4月から正式就任となった高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)。合同練習を増やし外部からの刺激を取り入れるなど、早くも新たなチームの色が出てきている。2年連続の甲子園ボウル出場を果たし、初の日本一への期待が高まるBIG BEARSをどのように導いていくのか。最初の一歩となる早慶戦が統括者としてどのように写るのか、話を聞いた。
※この取材は3月26日に行われたものです。
「意志のないところに意識改革はない」
監督として初のシーズンを迎える
――昨年甲子園ボウル出場は果たしましたが、振り返っていかがですか
私は去年まではほぼ運営の方に携わっていて、去年の主務の小野さん(かすみ、平29教卒=東京・拓大一)とか、4年のスタッフ陣がすごく頑張っていました。特に2回連続甲子園(ボウル)というのがすごく大きくて、どうオペレーションしていくかという部分は前の年の反省を生かして何を準備すればいいのか気を付けながら、去年の早慶戦の時も一昨年の反省を生かして取り組んだので、スムーズにできました。そういう意味ではいろいろな取り組みをして、丸二年を同じサイクルでこなしたので、準備の点ではすごくよくできた代だったと思います。フットボールに関しては、前の年のディフェンスのLBケビン(コグラン、平28商卒=現IBM)、DL庭田(和幸、平28創理卒=現LIXIL)、DL村橋(洋祐、平28スポ卒=大阪・豊中)、DBの藤原(健太郎、平28政経卒=東京・早大学院)、寺中(健悟、平28教卒=現IBM)、鈴木拓馬(平28社卒=大阪・豊中)、日本でもトップクラスのメンバーが抜けたり、オフェンスでも将来ジャパンのQBになるであろう政本(悠紀、平28創理卒=現IBM)をはじめ、レベルの高い選手がごそっと抜けた穴をどう埋めるかという取り組みでスタートしました。早慶戦にも勝つことができて、立ち上がりはよかったものの関大戦でデプスの薄さというのを感じました。秋に突入してもしんどい試合が多かったです。ただ、しんどい試合をしたことでデプスが厚くなってきて、1年生だとLB池田(法2=東京・早大学院)などが最終的にはキーになってきたり若い戦力が伸びてきました。LB梶浦(嵩之、愛知・海陽学園)、LB栗田(嵩大、神奈川・鎌倉)は4年ですが秋に大きく成長してくれたり、ことしの注目株でもあるLB中村匠(人3=大阪・豊中)は法大戦でブレークしました。チームの総合力で甲子園に行けたと思います。見てて足りない部分は関学大の方が試合巧者だな、と。ずっとチームの目標であるフィジカル、ファンダメンタルというのはやはり足りないところで、ことしは更に強化していきます。テーマはもしかしたら永遠に『考える』かも知れないですね。濱部さん(濱部昇、昭62教卒=東京・早大学院)がずっと取り組んでいたことを突き詰める。まだここで、もがき苦しんでいるんだけど、よく選手に言っているのは、フットボールはリアクションスポーツだから、相手に対してどうアジャストしていくかで、そのフィニッシュのスピードが関西と圧倒的に違うと。今はフィニッシュまでの初めの3歩にこだわっています。
――春シーズンのJV戦の多さというのは、やはりデプスを意識しているのでしょうか
そうですね。去年は予想だにしない50人を超える部員が入ってきて、その前の年も40人くらいかな。2、3年生が多いので、そこをどう試合に出して経験させるかがキーになってきます。コーチからの意見もあってJV戦に取り組んでいます。
――6月にはアメリカの大学との試合も控えていますが
イリノイ・ウェズリアン大戦に関しては、コーチサイドでは社会人との対戦を想定しますが、他の試合と同じように取り組みます。VTRを見るとクリーンだしとてもいいチームです。とても楽しみです。逆にイベントに関してはバックオフィスのマーケティングチームが中心になってやってくれているので、運営面に関しては粛々とやっています。
――選手が兼任することとなった主務はどのような位置づけですか
今までは主務はMGRのヘッドという意味合いが強く、副務が選手とマネージャーサイドをつなぐ役割だったんですけど、ことしはマネージャーはマネージャーの業務に専念して、主務はスタッフ、選手とコーチ、監督をつなぐ役割です。ことしは二つの要があって、ひとつが主務がスタッフとグラウンドをつなぐ。もうひとつはコーチとして市原フィジカルコーディネーター(一原克裕、平20人卒=千葉・習志野)がフィジカルとメディカルとフィールドをつなぐ。そういう意味では情報共有の扇の要は二つ作りました。
――コミュニケーションをとても大事にされていますが、それはなぜでしょう
ひとつは濱部前監督はグラウンドに毎日来て、全てを把握しやすかったことです。私の会社員ということもあり平日は限られた日と土日祝しか来られないので、状況を聞くための核になるメンバーを作りたかったです。キャプテンという立場ではなくスタッフの部分も見れるという位置付けで主務は見てもらいたいです。あとはストレングスやケガの状況などは市原コーチからSC竹内さん(竹内大輔、スポ4=東京・立川国際中等高)AT小田さん(小田彩子、スポ3=埼玉・早大本庄)などの情報を入手することで、チームを色んな角度で把握したかったです。
――主将に坂梨陽木主将(政経4=東京・早大学院)を選ばれたポイントはなんですか
立候補プレゼンをした後に、もう一度聞きたいという何人かに個別にヒアリングを実施しました。最終的に坂梨くんを主将にしたんですけど、一番の決め手はことしの目指すチームの方向で伝統としてきた『プロテクト・ザ・チーム』、チームのことをどう考えていくか、日本一にふさわしいチームはどうあるべきか、という部分を強調していて、自らがプレイヤーとして成長するという決意もある選手でした。全体を考えることと、個を伸ばしていくこと、その気持ちが強かったのが一緒にやっていきたいと思った決め手です。
――主務の中村航選手(法4=東京・早大学院)の印象はいかがですか
プレーヤーとしても頑張っていますし、スタッフ部門は難しいと思うんですけど、マネージャーからの信頼も厚いのでいい働きをしてくれています。非常に誠実な子ですね。
――今までのことを踏まえて、チームの変化はどの程度進んでいますか
日本一にふさわしいかと言うとまだまだ届いていないのが現実です。でも、それを自分たちが口に出して意識しているというのは向上心がある表れかなと思います。尺度でどれくらいというのは分からないですけど。この前、意志のないところに意識改革はないという話をしました。みんなが意志をもって動けるように、誰にでもできることを当たり前にやろうと、でもそれは忘れてしまうし、なかなかできない。難しいことですが、きょうの練習中で「誰にでもできることだろ」と言っている選手がいたので、少しずつ言っていることが浸透してきているかな、と思います。
――早慶戦とはどのような試合ですか
早慶戦はやっぱり特別な試合ですし、絶対に負けられない一戦だと思ってます。特に三年連続で秋の慶大戦に負けてます。去年は慶大に勝っていれば苦しんでいなかった部分もありますし、あの敗戦は印象に残っています。また、体制が変わった中での試金石だと思っています。初戦ではありますが、ことしのスローガンにもなっている『執念』というのをどれだけ持てるか、選手たちのメンタル的な部分も計れるかなと思います。
――相手が慶大だからこその取り組みなどはしていますか
勝ちにこだわった準備というのは、しっかりしていますね。
――早慶戦でキーになってくるポジションはありますか
やはりOLです。ライン戦だとオフェンスは交代した選手たちがどれだけ頑張れるか、ディフェンスは去年から出ているメンバーがどれだけ破壊力を持って相手のオフェンスにプレッシャーをかけられるかです。
――オフェンスコーディネーターが替わられたということですが、チームへの浸透はいかがですか
奈良コーディネーター(奈良貴充)は長年ワセダのコーディネーターをやっていて復帰した方です。濱部さんとは違った学生との関わりをしています。奈良コーチになったからといって特別なことはなく、選手とASと一体になってオフェンスを作っていきます。信頼できるコーチだから任せました。やってみないと分かりませんが、アレルギーを起こすようなチームの作り方はしていません。平日も練習を見に行ってミーティングもよくしています。
――慶大の注意人物はどなたですか
やはり主将の染矢くん(優生)ですね。ランをきっちりハードに止めてくるところが(注意です)。
――早大オフェンスを支えるランプレーのポイントはどこでしょうか
二枚看板が抜けた穴というのはひとつのキーになってくるんですけど、片岡(遼也、法3=東京・早大学院)は三枚目のバックスとして出ていてそれ以外にも元山(伊織、商3=大阪・豊中)がことしは調子がいいです。その次に高根(龍平、政経3=東京・早大学院)、三浦(佑太朗、社3=東京・早大学院)、村田賢紀(文構2=東京・西)、中野(玲士、商2=東京・早大学院)、このあたりがどう食い込んで来るかですね。
――最後に早慶戦に向けた意気込みをお願いします
執念で勝ちます。選手、スタッフ、コーチ、監督、みんなで執念をどれだけ出せるかです。勝ちにこだわっていきます。
――ありがとうございました!
(取材・編集 高橋団)
チームをどう導いていくのか楽しみだ
◆高岡勝(たかおか・まさる)
1968(昭43)年6月22日生まれ。静岡聖光学院高出身。1992(平4)年人間科学部卒。チームのビジョンは明確に語ってくださいました。期待のルーキーであるDB高岡拓稔選手(商2=東京・早大学院)はなんと高岡監督の息子さんです!昨年の濱部親子と同様に、ことしは高岡親子にも注目ですね!