『日本一』を掲げるチームに欠かせない存在の2人がいる。今季オフェンスの中核を担うRB元山伊織(商4=大阪・豊中)と、副将を務めながらディフェンスを統率するLB中村匠(人4=大阪・豊中)だ。インテリジェンスの高さもさることながら、アグレッシブなプレーの数々に思わず目を奪われる。最高学年として迎える春の早慶戦への意気込みを伺った。
※この取材は3月25日に行われたものです。
「気持ちで勝負」(元山)
オフェンス陣について語る元山
――昨シーズンを振り返っていかがですか
元山 昨シーズンに関しては、僕オフェンスでランユニットリーダー務めさせていただいて、春シーズン、早慶戦含めてイリノイ戦以外は勝つ試合が多くて、日本の大学とやる一軍の試合は全勝して、それで少し浮ついてしまったというか、調子に乗ってしまったというか、そのまま秋シーズンに入って、日体大、明大と続いていったんですけど。特にオフェンスは結構苦戦する試合が多くて、春シーズン調子に乗ったまま、秋シーズンを迎えてしまったので、結果的には日大戦もオフェンスが得点できなくて負けてしまって。今年は、引き締めてシーズンを迎えたいと思います。
中村 僕はきょねん1年間スターターとして試合出てて、きょねん1年のディフェンスは結構完成度高くて、国内最強クラスやと思っていたんですけど、それでもオフェンスが点取れない時に助けるくらいじゃないとディフェンスって存在価値がないと思うので、ディフェンスだから守ればいいというのではなくて、ボールを奪うというのが、きょねん以上にやらないといけないと思うので、ボールに執着することでターンオーバーを狙うディフェンスを作ることを意識してます。
――昨シーズンから強化した面はありますか
元山 オフェンスに関しては、昨シーズン多様なアサイメントを使用して、アサイメントで勝つという発想だったんですけど、今年に関してはプレーも結構絞って練習量も大幅に増やして、ベースのプレーというのを全員が理解して、無意識に一歩が出るくらい体に覚え込ませて今練習してます。きょねんと変わったのは練習量と、策に頼らず、個人の力で相手を圧倒できるチームにしようとしています。
中村 ディフェンスはシーズン中に入ったら出来ないような細かい所や初歩的な所を重視して、1対1で勝てたら絶対相手を止められると思うので、そういうファンダメンタルにこだわった練習をしています。
――今シーズンは元山さんがオフェンスリーダー、中村さんがディフェンスリーダーということですが、どういった経緯で決まりましたか
元山 流れですかね(笑)。僕の場合は一応立候補して、新しく来ていただいたオフェンスコーディネーターの方と話して、僕が就任させていただくことになりました。
中村 ディフェンスも本当に流れで、きょねんのスターターで出てたLBが僕だったので、流れで決まりました。
――オフェンス、ディフェンスそれぞれをまとめる上で難しさなどはありますか
元山 ありますね。僕と中村は、リーダーシップが対照的だと言われてて、僕はどっちかっていうと感情的になるタイプで先頭に立って鼓舞するような感じなんですけど、中村はクールに裏で支配するというか、コントロールする感じで対照的な感じです。僕は、ハートとか気持ち的な所が取り柄やと思うので、そういった面で頑張っているんですけど、時に感情的になりすぎる所があるので、そこが難しい所ですね(笑)。今は4年生でチームを引っ張っていこうという流れあるんですけど、まだまだ4年に主体性がないので、全員の主体性というのを引き出していこうと僕がミーティングを開いています。そういう取り組みが実れば良いと思います。
中村 ディフェンスは、オフェンスに比べて自由度が高いので個性を持っている選手は、絶対にそこを伸ばさないとダメですし、だからと言って他をおろそかにしてはいけないので、個人に任せる部分と、組織として上から仕切る部分っていうのが難しいと思います。あと、モチーベーションの差が上と下であるので、いかに下級生を4年と同じくらいの熱量でプレーさせるかっていうのは、僕らがどれくらい真剣に取り組むかで勝ちが決まると思うので、4年が基礎的な所から真剣に取り組むようにしています。
――チームはかなり大所帯で、伝えるという面では何か難しさありますか
中村 幹部とかが隅々まで全部見るというのは不可能だと思うのでポジションのパートリーダーが、僕らと同等の意識だったり姿勢だったりでまとめてもらって、そのパートの考えだったりを集約しているので、僕らだけがやるんじゃなくて、主任クラスの人間が頑張ってくれているので、今のところ全体の把握っていうのは問題なく出来ています。
元山 オフェンスに関しても、リーダー1人ではまとめられないので、至った結論としては、4年全員がリーダーシップを持って力出して、下級生に対して責任感を持ったら良いんじゃないかということです。各学年に、明確な教育係を作って、僕が逐一オフェンスのメンバーに指摘するよりも、かなり効率の良い運営が出来ると思うので、それがうまくいけば問題なく伝達ができるんじゃないかと思います。
――フットボーラーとしての心得は何かありますか
中村 とりあえず、いかにビックプレーを起こせるかですかね。ディフェンスは流れを持ってこられる場面が、インターセプトとか、ファンブルリカバーとか、サックとかたくさんあるので、流れを生み出すプレーをするには相手校のスカウティングやアサイメントの理解が必要で、それで頭をクリアにして思いっ切り戦うところに重きを置いています。
元山 僕は、才能があったり、身体能力が高かったりっていうよりは、気持ちで勝負しているタイプだと思うので、相手に対して常に気持ちで負けないっていうのは思っています。あと、RBのポジションは一番目立つと思っていて、RBが活躍すればチームは絶対勝てると思うので、もちろんオフェンスリーダーとしてみんなが活躍出来ればとも思うんですが、自分が一番活躍してたくさんタッチダウンして勝ちたい、自分が一番活躍する、目立つという気持ちは忘れずにやりたいと思います
――目標とする選手はいらっしゃいますか
元山 NFLでは、カレッジ時代から好きな選手で、ダラス・カウボーイズに所属してるエゼキエル・エリオットっていう選手がいるんですけど、プレースタイルを目標としていて迷わず走るっていうところが、かっこいいです。パスキャッチも出来てプロテクションも出来るすごく器用な選手なので、プレー面では目標としてて飯の間とかも動画とかすごく見てて、見るだけじゃなくてステップの出し方とかタイミングとか細かいところまで真似るようにしてます。RBコーチの中村多聞さんっていう強烈なコーチがいるんですけど、日本で最もNFLに近かったRBで、プレーヤーとしてもすごいんですけど、それと同じくらい精神面でも尊敬できて、多聞さんくらい相手に負けないという気持ちとずる賢さと度胸があれば甲子園でも活躍出来ると思うので目指していきたいと思います。
中村 僕は、先輩のケビンさん(コグラン、平27商卒=東京・早大学院)と加藤さん(樹、平28商卒=東京・早大学院)ですかね。あの人たちがケガしたりアウトしてたりしたら、甲子園には行けてなかったと思うので、なくてはならない存在で。その人たちに頼るだけの組織じゃダメなんですけど、それをも超越したような絶対的存在になれたら良いなと思います。この一年、最後にそうなれたら良いなと思います。
――チームの一推し選手はどなたですか
中村 LB杉田(直人、法3=東京・早大学院)とLB橘(風雅、教2=大阪・豊中)ですね。杉田はもともとクレーバーなプレーをする選手で、最近そこにテクニックとかフィジカルも備わってきて、もうそろそろ一人前のLBになれるかなという感じです。橘は僕らと同じ豊中高校の後輩で、豊中高校には大学レベルのアメフトの知識とかはなく、逆に言ったらどんどん吸収できる存在なので、この一年ディフェンスの知識を吸収して、それがようやく実を結んできてるかなという感じです。
元山 そうですね、OLの方からいうとOL金子(竜也、法4=東京・早大学院)とOL香取(大勇、スポ3=東京・佼成学園)ですかね。金子は僕と同期で未経験で入ってきた選手なので、結構苦労人というか、下級生の頃は未経験ということで下積み期間を経験していて、3年からようやくスタメンになって、辛いことがあっても常にフィールドに立ち続ける選手で、口で引っ張っていくタイプではないんですけど、背中で示すタイプのリーダーで今年もOL主任で頑張ってくれると思います。香取に関しては、1年の頃から甲子園ボウルに出場するような才能のある選手なので、気分の上がり下りがあるんですけど、彼が一皮むけて良い選手になれば、オフェンスは良くなると期待しています。あとFBのRB高瀬(滉平、政経3=東京・早大学院)とRB永木(元大、社3=東京・早大学院)という選手ですね。僕らはプレーハードっていうスローガンを掲げていて、オフェンスを盛り上げるようなハードヒットを見せてくれるので、早慶戦でも観客を沸かせてくれたら良いかなと思います。
――斉川選手が主将となられましたが、印象はいかがですか
中村 オンオフの切り替えができる選手なので、フィールド外では誰よりもふざけているんですけど、一旦フィールドに入ったら、誰よりも自分に厳しくすることで他の人に厳しく出来ているんで、威厳もあってって感じですね。
元山 器用なタイプではないんですけど、建前でものを喋らないやつなんで、言葉がすごく心に刺さってきます。あとは綺麗事言わないやつで、クリーンなチームっていうのがワセダのスタイルなんですけど、いい意味であいつはそういうのにとらわれなというか、思うことをそのままぶつけてくれるので、心に響きます。あとは、日大であったり、関西の大学であったり、勝たなくてはならない相手を常に意識してるので、すごく良いキャプテンだと思います。
――春の試合での目標をお願いします
元山 オフェンスとしては、個人の力で勝つことを重視したいです。個人としては自分が一番活躍して目立ちたいです。
中村 ディフェンスは、基礎的な力を上げる期間として、勝ちにはこだわるんですけど、組織として、秋を見据えて成長するっていうところですかね。個人としては、めちゃくちゃ他校にスカウティングされるような選手になりたいです。
「豊中高校の名を全国に」(中村)
早慶戦への思いを語る中村
――早慶戦のキーマンはどなたですか
中村 僕的には、DL上田(雄大、人4=東京・明治学院)ですね。2年生までは僕と上田2人でやっていて、DLにコンバートしてからこの1年でDLとしてどんどん完成してそろそろ斉川と並んで目立っても良いんじゃないかなと思いますね。早慶戦から大活躍してくれることを願いますね。
元山 WRブレナン(翼、国教3=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)ですね。彼は本当に圧倒的エースで苦しい時に流れを引き寄せてくれる選手だったので、今年も圧倒的に活躍してもらってね。自分より目立たれるとアレなんですけど(笑)。オフェンスリーダーなので後輩の活躍を願っています(笑)。
――早慶戦ではどのようにチームに貢献していきたいですか
元山 きょねんの春の早慶戦は僕が初めて正式にスタメンで出た試合なんですけど、その第3QでRB片岡(遼也、法4=東京・早大学院)とランだけで80ヤードドライブして、TDを決めたシーンがあったんですけど、今年もあんぐらいランで圧倒して、慶大をボコボコにしたいと思います。パスでも柴崎くんがバンバン通してくれると思うので、パスユニットにも期待してランパス共に圧倒したいと思います。
中村 僕を含めディフェンス全体として、無失点で完封したいと思います。それが出来るポテンシャルは僕らにあると思うので、秋に日本一になるためにもここで点を取られる訳にもいかないので、早慶戦から完封でいきたいと思います。
――慶大の印象は
元山 慶大のディフェンスは思い切りがいいというのが例年の印象なんですけど、その中でも下級生の頃から試合に出ているLB中野航平選手はパワーもあって、オフェンスとしては嫌な選手なのでキーマンとなるのは彼だと思います。
中村 ディフェンス目線で言えば、きょねんのOLのほとんどが4年生で今年ガラッとメンバーが替わり、どのようにOLがこの期間で完成されているのかが全く分からないので、そこが1番不気味なところではありますね。
――最後の春の早慶戦への意気込みをお願いします
中村 オフェンスは点を取りまくってディフェンスは完封して、豊中高校の名を全国に轟(とどろ)かせたいです
元山 オフェンスでもディフェンスでも圧倒して、そのリーダーが豊中高校出身ということで、2人とも目立った活躍をして豊中高校すごいぞと思わせたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 成瀬允、藤田さくら)
力強く意気込みを書いていただきました!
◆元山伊織(もとやま・いおり)(※写真左)
1997(平9)年1月25日生まれ。172センチ、82キロ。大阪・豊中高出身。商学部4年。RB。2016年Uー19日本代表で主将を務め、オーストラリア戦では2TDを決めた経験を持つ元山選手。早慶戦では、代表時にチームメイトとして共に戦ったLB平岡峻(慶大)との対決にも目が離せません!
◆中村匠(なかむら・たくみ)(※写真右)
1996(平8)年4月16日生まれ。175センチ、83キロ。大阪・豊中高出身。人間科学部4年。LB。元山選手と中村選手の母校である豊中高校は、高校フットボール発祥の地として知られており、高校の中庭にはその石碑があるなど長い歴史を持つ伝統校です!ロードランナーズ(豊中高チーム名)OBが、早慶戦で旋風を巻き起こしてくれることでしょう!