【連載】『第66回早慶戦直前特集』【第5回】OL金子竜也×DL上田雄大×TE鎌田遼介

米式蹴球

 耐雪梅花麗。徹底的にフィジカルを鍛えスキルを磨き上げた男たち。冬の厳しい練習に耐え忍んだラインズだからこそ、その成果は必ずや早慶戦で実るはずだ。フィールドの最前線で戦い続けるOL金子竜也(法4=東京・早大学院)、DL上田雄大(人4=東京・明治学院)、TE鎌田遼介(法4=埼玉・早大本庄)の3人に、ラストイヤーとなる早慶戦へ向けてお話を伺った。

※この取材は3月30日に行われたものです。

「泥臭く」(鎌田)

更なる飛躍を誓う鎌田

――オフの期間に重点的に取り組んだことは

上田  DLユニットが1番重点を置いていたのは、フィジカルという面でその中でも特にスピードを付けるというところです。チームが始動してから走り込みに近い形でずっと走ってきていて、体を大きくしながらというのはすごく難しかったんですけど、大川コーチ(大川逹也)という新たなウエイトコーチの指導の下、ウエイトをしつつ体を大きくしながら動ける体をつくることにフォーカスしてやってきました。

鎌田  TEはランとパス両方やらないといけなくて、きょねんはTEだけでパート練習をしていたのですが、今年はランブロックのOLとWRに混ざることを意識して、いいところを盗むような形で一緒に練習をして、両方の技術アップに努めました。

金子  OLユニットはきょねんから就任した菅野コーチ(菅野英明)が教えてくださるスキームやスキルを全員で取り組んでしっかりと体に覚え込ませるというのを、FBやTEを巻き込んでやっていました。

――昨季を踏まえて今ユニットに求められている力は

上田  DLは今まではディフェンスの一部のポジションという立ち位置で駒みたいな感じでやってきていたんですけど、今年からはDLからもどんどんボールに絡もうということで、新しいコーチも来てくださって、DLがディフェンスの中で主役としてロスを破壊して、全部プレーを止めるくらいの気合いでやっています。

鎌田  TEユニットは昨年パスニットでの貢献が少なかったので、今年はレシーバーとしても貢献したいというのと、ランブロックもきょねんはTEに田島さん(広大、平29法卒=東京・早大学院)という強い方がいたんですけど、今年は田島さんのような大きい方がいない中で、小さいながらもハードにブロックしていくことを意識して練習しています。

金子  OLユニットは昨季の中大戦、日大戦でチームが苦しくなってしまったのはランが出せなかったのが1つの要因だと思っていて、そこを改善するためにオフの期間に基礎練習などを積んできましたし、主力の敬太さん(鈴木、平29法卒=東京・早大学院)や稲葉さん(玲央、平29法卒=東京・早大学院)が抜けた中で下級生から上級生まで本当に1つになってやっていくことを意識しています。

――きょねんの4年生が抜けた穴は感じますか

金子  最近は本当に下級生が頑張ってくれていて、実際に冬にやっていたことが、普段のユニットの練習でしっかりと活かされているシーンは見受けられるので、もちろん抜けた穴はあると思うんですけど、しっかりとそこを埋められるような成長はある程度出来ているのではないかと思います。

――各ユニットで成長著しい選手はいますか

鎌田  TEはかなり人数が少なくなってしまったんですけど、高校の時にも活躍していた選手で1つ年下のTE杉山(遼平、基理3=東京・早大学院)は、ランもブロックも強くて僕と彼がずっとケガをせずにやっているので、いい選手だと思います。

上田  DLは4年生の中でもDL吉田(開、国教4=大阪・早稲田摂陵)とDL古賀(彬、基理4=埼玉・早大本庄)はデプスにどんどん食い込むように全員が絡むようになってきて、すごくいい競争環境が生まれているなと感じています。下の学年を見てみるとDL箕輪(京介、社3=東京・早大学院)、DL古田(泰一、法3=東京・早大学院)、DL二村(康介、文構3=東京・獨協)とかに期待です。箕輪と古田は高校時代からアメフトをやっていてノウハウと知識はあるので、今までは高校で学んだことを活かしてという形だったんですけど、2人とも特にウエイトトレーニングを頑張っていてすごく伸びるんじゃないかなと感じています。二村は未経験選手でありながら、すごくいいものを持っていてDLとしてもいいものを持っていますし、フィールド外の面でも人間として尊敬できるくらいの出来上がっている人間なので、彼はこれから伸びていくと思います。

金子  OLはケガなどでなかなか人数が揃わない中で、1つ下のOL松林(太毅、法3=東京・早大学院)、OL広瀬(直紀、法3=東京・早大学院)、OL五味(隼一、法3=東京・早大学院)あたりがこの期間しっかりやってくれていたかなと思っていて、もちろんOL香取(大勇、スポ3=東京・佼成学園)という存在は言わずもがなという感じなんですけど、個人的にはきょねんの秋シーズン後半に五味が隣で一緒にやっていて今年は期待したいです。2つ下だったらOL廣畑(海斗、政経2=東京・早大学院)とは冬のパートを一緒にやっていたんですけど、しっかりと教えていた部分が出来るようになってきて自主練をしているのも見ているので頑張ってほしいなと思います。

上田  たまちゃんも良くね。フィジカルが強くなったと思う。OL玉嶋(友彦、スポ2=東京・西)っていうやつがいるんですけど、この冬が明けてOLとDLが当たった時にすごい成長を感じました。廣畑もそうですけど。

――理想となる選手像は

鎌田  僕はずっとお世話になっていた田島さんです。自分はランブロックが課題なんですけど、本当に田島さんはOLの中でも強いくらいのランブロックをしていて、目指すべきところだと思います。

金子  OLは本当に僕が入部した頃の3、4年生に学生フットボールの中でトップレベルの先輩方がたくさんいて、特に主将だった松原さん(寛志、平28法卒=東京・早大学院)という方は本当にファンダメンタルにおいても高いレベルで完璧なものを持っていて、正直自分がそこまでいけるのか、というのはありますけど、常にビデオなどで研究をして目指す姿としてあります。

上田  僕は3つ年上の庭田さん(和幸、平27創理卒=東京・早大学院)、村橋さん(洋祐、平27スポ卒=大阪・豊中)と、小宮山さん(泰隆、平27教卒=東京・早大学院)、志文さん(ロー、平27社=東京・早大学院)の4人のプレースタイルをビデオで研究して吸収しようとしています。この4人の方はここ数年で見てもレベルが飛び抜けて高くて、本当にお手本になるところが多くて自分はまだそのレベルに全然到達出来ていないんですけど、そこを目指して細かいところから真似をしてプレーのレベルを上げようと頑張っています。

――プレーする上で常に意識されていることは

上田  適度にふざけることです。試合とかでもここで決まるというシーンでもある程度リラックスするというのが、DLユニット全体としてあって試合だとそれがプラスに働いているので、そこは継続していきたいと思います。

金子  僕はもちろん本当に思い切りやることは大事だし意識はしているんですけど、それ以上に常に考えてプレーをしています。ただただがむしゃらにやっていればいい訳ではないと意識しています。

鎌田  僕は昨年の課題で接点というのがすごくあって、上手くやろうとし過ぎて泥臭さがなかったので、今年は泥臭く接点を強くしていきたいと思います。

「妥協しない」(上田)

今季DL主任を務める上田

――今後どのようなユニットをつくりたいですか

鎌田  TEはすごく人数が少ないポジションなので、毎年仲がいいんですけど今年は学年に関係なくお互いが上手くなるような指摘を言い合える雰囲気づくりに取り組んでいて、僕が新2年生に指摘を求めたりもしますし、風通しの良い互いに上達できる環境をつくろうとしています。

金子  OLユニットは僕も含めて松原さんのような実力を持った選手はいないので、要所要所で空気を締める存在が自分であることは意識しているのですが、しっかりと下級生が伸び伸びとプレーをしてユニットが1つになっていけるように、同じく風通しの良さを意識してやっていきたいと思います。

上田  DLも風通しの良さは大事にしていて、きょねんのDL主任であった仲田さん(遼、平29政経卒=東京・早大学院)という方は、自らが体を張っていじられ役に回ったり、ポジションの空気を良くしてくださっていました(笑)。下級生としてもやりやすかったですし、自分たちが成長出来たという感覚もあったので、そういう環境は継続して後輩たちにもそういった環境を与えてあげたいと思います。

――最高学年になられて変化はありましたか

鎌田  オフェンスは4年生でよくミーティングをするので、そういった話を定期的にしているので4年生としてどうあるべきなのかを話している中で、やはり4年生のチームなのだということで下級生に見られていると感じると同時に、見られている意識をしないといけないと思います。その中で自分の行動は以前よりも気をつけますし、4年生なので人よりも1番やらなきゃという意識はあります。

上田  DLも見られているという意識はしているんですけど、その中でも1年生の時の気持ちを忘れないようにしています。自分が成長するためにもがむしゃらにやっていた時代ですとか、初心を忘れないようにして妥協しないでやっていくという感じです。

――斉川主将の印象は

上田  チームの前に立ってみんなから見ると、たぶん恐いとか徹底するとかのイメージに他のポジションの下級生とかはなっているかと思うんですけど、DLでパート練習をしている時はそんなことはなくて、素のヤツが出てきます(笑)。実は心の優しいただの大学生です。

鎌田  下級生からは本当に鬼みたいになってるよな。めっちゃビビられてるけど、チームのことを思ってその役を買って出てくれていて、1年生の頃から誰よりも努力してますし、普段は優しいよな。なんでこんな褒めてるんだろ(笑)。

上田  根は真面目だよな。根はド真面目です。

金子  やっぱり普通の人が持っていないリーダーシップというのは間違いなくあると思います。グラウンドにいるだけで空気が締まるというか。

鎌田  オーラが主将だよね。

――多くの試合が控える春に試したいことや目標は

鎌田  僕は2人と違ってきょねん田島さんという絶対的な存在の方がいて、試合の経験も少ないので今年は試合を通して色々と学びたいなと思いますし、自分はキッカーもやっているのでTEとKの両方で一本目でチームに貢献したいと思います。

金子  春は自分の成長にフォーカス出来る期間だと思うので、試合をやっていく中で自分が4年としてさらに成長出来るように、常に攻めたプレーをしていきたいと思います。

上田  僕は春シーズン終了まで生き残るというのを目標にしています。アウトすると実力は落ちますし、練習出来る期間も限られているのでとても痛手なります。何にしろ大前提として絶対にアウトしないことを意識して、目標と言うと大げさですけど監督さんも「無事是名馬」とおっしゃっているので、それを意識して無事で名馬になろうと思います。

――試合前のルーティーンなどはありますか

鎌田  僕は高校でラグビーをやっていたんですけど、その時から絶対に前日の夜はパスタを食べています。意味があるかは分からないですけど(笑)。

金子  OLは前に試合前パイン飴食べてた(笑)。

上田  いつも通りです。普段通りを変えない。これが大事だと思います。

鎌田  これ結構人によるよな。ずっと音楽聴いてるやつもいるし。わざとみたいにヘッドホン被ったりして(笑)。

金子  僕もいつも通りですかね。普段と同じビフォアーなどをやって、いつも通りであること意識しています。

「粘り強いドライブ」(金子)

OLユニットを率いる金子

――早慶戦でワセダのキーマンだと思う選手は

鎌田  俺はオフェンスの伊織(RB元山、商4=大阪・豊中)とRB片岡(遼也、法4=東京・早大学院)です。特に伊織はオフェンスリーダーになって、誰よりもチームのことを考えているなと普段から見てて思っていて、いま中村多聞コーチの下で色々と新しいことをやっているので、きょねんの活躍と同様に今年も走ってくれたらなと思います。

金子  きょねん苦しい試合があったのはランが出せなかったというのがあるので、この冬に伊織を中心にしっかりとランに関して詰めてきたと思うので、それがしっかりと発揮出来ればと思います。

上田  キーマンはLB中村匠(人4=大阪・豊中)、LB関本岳(社4=東京・早大学院)、LB池田直人(法3=東京・早大学院)の3人だと思います。アメフトの雑誌にも取り上げられ、三銃士と呼ばれるくらいこの3人は注目されているので期待です。

――慶大の印象は

金子  流れに乗せちゃうと恐いです。勢いがすごいので。最初から自分たちのペースでやっていく、ペースを持っていくオフェンスをしないといけないと思います。

鎌田  入部してからモメンタムを持っていかれるとヤバいとずっと言われてるもんな。

――その中で注意すべき選手やユニットなどは

上田  きょねん慶大はリーグの下の方で終わっちゃっていたんですけど、OLの実力は全然そんなことはなくて、当たったチームの中で一番強かったくらいのフィジカルでした。きょねんの4年生がごっそり抜けちゃうかと思うんですけど後釜もすごく大きいと思うので、気持ちから負けずに戦いたいと思います。

金子  僕はきょねんの秋に、DLの並木くん(琢朗)にちょっとやられてしまった部分があるので、リベンジという意味でも彼を意識してしっかり取り組んでいきたいと思います。

鎌田  LBの中野航平くんはビデオを見ていても速くて強いイメージがあるので、中野くんを警戒しています。

――早慶戦で思い描く戦い方は

上田  QBサックをしたいです。DLの主任にはサックが出来ない呪いがあって、それを今年打ち破りたいなと思っているので、早慶戦は目立つのでサックを量産したいです。

鎌田  自分の強みはボールを取った後のランだと思っているので、早慶戦という舞台でそういったプレーが出来たらいいなと思います。

金子  きょねんの春の早慶戦で3Qで全部のプレーをランで押し切ってTDを取ったので、勝負所での粘り強いドライブっていうのをOLがつくり出せたらいいかなと思います。

――最後の春の早慶戦への意気込みをお願いします

鎌田  自分たちの代で早慶戦に勝たないと一生言われ続けてしまうと思いますし、お客さんもいっぱい入って注目される試合で、春までにやってきたことが試されて4年としても特別な試合なので、みんな勝ちたいと思いますし僕も勝ちたいです。

上田  僕はワセダプライドというものが芽生え始めていると実感しているので、慶大さんは強くて手強いですけど、プライドにかけて負けられない試合だと思います。

金子  僕は高校が早大学院でボート部だったんですけど、その時からライバルで他の人よりも慶大に負けたくない気持ちは強いと思うので、その気持ちを前面に出して頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 成瀬允)

意気込みを力強く書いていただきました!

◆金子竜也(かねこ・たつや)(※写真左)

1997(平8)年2月11日生まれ。177センチ、101キロ。東京・早大学院高出身。法学部4年。OL。OLユニットをけん引する金子選手。高校時代はボート部に所属していたそうですが、大学では心機一転してBIG BEARSに入部。強烈なブロッキングが生み出すドライブで、チームを勝利に導いてくれるでしょう!

◆上田雄大(うえだ・ゆうた)(※写真中央)

1996(平8)年9月13日生まれ。179センチ、90キロ。東京・明治学院高出身。人間科学部4年。DL。おととしLBからDLにコンバートし、その才能を開花させた上田選手。持ち前の明るさで対談を盛り上げてくださいました!早慶戦ではQBサックを狙う激しいラッシュに注目です!

◆鎌田遼介(かまだ・りょうすけ)(※写真右)

1996(平8)年4月21日生まれ。177センチ、90キロ。埼玉・早大本庄高出身。法学部4年。TE。今季からTE主任を務める鎌田選手。大学入学を機にラガーマンからフットボーラーへと転身。今季は泥臭くアグレッシブなプレーを連発してくれるでしょう!