『日本一』への船出、勝利で飾れるか／早慶対校戦展望

　春も半ば。桜散り、新緑が芽吹く季節。今年も駒沢陸上競技場にてアメリカンフットボール早慶対校戦が開催される。例年約１万人の観客が訪れるビッグゲームなだけに、選手たちのプレーにもいつも以上の気合いが入る。両校共に新体制発足後初の対外試合となるだけに、大舞台での新チームお披露目に期待が集まる。今年で６７回を迎える伝統の一戦、エンジと紺の意地と意地の勝負。今年はどちらに軍配があがるのか。シーズンを占う戦いが今始まろうとしている。

昨年の早慶対校戦は早大が勝利を収めた

　早大オェンスの注目ポイントはＲＢだ。昨年までチームをけん引した２人のエースＲＢ元山伊織（平３１卒部）と片岡遼也（平３０法卒）の抜けた穴を誰が埋めるか。活躍が期待されるのは、昨年の関東秋季リーグ戦（リーグ戦）において片岡がけがで離脱している期間、２枚目ＲＢとして出場し、１０キャリー４３ヤード１ＴＤをあげたＲＢ中野玲士（商４＝東京・早大学院）。それに加え、昨年のけがから復帰を遂げたＲＢ村田賢紀（文構４＝東京・西）の２人だ。空中戦では関東リーグトップのレーティングを誇るＱＢ柴崎鉄平副将（政経４＝東京・早大学院）、レシーブ部門においてどちらとも関東リーグトップとなる５０９ヤード５ＴＤの活躍を見せたＷＲブレナン翼（国教４＝米国・ユニバーシティラボラトリースクール）による大学日本代表にも選ばれた大学アメフト界屈指のホットラインがあるだけに、地上戦からも脅威を示していきたい。その地上戦において欠かせないＯＬ陣には昨年度の甲子園ボウルのスターター５人のうち４人が残っている。なおかつ３、４年生の成長が著しくデプス（選手層）にも厚みがある。その中でも注目はＯＬ香取大勇（スポ４＝東京・佼成学園）だ。１年時からリーグ戦に出場し、ブレナンらと共にＵ－１９日本代表に選出されるなど、経験値はユニット随一。ＯＬ陣を先導する活躍が期待される。これに対する慶大の注目ポイントはＤＬ並木琢朗主将（慶大）率いる新生フロント陣だ。昨シーズンのリーグ戦では１年生（現在の２年生）を起用するなど、フレッシュでアグレッシブなディフェンスを仕掛けてくる慶大に対し、早大がどういった攻撃プランを展開していくのかに注目だ。

「最後はＭＶＰを僕が貰って終わりたい」と意気込むＱＢ柴崎副将

　 一方、ディフェンスの注目ポイントはＤＬだ。斉川尚之前主将（平３１スポ卒）ら主軸が抜け、全く新しいデプスで早慶戦に臨むユニットだが、こちらは下級生の台頭が著しい。Ｕ－１９日本代表経験のあるＤＬ光本周平（国教２＝京都・立命館宇治）を筆頭にＤＬ毛利圭（文構２＝東京・早大学院）、ＤＬ永山開一（教２＝東京・足立学園）ら２年生の代に期待が懸かる。昨年の甲子園ボウルで活躍を見せたＤＬ二村康介副将（文構４＝東京・獨協）やＤＬ古田泰一（法４＝東京・早大学院）ら試合経験のあるメンバーも残るため、激しいスタメン競争が繰り広げられている。ディフェンスの中心であるＬＢ陣は、チームの精神的支柱である池田直人主将（法４＝東京・早大学院）が絶対的存在として君臨する。昨年はＱＢサックやロスタックルといった記録に残る結果を残せていなかっただけに、今年は『闘志』をむき出しに慶大オフェンスに襲いかかる。
ＤＢ陣の注目はコーナーバックのスタメン争いだ。ＤＢの要であった小野寺郁朗前副将（平３１社卒）ら昨年の主戦力３人が抜けたポジションを誰が奪い取るのか。一方でセーフティー、ローバーには昨年の主力が残る。特に昨年の春の早慶戦でＭＶＰに輝いたＤＢ高橋弘汰（法３＝東京・早大学院）が、あの日の活躍からちょうど１年が経った今、どれだけ成長した姿を見せてくれるか。アスリート集団ＤＢ陣の活躍にも期待が懸かる。対する慶大オフェンスは大学日本代表にも選ばれたＷＲ佐藤凱輝（慶大）とアメリカへのアメフト留学から帰国したＱＢ三輪忠暉（慶大）の慶應義塾高コンビに注目だ。池田主将ら早大学院高出身の４年生にとって７度目となる春の早慶戦。長らくともにプレーをしてきたライバルたちを相手に早大がどういったディフェンスを仕掛けるのか注目が集まる。

ＬＢ池田主将を中心に、『闘志』のあるディフェンスを仕掛ける

　これまでの春の早慶対校戦６６回の対戦成績は２６勝３９敗１分と慶大に大きくリードされているが、ここ５年の成績は４勝１敗。春の早慶戦は４連勝中と早大に軍配が上がっている。昨年のリーグ戦においても早大は全勝優勝。一方の慶大は７チーム中５位と昨年までの結果を見ると大きな差がある両校だが、何が起こるかわからないのが早慶戦。早大も万全の準備で戦いに臨む。『日本一への最初の一歩』、ＢＩＧ ＢＥＡＲＳの長い長い一年間の船旅が、いよいよ幕を開ける。今年もアメリカンフットボールの季節がやってきた！

（記事　涌井統矢、写真　藤田さくら氏、涌井統矢）