学生日本一に懸ける思いは4年生に勝るとも劣らない。3年生ながらチームの主力であるQB柴崎哲平(政経3=東京・早大学院)とDB高岡拓稔(商3=東京・早大学院)は小中のフラッグフットボール、早大学院高時代を合わせると13年の仲だ。そんな幼なじみコンビは、「自分たちが今までお世話になってきた先輩方を『歴史を変えた』代にしてあげたい」と誓う。二度目の甲子園の舞台、意気込みを語る。
※この取材は12月上旬に行われたものです。
「4年生より強い気持ちで」(高岡)
今季を振り返るDB高岡
――今シーズンを振り返っていかがですか
高岡 今シーズンは、春からいろいろな試合に取り組み新しい事をしてきた中で、DBとして初めてポジションの上に立つ人間として活動しました。秋シーズンになって人を動かすことは慣れてきた部分はありますが、ユニットの結果がなかなか出なかったシーズンかなというのはあります。デプスの厚さも、1本目のレベルをもう少しあげられたら楽なシーズンになったかなと思います。
柴崎 今シーズンを振り返って、今年入ってからQBでスターターとして試合出て、今年日本一になるうえで、自分が一番やらなきゃいけないって思いはずっとありました。その点では今季に入るまでも十分やってきた気持ちで今シーズンに入ったんですけど、初戦の日体戦でしくじり、自分のパフォーマンスがあまりよくなくて、そうなるとチームの結果も厳しくなって、改めてそこは自分がやらなきゃいけないと感じました。そこからもう一度、自分自身のパフォーマンス、スキル、メンタル全部見直しました。そこからは、毎年苦戦する秋シーズンのオフェンスで、しっかり点も取れて、自分たちのやりたいオフェンスも完璧ではないですがある程度形にして、シーズンをここまで進められたっていうのは、自分たちの自信につながったし、僕自身も自分がパフォーマンス出せばチームが勝てると思えるシーズンでした。
――3年生でスターターとして出ることについてはどのように感じていましたか
柴崎 僕はポジションの中では最上級生だし、QBのなかで本当に大事なのはチームメイトの信頼なので、逆にそこは3年生だからっていうより自分がチームの司令塔だというのが強いので、しっかり自分がリーダーとしてまとめるって気持ちでやってきました。
高岡 CBは今年、スタメンが2人とも4年生なんですけど、SFとローバーは全員下級生でした。5枠しかない中でどうやって勝ち取っていくかっていうところでこの一年間やってきて、年功序列じゃないですしそこは誰も遠慮してないです。そう言う思いがあったからこそ、下級生が今年伸びたんじゃないかなと思っています。来年自分が4年生になって、試合に出られる安泰ポジションにいるわけではないのでもっと努力できますし、それがこのユニットのいいところかなって思います。
――具体的に、ラストイヤーの4年生とどのようにモチベーションを埋めましたか
柴崎 本当に4年と同じ気持ちでやるというのを意識して行動してきたつもりです。僕がやってることを全部正しいとは思いませんが、大学の授業をあえて取るところを4年に残して、今シーズンはアメフトに集中してきました。高岡も同じだと思いますが、今の4年生の中に学院(早大学院)出身がたくさんいて、高校2年生の時にクリスマスボウルで負けてみんなを引退させてしまったっていう思いは強いので、本当に一個上を日本一にしたいです。この先輩たちと日本一になりたいという思いは、ラストイヤーの4年生と同じくらいの気持ちがあると思っています。
高岡 哲(柴崎)と一緒で、一個上に対する思いはすごく強くて、学院の時にお世話になった先輩もそうですし、大学に入って初めて出会った先輩もプライベートで仲良くさせてもらっていますし、色んなことを教えてもらった先輩と、歴史を変える年の代の人として引退させてあげたいです。自分としても、小学校の時にライスボウルの前座に東京ドームで試合した時、ここでもう一度フットボールがしたいとすごく思って、しかも学生で社会人を倒したらめちゃくちゃかっこいいじゃないですか(笑)。ワセダに入って、社会人を倒すってことは大きな夢で、そのチャンスが残り2回ってことで人生の目標をかなえるために、1年1年が勝負だと思っています。そう考えた時、4年生が4年間の思いを今出しているのであれば、僕は10年間の思いを懸けています。ある意味4年生より強い気持ちで挑まなきゃと思っています。
――お二人は13年の仲になりますが、振り返っていかがですか
柴崎 13年振り返って、自分のフットボール人生の大きなターニングポイントになったのは、小学校6年のときQBになったことです。当時もコーチングしてもらっていた高岡監督にQBをやれと言われて、中学生時代もいやいやQBやっていましたが、高岡監督にあの時QBに勧めてもらったことが今につながっています。今もまた高岡監督の下でアメフトやっていて、結局僕のアメフト人生振り返っても高岡監督の存在は大きくて、高岡監督のおかげかなと思います。
高岡 高3の春シーズンに2回鎖骨を骨折したんですけど、その時に落ち込んで主将として全然うまくいかなかった時、一番相談してたのが哲でした。その哲が同じ骨を折って(笑)。
柴崎 懐かしいな(笑)。
高岡 横浜栄戦で泣いているなって思ったら、見覚えのある白いランドセルみたいな器具をつけているから、これはやばいと思いました(笑)。2人仲良く同じ骨折したのは本当に思い出だよね(笑)。
柴崎 そうね。これは思い出だよ(笑)。
――今年から入寮されて、さらに部屋も同じということですが
高岡 気持ち悪いですよね(笑)。2人部屋なので誰かを誘わないといけないと思っていた時に、ウエイトトレーニングをしていた哲を誘って、トントン拍子で話が進んだ感じです。
柴崎 本当は1人部屋が良かったんだけどね。なんか部屋でも全然喋らない感じが物語ってるよね(笑)。
高岡 家族だよね(笑)。これだけ一緒にいるとお互いオフモードに入るスイッチとか分かってるんで。
柴崎 喋らないし、お互い週3とかで実家帰るし(笑)。あえて日をずらして帰ったり(笑)。
高岡 仲悪いみたいじゃんか(笑)。
柴崎 ほらそしたら、1人部屋になれるから(笑)。正直あえてずらしてるよね(笑)。
――オフはどうされてるんですか
高岡 オフは、哲がバイトしてたり。
柴崎 自由にね。寮帰るといるから、ああいるなって。全然喋んないよね。
高岡 部屋に兄弟がいる感じです。
柴崎 よっぽど喋りたいことがあったら喋るよね。
高岡 ワセダ対ワセダの練習とかはお互いプレーを仕切っている側だから、あのプレーは予想してなかったとかやられたとか、結構闘志むき出しにして話します。
――高岡監督が就任されて2年目ですが親子の関係いかがですか
高岡 全く変わらなかったですね。変わらなかったっていうか、変に監督を意識することはなくて、1人の父親がワセダの監督をしているという感じです。ただ、他の選手よりもその存在を間近で見ているので、大変だなって思うことは多々あります。そういう意味では、さっきの4年生の話じゃないですけど、大変な思いをしてチームビルディングをしてきてるからこの人報われないとおかしいという思いはあります。リーグ優勝した時もホッとした気持ちがあって、勝ってよかったって。うちの父親をちゃんとリーグ優勝の監督にさせてあげられたっていうのがホッとした一番要因かなと思います。
――家でアメフトの話はされますか
高岡 家帰って、いる時は結構話します。どうなんだとかDB大丈夫?とか。ユニットのこともありますし、ディフェンスがやれてる試合の後とか調子とかは聞かれます。選手とは近いコーチだと思います。言う時は言いますけど。特にOLとか。あの人もOL出身なので。心得とか言っている気がします。
「学生日本一という結果を出す」(柴崎)
甲子園ボウルへの意気込みを語るQB柴崎
――日本一への挑戦となりました
高岡 大学1年の時はキッキングしか出てないのであれですけど、高校2年3年の敗戦はまた特別なものでした。高校2年時はそれまでのシーズン負けてばっかりで、しっかりクリスマスボウルには出られたって感じだったのに、そこで負けて連覇が途絶えてしまいました。逆に高3はクリスマスボウル以外は負けてなくて、あっさり最後だけ負けてしまいました。どっちも悔しかったんですけど、高3の方は周りがみんな引っ張って来てくれて、自分が主将なのにケガして出られてなくて関東大会で復帰して、クリスマスボウルでやっと活躍の場ができたのに、勝てなかったのは自分の実力不足が顕著に出たなって思いがあります。今年、レギュラーメンバーとして出て、これで関西に通用しないってなったら3年前と何も変わってないことになるじゃないですか。あの時の自分からどこまで関西に通用するようになっているか楽しみです。早く試合がしたいです。
柴崎 僕も楽しみが大きいですかね。高2の時の自分は正直自信満々で、でも今から見たらめっちゃ下手でした。でも連覇という重荷が大きくて、監督に勝敗の7割はQB次第と言われて、めっちゃプレッシャー感じていました。負けてしまい3年引退させて自分も悔しいしそれ以上に、歴史に泥を塗ってしまった、連覇を途絶えさせたQBになってしまったという思いが強かったです。また、高3のときに自分が歴史をつくろうと思って、柴崎がリベンジって言われていたのに、負けました。今年は1年間、やりきった自信もありますし、あとは全て出すだけなので、今までの日本一へのチャレンジより自信あります。大学日本代表とかにも行って、今年1年は確実に成長してきて関西に勝てるって思っているので、楽しみが強いです。
――4年生はどういった代ですか
高岡 代の色としては、妥協なくやり続ける代です。それを体現しているのがうちのDB主任なんですけど、自分を追い込みすぎるくらいの人の背中を見てきて、行動で示すことはすごいことだなと思います。今年の4年生DBはすごく仲良しですし、自分とも仲良くしてもらっていますし、親しみやすい人達ばっかりです。自分がやりたいようにやらせてくれている人たちに、恩返ししたいです。
柴崎 本当に自分の言葉に責任持ってるなと思います。誰よりも自分がやっていますし、RB元山伊織(商4=大阪・豊中)さんとかそんなに言うかって思うときもありますけど、間違いなくあの人はやっているし、WR遠藤(健史、法4=東京・早大学院)さんも、オフェンスのリーダーとして同じくらいやっていますし純粋に尊敬しています。あの4年生だから今年自分もこれだけ本気になれたのかなと思います。
――3年生はいかがですか
高岡 同期は、自由な考え方を持っている選手が多いです。個性的。いい意味でまとまりがなくいい意味でまとまる。学年的には個性的なメンバーではあります。ある意味で課題です。
柴崎 個性的というより、すごく強い個性(笑)。個性が強すぎるのと、自分の価値観を持って芯がある人が多いです。3年はまとまったら相当強い代かなと思います(笑)。
――甲子園に向けた意気込みをお願いします
高岡 今年は歴史を変えると言って1年間やってきて、その歴史が変わるかどうかが12月16日に決まるので、ある意味で今年のチームの取り組みが歴史を変えるに相応しかったのか、相応しくなかったのか試される試合です。だからこそ、その結果を自分が思い描くものにするためにもこの2週間は濃いものにしたいです。
柴崎 今年1年間をその1日に出すために、あと2週間やり尽くすだけなので、今ままでクリスマスボウルとかあれだけの観客であれだけのフィールドで、ここで勝ったら人生で今まで味わったことないくらい幸せなんだろうなと思いますし、その一瞬を求めてこの1年間やってきたので、思い残すことのないように最後勝って、学生日本一という結果を出します。
――ありがとうございました!
(取材・編集 藤田さくら)
意気込みを力強く色紙に書いていただきました!
◆柴崎哲平(しばさき・てっぺい)(※写真右)
1997(平9)年7月18日生まれ。176センチ、70キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部3年。ポジションはQB。背番号は1。今年度、オフェンスの司令塔としてチームをけん引した柴崎選手。フットボールセンスとインテリジェンスを武器に甲子園の舞台に圧倒されることなく、実力を見せつけてくれることでしょう!
◆高岡拓稔(たかおか・たくみ)(※写真左)
1997(平9)年4月26日。180センチ、74キロ。東京・早大学院高出身。商学部3年。ポジションはDB。背番号は31。最近は寮の食堂でバイトを始めたそうです。チームきってのフットボールオタクでもある高岡選手。プライベートはほぼないというほどフットボール漬けの毎日を送っているそうです!