【連載】『第67回早慶戦直前特集』【第7回】主将対談 LB池田直人主将

米式蹴球

 現在、選手とスタッフを合わせて約150人ほどの部員が所属している早稲田大学米式蹴球部BIG BEARS。そんな大所帯を率い、悲願である学生日本一へと歩み続ける男がいる。LB池田直人主将(法4=東京・早大学院)。1年時からリーグ戦に出場し、常にディフェンスの中心でチームを支えてきた精神的支柱だ。今回はそんな池田主将に、目標とするチーム像や早慶戦に対する意気込みを伺った。


※この取材は3月16日に行われたものです。


「僕が主将をやっていかないといけないと思っていた」(池田)

約150人の部員の先頭に立ち、引っ張る池田主将

――まずはじめに甲子園ボウルが終わった後のオフの期間は何をされていましたか

池田 とりあえず各自で練習というかたちで、僕はウエイト(ウエイトトレーニング)などをしました。チームとしては基礎トレーニングやウエイトをしたり、4年生は毎日2、3時間くらいミーティングをしてこのチームをどう作り上げていこうという話をずっとしていました。

――主将になられた経緯などを教えてください

池田 僕はもともと主将になろうと思っていて立候補しました。その中で立候補者は僕しかいなかったんですけど、自分がどうやってチームを引っ張っていきたいかを話して、今年のチームの雰囲気からも僕が主将をやっていかないといけないと思っていたので、立候補して結局僕に決定しました。4年生が選んでくれて僕になりました。

――何かきっかけなどはあったのでしょうか

池田 きっかけは特にはないのですが、今までのチームをやってきて自分は試合にずっと出ていましたし、あとは周りとコミュニケーションを取れるといったこと点などいろいろ考える中で自分がいいなと3年生の間思っていました。また先輩からも「主将をやったほうがいい」というようなお言葉をいただいて、いろいろ考えた結果僕がやらないといけないのかなと考えました。

――他のチームメイトの方々に池田主将の印象を伺ったときに、必ず言われるのが「口下手」というものだったのですが、ご自身の性格はどのようにとらえられていますか

池田 プレーの特徴は変で、性格は優しいとは思います。また僕はとても内向的で基本的チーム以外の人と話しませんが、チームなど自分が知っている媒体だとコミュニケーション力が強くて誰にでも絡もうとします。あとは試合には勝ちたいと思っているんですけど、それよりも一つ一つのプレーにこだわっていきたいと思っているのでそういった面では熱い性格というのでしょうかね。

――日常とプレーでは異なるといったことでしょうか

池田 いや、意外と・・・。そういう感じはするのですけど、意外に同じといえば同じですね。僕は試合中もヘラヘラしているというか、試合は楽しみたいと思っているので試合も緊張しませんし、あまり変わらないかなと。

――主将をやる上でどのような役割を期待されているなと思いますか

池田 まずはチームを引っ張ることは当たり前なのですが、それ以上に周りに気を配ることですね。それは僕しかできないというか、今までたくさん後輩などや他ポジ(他のポジション)と絡んできましたし、そういった人たちに声をかけていくことがまず一つですね。また今まで僕は人に対してそれほど厳しいことを言う感じではなかったのですが、今年はそこを意識して、別に理不尽な厳しさではなくってやらないことをやっていたらしっかり言うということですね。そういったところで今まで発揮されていなかったリーダーシップを発揮していかないといけないと思っているので、4年生ミーティングでも話したのですがそこは期待されているというかチームに求められているものなのかなと思います。

――選手が多いチームをまとめる上で工夫されていることなどはありますか

池田 全員に気を配るというか、全員を見ることですね。そうしないとこの150人くらいいるチームのスタメンとそうでない選手の温度差があるので。今の時期は一応シーズンの最初なので、全員が練習に参加できるのですが、シーズンに入るとそれも難しくなくなってしまうので、そういったところで後輩や他ポジのモチベーションを維持できるかが大事だと思います。なのでいろんな人にアプローチをしていくというのが僕のやり方というか意識をしています。

――そういった今年のチームの目標は何でしょうか

池田 『学生日本一』を掲げています。

――昨年と同じということでしょうか

池田 そうですね、去年と同じです。

――今年の目標を『学生日本一』と決めた理由などは

池田 まずは関学(関西学院)に勝ちたいなと思いました。僕は高校から通算4回負けていますし、関学に勝ちたいといった選手も多いので。今年から社会人を倒すといった目標でもいいのですが、そうしてしまうと僕らは社会人と練習試合をすることはありますがライスボウルのような本気の試合を1回も経験していないので。社会人を倒すといった目標は高すぎるというか何も見えていないと感じました。なのでまずは学生日本一という目標の下、創部してから達成されていない関西を倒すというのを達成しようということでこの目標にしました。

――学生日本一とは別に『闘志』という目標も立てられていますがそちらに込められた思いとは

池田 そのままですね。基本的に僕らのチームは、去年のテーマが『気魄』だったように、そういった部分が足りていなくて優し過ぎるチームだと思います。そういったところで1対1の勝負にこだわるというとか『闘志』を出していきたいと思いました。一番辛い時に足りていない時でも闘志があれば最悪疲れていても頑張れるのでそこを出していければと。また、監督がいつも言っていることで一番フットボールをやる上で大事なファイティングスピリッツがないと、そもそもスキルなどがあっても駄目なのでそこを大事にしていこうということで決めました。

――お話にもありましたが、今年で就任3年目になる高岡勝監督(平4卒=静岡聖光学院)の印象はいかがですか

池田 監督はいい人ですね。いろんな選手に気を配っています。監督は社会人として働きながら今はこっちに住んでいただいて、夜練習に顔を出してアドバイスなどを言ってくださるので僕はそういった面で尊敬していますし、すごいなと思います。僕も人のことを言えないのですが、監督は口下手なのですが感情で話してくれてその思いが伝わるのでそういったところはいいなと思います。

――副将の柴崎哲平(政経3=東京・早大学院)、二村康介(文構3=東京・獨協)二人の印象はいかがですか

池田 柴崎はリーダーシップがありますね。去年からオフェンスをまとめてくれていて今年もまとめてくれて、僕にはない他への厳しいところなどもあるという印象ですね。二村については去年までは自分の中で努力をしてとりあえず試合に出ようといったものだったのですが、今年はほかの人に対して色々とってほしいといった印象ですね。ですが1番チームで努力してきた選手は二村だと思うので、そういった点で彼らのことを信頼しています。

――そのような二人とどのようなチームにしていきたいなと具体的に思いますか

池田 目指しているのは規律を守ってお互いが尊敬し合えるチームを目指していて。僕らは割と提出物が期限に間に合わない、あいさつがしっかりできないなどそういった細かいところができていないのでそういうフットボール以外の部分を直していかないと結局ボロが出てしまうのでそこをしっかりとやろうと決めました。お互いが尊敬し合えるというのは、お互いがお互いのことを考えていかないといいチームができないので。あいさつに関しても、お互い尊敬し合ったらあいさつは勝手に出るしそういったところでお互いを尊敬していきたいと思います。また、例えば相手チームだったら相手チームを尊敬してやっていきたいと思います。

「目指しているのは規律を守ってお互いが尊敬し合えるチーム」(池田)

QB柴崎副将、DL二村副将と共に3人でチームをけん引する

――1年生の頃から試合に出場をされていたと思うのですが、一選手として最終学年にかける思いとは

池田 今年のディフェンスがどうなるか分からないというか、僕のポジションが分からないのですが、ロスタックルとQBタックルはしっかりしたいというかリーグ1位を狙っていきたいと思います。1、2年の時はチームだったら1位だったのですが去年はあまり勝てなかったのでそういった面でも。僕らの代はあまりタックルが上手いといった選手がいないのでそこで活躍していきたいですね。

――記録を残していきたいということでしょうか

池田 はい、そうですね。

――大学でご自身が成長したという点などありますか

池田 大学で成長したなということはフィジカルがついたことだと思いますね。そこに関してはOLと当たり負けないといのがあります。あとは試合経験を積むことによって、こうしたらこうなるなという感覚がだいたいつかめるようになったことが僕の成長ですね。僕はその感覚を言葉で伝えるのが苦手なのであまり後輩が育たないのですが、感覚とフィジカルが1番成長したと思います。

――そんなご自身のストロングポイントとは

池田 『変』ということですかね。

――『変』というのは

池田 僕でも分からない動きをすることがあるんですよ。説明がつかない動きができるといったことが僕のストロングポイントだなと思います。あとは変な動きで変に抜けていくのですがそういった動きを抜きにしても適当に当たれて、タックルに関しても僕は上手いと思っているのでそういったところもストロングポイントかな思います。

――相手が予測しづらいという

池田 そうですね、相手が予測しづらいということですね。

――憧れていた先輩などは

池田 僕はあまり憧れとはなくて。僕のポジションから歴代の選手でそういった選手がいなかったのであんまりないですね。僕はとりあえず1年生の時の自分を超えなければと思っていますね。

――自分自身を超えていきたいということですね

池田 はい、そうですね。

――選手としてあまり憧れはないといったことでしたが、ご自身の理想の主将像とはありますか

池田 とりあえずやるというか、行動で示すというか、そういった選手になりたいと思っています。主将が自分本意になったらチームが崩れていくのでいつも周りに気を配りながらチームが日本一になるために締めるところは締めるし、オンとオフをしっかり切り替える人が主将の理想像ですね。

――主将としての1年間の目標は

池田 甲子園ボウルに勝って、全員が全員に対してありがとうと言えるチームを作りたいですね。そこは先ほどもあったお互いを尊敬しあえるという点につながるのですが、主体性に関しても全員がやっていなかったら全員が全員に対して尊敬の気持ちなど出ないしそういった面で僕は引退した時に全員が全員にありがとうと言えるチームを作りたいなと思っています。

――高校から部活を始められたということで今年で7年目を迎えますが、池田主将にとってのアメリカンフットボールとは

池田 全てをかけるものですね。アメフトは熱意をかけられるものですし、誠意をかけるものですね。

――BIG BEARSというチームの魅力とは

池田 他のチームはわかりませんが、個性豊かというか、人数が多くていろんな人がいて個性を消さずに自分のいいところを出せていて、個性豊かなところがいいところだなと思います。あとはチーム全体として仲がいいというか全体的に全員が他のポジションにも干渉したりしているのでそういった面でお互いがお互いに興味を持っているのがいいところであるかなと思います。

――池田主将にとって早慶戦とはどういった存在ですか

池田 僕はずっと早稲田なのですが、いまだに早稲田のプライドというものがわからなくて、なんで慶応だったら勝ちたいんだろうとか思うんだろうって。僕は試合だったら全部勝ちたいと思っているので、早慶戦だから勝ちたいとかではないですよね。ですが毎年「早慶戦で勝ってやった!」というのは楽しんでいるので、そういうところでは早慶戦に勝ちたいなって思います。今年の春は、僕らは下積み時代というか積んでいかないといけない時期なのでその中でも相手が慶応だからといったことではなくて、あの大舞台で試合ができて、そこで勝てればすごく嬉しいことで、春の一番最初にやる大きい試合ですし、そういう面においても絶対に早慶戦は勝ちたいなと思います。全然何点数差というか圧倒したいとかはないのですが、全員で1点差でも勝てれば、あそこで全員で喜べればと思います。

――春の早慶戦は日本の学生フットボール界でも2、3番目に観客が集まると思うのですが、大舞台に立つとどのような気持ちになりますか

池田 僕はあのような舞台は楽しもうと思っているので、観客もたくさんいますしそういった部分でも大舞台で試合できるといったことに感謝して楽しみたいかなと思います。

――慶大の印象はいかがですか

池田 一番苦手ですね。オフェンスラインは強いというか、ギリギリの部分でやってきてそこのしつこさが僕は苦手ですね。慶応のいいところでもあり悪いところでもあるのですが、一度流れに乗せると手がつけられないというか、一度流れが切れると、これ負けてるなという感じになるのですが逆に流れに乗られると手がつけられなくなる相手なのでそういった面では僕らと違いますね。僕らは闘志を出していこうという気持ちでやっていて試合とかはスマートに戦うタイプというか頭脳性に戦うタイプなので、慶応は泥臭く相手をつかんで、ブリッツを使ったりなど、そのようなチームなので僕らとは違ってすごいなと思います。

――警戒されている選手やポジションなどはありますか

池田 僕はOLの60番の小池匠(慶大)ですね。よく当たっていたのですが、僕のポジションから取ってくるのがうまくて彼にいいかたちで勝てたことがあまりないのでそういった点で警戒しているというか苦手意識があるのでそこでどうやって勝っていこうかと考えていますね

――最後に早慶戦へ向けた意気込みをお願いします

池田 僕らのスローガンの『闘志』を前面に出して、春の最初の大一番の早慶戦には絶対に勝ちます。

――ありがとうございました!

早慶戦への意気込みを色紙に書いてくださりました!

(取材・編集 江藤華、涌井統矢 写真 柴田侑佳)

◆池田直人(いけだ・なおと)

1997(平9)年7月24日生まれ。168センチ、85キロ。東京・早大学院高出身。法学部4年。LB。選手たちだけでなく、スタッフ陣からの信頼もかなり厚い池田主将。悲願の学生日本一を達成するため、その人徳をもってチームを一つにまとめ上げています!