「歴史を変える」。この志を胸に1年間チームは戦い続け甲子園ボウルの切符をつかんだ。そしてきょう、就任2年目を迎えた高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)が、指揮官として初めて大舞台に立つ。これまで涙をのんできた先人たちの思いを背負い、これまで成し得なかった学生日本一をつかみ取ってみせる。
※この取材は12月上旬に行われたものです。
「歴史を変える最大のチャンス」(高岡監督)
甲子園ボウルへの意気込みを語る高岡監督
――今季苦しい戦いが続いたと思うのですが、秋のリーグ戦を振り返っていただけますか
選手にもミーティングで言っていますが、初戦の日体大からオフェンス、ディフェンス、キッキングどこかが良ければどこかが悪いというのが5戦続きました。法大との試合を見るとそういう意味では早大らしい我慢ができたのかなと思います。特に一番キッキングが大荒れしないというか、ミスも序盤ありましたが最後もWR高津佐(隼矢)という優秀なリターナーがいる中で一番ゲインされたのが38ヤードぐらいなので、キッキングの成長というのは成果かなと思います。
――今回全勝で優勝という結果を迎えましたが、原動力は何だと考えていますか
やっぱり学生が最後まで諦めないというのが負けなかった原因かなと思います。勝てたというよりも、負けないで何とかという感じですかね。
――今季の戦いぶりの中で、大きな収穫や具体的な反省点というのはどういった点が考えられますか
収穫という意味では結構スターターがどの試合をとっても変わっています。そういう意味では最初のスターターと最後のスターターで変わってないところと変わった部分があるので、そういう意味では成長した選手、コツコツ努力した選手がスターターになれているということが収穫かなと思います。
――反省点はどういった点でしょうか
反省は安心できる試合が1試合もなかったことです。本当にギリギリというかデプスも厚くなかったですし、どこまで成長したのか・・・。勝てた実感はまだ湧いてないです。
――法大戦後の記者会見でQB柴崎哲平(政経3=東京・早大学院)が『坂本コーディネーターの力が大きかった』と話していました。今季の練習の取り組みはいかがでしたか
私も就任2年目で、すごい大事なことと思っているのは、これは社会に出ても大事だと思っているのですが、実際に動く人間たちが納得して自分のプレーをするという部分では信頼関係が必要だなと思っています。そういった意味では坂本コーチ(智信、平19教卒=東京・早大学院)には、若い選手をつくり上げていくための力を貸して欲しいと思っていました。コーチと選手の信頼関係というか、何を考えているのかお互いに分かるような雰囲気があります。これらはオフェンスが今季、ある程度成果を残すことができた要因だと思います。
――今季はDL斉川尚之主将(スポ4=東京・獨協)の貢献が大きかったのではないでしょうか
そうですね。彼のキャラクターを生かすには主将という立場がいいと思いました。彼もこの1年間ですごい成長を見せてくれました。高校の時もキャプテンをやっていたみたいなので勝てるキャプテンになりたいと。彼の思いがどう通じるか。痛がりの斉川が今年は頑張って練習していますね。
――春にも対戦があったと思いますが、早大と関西のチームの差はどこにあると感じますか
関西と関東は本当にカルチャーが違うので、フットボールの地位が違いますね。その中で自分たちが西高東低じゃないですけど、自分たちの競技だというところのプライドがあるのでそこが最大の違いかなと思います。
――監督として甲子園での戦いは初となりますが、心境としてはどんなお気持ちでしょうか
秋のリーグ戦が始まってから選手、スタッフ、学生には今年は『ワセダの歴史を変えよう』ということを話していました。過去の監督も成しえなかったことを今年はできる最大のチャンスだと考えていますので、何とか達成したいです。
――監督が現役時代にも日本一まであと一歩の状態まで勝ち進んだことはありましたか
社会人時代にも会社が支援してくれるチームにいたので、ある程度日本一に届くという思いでやっていました。しかし、届きませんでした。結果届かなかったというのは色んな面で足りなかったなと。その何が足りなかったかというのは分からないので、何が足りないのかという中で考えられるものを全て、学生と一緒に考えていきたいと思います。
――今年は親子で目指す日本一ということになると思いますが、いかがでしょうか
親子で日本一を目指すことができるのは本当に幸せなことかなと思っています。特に私は子どもに何かやれということを言わないと決めているので。ただ、毎日の練習を見ている中で自分の子どもだけではなくて選手全員が子どもみたいなもので、色々悩むこともあればすごい成長している姿も見せてくれます。そういった彼らの変化は嬉しい部分もありますし、自分自身でも何とか彼らに頑張って欲しいと取り組んでいます。
――息子さんとは家でフットボールの話はされますか
しますよ。彼の役割はDBの中である程度中心選手になってきているので、選手としてチームがどういう状況なのかを話すことはあります。家の息子だけでなくチームの全選手を信頼しているので、色々話を聞いてチームをどう良くしていくかということを話しておくことはあります。
――チームの状態はいかがですか
斉川主将を中心に自分たちの目指すべきところというのを常々言ってくれているので、そういう意味でのチームとしてのブレはないかなと思います。
――関西のチームと戦う時に脅威となる点は何でしょうか
とにかくどこをとっても我々より上です。関学大さんは歴史ですよね。彼らの持つ歴史、色んな意味で総合的にいやらしいまでに隙がない。簡単に勝たせてくれない相手です。これは過去の戦績的から見てもはっきりと分かっています。関学大さん相手にどう我々が取り組んできたことを通用させるか。法大戦の時も色んなメディアの方にもお伝えしましたが、我々は秋の一戦一戦、1プレー1プレーをどう積み上げていくかということになります。関学大さんと試合やっても自分たちのフットボールができれば結果勝利しているという形になるしかないので、挑戦者ですけども、自分たちのフットボールをやりたいと思います。
――ワセダのキーポイントはありますか
うちのオフェンス、ディフェンスそれぞれ11人出てくる全てのポジションどれをとってもキーになってくるプレイヤー、エースというプレイヤーがいるようでいないんですよね。だからそれぞれフィールドに出ている11人がどれだけ全員最後までやるか、足をかき続けるか、最後までボールに集まるか。それをずっと1年間言ってきたので、そこをどれだけ出せるかですね。
――甲子園ではどのような戦いを見せたいですか
間違えないことですね。僕自身がどう戦うか。監督采配というのはあまりないのかもしれませんが、間違えないことでね。タイムアウトを取るタイミングとか、あとは交代のポイントとかですね。あとはコーディネーターたちが選手、コーチのエアポケットになる隙間をどう埋めるか。
――最後に甲子園ボウルへの意気込みをお願いします
今年はワセダの歴史変える最大のチャンスだと思います。選手を信じてやってやるぞという感じですね。
――ありがとうございました!
(取材・編集 成瀬允)
笑顔の高岡監督
◆高岡勝(たかおか・まさる)
1968(昭43)年6月22日生まれ。静岡聖光学院高出身。1992年(平4)年人間科学部卒。趣味はカメラ。DB高岡拓稔(商3=東京・早大学院)と親子二代で学生日本一を目指します!