関学大に完敗。創部初の学生日本一かなわず

米式蹴球
TEAM 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
早大 BIG BEARS 20
関学大 FIGHTERS 10 17 37

 2年ぶり5度目の出場となる三菱電機杯毎日甲子園ボウル(甲子園ボウル)。「歴史を変える」。その一心で甲子園に戻ってきたBIG BEARSが、1934年の創部から一度も成し得ていない学生日本一へ挑んだ。試合はランでゲームコントロールする相手に苦しめられ、前半だけで20点ものリードを奪われてしまう。後半は2本のTDパスで息を吹き返したが、結果は20―37で完敗。創部史上初の夢は、今年もはかなく散った。

 強力なオフェンス陣を擁する関学大にオープニングドライブで7点を奪われ、試合序盤から相手を追う展開となった。それでも直後の攻撃でQB柴崎哲平(政経3=東京・早大学院)がロングパスを決め敵陣へ侵入すると、最後はRB元山伊織(商4=大阪・豊中)がエンドゾーンを駆け抜けすぐさま同点に。その後、関学大にレッドゾーンまで攻め込まれる場面もあったが、DL斉川尚之主将(スポ4=東京・獨協)にQBサックが飛び出すなど、粘り強いディフェンスでFGに食い止めた。しかし、攻勢を強める相手とは対照的に突破口を思うように開けない早大は、点差を縮めることができず20点のビハインドで前半を折り返した。

幾度となく激しいラッシュを仕掛けたDL斉川主将

 後半最初のドライブで4thダウンギャンブルを失敗。モメンタムを引き寄せられなかった早大は関学大オフェンスにアジャストしきれず失点を重ねてしまう。その後も苦しい局面は続いたが、WR遠藤健史(法4=東京・早大学院)が66ヤードのTDパスを奪い反撃ののろしを上げると、4Qにも「練習通りうまくいった」と、再び遠藤がTDを獲得。パスユニットが意地を見せ点差を縮めたが、反撃もここまで。関学大に手は届かず20―37で試合終了を迎えた。

後半に2つのTDパスを奪ったWR遠藤

 「プレーの精度が関東で戦ってきたチームとは違った」(高岡勝監督、平4人卒=静岡聖光学院)。今年も攻守共に高い完成度を誇る関学大に歯が立たず、力の差をまざまざと見せつけられた。ランでの獲得ヤードは早大が74に対して関学大は287。この差が明暗を分け、くしくも2年前の甲子園ボウルと同じ17点差で敗れた。これで4年生が引退。チームスローガンである『気魄』をプレーで体現し、常に先頭でチームをけん引し続けた闘将もユニフォームを脱ぐ。「自分たちが成し得なかったものを達成してほしい」(斉川主将)。夢を託された後輩たちが、これからも険しく続く学生日本一への道を切り開いてゆく。

(記事 成瀬允、写真 中澤紅里、元田蒼、涌井統矢、小田真史)

敢闘賞を受賞したQB柴崎

得点経過
TEAM PLAY PLAYER(S) PAT PLAYER G/NG スコア
関学大 RUN #26中村 #8安藤 0―7
早大 RUN #7元山 #96髙坂 7-7
関学大 FG #8安藤 7―10
関学大 FG #8安藤 7―13
関学大 RUN #10光藤 #8安藤 7―20
関学大 RUN #21三宅 #8安藤 7―27
関学大 PASS #10光藤→#91對馬 #8安藤 7―34
早大 PASS #1柴崎→#13遠藤 #96髙坂 14-34
関学大 FG #8安藤 14―37
早大 PASS #1柴崎→#13遠藤 PASS #1柴崎→#81松岡 NG 20-37
コメント

高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)

――率直な感想はいかがですか

関学大さんは強かったですね。

――相手に苦しめられたポイントは

プレーの精度が関東で戦ってきたチームとは違いました。

――相手のランに苦しめられました

関学大がランのチームということは分かっていたのでランを止めにいきましたが、うちのディフェンスをよく研究されていました。

――レッドゾーンに入られてからは粘り強いディフェンスもありました

そこは本当に今年のチームを象徴する諦めない気持ちが全面に出たので、ああいったところがうちのチームの真骨頂といいますか、いいところでした。

――斉川主将も『気魄』あふれるプレーを連発されました

主将として先頭に立って、本当にプレーでチームをけん引してくれたと思います。

――オフェンスを振り返ってはいかがですか

オフェンスはもうちょっとやれたかなと思います。関東で決められていたパスがきょうは手に当たったボールを落とすなどと、そういった精度の差があったと思います。

――今回の甲子園ボウルはいかがでしたか

なるべくいつも通りに、関西遠征という特殊な部分をなるべく感じさせないようなタイムスケジュールを作りました。選手はそんなに緊張せずに、自分たちのプレーをできたのではないかなと思います。

――共に1年間戦い続けた4年生へ向けてメッセージをお願いします

今年の4年生は決して真っ直ぐここまで歩んできた訳ではありませんが、その中で悩みながら進んできたと思います。そして1つになって戦えたことは自分自身にとっても最高の4年生だったと思います。

――今後に向けて一言お願いします

チームは存続していかないといけないですし、存続していく礎をこの2年間作ってきました。そこは自分を信じてやってきた部分があります。この関学大との差を縮めていくことが一つの目標なので、この差をコーチ陣と共に受け止めて来年のチームに引き継いでいけたらと思います。

DL斉川尚之主将(スポ4=東京・獨協)

――今の思いはどのようなものがありますか

負けてしまったのが、すごく悔しいですね。

――先制を許す展開になりました

簡単にはいかないと思っていました。先制されたことに対して動揺するということは、チームとしてはなかったと思います。

――ディフェンスを振り返ると

要所要所で、コンスタントに相手のやりたいことをやらせてしまいました。4Qまでしっかり止められなかったというのが敗因ですし、それによって関学大のオフェンスが出たということでもあると思います。

――ご自身のプレーは

自分の調子自体は悪くはなかったと思います。ただ、3Qや4Qになってから、自分自身足が出ていないという自覚がありました。後半点差が離れてしまうことにつながってしまったと思います。

――関学大の強さはどのようなところに感じましたか

個人個人のスキルやフィジカルの強さがあります。さらにアサインメントの遂行能力も、関東にないレベルでした。そこが強さだったと思います。

――同じ高校の後輩、DL二村康介選手(文構3=東京・獨協)のプレーはどうご覧になりましたか

二村はポテンシャルもあるし、同じ高校出身ということで、今日もいい仕事をしてくれました。来年はもっと化けると思うので、期待しています。来年も二村はDLの中心となるメンバーだと思うので、1年間自分の求めている理想の形になるまで貫き通してほしいですね。

――主将としてチームを引っ張ってきた1年間を振り返り、どのような思いがありますか

振り返ると、楽しいことよりも苦しいことの方が多かったです。春季は勝ちきれなかったですし、秋季も初戦は苦しめられ、最後の法大戦も苦しめられました。甲子園ボウル出場を果たしたものの、こうして負けて終わってしまうのは、振り返ってみても悔しいです。ここまで来られたことに特に満足はできません。目標である学生日本一は達成できなかったので、そこは心残りですね。

――一緒に4年間戦ってきた同期に対しては

主将としてふがいない場面も多々ありましたし、その度に同期に支えてもらいました。4年間、同期と一緒にやれたことに関して感謝していますし、誇りに思っています。

――きょうの後輩たちのプレーをご覧になって、どのように感じましたか

ディフェンスもオフェンスも、3年生を中心に下級生に救われた場面が今季を通して、またきょうの試合でも多々ありました。自分たちが果たせなかった学生日本一という目標を、自信を持って託せますし、必ず達成してくれると思います。

――斉川選手ご自身の4年間を振り返るとどのような思いがありますか

4年間を振り返って、よく「あっという間だ」と言われますが、自分はそういう風には思いません。本当に長くてしんどい4年間だったと思います。自分は未経験として入ってきて、下級生のうちはケガばかりで、試合に出られない日々も続きましたし、試合に出ても活躍できない日々がありました。昨年の日大戦も、僕は途中でケガをしてしまって出られませんでした。4年目に試合に出ても、結局目標は達成できなかったので、今も悔しいですし、「ああしとけばよかったかも」という後悔が全くないというわけではありません。4年間を通して、自分が目指してきた目標を達成できなかったのが心残りです。

――来年以降後輩たちに期待したいことは

今季試合に出て活躍したメンバーがかなり残るので、自分たちが成し得なかったものを達成してほしいと思います。

DB小野寺郁朗副将(社4=東京・早大学院)

――きょうの試合を振り返ってみていかがですか

負けたことがすべてなのですが、個人というよりはチームで勝ちにこだわった試合で、結果が全てですね。

――ディフェンスはいかがでしたか

気持ちの面では負けていなかったと思います。ただ、基礎の面といいますか、相手の芯や強さ、プレーへのこだわりが一枚上手だったと思います。

――関学大のパスはいかがでしたか

(パスは)もっとくると思っていたんですよね。すごくラン攻撃が多くて、止められなかったのはDBの責任であると思います。ディフェンスとして反省が多い試合でした。

――インサイドを抜かれている印象が強かったですが

パスに重点を置いていたから抜かれていたわけではないと思うんですけど、相手のスカウティングであったり、カットバックが空いていたり、QBランでやられたりしたので。うちの練習でやっていなくて、試合を再現しきれていなかったのが結果に出てしまったと思います。

――四年間で最後の試合となってしまいました

後悔ないと言ったら絶対に嘘ですが、最高の仲間とここまできて、絶対に勝つという気持ちで、仲間と喜びを分かち合いたかったんですけど。この悔しさ、あの景色、青の景色を後輩たちは忘れないようにして、次につなげて絶対に勝ってほしい。ここに戻ってくるだけではなくて、ここで勝つというのを心に決めて来年プレーして欲しいです。

――早大での四年間はどのようなものでしたか

振り返るととても短いですね。プレーしているときはとてもつらかったんですけど、仲間がいましたし、同期も後輩も先輩も大好きでしたし、コーチも監督もいい人ばかりで、充実の四年間を過ごせました。最後は勝って終わりたかったんですけど、この四年間は僕にとって大切な人と出会えましたし、大切なものを得られたなとすごく思いました。

――早大アメフト部はどのような存在でしたか

僕の生きがいです。この四年間ずっと勉学もやってはいるものの、BIG BEARSに懸けてきた思い、日本一への思いというのは自分の人生においても大事でしたし、生きがいでしたね。

――これからは何を生きがいにしていきますか

今は終わったばかりなのでまだ具体的なことは考えられないですが、アメフトを続けるのもいいですし、何か違うことを見つけてそれに打ち込むのもいいと思いますし、新たな場でもいろんな人と切磋琢磨(せっさたくま)して高みを目指すのもいいと思っています。ここでできた仲間をこれからも仲良くしていきたいと思いますし、後輩たちも頑張って欲しいです。僕はこれから感じたものというか、やりたいものを見つけてまたそれを生きがいだと言えるように、一生懸命取り組んでいきたいと思います。

RB元山伊織(商4=大阪・豊中)

――きょうの試合どんな気持ちで迎えましたか

因縁の相手ということで、本当に自分の人生をかける思いで挑みました。絶対に倒してやるという気持ちは試合前も試合中も最後の最後まで持っていましたが、結果としてかなわなかったです。

――結果についてどのように感じていますか

自分としてはシーズン中やることをやって、やり残したことはないと思っていました。負けたという結果が出た時に、あれをやっておけばよかった、これをやっておけばよかった、そういう気持ちが結構ありました。本当に悔しい気持ちが今は一番ですね。

――地上戦では苦しい展開でしたが、そこに関して振り返っていただけますか

そうですね。相手が上手く守ってきて我慢の展開になるというのは分かっていましたが、絶対にチャンスはくるなと思っていました。実際にチャンスは何個かあったのですが、きょうの試合に関しては自分が生かしきれずあんまりゲインできず、TDに持っていけなかったので、そこに関してはエースである自分の責任だと思います。

――TDのシーンを振り返っていただけますか

周りに関してはうちのOLが素晴らしいブロックをしてくれて、あれは狙い通りのTDだったなと思いますね。僕は走るだけだったので、みんなで取った点だと思います。気持ちよかったです。

――後輩に伝えたいことはありますか

このままだとこのチームの文化だとか、関西に通用しないというのは分かったと思います。(チーム内での)ぶつかり合いを恐れず、本気でもの言ってチームを変えようとする意思があるかという部分で僕は持っていたつもりでしたが、結果としてチームを変えられませんでした。この関東と関西のフットボールに対する気持ちの違いというのが今回の結果に出たと思うので、そこに関して後輩に伝えられたらなと思います。

――早大での4年間はどんなものになりましたか

自分は高校から注目されていたわけでもなく、常に這い上がってやるぞという気持ちを持ってやっていました。3年生からレギュラーとして出させてもらって、少しずつ結果も残せてきて自分としては甲子園で勝って有終の美を終えるつもりだったのですが…。思い出せば本当に色々な思い出もあります。結果はダメでしたが自分を支えてくれた先輩、コーチ、後輩、同期、全ての人に感謝したいです。

WR遠藤健史(法4=東京・早大学院)

――試合を終えた、いまのお気持ちをお願いいたします

率直に、悔しいの一言に尽きます。

―きょうの試合を振り返って

最初のシリーズでTDまで持っていけて、それで少し安心してしまった部分もあったのかなと思います。そこからは点差が開いていって、「東伏見でやってきた自分たちのフットボールを体現しよう」と言ったりもしたんですけど、それもすでに遅くて。自分たちの実力はもっと出せたんじゃないかなと思うので、やっぱり悔しいですね。

――個人としては後半2TDを挙げられました

練習通りうまくいったので良かったかなと思っています。QBの柴崎も良いところに投げてくれて僕は取って走るだけだったので、2つのTDを取ったプレーに関しては練習通りうまくいったかなと思います。

――遠藤選手の強みである、スピードとクイックネスは関学大相手にも上回っていました

もちろん通用していたところもあって、そういう場面もあったんですけど。自分としてはもっと相手を圧倒できたなといいますか、もっと勝負できたなと思うところがありました。良い部分もあったんですけど、不完全燃焼な部分はあります。いま思うとこうすればよかったなというイメージがあるので、それが試合中にできなかったのはすごく後悔しています。

――3ポゼッション差で迎えた後半でしたが、ハーフタイムでチームに何か声をかけられましたか

ハーフタイムでは、残り時間が30分あるから逆転する時間はあるので、スタートからフィニッシュまで1プレー1プレーこだわってやっていこう。点差のことをとやかくいっても仕方がないので、目の前のプレーに1つ一つ集中することだけを考えようっていうのは言いました。特に後半はうちのリターンから始まったので、最初のシリーズは1本取ってこようという気持ちで意気込んだんですけど、関学大のディフェンスが強かったですね。

――勝負所で取りきれない場面も見られましたが、パスユニットを振り返っていかがですか

正直、きょうの試合はパスユニットで局面を打開していかないと厳しいなと、パスユニットの出来次第で勝敗が決まるなと思っていました。要所で決め切れなかったり3rdダウンで残してしまったりだとか、そういう部分が多かったかなと思うので、悔しいです。

――ポジションの後輩たちにかける言葉はありますか

みんな優秀な後輩しかいなくて、今年1年間ついてきてくれたことにすごく感謝しています。きょう負けたこと、最後サイドラインに立って相手の表彰式をずっと見ていたという悔しさを、鮮明に覚えておいてほしいなというのは思いますね。どこかで悔しさを忘れてしまうと、練習も少し手を抜いたりしてしまうので、悔しさを原動力に変えて、来年こそは日本一を目指して、レシーバーユニットを作り上げていってほしいなと思います。それができるだけの選手はそろっているので期待していますし、頑張ってほしいなと思います。

――最後に、ご自身の4年間を振り返っていただいていかがでしたか

いまはまだ自分が引退したという実感は全くないんですけど、本当にあっという間にでした。つらいことやしんどいことの方が正直多くて、その全てが報われるのが甲子園での勝利だと思っていたので。もちろん楽しいこともたくさんあったんですけど、振り返ってみると大学入ってからで3回甲子園ボウルに出場して、3回とも負けて悔しい気持ちで引退することになるので悔いは残りますね。でもその中でも良い経験は多くできたと思うので、先輩や同期、後輩たちにはすごく感謝しています。とはいえ、やはり最後は勝って、つらい練習をやってきたことが報われてほしかったなという気持ちは強いので、そこはやっぱり悔しいというのが試合が終わった今の正直な思いです。

QB柴崎哲平(政経3=東京・早大学院)

――思うようにプレーできない苦しい場面が続きましたが原因はどこだと思いますか

間違いなく関大の強さはスカウティングの凄さが1つあって、予想はしてたんですけど。プレー全てを完璧に止められてる訳でないのに関わらず、ディフェンダーにいい位置にポジショニングされていて、為す術ないというよりは、ずっとやりずらさを感じていました。特に前半。それが前半流れを掴めなかった一番の要因です。本当に手が出ないってわけではなくて、要所要所取れるとことか、空いている場面もあったのに、続かない。いつも自分たちがやっているプレーで相手が嫌な位置にいて、読まれているんじゃないかという場面が節々ありました。そこが関東ではずっと決めていた場面だったので、それが決められないって時に、リズムが崩れたかなって感じです。

――後半はいかがでしたか

後半は、向こうがメンバーを落としていて、ここで止めてもなっていうのが正直ありました。リズム作っても時にすでに遅しという感じでした。現実はそこからひっくり返すのは厳しかったです。

DL二村康介(文構3=東京・獨協)

――初めて甲子園のフィールドに立ちました。ご自身のプレーを振り返っていかがですか

結構思いっ切りできたというのが率直な感想です。相手が強いということは分かっていましたが、自分でタックルできる場面もあってすごく楽しくはできていました。

――二村選手の隣には斉川主将がセットされていました。DLにとって主将は大きな存在でしたか

DLを象徴するような存在ですね。斉川主将に1人で任せてはいけないと思って、個人個人頑張るといった感じで、大きな背中を追いかけて来ました。

――関学大と対峙しての印象はいかがですか

用意していたディフェンスをしていても、穴を通されて行かれてしまう部分があって、1枚か2枚相手が上手なのかなと感じました。率直に大きなカベだなと思いました。

――きょう良かった点と悪かった点は

良かった点は思いっ切りサインを実行しようとして、変に臆することなくプレーできたことです。悪かった点としてはもっとボールに絡んで相手のブロックを上手く対処できなかったことが課題であると思います。

――今後への意気込みをお願いします

全員がこの気持ちを忘れずに、来年はここで終わらずに続けていきたいと思っています。