年々規模を増していくBIG BEARSを、主将一人でまとめることは難しい。そこで力になるのが副将だ。プレー面でもキーになってくる、DL武上雅将史(社4=神奈川・法大ニ)、TE田島広大(法4=東京・早大学院)、RB山崎龍哉(文構4=東京・佼成学園)の三人に、チームの現状や早慶戦への意気込みを聞いた。
※この取材は3月21日に行われたものです。
「個を強くするための春」 (武上)
笑顔で質問に応じる武上
――三菱電機杯毎日甲子園ボウル(甲子園ボウル)を終えてからの期間は何をされていましたか
田島 就活の準備とか(笑)。あとは甲子園でおととしは一点差だったのに去年は結構点差をつけられて負けて、関西のカベをさらに大きく感じたので自分たちに足りなかったものは何なのかをもう一度模索するミーティングをオフェンスでしました。関西との差をどうやって埋めていこうかを考える上で、ことしから色々取り組みを変えてみたりしていますね。
山崎 田島とほとんど一緒なんですけど、二年連続甲子園ボウルに出場したのにも関わらず負けてしまったので、関西のカベの高さや関東のアメフトのレベルが関西のものに達していないということを強く実感しました。関西のアジリティーのクイックネスやヒットの強さなど、自分たちも関西のレベルに達しないといけないと思ったので、接点だったりアジリティーという面に関しては去年より意識して取り組もうということで、今みんなで頑張っているところですね。
武上 被ってしまうんですけど、フィジカルアップはもちろんのこと、ことしチームとして一番力を入れているのがアジリティーの部分でそこのクイックネスの部分を一番高めています。運動神経が高いプレーを増やすことに力を入れています。
――昨年のプレーを振り返っていただいて今につながるものや課題として残った部分などは何かありますか
田島 おととし甲子園ボウルに出させていただいたのですが、初めての大舞台ですごく緊張して本当に何もさせてもらえなくて。自分のせいでランが止まってしまったり、自分がパスプロできていないからパスが投げられないとかそういう場面が多くあったことがすごく悔しかったので、3年生になってからはミスをしてもいいから思い切りやろうということを念頭に置いてずっとプレーしていました。負けてしまいましたが甲子園まで行けて、関学大という関西一位のチームとやる中で、当たりや感触的にはおととしよりも成長できたかなと思うんですけど、相手を圧倒して上のレベルに行くまでには達していないというのを感じたので、ことしはそこを埋めるための練習にフォーカスしてやっていこうと思っています。
――立命大と関学大で大きく違った点は何かありましたか
田島 立命大は『アニマルリッツ』と言われているくらい野性的というか運動神経が高い人たちがバリバリやってくるという感じだったんですけど、関学大は本当にシステマチックで。この人がきちんと守っていればここは止まっていたよねという部分が多くありました。勝ち方を知っているチームだなと思いました。
――お二人はいかがですか
山崎 田島と被ってしまうんですけど、おととし甲子園に出場させていただいたのに本当に何もできずにただただフィールドに立っているだけという状態になってしまっていて、そこで今までと同じ取り組みをしていたら関西には勝てないんだと反省しました。それから自分なりに他ポジションの練習をしてみたり、他のポジションの技術を盗んで自分のポジションのブロックとかパスキャッチとかにも生かしてみたり、チームの幅を広げようと。3年生の一年間はそこを意識してやっていました。結果としてはブロックなどで努力の成果は出たのかなと思ったんですけど、その努力の成果が関西に見合う力には達していないなと思いました。
武上 正直個人的には2年のときから何も伸びていないというのは感じていて。ただ、ことしこそはDLユニットを立て直さないといけないというときに、コーチ的な役割を果たせてユニット自体が成長できたのは自分の成長よりも嬉しかったです。
――DLリーダーの仲田遼選手(政経4=東京・早大学院)はどのような印象ですか
武上 仲田君は昨シーズンで本当に伸びて、今一番基礎がしっかりしている選手ですし、自分が4年間で見た中でもすごく良いDLだなと思います。DLの核ですね。本当にそう思います。
――副将になった経緯を教えてください
田島 武上は副将に、俺と山崎は主将に立候補していました。まず主将が坂梨(陽木、政経4=東京・早大学院)に決まって。従来だと副将に立候補した選手の中から部員全員の投票で決めるんですけど、ことしは新体制ということもあったので主将、主務、監督、ヘッドコーチの4人で話し合った結果自分たちがチームをどのようにしたいかはその4人にすでに伝わっていたので、決めていただいたという感じですね。
――武上選手はなぜ主将ではなく副将に立候補したのでしょうか
武上 (自分の中の)リーダー像として、主将はずっとフィールドに立ち続けられる人がいいなというのがあったので、その意味でも陽木が主将かなと思っていたので。主将はいいかなと思って自ら引いたという感じですね。
――高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)になって現段階でチームに何か影響があるなと感じることはありますか
山崎 常にグラウンドで見ていてくれる監督という存在がいなくなったというのはすごく大きいです。去年まではプレーしていない第三者の目線で自分たちが気づかないことを言ってくださったり、自分たちを奮い立たせてくれるような言葉で引っ張ってくださっていたので、そういう面ではことしは常に見てくれている人がいなくなった分、4年生が今まで以上に視野を広げてその役割を負って、チームをまとめて引っ張っていかなければいけないなと思っています。やっぱり大きい存在だったので、自分たちがいかにその穴を埋められるかがキーだと思いますね。
――濱部昇前監督(昭62教卒=東京・早大学院)はオフェンスコーディネーターもされていたと思います。コーディネーターの方も新しく迎えて、オフェンスのお二人はプレー面でも影響している部分はありますか
田島 まだ試合をやっていないので、どんな感じになるかはわからないんですけど僕たちがやりやすいように話を進めてくれています。
山崎 新しいことにも色々と挑戦しています。濱部前監督はアメフトの知識もすごくあって本当に頭が良かったので、そこも選手が補っていかないといけないという部分では今まで監督が負担していたものも自分たちで背負っていくという面では役割分担が結構大変ですね。
――ディフェンスはどうでしょうか
武上 今まで使っていたシステムを使うということで、だいたいは去年と同じだと思います。ただことしのコンセプトとして、秋に向けて関西との差を埋めるために個を強くする、そのために春を過ごす、ということを掲げているのでそこにフォーカスした練習にはなっています。
「締めるところは締める」 (田島)
副将としての意気込みを語る田島
――副将になって不安に思うことや意気込みなど、何か心境に変化はありましたか
田島 前監督はずっとグラウンドにいてくれて、常に目を光らせてくれているある意味怖い存在だったので、ことしからはそこが変わっていくのでいかに緩い練習をせずに締めるか、だと思っています。陽木はそんなに締めるキャラではないので、ガチガチに固めるという訳ではなく締めるところは締める、というのを僕ら3人がやっていかないといけないなと思います。
武上 不安なことを挙げると、信頼という部分ですかね。見られる立場になりますし。
山崎 まだ日本一になったことがないので、正攻法というか勝ち方がわかっていない中で、新体制になって今まで積み上げてきたものは一度リセットではないですけど、また探り探り始めていかなければいけません。それが良いことなのか、悪い方に働くのかというのがまだわからないですし。今までのままじゃ勝てなかったから一度壊してまた一から始めよう、というのは怖いことでもあるしひょっとしたらはまるかもしれないし、というのが怖いところですね。何とか自分たちの力ではめていかないといけないなと思っているんですけど、やっぱりそこが少し怖いというか、チャレンジだなと思います。もしここで、少しでも崩れたらチームも崩れてしまうので。
武上 俺もそれにすればよかったー(笑)。同感ですね。
――先ほどからお話にも上がっている坂梨主将はどういった印象ですか
山崎 自分も主将に立候補しながらも、コーチの前で話しているのを聞いていて自分よりも考えもしっかりしているしリーダーシップも陽木のほうが優れているなと思っていました。こういう風に言うのもあれなんですけど、自分以外が主将になるなら陽木しかいないなと。
田島 高校のときも僕が副将で坂梨が主将で、もう7年目なので性格も知っていますが、陽木はリーダーシップを体現したようなすごい男だと思います。僕は口下手でみんなの前で話したりというのもあんまりできないんですけど、もし主将になったら背中で引っ張る、プレーヤーとしてすごい存在になってみんなに付いてきてもらいたいと思っていました。ことしは陽木が主将もやってQBもやってというすごく大変な状況になると思うので、僕はそこを支える存在になっていきたいです。ん?自分の話になってるな、これ(笑)。まあ一言で言うと、リーダーシップを体現したような男です!
武上 陽木はただ突っ走るだけのリーダーという訳ではなくて、みんなを巻き込んでやっていけるタイプなので、ことしのチームは陽木の色にどんどん染まっていくのかなという風に思います。
――ことしから主務も選手が兼任することになりましたが、中村航選手(法4=東京・早大学院)の印象はいかがですか
山崎 それもチームの体制が大きく変わったことの一つだと思います。グラウンドレベルのことをスタッフやマネージャーにも同じように考えてほしいということで、選手とスタッフをつなぎやすい存在として選手兼主務という立場ができました。すごく頑張っているんですけど一人で背負いこみすぎず、もっと色々な人を頼っていかないと(これから)大変そうだなと思います。本当にすごく仕事量が多くて、特に今は就活もある中で選手としての役割も、主務の仕事もこなさないといけない状況で色々と挟まれている状態なので。いかに自分たちが支えられるかがチームを運営していく上で大切だと思います。
武上 主務は大変そうですね。本当に一番大変だと思います。監督がグラウンドにいない分、外との連絡とかも主務がやってくれていると思うので、その運営の面を主務に頼ってしまっています。本当に感謝ですね。
――みなさんお互いの印象を教えてください
山崎 出た!これ毎年あるやつだ!(笑)さっき考えていたんですよ、寮で。
武上 やまたつ君(山崎龍哉)は副将になってから大人しくなりました。歌わなくなったもん(笑)。
山崎 え?!(笑)。自分は全くそういうつもりはないです。自分がどういう人間かというのを知ったうえでみなさん副将に選んでくれたと思うので、副将になったからと言って自分を変えないという信念を持ってやっていました。どっちかというと僕はスイッチ切り替え型というか、やる時はやるし、オフのときはオフにするタイプなので。さっき雅将史も言っていたように見られる存在なので、そこで悪い印象の方が強くならないようにしていくかが大事だと思っています。バリバリ歌っていますし(笑)。
――ということですが、いかがですか
武上 二人はまさに背中で引っ張るタイプだと思っています。
山崎 いや、自分は雅将史こそ背中で引っ張るタイプだと思います。
田島 雅将史は最近変わった!フォロワーシップの人間。
山崎 冷静な視点を持っているというか。チームのミーティングをやっているときも、「いやそれは違くない?」ってはっきり言えますし、そういう視点を持っているのは自分にはないところですね。自分は逆にどんどん話をずらしていってしまうタイプなので、そこを正してくれるところがすごいなと思うし、ありがたいですね。
――田島選手についてはいかがですか
山崎 田島はでかいですし、背中で見せるタイプなんですけど…スベる(笑)。
田島 それは言っちゃダメでしょ(笑)。
山崎 突っ込みが面白くなさすぎてシーンってなっちゃう(笑)。アメフトのプレーではすごく魅せられるんですけど、さっき自分でも言っていたように口下手なので。でも本当にプレーは上手いなと思います。甲子園でTD取っていますし。やる時はやる男ですね。
「プレーで恩返しをしたい」 (山崎)
早慶戦への思いを語る山崎
――それでは早慶戦についてお聞きします。最後の早慶戦となりますが、何か思うところはありますか
山崎 おととしも去年も春は勝っているけど、秋は負けています。慶大は個の強さもありますし、システムもしっかりしていますが、絶対に自分たちは勝たないといけない相手だと思っています。春の一発目のこの試合で、自分たちが攻めたスタートや攻めたヒットなどのフットボールの根幹にある部分をどれだけ出していけるかが、今後のチームの在り方にも関わってくる一番大事な部分だと思っているので。早慶戦というのは自分たちにとってスタートなので、そういう意味で重要だなという印象です。
田島 早慶戦といったらアメフト以外のスポーツでも必ず盛り上がりますし、あまりアメフトを知らなくても早慶戦なら応援に行くという人もたくさんいると思うので、知らない人にもワセダってすごいなと思ってもらえるような試合をして勝ちたいです。
武上 ことしは5月に試合がたくさん入ってきて、ことしのチームは流れに乗れないと崩れていってしまうと思うので、弾みをつける意味でもしっかり完封して勝ちたいと思います!
山崎 完封!挑発したな(笑)。
武上 いけるでしょ!(笑)
――では慶大の要注意人物を挙げるならどなたでしょうか
武上 一番怖いのは小田君(小田裕太)と柴田君(柴田源太)のホットラインですね。そこが一番怖いのでしっかりカバーしていくように、フロントにしっかりプレッシャーをかけていけるようにしたいなと思っています。
田島 ディフェンスだと主将の染矢君(染矢優生)と去年からDLで残っている萩原君(萩原周平)と岸君(岸佑亮)ですかね。去年の秋は結構岸君にやられたので、僕らランユニットとしてはボックス内にいる選手を圧倒したいです!
山崎 迷いがないスピードでやることをきちんとやってきますし、スキームもしっかりしていて思い切りのあるプレーをしてくるので、LBとDLは脅威だと感じています。すごくプレッシャーもかけてきますし。その中でもやっぱり主将の染矢君は負けたくない存在なので頑張って勝ちたいと思っています。
――それでは最後に早慶戦への意気込みをお願いします
山崎 自分はフルバックで地味なんですけど、地味な仕事をしている分、自分が活躍したときに喜んでくれる人がいるのがすごく嬉しいんです。早慶戦は普段見に来れない人も見に来てくれる機会なので、頑張っているぞということや感謝を伝えたいと思います。強いブロックとパスキャッチを見せて、プレーで恩返しをしたいです!
田島 坂梨とはTEとQBとして7年目で、最後の年ですし僕をパスターゲットにしてくれると思うので、TDをしたいと思います!
武上 自分は色々バタバタしているので自分が目立つというよりはディフェンス全体として、ことしは強いフロントのDL陣に注目していただきつつ、ライン戦からしっかり圧倒して勝ちたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材・編集 高橋団、太田萌枝)
3人の存在はチームに欠かせません!
◆山崎龍哉(やまざき・たつや)(※写真左)
1995(平7)年9月15日生まれ。169センチ、95キロ。RB。東京・佼成学園高出身。文化構想学部4年。RBの中でもFBという目立たないポジションですが、キャリアーの道を開けるブロックなど様々なプレーに絡んでいます!気迫溢れる激しいプレーに注目です!
◆田島広大(たじま・こうだい)(※写真中央)
1995(平7)年7月22日生まれ。185センチ、100キロ。TE。東京・早大学院高出身。法学部4年。甲子園ボウルでは坂梨主将からのパスを受け取りTDを取りました!早慶戦でもチームを勢い付けてくれるでしょう!
◆武上雅将史(たけがみ・まさし)(※写真右)
1996(平8)年2月23日生まれ。176センチ。神奈川・法大二高出身。社会科学部4年。いつも笑顔で話す姿が印象的だった武上選手。早慶戦ではあっと驚くプレーをしてくれるはずです!