさのあまりサイドラインの方に走り出してしまいましたね。喜びの爆発って感じでした。
――法大戦は今シーズンで一番ギリギリの試合展開となりましたが、そこで勝利を収めたことは今後への自信につながると思いますか
永井 関西を倒すために1試合1試合、練習もそうですけど日々成長していかなければならないので、今回みたいなギリギリの試合をして、その中で勝ち切れたということは、試合を通じての成長っていうのは必ずあるなと思っています。
大西 接戦の試合をした中で、もちろん試合の中でも成長はするんですけど、さらなる成長につなげられるかは試合後のレビューであったり、試合の反省点をどう生かして練習するかにかかっていると思うので、今後の練習にこの試合を生かして成長につなげていきたいなと思っています。
「同じ相手に2度負けるというのはプライド的に許されない」(永井)
明大戦への意気込みをを語る永井選手
――現在リーグ戦は5試合を終えられましたが、これまでのDBの出来というのはどのように捉えられていますか
大西 石崎(DB石崎樹、人3=早稲田渋谷シンガポール)であったり、鏡(DB鏡桜之介、教4=東京・城北)や山下さん(DB山下大樹、教4=埼玉・早大本庄)であったりといった、昨年まではあまり試合に出ていなかった選手が多く試合に出て、インターセプトであったり、要所で活躍を見せてくれているのはすごい成長だなと思いました。
永井 今年のチームで肝となるポジションであるセーフティーをDB高岡拓稔(商4=東京・早大学院)とDB渡辺大地(教4=東京・早実)が春からずっと激しいスタメン争いをしていて、その2人のレベルアップが今のディフェンスを支えて引っ張ってくれているのかなとは思っているので、ここからもずっとスタメン争いを続けてチームのレベルを上に上に引っ張り続けてほしいなという風に感じています。
――最終節の明大戦はどのような位置付けで捉えられていますか
永井 1つは春に負けた相手なので、同じ相手に2度負けるというのはプライド的に許されないというのと、もう1つが、明大はオフェンスのスキル陣に優秀な選手がたくさんいるので、そういった選手たちと対峙(たいじ)していく中で、チームとしても個人としてもレベルアップをしていくためにも絶対に勝たなくてはいけない試合だという風に常々言っています。
――永井選手のお話にもありましたが、明大とは春にも対戦して敗れていますが、警戒されている選手はいらっしゃいますか
大西 自分は、中学の頃にタッチフットをやっていた時の先輩であるWR渡邉圭介選手(明大)ですね。中学の頃からめちゃめちゃうまくて尊敬している選手でもあるので、ぜひマッチアップして自分の自信につなげられたらいいなと思います。
永井 明大にはプライベートでも仲良い選手がたくさんいるので悩みますね。強いて言うならRB小泉亜斗夢選手(明大)ですかね。この間一緒にゴルフに行ったんですけど、僕たち2人とも初心者で下手くそだったので、次の試合はリベンジに燃えてくるかなというところで、次はアメフトで勝負ですね。
――明大戦、勝利すれば2年連続での全勝優勝となります
大西 もちろん全勝優勝して甲子園に行くことは達成したいです。甲子園で勝ったとしても、リーグ戦の最終節で負けてしまっていたらスッキリしない勝ち方になってしまうので、全勝優勝して気持ちの良いかたちで甲子園に向けて準備を整えてたいなと思います。
永井 一戦一戦全力で戦っているので、結果として勝利を手繰り寄せられればなと思います。
――東日本代表校決定戦に勝利すれば甲子園ボウルとなりますが、対戦校として予想される関学大、立命大の印象としてはいかがですか
大西 立命大は春に対戦した時と比べて、どの選手もめちゃめちゃ成長しているなと感じています。この間の関立戦を見た時もDBのレベルがとてもとても高くて、ディフェンスが特にレベルアップしているなと感じました。春は立命大のエースレシーバーの木村選手(WR木村和喜、立命大)が出ていなくて、秋シーズン復帰して関立戦でも要所でキャッチを見せていたので要注意な選手が春とは違っているなという感じですね。
永井 関学についていうと、僕は関学にこれまで4回負けているので、関学と戦えるラストイヤーなので今年は絶対にリベンジしたいという気持ちで1年間やってきています。その関学を関立戦で倒した立命大っていうのはすごく恐ろしい存在ですし、どちらが上がってきたとしても、もっともっと自分たちが成長しないと勝負にならないと思うので、まだ甲子園が決まったわけじゃないですけどそういう気持ちで関立戦は見ていました。
――先日、WRブレナン翼選手(国教4=米国・ユニバシティラボラトリースクール)に対談させていただいた際に、立命大のDB荒尾選手を警戒されていましたが、DBのお二人からご覧になって荒尾選手のプレーというのはいかがですか
大西 DBとしては学生界で日本一上手い選手だと思います。
永井 身体能力とポジショニングが毎回毎回お手本のようなところにいるので、僕もビデオを見て彼の動きを研究したりしています。
「永井さんのいいところはリーダーシップがすごいところ」(大西) 「(大西は)しっかりと準備をしているからこそ、試合で攻めたプレーや流れを変えるプレーができる選手」(永井)
お互いの印象を語る永井選手(写真右)と大西選手
――ここから強豪との対戦が続いていく中で、1つのビッグプレーが大きく試合を動かすことになってくると思います。そこに対しての意識としてはいかがですか
大西 アメフトというスポーツはどうしても流れというのがあって、先日の法大戦でもそうでしたが、どの試合でも早稲田が攻めてる時間もあれば相手のチームが乗っている時もあるので、そういう時にディフェンスは「流れを断ち切るプレー」っていうのが必要になってくるので、そういったゲームを変えられるような選手になりたいですし、それを実際甲子園でも自分がゲームの流れを断ち切るようなプレーをしたいっていう強い思いがありますね。
永井 自分自身、今年もまだインターセプトがないので、要所でボールを持って来れるような選手にならないといけないなと感じています。
――永井選手は今年でラストイヤーになりますが、『学生日本一』に対する思いというのはいかがですか
永井 毎年泣いて引退する先輩を見てきて、そんな風に四年間を締めたくないなという気持ちと、さっきも言ったようにずっと負けている関西の相手をどうにかして崩してやろう、勝ってやろうという思いで1年間やってきているので、ここからの1ヶ月間はすごい勝負になると思いますし、取り組みをさらに高めていっていい試合ができたらなと思います。
――関西のチームとの差というのはどこに感じられていますか
永井 一言で言うと、「精度」ですね。監督もおっしゃってたんですけど、この間の法大戦は正直前半で言うと関東1位を決めたチームのプレーでは全くなくて、一方関西ではレベルも精度もすごく高いプレーの中で、関学大のちょっとしたミス、数プレーのミスで勝敗が傾いていたので、もしうちが法大戦のような低い精度から成長していないと、自力でも負けているチームに対してあの精度では勝てないと思うので、精度を高めることを一生懸命頑張って練習していきたいなと思います。
――大西選手は昨年の甲子園ボウルにも出場されましたが、今年に懸ける思いはいかがですか
大西 もちろん昨年も先輩たちが引退してるのを見て悔しい思いはしたんですけど、今年は高校時代から一緒に試合に出ていた選手が多くいるので、その先輩たちを日本一する。学院の時にクリスマスボウルで関西に負けたみんなで関西に勝つ。それに加えて大学で一緒にやってきた仲間たちと勝ちたい、この代で日本一になりたいという思いはとても強いですね。
――「精度」というお話がありましたが、そこを高めていくためにどのようなトレーニングをされていますか
大西 まずはもう一度原点に戻って、個々の基礎の部分を伸ばしてから周りとの連携などの精度を上げていくことが必要かなと思っています。シーズン中は満足のいくウエートトレーニングとかができていなかったので、そこには注力しています。あとはファンダメンタルの部分ですね。DBではプラントだとかステップだとかを練習しています。
――先日の法大戦でもタックルミスが多く見られましたが、改善していくためにどのような練習をされていますか
大西 様々なシチュエーションに分けてタックル練習をしています。10ヤード離れて1対1の負けているリレーションであったり、逆に3ヤードくらいで相手がカットを切る前に思いっきり勢いよくタックルする練習であったり、ダミータックルや人に対してのタックルであったりをして色々なシチュエーションに分けて練習するようにしています。
――DBユニットの強みというのはどういった点だと思いますか
永井 強みは流れを断ち切れる選手がいることですね。それは試合でしんどい時とかでもボールを持ってきたりだとか、それ以外にも要所で強いタックルをしてモメンタムを引き寄せられる選手がDBにいることはいいことかなと思います。
大西 自分が思っているのはユニット内の仲が良いことですね。毎年仲の良いユニットなんですけど、今年は特に仲が良いなと思っていて、自分一人の力じゃなくて周りのサポートしてくれる人たちがいて、そういう中でチームワークが発揮されているなと思います。
――選手として、永井選手と大西選手のお互いの印象としてはいかがですか
永井 大西は身体能力が高いのはもちろんなんですけど、試合前のフィルムスタディー(スカウティング)をすごい真面目にしていて。そうやってしっかりと準備をしているからこそ、試合で攻めたプレーや流れを変えるプレーができる選手だなと思います。
大西 そうですね。これは永井さんも一緒で、試合前は一緒にビデオ見たりしましたね。ASがオフェンスのパスパターンを書き出してくれるので、それをもとにしてイメージしていますね。
永井 結構見るよね。
大西 永井さんのいいところはリーダーシップがすごいところで、試合中でも練習中でも普段からリーダーシップを発揮していて、自分1人だけじゃなくて周りも引っ張るような選手であると同時に実力もある選手ですね。早稲田のアスレティックCBです。リーダーシップとそれに伴う高い実力が強みだと思いますね。
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――最後になりますが、今後への意気込みをお願いします
大西 早稲田が今まで築いてきた歴史を胸に、創部以来初の日本一になるべく、ここから1日1日を有意義な、成長できるような日々にしたいです。日々成長して、絶対に日本一になりたいと思います。
永井 今年は大西と一緒にDBのリーダーとして、DBを引っ張り、ディフェンスを引っ張り、チームを引っ張っていく中で大変なこともあったんですけど、徐々にチームが1つになっていって、全員で日本一を目指す体制ができできているので、ここから約1ヶ月間、僕らは何も失うものはないので挑戦者のつもりで、日々泥臭く頑張って、いい試合ができたらなと思います。
――ありがとうございました!
最後に、リーグ戦への意気込みを色紙に書いてくださりました!
(取材・編集 涌井統矢 カメラ 黒田琴子)
◆永井雄太(ながい・ゆうた)(※写真左)
1997(平9)年8月31日生まれ。179センチ、79キロ。東京・早大学院高出身。商学部4年。DB。強いリーダーシップでDB陣を先導する永井選手。得意のマンツーマンで、ゴール前の攻防を制してくれるでしょう!
◆大西郁也(おおにし・いくや)(※写真右)
1998(平10)年6月8日生まれ。173センチ、78キロ。東京・早大学院高出身。法学部3年。DB。昨年のリベンジに燃える大西選手。法大戦では試合を決定付けるインターセプトを決め、自身の目指す「流れを断ち切るプレー」を体現。今後の活躍にも期待がかかります!