1991年5月17日に東京ドームで開催された第39回早慶対校戦。当時早大を率いる主将を務めた高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)。そして時を同じくして慶大の主将を務めた選手は、現在UNICORNSで指揮を執る久保田雅一郎監督だ。およそ26年の時を経て、再び決戦の時を迎えた昨年の早慶戦は早大に軍配が上がった。今年は一体どのような結末を迎えるのか。一瞬たりとも目が離せない伝統の一戦を前に、その胸の内を伺った。
※この取材は3月25日に行われたものです。
「絶対に負けたくない」
監督として2度目の春を迎えた高岡監督
――就任1年目となった昨シーズンを振り返っていかがですか
昨シーズンはコーチから監督になったということで、色々な大学との関わり方や父母会との関わり方、特に外部との関わり方で今までのコーチ時代とは違った面は多くありましたし、選手が私の意思決定で動くという責任感があるという意味で、1つ1つ新しく決めていくこと、どうチームを導いていくかというところで1年目は自分なりにこれが正しいと思ってやっていったものの、結果が全てを物語るのでやはり足りない部分があった1年目でした。
――選手とのコミュニケーションで意識されたことはありましたか
1人1人どうコミュニケーションを取っていくかということで、きょねんは2回シーズン前と秋リーグの前にメールでレポートを課して、そのレポートを読んで返すということやって意思疎通を自分なりに図ろうと思ったんですけれども、やはり日頃から色々な声かけをしてきたつもりではあったのですが、反省点として1人1人時間を取って話すことが大事ということを感じ1人ずつ面談をしています。
――昨シーズンの反省を踏まえて今年のチームづくりに生かしたい部分はありますか
私は組織的に動かさないとこれだけの選手、スタッフは動かないと考えていますので今までの濱部さん(昇前監督、昭62教卒=東京・早大学院)、朝倉さん(孝雄元監督、平3商卒=東京・早大学院)時代というのは監督とヘッドコーチを1人で、さらにはコーディネーターも兼ねているということで、カリスマ的な監督がチームをリードする体制だったのかなと思うのですが、私はそこまで自分自身に力がないと思っているので、どうやって組織運営をしていくのかを主眼に置いてやっています。就任1年目ではそういった形でチームの土台をヘッドコーチと共に作っていたんですけども、今年はさらに細かな学生へのサポートができるようにコーチ陣の強化しているところです。
――オフシーズンの間で強化した点は
きょねんはリーグ戦で終わってしまいましたので、そこからすぐに新チームに切り替えて、試合にあまり出ていなかった特に若い世代のメンバーを中心に試合を組むことと、きょねんの反省としてとにかく走り負けない体力と当りの強さ激しさというのをどう求めていくか。幸いにして人数も多くて競争も激しいので、きょねんはどちらかというとケガを恐れてコンディショニングをうまく作ってという方向性でしたが、今年はとにかくきょねんよりも春シーズンに試合を増やしますし、1つ1つのポジション争いというのも強化するような取り組みをきょねん負けた瞬間からやり始めています。
――大人数の組織の強みは
人数が多いところをどう利点にしていくか。私も長年コーチとして携わっていて、ワセダのアメフトはスポーツ推薦がほとんどないのでそれぞれの選手が育つのに非常に時間がかかるのですが、その時間をかけられるという部分と、母体が大きいので昔よりも競争意識が激しくなっていることと、フットボール経験者の比率も上がってきているので、色々な意味で人数が多いというのは利点と捉えてやっています。人数が多すぎて練習が出来ないという課題もあったのですが、それをどう効率的にやるかというのを今年色々と考えて取り組んでいます。
――春シーズンには多くの試合が予定されていますが
デプスをしっかりと明らかにして、きょねんまではユニフォームをある程度、誰でも着られて、ダブル番号でもいいです。というやり方だったのですが、今年の秋シーズンからはダブル番号を廃止すると明言しているので、どう番号を奪取するか、この春に取り組んでもらいたいと思います。
――今年から新入生の入部方式が変化した経緯は
今までは元々アメフトにあまり関心がない人にも入部を勧めていたのですが、これだけ人数が増えてきて練習の効率等も考えなくてはならなくなった時に、本当にやりたいメンバーというのをどう見つけてくるかという点で、今年からはBIG BEARSに入りたいという意志を持ってクラブの門を叩いてくれる選手、スタッフに説明をして仮入部をしてもらって、強い意志を持ったメンバーだけがBIG BEARSの部員になってもらいたいと思います。
――フットボーラーとして心得てほしい点はありますか
1月のスタート時期に部員全員に伝えたこととイコールだと思いますし、入部説明会でも言っていることは、部員として、ワセダのアスリートとしてどう生きるのかと。それは単にフットボール好きだからという訳ではなくて、フットボールとしても一流になってほしいし、ワセダの卒業生として一流になってもらいたいということで、アスリートプログラムというのもそうですけどもワセダの建学の精神に立ちかえって、どのようなグローバルリーダーになるのかという部分を持って入ってもらいたいです。4年、3年、2年、1年それぞれの学年において役割は違ってくるので、将来リーダーシップをとれる人間を目指してほしいと思います。
――今季はどのように主将を決められましたか
今年から主将の選考の方式を変えました。チームを率いるのは4年生ということで、4年生の中で話をしっかりしてもらってその中から主将候補を挙げて来いと。そういった形でDL斉川(尚之、スポ4=東京・獨協)が選ばれて、斉川を選んだ経緯を4年生に聞き、また斉川自身とも話をして彼にキャプテンをやってもらうということで任命しました。
――斉川主将の印象はいかがですか
彼のいい部分はすごくフットボールに対しては真面目に勝ちたいという気持ちを前面に出すところです。まだまだ色々な面で成長してもらいたい部分もあるのだけども、4年生が勝つためには斉川が必要だということで、チームの魂として頑張ってもらいたいところです。
――監督さんが選手時代の早慶戦で思い出などはありますか
実は私の時は早慶戦で大学1年生の時に1回勝って、後は全部負けています。やはり早慶戦というのは負けてはいけない試合なので、そのために全力を挙げてどう勝つのかを考えなければならないですし、慶大さんも部員が多くて高校も強くてコーチングスタッフも非常に整っていて、我々にないものをいっぱい持っているチームなので、勝てるように頑張りたいと思います。
――選手時代と今を比べて早慶戦に対する心境の変化はありますか
先ほども言った通り、慶大に対しては絶対に負けてはいけないと、我が家はワセダ一家でしたから、小さい頃から思っていたことなので思いとしては変わらないです。現役時代もそうですし、コーチになってからも監督になってからもそこは変わらないです。
――早慶戦で思い描く戦い方はありますか
今年はオフェンスコーディネーターが替わりました。ディフェンスは主力がいままでの早大学院をリードしてきた人間から、主将の斉川もそうですしディフェンスリーダーもLB中村匠(人4=大阪・豊中)ですし、守備の要になってくるDB小野寺郁朗(社4=東京・早大学院)も早大学院ではあるけれども野球部出身ですので、オフェンスもディフェンスも非常にフレッシュなチームだと思っています。きょねん1年間監督としてがむしゃらに走ってきましたが、少し今年は落ち着いて4年生と一緒に新しい取り組みを色々としているので、そういった意味ではすごく楽しみな一戦ですね。
――今年の慶大さんの印象はいかがですか
慶大は慶応高校がずっと強くて、気が抜けないチームだと思っています。特にきょねんの秋のリーグ戦でも当たったQB三輪くん(忠暉)は高校時代からも素晴らしいQBなので、フレッシュな力がどれだけ出てくのかなという点でとても脅威に感じますし、そこでどう戦えるのかという点も我々の試金石になるのかなと思います。
――その中で注意すべきユニットや選手はいかがですか
オフェンス力は非常に高いので、それに対するワセダのディフェンスがどう対抗するか、慶大のオフェンス対早大のディフェンスが見所になってくると思います。
――早慶戦への意気込みをお願いします
慶大の久保田監督(雅一郎)も同期ですし、現役時代に私は2回日本でやった早慶戦とアメリカでやった早慶戦で、特にアメリカでやった早慶戦では最後に逆転負けするということで彼には絶対に負けたくないので、今年の4年生と数ヶ月ですけど一緒にチームをつくってきて彼らとも思いは一緒にしているので、絶対に慶大に勝って今シーズンをパーフェクトシーズンにしていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 成瀬允)
◆高岡勝(たかおか・まさる)
1968(昭43)年6月22日生まれ。静岡聖光学院高出身。1992(平4)年人間科学部卒。現役時代はOLのポジションを務めた高岡監督。OLユニットの練習中には監督直々にアドバイスや指摘をすることがあるそうです!