秋の早慶戦で2年連続の白星、キッキングが成長を遂げる

米式蹴球
TEAM 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
早大 BIG BEARS 13 29
慶大 UNICORNS 10

 富士通スタジアム川崎。忘れもしない。一昨年はこの試合の相手となる慶大に、昨年は日大に敗れ、この地で2年続けて苦境に立たされた。この日も昨年同様に雨が降り、悪夢が頭をよぎる。そんな不安を打ち砕いたのは早大自慢のパスユニットであった。第1クオーター(Q)、早大2度目のオフェンスシリーズ。「日本一のパスユニットを目指す」と語る、レシーバー陣の要・WR遠藤健史(法4=東京・早大学院)へのパスがヒットしTD。先制に成功する。その後も攻め続けた早大。慶大にFGを決められる場面もあったが、2本のFGで返し、13-3で前半を終える。後半も試合は早大ペースで進んでいく。第3Q終了間際、WR高地駿太朗(先理4=神奈川・浅野)への浮かせたパスが通り追加点を挙げる。その後もK/P髙坂將太(創理2=東京・国立)が50ヤードFGを決めるなど得点を重ね、宿敵・慶大に快勝を収めた。

 第1Q、QB柴崎哲平(政経3=東京・早大学院)からの3つのパスで3度1stダウンを更新。ゴール前までボールを運ぶと、最後は遠藤がディフェンスを振り切りTD。幸先よく先制点を挙げる。直後の慶大シリーズ。LB杉田直人(法3=東京・早大学院)の好タックルなどで3アンドアウトに抑え、迎えた早大オフェンス。RB元山伊織(商4=大阪・豊中)のランに、パスを織り交ぜ敵陣に攻め込む。ワセダ随一のホットライン、柴崎からWRブレナン翼(国教3=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)へのパスに、慶大ディフェンスが堪らずインターフェアの反則。敵陣2ヤードへ。しかし、ここからフロント陣が押し込めずTDを奪えない。パスオフェンスに切り替えるもレシーバーがドロップ。FGに終わり、ゴール前での攻撃に課題が見受けられた。続く慶大のオフェンスシリーズ。慶大得意のスクリーンパスに対しアジャストしきれず。タックルミスも重なり自陣への侵入を許す。その後もパスを通され、自陣20ヤード付近まで攻め込まれる。ここで早大ディフェンスが力を見せた。「真っ向から勝負して圧倒する」と、DL斉川尚之主将(スポ4=東京・独協)のQBサックが飛び出し、FGに抑え込む。その後もパスを中心に攻撃を仕掛けた早大。ゴール前7ヤードから、遠藤へのパスが通り追加点かと思われたが、OLにホールディングの反則。TDは取り消しとなる。試合を通してOL陣の反則が目立ったが、それを最も象徴する場面となった。

先制点を奪ったWR遠藤

 早大のリターンから始まった後半。WR河波正樹(スポ2=カナダ・シアクァムセカンダリースクール)が好リターンを見せ、自陣40ヤード付近からのオフェンス。ブレナンへのパスが決まり敵陣に入ると、FGで3点を追加する。ディフェンスでは、DL上田雄大(人4¬=東京・明治学院)のQBサックやDB阿部哲也(商4=東京・早大学院)のインターセプトで慶大の反撃を許さない。第4Q開始直後、敵陣7ヤードからの攻撃。高地がエンドゾーンでの空中戦を制す。「自分としては決められるキョリだと思っていた」(髙坂)と、ら50ヤードのFGを決め26-3とリードを広げる。すると、勝利へ向け、時間に迫られた慶大がノーハドルで攻めてくる。残り時間5分50秒からの慶大の攻撃。素早いパスオフェンスに対応しきれず、慶大主将・松岡拓希に意地のTDを決められてしまう。残り時間は4分20秒。わずか1分30秒での猛攻であった。しかし、早大は相手のオンサイドキックをしっかりと確保し、ランプレーで時間を使いドライブを進める。髙坂が1試合でのリーグ最多記録を更新する5度目のFGを決め、最終スコアは29-10。関東大学秋季リーグ戦で唯一の開幕3連勝となった。

強烈なパスラッシュを仕掛けるDL斉川主将

 猛烈な勢いで関東に近づく台風の影響で、試合当日の朝に試合会場が変更された慶大戦。結果だけを見れば快勝であった。しかし、「いつひっくり返されてもおかしくない」と高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)が不安視するよう、反則が多く、いまひとつ試合のモメンタムをつかみ切れない展開も続いた。「関西の大学に勝つためにはまだまだ足りてない」(遠藤)というように、早大の目標は『学生日本一』。関東制覇ではない。春に戦った立命大に3本差で完敗したことは記憶に新しいが、彼らは秋を通してさらに成長を遂げてくる。関西のスキル陣は、関東と比べサイズのある選手が多いため、身長差を生かしたパスプレーを苦手とするワセダのディフェンスとしては一つの課題となるであろう。早大にとって髙坂の成長により、キッキングは一つの強みとなりつつある。ただ、ゴール前でのFG機会が多いということは、TDを獲り切れていないことの裏返しでもある。ラインズが押し込まれ、ランが思うように出ない現状。今後続く強豪との戦いでは空中戦のみで勝ち続けることは難しい。次戦、立大戦まで約1カ月。これまでの試合で出た課題をどこまでクリアにできるか。今年のBIG BEARSの真価が問われる。冬の最終決戦へ。甲子園はワセダを待ち望む。

(記事 涌井統矢、写真 成瀬允、細井万里男、篠田雄大、大島悠希)

☆PICK UP PLAYER

成長著しいK髙坂が、関東学生最多記録を更新

 フィールドで静かに闘志を燃やす仕事人が、金字塔を打ち立てた。キッカーを務める髙坂がこの日、積み上げたFGは5本。これが1試合のリーグ最多記録を塗り替えたのだ。高校時代にサッカー部で鍛えた脚力を武器に今秋からスタメンの座を射止めた髙坂は、開幕から3試合PATでのキックは1度も外しておらず、さらに今試合では50ヤードのFGを決めた。「高坂が成長しているという部分は大きい」(斉川)と、闘将も目を見張る活躍ぶりだ。混戦模様のリーグ戦を勝ち抜くべく、今後も重要な役割を担う髙坂。大きな期待と重圧がかかるが、やるべきことは変わらない。「キッキングで貢献して日本一になれるように頑張りたい」(髙坂)と、固い決意を胸に、甲子園への道をその右足で切り開く。

(記事、写真 成瀬允)


得点経過
TEAM PLAY PLAYER(S) PAT PLAYER G/NG スコア
早大 PASS #1柴崎→#13遠藤 #96髙坂 7-0
早大 FG #96髙坂 10-0
慶大 FG #9廣田 10―3
早大 FG #96髙坂 13-3
早大 FG #96髙坂 16-3
早大 PASS #1柴崎→#15高地 #96髙坂 23-3
早大 FG #96髙坂 26-3
慶大 PASS #4西澤→#13松岡 #9廣田 26―10
早大 FG #96髙坂 29-10
星取表(10月1日現在)
早大 法大 中大 立大 慶大 明大 日体大
早大 11/25 11/11 10/28 29○10 42○32 23○15
法大 横浜 10/28 11/11 10/14 14●16 23〇10
中大 横浜 川崎 11/25 21●24 10/14 17〇10
立大 川崎 横浜 横浜 17〇3 0●17 10/13
慶大 10●29 川崎 24〇21 3●17 11/25 11/11
明大 32●42 16〇14 川崎 17〇0 横浜 10/27
日体大 15●23 10●23 10●17 アミノ 横浜 アミノ
コメント

高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

やっぱり反則が多いですし、やはりこれじゃあ勝てないですし、勝ち切れないですね。いつひっくり返されてもおかしくないですね。

――試合ではプレッシャーをかけられるシーンもありました。ラインズに関してはいかがですか

慶大さんは攻撃的なディフェンスをしてくるので、捨て身で多くの人数が入ってくることは分かっていたので、途中まではプロテクションも良かったのですが、最後にQBサックをされて守り切れなかったので、OLもこれからやり直しですね。

――今春と今回の慶大戦を比較していかがですか

慶大さんは春と秋だと違うチームと思わされる程のチームづくりをしてくるので、きょうはすごく用心して試合に臨みました。

――リーグも前半戦が終了しました。収穫や反省面はいかがですか

最後まで気持ちを切らさないメンタル面の成長は少しできたかなという部分もありますが、メンバーが替わると途端にオフェンスもディフェンスもデプスの薄さを否めないので、これからどう再構築するかが1つポイントになりますね。キッキングはきょうも頑張ってやってくれたので、どんどん伸びてほしいと思います。

――リーグ後半戦へ向けて一言お願いします

これから対戦するチームは早大に勝てば関東の自力優勝が残っているので、一試合も気を緩めることはできません。一試合一試合いままで通りに次の立大戦に向けて、集中して戦っていきます。

DL斉川尚之主将(スポ4=東京・獨協)

――きょうはどのようなゲームスローガンで試合に臨まれましたか

きょうの試合は僕が決めた『SMASH』というスローガンでした。慶大戦というのはリーグ戦の一試合としても捉えられるんですけど、それ以上に特別な感情があるので、プレーで圧倒するということを目標としました。秋の慶大はとても完成度が高くて、毎年春の早慶戦とは違った試合になるので、丁寧なプレーでケイオーのガツガツくるプレーに対して戦うのではなく、絶対に負けないという強い気持ちで、真っ向から勝負して圧倒するという思いを込めて、このスローガンにしました。

――4年生として最後の早慶戦でしたが、何か特別な意気込みはありましたか

そうですね。慶大とやるのが最後ということで、自分の中では早慶戦は苦い思い出もあったので、最後、4年生として勝ちたいなという思いはありました。

――試合を振り返っていただいていかがでしたか

個人としては、試合中も喜んでいたのでわかると思うんですけど、サックできたのは嬉しかったです。でも、やはり試合の出だしの部分で足が動いていなかったり、パシュートがうまくできていなかったりという反省はありました。相手にFGを獲られたシリーズも、相手のスクリーンに対応できずにタックルミスを連発してロングゲインされた場面もあったので、振り返ってみると、及第点ではありますけど、ディフェンス全体としても個人としても課題の残る試合だったかなと思います。

――ディフェンスのロスタックルが目立ちました

この試合はスタンツを多く入れたりして、慶大のオフェンススキームを崩してやろうというのがDLのプランだったので、それがうまくハマったのが一番の理由かなと思います。

――試合会場、開始時間が急遽変更になりましたが何か影響はありましたか

僕個人としては富士通スタジアム川崎は好きで、逆にもともとやる予定だった夢の島陸上競技場の方が苦手なので、特にはなかったですね。

――この富士通スタジアム川崎では昨年、一昨年と敗北し苦い思いをされたと思うのですが、何か特別な思いはありましたか

きょうのゲーム前ハドルでも言ったんですけど、雨の試合、富士通スタジアム川崎ということで昨年の日大戦で負けた悔しさを思い出しました。そこはすごく全体としても意識していて、その嫌なイメージを払拭しようと臨みました。今週ずっと雨だったというのもあって、雨の日は日大戦を思い出してやっているので、マイナスなイメージというよりかはむしろ、悔しい思いをはね返すというイメージでチームとしてやれたかなと思います。

――きょうの試合、キッキングがとても良い出来でした

キッキングゲームが良くなっている一番の理由は、キッカーの髙坂ですね。FGで記録を作るくらいしっかりと決めてくれていて、パントも安定してかなりの飛距離が出ているので、やっぱり高坂が成長しているという部分は大きいです。キッカー以外の、カバーする人あったり、リターンのブロックする人であったりも、まだまだではあるんですけど、春と比べるとしつこさであったり、テクニックも上がっているのかなと思います。

――開幕3連勝ですが、チームの調子はいかがですか

ここで調子が良いと言ってしまうと成長が止まってしますし、きょうの試合でも課題はたくさん見つかりました。3勝したからといって甲子園ボウルに出れるわけではないですし、残り3戦ある中でそこをどう勝ち抜けるかっていうのを意識しながらやっていきたいので、3連勝というところに甘えたくはないですね。

――次戦、立大戦へ向けての意気込みをお願いします

立大は今のところリーグ戦1勝1敗というところなんですけど、去年と比べて色々なバリエーションの攻撃を展開していて厄介です。プレイヤー個人でも、RBやWRに関東のリーグを代表するような選手が揃っているので、そこをディフェンスとしてどう止めるか。オフェンスは立大のディフェンス陣が複雑なアサインメントで色々なことをやってくるので、余裕を持って勝てる相手ではないです。次の試合まで4週間ということで、他のチームよりも準備できる期間が長いので、立大をどれだけ意識して、どれだけ自分たちのプレーができるかということにフォーカスしながらやっていきたいなと思います。

WR遠藤健史(法4=東京・早大学院)

――4年生として最後の慶大戦、どのような意気込みで臨まれましたか

4年生としての早慶戦なので絶対に負けたくないという気持ちで挑みました。

――試合を振り返って

やはり、最後のフィニッシュの部分が甘かったと感じます。ドライブシュートや、オフェンスとしては最後のところをタッチダウンで終えたかったのですがFGとして終えたことは、反省点として残っています。

――先制のタッチダウンについて

練習通りのプレーができたのはあり、たまたま先制のタッチダウンが自分であっただけで、QBの柴崎が自分をチョイスしてくれて、それを捕ることが出来て良かったです。

――得点に繋がるドライブはパスでのゲインが目立ちましたが、ユニットとしての調子はいかがでしたか

悪くはないと思っていたのですが、日本一のユニットを目指すためにはまだまだ遠くもあり、パス精度のコミュニケーションのところなどもまだまだ甘くもあるので、これから4週間あるのでしっかりと詰めていきたいです。

――パス精度が日に日に上がっているように感じるのですが

上がっていると言えば確かに上がっていると感じます。要因としては純粋に練習量を増やしたところがあり、しっかりとQBとレシーバーのコミュニケーションを増やしたので、そこの部分は素直に良かったと思うのですが、重ね重ね日本一のユニットを目指す為には、試合が終わってより一層気を引き締めていきたいと思います。

――リーグ3連勝となりましたが、オフェンスユニットの調子としては、日本一を目指すためにはまだまだ足りていないですか

3連勝というところを見ると結果としてはいいと思うのですが、自分達としてはこの現状に満足することはないので、自分自身が今の現状に関して満足していないということを周りに波及してさらに成長していかないと、残りの3戦はもちろんのこと、関西の大学に勝つ為にはまだまだ足りていないので、これからより気を引き締めて頑張っていきたいと思います。

――次戦立教大戦への意気込みについて

自分達がやることは、アスリートとしては、ボールをひたすら捕って、より強いオフェンスを見せるためにも必死にこれまでの4シーズンを頑張ってきたので、自分たちの目標は日本一なので次の立教戦に勝つことはもちろんですが、その先の関西、関学大、立命大を見据えて、これからの4週間を頑張っていきたいと思います。

LB杉田直人(法3=東京・早大学院)

――早慶戦でしたが、どのような意気込みで臨まれましたか

やはり早慶戦ということでモチベーションがあったんですけれど、慶大は毎年秋になると化けてくるチームなので、油断しないようにプレーをしようと心がけていました。

――試合を振り返っていかがですか

やはりまだまだランディフェンスが自分の中で甘いと思っています。フィジカル負けしている部分があったので、フィジカルを強化して、1ヶ月間が空くので、体をしっかり鍛えて、立大戦ではランストップで活躍できるように頑張ります。

――何度もロスタックルをされていましたが、ご自身の調子はいかがですか

慶大のオフェンスとの相性が良かったかなというのがあって、ラッキーだったなと思います。

――この試合を通して、何か課題は見つかりましたか

全体的にOLに対する処理とか、ブロックへの処理とかができていないので、LBの根本となるファンダメンタルな部分を強化して、次の試合に臨みたいと思います。

―次の立大戦への意気込みをお願いします

立大戦では今までも結構、1年の時も2年の時も試合に出させてもらっています。RBの荒竹(悠大)がすごく良いので、荒竹を止められるように頑張りたいと思います。

K髙坂將太(創理2=東京・国立)

――秋の慶大戦どのような意気込みで臨まれましたか

慶大が相手だったので、雨の中でキッキングが重要になってくるというのは分かっていたのでチームに貢献できるようにという意識で臨みました。

――自陣深く攻め込まれている場面、大きく陣地を取り返す好パントの連続でしたが振り返っていかがですか

いつも通りやるだけなので良い形で決められて良かったです。

――50ヤードのFGも決められましたが振り返っていかがですか

自分としては決められるキョリだと思っていたのでいつも通りのキックでしっかりと決めることができて良かったです。

――6度中5度のFGを決められましたが、ご自身の出来としてはいかがでしたか

キッカーは決めるか決めないかだけなので今後はブロックされてしまったなどの反省を踏まえつつ100%決められるように頑張りたいです。

――キャッチングがゲームを左右する場面も増えてくると思いますが、最後に今後の意気込みをお願いします

チームが日本一になるのが目標なのでしっかりキッキングで貢献して日本一になれるように頑張り