巧みなキャッチングは見る者を魅了し、試合の流れを一瞬にして変える力を持つWR。年々競争が激化する捕球職人のユニットに、新たな息吹をもたらしたWR河波正樹(スポ2=カナダ・シアクァムセカンダリースクール)とWR小貫哲(教2=東京・戸山)の2年生コンビに、今春の振り返りやリーグ戦への意気込みを伺った。
※この取材は8月19日に行われたものです。
「相手を恐れずに死ぬ気で立ち向かって」(小貫)
リーグ戦での活躍が期待されるお二人
――春を振り返っていかがですか
河波 僕はスタメンに食い込むことができなかったということもあり、試合のスタートから出られる機会が少なかったですが、早慶戦ではパスを1本もらって、JV戦にも出ることができました。少しケガにも悩まされて立命大戦や関大戦には出場ができませんでしたが、自分の出られる試合ではそれなりに結果は残せたかなと思います。
小貫 僕は春シーズン通して自分の中では1番変化が大きかった半年間だと思っています。1年生の時は河波と違って、オフェンスのチームにも入っていない状態から始まって、周りの選手のケガなどの関係もあり自分がどんどん前に出られるようになり、1度もアウトせずに戦えたことは自分の中では大きかったです。それが自分の1つの自信になったかなと思います。
――春を踏まえてこの夏での強化ポイントは
河波 僕は下半身があまり強くなく平凡ぐらいだったので、下半身はアスリートとして大事な部分ということもあり、この夏で変えてみようと思いました。筋トレの期間では下半身を鍛えることに集中し、WRのカットなどのアジリティーの部分に関しても、この夏は意識して練習していました。
小貫 僕は春シーズンに結構試合に出させてもらって、パスを取るといった最低限の仕事はできたかなと思っていますが、やはり立命大戦での反省でもあった1対1での勝負やマンツーマンでの勝負で、気持ちよく勝てた経験が春にはあまりありませんでした。そこは自分の中でも悔しいポイントで、この夏の特に夏合宿ではブロックやマンツーマンといった1対1の場面で、相手をいかに圧倒するかを考えながら取り組んでいます。
――夏合宿での手応えなどはありましたか
河波 合宿ではいつもの練習とは全然違い、雰囲気でも体力的な面でも本当に辛くてしんどい練習でしたが、その中でも坂本オフェンスコーディネーターがずっと「しんどい時に成長できる」とおっしゃってくれて、しんどい中でもあともう1歩や、もう1センチ伸せばと意識を持ってできました。今年はBIG BEARS全体でスタートとフィニッシュをやり切ると言っていたのですが、最後までやり切ることを大きく感じる合宿になりました。
小貫 僕は合宿では反省が多かったです。合宿では色々なことを考えてやっていたのですが、マンツーマンではボコボコにされましたし、周りが成長していることもあるとは思いますが、自分自身うまくいかない部分が多くありました。それで自分のことしか見られないこともあり、プレーを最後までやり切ること点も自分の反省としてはできていなかったのではないかと少し感じます。自分の納得いくようにできなかったことが悔しいので、リーグ戦に向けて気持ちの面でそこは絶対につくっていこうと思います。
――プレーをするにあたって強く意識していることはありますか
河波 WRはすごく花形のポジションで、得点機会の多いポジションなのですが、上手な有名な選手は背が高くてBIG BEARSの中ではWRブレナン翼さん(国教3=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)や高地さん(駿太朗、先理4=神奈川・浅野)がいます。その選手たちに比べて僕はすごく小さくて、同期の中でも一番小さいと思うのですが、僕の武器はキャッチだと思うので絶対にイージーなパスは落とさないという気持ちを持っていますし、難しい球も捕ってやるんだという気持ちでプレーしています。
小貫 自分がいいプレーをしている時は相手を恐れずに死ぬ気で立ち向かっている時だと自分の経験上で思っていて、自分の強みを出せる時は気迫が出ている時で、気迫を出せればベストプレーができると思っています。なので、もっとクレイジーに、もっとハードにヒットもブロックもキャッチングもやって、リーグ戦でどんな相手が来ても、相手の実力や大きさに臆することなく立ち向かえさえすれば、自分は絶対に勝てると思います。僕も河波と同じでそんなに大きくはないので、そこでのアドバンテージはないんですけど、自分が振り切れられれば勝てると思います。
――その中でルーティーンやこだわりはありますか
河波 僕は試合の前でもいつも通りの生活をしています。自分は音楽が好きなので自分をパンプさせる音楽を聴いていますね。なるべく自然にいつも通りで過ごしています。結構洋楽、邦楽色々と聴いているんですけど、好きな曲はワンオクロックの努努という昔の曲で、自分を奮い立たしてくれる感じがして中学生の頃からよく聴いています。
小貫 僕そういうのは全くしないですね(笑)。ただ、試合のイメージは死ぬほどしていますね。それで眠れなくなることも結構あるんですけどね(笑)。あえて験担ぎはしなくて僕もいつも通りにしたい派で、ちょっと格好つけると自分の実力だけに頼りたいので、自然体でという感じですね。
「まだまだ頑張らないと」(河波)
大学でのフットボールを振り返る河波
――お2人が早大を選んだ動機は
河波 僕は自己推薦で入ったのですが留学をしていたという経験もあり、AO入試などでいい大学に行けたらいいなという考えがあって、関学大か早大に行こうかなと考えていました。もちろんアメフトをすることを考えて大学を選んでいたのですが、最終的に早大を選んだのは私立で日本のトップレベルの大学であることと、U19日本代表に選ばれた時に早大の選手の方に声を掛けていただいたのも早大を目指すきっかけになりました。
小貫 僕は高校の頃から大学でアメフトをやりたくて、一応高校は進学校でもあったので学力的にもいい大学に入りたいという気持ちはありました。自分の高校は秋までアメフトをやっていたので、その時の自分の実力を考えて私立でアメフトができて学力的なレベルも高くて、なおかつアメフトのレベルも高いということも考えて早大を目指しました。高校の時からも高岡監督(勝、平4人卒=静岡聖光学院)には戸山高に来て下さったこともあり、早大がいいなと思って受かっちゃった感じですね(笑)。
――高校時代で印象深い出来事などは
河波 僕は中学の頃にアメリカンフットボールに近いタッチフットを始めて、留学をすることになった時もアメフトのある高校に行きたいと思って選んだのですが、最初は全然英語が喋れませんでした。それでもそれなりにいい活躍ができて、高校時代はキャプテンをやらせてもらいました。チーム的にはあまりすごいところまで勝てなかったのですが、日本とは違うところでプレーできたことはすごく楽しかったですし、本当にいい思い出というか、言葉がそこまで通じなくてもスポーツを通じて一緒に楽しめたことはいい経験だったなと思います。
小貫 結構うちの高校は学院(早大学院高)と対戦することが多くて、代々引退試合が学院みたいなジンクスがありました(笑)。僕が1年生の秋の大会で、その時も結局学院に負けたんですけど0―70で負けてボコボコにされてしまいました。僕が引退した試合も学院だったんですけど、それも1点も取れないまま終わってしまい、自分が高校アメフトをやっていく中で、関東で優勝することを目標としていたので学院は指標となっていました。練習中から学院を意識していましたし選手も知っていたので、高校の時に強いと思っていた選手たちといま一緒にアメフトをやっているのは不思議な感じがします。高校時代から今までの5年弱を振り返って、感慨深く感じますね。
――大学に入ってから収穫や反省はありましたか
河波 僕は大学に入ってから反省ばっかりですね。中学では高槻という公式戦で負けたことがないくらいすごく強いチームでやっていて、カナダの高校でも主軸ではないですけどメインプレヤーとして試合に出場して日本代表にも選ばれて、「俺デキるやん(笑)」みたいな感じで大学に入って蓋を開けみたら、こんなにレベルが違うのかと思うくらい本当にハイレベルでした。出鼻をくじかれるではないですけど、自分はまだまだだったのだと感じました。今のレシーバー主任のWR遠藤さん(健史、法4=東京・早大学院)から色々と教えていただいたりしたんですけど、ずば抜けて上手くて大学のレベルの高さを痛感して、まだまだ頑張らないといけないなと大学に入ってから思い続けていることですね。
小貫 僕は勉強をしなくなっちゃったことですね(笑)。
一同 (笑)。
小貫 やっぱり勉強大事なので。秋学期からは勉強をしようと思います(笑)。
河波 そこかい(笑)。
小貫 あとは特にこの春に思ったことなんですけど、うちのチームは人も多くて規模も大きくて練習もそこそこしんどくて、ワセダで一杯一杯になりがちかなと思います。何が言いたいかというと、河波が言っていたようにチーム内でのレベルが高いと感じることもありますが、他校を自分の中で意識すべきかなと春シーズンに感じました。ワセダの中で強いところもあると思うんですけど弱いところもあって、ワセダで一杯一杯になっているとその弱いところに目を背けがちになってしまうのではないかと思います。関大戦もそうでしたけど、実際に試合をしてみると相手の体がかなり大きく、春にそういった経験を積んだ中からもっと視野を広くして、自分の敵はもちろんチーム内での競争もありますからチーム内にいるのもそうですけど、本当の敵は他にもっといる訳なので、そこを意識して自分をもっと高めていけたらなと思います。
――プレー以外の私生活の面ではいかがですか
河波 結構同期のポジションが仲が良くて、この前もレシーバーの同期と一緒に海に行きました。フィールド外では仲のいい友達ですね。
小貫 結構家にいることが多いですね。アニメ観たり、テレビ観たり、本読んだりしますね。でも家を出ないのは嫌いなので1日に1回は外の風を浴びる感じですね。レシーバーの集まりは結構行きますね。
「成長を止めない」(小貫)
丁寧に言葉を紡ぐ小貫
――一推しの後輩はいますか
小貫 WR田窪くん(大渡、政経1=東京・早大学院)ですね(笑)。
河波 だろうな(笑)。
小貫 なぜかというと僕を差し置いて、U19日本代表に受かったという逸材でもありますし、自分には無く得られようのないものを持っているので、うらやましいと思いますし、逆に自分が持てないものを託したくなる後輩ですね。
河波 僕は2人います。合宿で仲良くなったというのもあって1人はRB岡田(将典、人1=兵庫・滝川)なんですけど、最初見たときに「ふくらはぎデッカ」って思って、ふくらはぎって呼んでいた後輩なんですけど(笑)。よくよく聞いたら、関西で野球をしていたらしいのですが、野球をしていた体ではないですね(笑)。他にも90キロあるRBはいるんですけど、1年生で90キロあって走れるのはすごいと思いますね。ポテンシャルが高くてこれから伸びてきてくれるであろう存在ですね。もう1人はDB宮崎くん(恭輔、国教1=東京・早大学院)も最近仲良くなったんですけど、普通に面白いですね(笑)。免許証の写真がすごく面白くて、すごくキャラが濃くて、モノマネとかもするんですけど、それもめっちゃ面白くて、プレーでもめっちゃ上手いですし1年生の中では上手い方だと思います。合宿でのマンツーマンの練習では1度も負けなかったので、負かしにきて下さいと期待の意味を込めて、これから頑張ってほしいと思います。
――このリーグ戦でのキーマンは
河波 媚びを売る訳ではないんですけど、レシーバーの主任であって軸である遠藤さんですね。やはり日本でもトップと言っても過言ではないかなと思う選手ですし、BIG BEARSのパスユニットの支えと言いますか頭の部分の人なので、遠藤さんがどれだけ敵陣に攻め込めるかで、試合の展開も変わってくるんじゃないかなとすごく思うので、ああなりたいなという選手ですし、活躍してくれるであろう存在であると思います。
小貫 言っちゃっていいのかな(笑)。他校が見てこいつがキーマンなのか!ってならないかな(笑)。
河波 たしかに(笑)。
小貫 4年生のTE松岡さん(直希、政経4=東京・早大学院)ですね。本当にキーマンを考えた時に、松岡さんは春シーズンではなかなかケガで試合に出られなかったのもありますし、後輩が言うのもあれですけど合宿ではコンスタントにパスを捕って安定感があったので、春シーズンはTEは枚数が少なくて結構しんどかったと思うんですけど、そこに松岡さんが加わることによって、パスユニットにより厚みが増すのではないかと思います。あとは1年生がどう出てくるかがポイントだと思います。さっき言った田窪もそうですけど、リーグ戦のどこかしらで田窪も出てくる時が来ると思うので、そこでいきなりビッグプレーを起こすだとかで、ダークホース的な活躍を期待していますね。すごく1年生には期待しています。
――リーグ戦ではどのようにチームに貢献していきたいですか
河波 僕はまだちょっとスタメンと言える程のポジションではないんですけど、キッキングのチームではちょこちょこ出ていて、去年はスペシャルチームで秋リーグの慶大戦にも出させてもらいタックルとかもしてそれなりに結果は出せたかと思いますが、自分の本職はレシーバーなので今年のリーグ戦は、しっかりレシーバーとして結果が残せるようにと去年の秋シーズンが終わってからずっと考えていました。レシーバーとして試合に出て活躍することが1番の目標です。
小貫 自分の中では春シーズンはスタメンで試合に出ることもありましたけど、主力のケガなどによるもので自分の実力で勝ち取っていないと思っていて、まだ誰かの代わりかなと思っています。なので、誰かの代わりではないことを秋シーズンでは見せつけたいですね。それは自分のキャッチ力やアサイメントの理解という点で自分を成長させる意味合いもありますけど、それだけではなく自分にしかできないプレーをどんどん秋シーズンに向けてアピールしたいと考えています。僕はこの合宿を通してスペシャルチームで結構見いだしてもらえる機会がありKC(キックカバー)でメンバーに入れさせてもらっているんですけど、全力で相手に立ち向かって自分がダメになったとしても極端な言い方をすると代わりはいるので、死ぬ気で相手にブチ当たっていきたいと思っています。
――日本一へ向けての意気込みをお願いします
河波 僕はまだスタメンという位置につけていないというのが自分の中でも悔しく、同期の中でもスタメンの選手がいることはいい刺激にもなりますし、小貫と一緒にスタメンになることがベストですけど、抜きつ抜かれつの関係で日本一のレシーバーユニット、オフェンスユニットをつくって関東を制覇して、甲子園の舞台に立てたら僕はいいなと思っているので、去年はできなかったという悔しさを持って秋リーグに臨みたいと思います。
小貫 僕は成長を止めない秋シーズンにしたいと思っています。春シーズンよりもむしろ成長できる秋にしたいと思っていて、そのためには常に考えることを止めないというのもありますし、どうやったら強くなれるかを考えることを止めないというのもありますし、しんどいですけどウエイトもしっかりと続けることが必要だと思います。あとはいかに試合本番で自分がチームスローガンでもある『気魄』を出せるかに尽きると思うので、練習では成長して試合では『気魄』出して思いっ切りやって、チームの日本一に貢献できればと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 成瀬允)
リーグ戦への意気込みを力強く書いていただきました!
◆河波正樹(かわなみ・まさき)(※写真左)
1997(平9)年9月5日生まれ。165センチ。73キロ。AB型。カナダ・シアクァムセカンダリースクール出身。スポーツ科学部2年。WR。2年前に開催された第4回U19世界選手権で、高校生ながら日の丸を背負った河波選手。安定感抜群のキャッチングに注目です!
◆小貫哲(おぬき・てつ)(※写真右)
1999(平11)年1月20日生まれ。169センチ。O型。東京・戸山高出身。教育学部2年。WR。高校時代は主将としてチームを率いた小貫選手。高校でもWRで活躍されていたそうです!今春の経験を活かし、秋のリーグ戦では大暴れしてくれることでしょう!