幹部として主将をサポートする、あるいは自身のプレーでチームを鼓舞することが求められる役割、副将。今回はBIG BEARSにて副将を務めるOL樋口央次朗(創理4=東京・早大学院)、WR鈴木隆貴(法4=東京・早大学院)、LB加藤樹(商4=東京・早大学院)の3人に、ここまでのリーグ戦を振り返りとチームの状況について語っていただいた。
※この取材は11月16日に行われたものです。
「タフさが出てきた」
チームを統率し、結果を残してきた
――先日の法大戦のことからお伺いしていきたいと思います。いま振り返ってみていかがですか
樋口 1年間でベストの試合をやろうということで、今まではワセダらしい試合がやれていなかったので、今回は『BEST』を掲げて臨みました。実際ベストな試合ができたと思っていて、内容を見ても結果を見てもそうだったのかなと思います。
鈴木隆 前節に慶大に負けて、本当に後がなくて一戦必勝で残り2戦をやらないといけないというところで、掲げたテーマ通りに一番良い試合ができたと思っています。ただ振り返ってみると、これからの試合や甲子園ボウルを勝ち抜いていくとなったときにまだまだ詰めの甘い部分があるという試合でした。
加藤 全員がオフェンス・ディフェンス・キッキングが噛み合えば良い試合ができると言っていて、法大戦ではそれができたと思います。ただ、キッキングで最初TDまで持っていかれたりしたところはまだまだな部分ですし、そこを修正できればもっと良い試合ができると思います。
――オフェンス全体としてはどのような意識を持って臨まれましたか
鈴木隆 前節勝ち切れなかったところ、スコアリングの部分で課題が残っていました。なので、もう一度自分たちがやらなければいけないこと、アタッキングポイントやコンセプトなどを見直して、2週間ミーティングを重ねて、練習でもこだわってきました。それがうまく出たのでああいう結果になったのだと思います。足りない部分はまだありますが、しっかり準備をすればこれほど良い試合ができるというのが分かったので、これを継続して残りの試合も進めていければと思います。
――ディフェンスとしてはどんなことを心がけて臨まれましたか
加藤 前節の慶大戦の敗因は、僕らが慶大のスコアチャンス3本を全てTDにさせてしまったこと、粘りが甘かったところと、李卓選手(4年)のランに注意していたにもかかわらず止められなくて、良い位置でオフェンスに渡せなかったというところでした。なので法大戦ではとにかく良いフィールドポジションを与える、そのために全てのプレーをビタ止めするという気持ちでやってきました。それが後半になって表れたのだと思います。
――オフェンスは少しトリッキーなプレーも見られましたが、これはどなたのアイデアなのですか
鈴木隆 RBがQBをやるワイルドキャットは監督の提案で、僕ら自身も何個か提案させていただいています。キッキングスペシャルに関しては、アサインメントを考えるリーダーのAS杉田(雅仁、法4=神奈川・浅野)が一番になって考えてくれたので、彼の功績が大きいと思います(笑)。
――ああいった攻撃パターンがまだまだあるのでしょうか
鈴木隆 (笑)。そうですね。やっぱり見ている方が楽しいと思うんですけど、そういうフットボールが僕らの魅力の一つかなと思っているので。ぜひ楽しんでもらえればと思います。
――続いてリーグ戦全体についてお伺いします。ここまでを振り返ってBIG BEARSから点数をつけるとしたら何点くらいですか
樋口 加藤から言って(笑)。
加藤 40点とかですね。明大戦とか法大戦とか、序盤から引き締まったプレーができるといい試合になるんですけど、逆にビハインドの状態で進んだり苦しい状況になると、なかなか自分たちのフットボールができなかったりするので。その弱点を克服できていないままリーグの佳境に入ってきてしまっているので、そのくらいだと思います。
鈴木隆 僕は60点くらいかなと思っているんですけど、二人と比べたら甘めですかね…?(笑)
一同 (笑)。
鈴木隆 というのも、目標の日本一を達成するために取り組んできて、リーグ序盤とか本当に苦しい状況が続く中でも勝ってこられたというのが、自分たちの取り組みの正しさをある程度証明してくれたと思うので。ただ慶大に負けて、自分たちの力で日本一を取れなくなってしまったというのがマイナスな部分ですね。
樋口 50点くらいです。立大と明大、法大には良い形で勝てたのですが、日体大と中大、慶大相手には良い試合ができなかったので、半々で50点です。慶大に負けたのは大きいんですけど、隆貴も言っているように、苦しい状況の中でも幹部含めてチームで模索してやってきたことが法大戦のようないい結果につながったと思うので。
――リーグ戦を通してチームとして成長した部分は
樋口 難しいですね…。オフェンスは他の試合と法大戦を比べると、練習でやってきたことが出せるようになってきたのかなと思います。それ以前は全く出せないまま試合が終わることが多かったので。法大が結構スカウティング通りにやってくるとうのもあるんですけど。
鈴木隆 ことしは自分たちが先制点を取って有利なところから始まるという展開がほとんどなくて、基本ビハインドなりイーブンなりで折り返す試合が多かったと思います。法大戦も最初一本で持っていかれて、多分ほとんどの人が「おっ」となったと思うんですけど、それでも慌てずに自分たちがやってきたことを出せるみたいなタフさが出てきました。それが一つ大きい部分かなと。
加藤 ディフェンスでいえば、春はタックルミスとか一対一でのヒットに負けたり、個々の弱さのせいで無駄なゲインを与えて苦しい展開になってしまったと思うんですけど、最近はそういうことも減ってきましたし、一人一人が成長できているのかなと思います。
――逆に課題として残っている部分は
樋口 法大戦ではある程度できたんですけど、練習でやったことを試合で出すというのがこのチームの永遠の課題だと思います。
鈴木隆 勝ち切るための集中力を高めないといけないと思います。慶大戦でも一本差になってから二回攻撃のチャンスがあったんですけど、スコアまでもっていけなかったというのがあるので。11人全員が割り切って、自分たちが今やるべきことをやれるチームじゃないといけないですね。
加藤 試合の流れを持ってくるのが苦手だと思います。ギャンブルで持ってきた流れをスコアにつなげられなかったり、「ここを止めたら大きい」という場面でやられてしまうことが多かったので。「ここが勝負」というところをものにできないということが一年を通しての課題です。
――シーズンの中で印象に残っている試合はありますか
樋口 法大戦ですね。直近というのもあるんですけど、実際にフットボール人生を振り返ってみても一番楽しい試合だったと思っているので。オフェンスがしっかり出ていて、ディフェンスも止まっていて精神的な余裕があったとは思うんですが、試合中も楽しさしか感じなくて。
鈴木隆 二つありますね。一つ目は法政で、純粋に楽しんでプレーをできて、試合後に思い出しても「きょうは楽しかったな」となったからという感じです。もう一つは日体大戦なんですけど、自分が試合に出ていなくて。一瞬負けるのかなと思ったんですけど、ディフェンスがFGブロックでTDを取ったりという風に頑張って、最後はタイブレークで勝ってくれて。仲間が苦しい展開の中で勝ってくれたので、自分も次復帰したら仲間のためにやりたいと感じたところがあったので、その意味で日体大戦が印象に残っています。
加藤 僕は日体大戦です。ディフェンスは土日にコーチがいらっしゃるとき以外は基本自分たちで練習を組んだりしているんですけど、その準備の足りなさを痛感させられて。練習で詰め切れていなかった部分をピンポイントでやられたと試合が終わってから気付いたので、戒めという意味で印象に残っています。今の携帯のトップ画面も日体大戦で、この試合はまだかなり印象に残っています。
――加藤選手は怪我もあり、苦しい時期が続いたと思います。その間はどんなことを考えて過ごしていたのでしょうか
加藤 まずは復帰するために最善の努力をするというのは当然として、そういう状況の中でもチームのためにできることがないか考えていました。あとは、何ですかね…?
鈴木隆 分かんないっす(笑)。
加藤 自分がコントロールできる範囲の中でできる最善のことは何か考えてやってきました。あと、春からずっと怪我が多くて、リーグ編成が変わってタフなシーズンになったというのも関係あるんですけど、そういう意味でシーズン通しての過ごし方みたいなものをしっかり考えて、後輩の代では失敗してほしくないとも思っていました。
――今シーズンで大きく伸びたと感じる選手はいますか
樋口 誰一人とは言えなくて、一年生全体に感謝したいです。強いて言えばOLの香取(大勇、スポ1=東京・佼成学園)とかWRのブレナン翼(国教1=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)とかディフェンスで言えばLBの池田(直人、法1=東京・早大学院)とか。ことしからBIG BEARSに入ってきた1年生を使わないといけないというチーム状況があって、最初は彼らも頭の中が整理しきれていない状態で試合に出ることもあったと思うんですけど、それを経てスターティングとして信頼を置けるくらいの存在になっている選手も多いので。未経験の一年生も夏合宿なんかを通してメキメキ成長してくれたり、チームの雰囲気を活気づけてくれたりするので、本当に1年生全体を称えたいですね。
鈴木隆 同じポジションのWR遠藤健史(法2=東京・早大学院)です。早大学院の頃からの後輩で、彼の一番のウィークポイントのフィジカルを克服するために、小さいなりにどう戦えばいいのかずっと一緒に考えてきたんですけど、シーズンを通して選手としてすごくタフになってくれました。チームのメンバーとしての自覚もどんどん出てきて、みんなに自分から声をかけるようになりましたし。本当に今うちのレシーバーユニットを支えてくれている存在だなというふうに思っています。
加藤 この中でディフェンスが僕一人なので、ディフェンス全体から挙げます。3人でもいいですか?
一同 (笑)。
加藤 きょねんから試合に出ているメンバーは除いて言うと、僕の同期でLBの栗田(嵩大、教4=神奈川・鎌倉)ですね。彼は本当に不器用で、フットボールはうまいとは言えなくて、プレーに気持ちが入っているというか日頃から努力をしていたんですけど、ここ3年は先発で出場できなくて。ただ4年目になってプレーが徐々に良くなってきて、今では先発の地位を不動のものにしているので。二人目はDLの仲田(遼、政経3=東京・早大学院)です。きょねんベストDLとして出ていた武上(雅将史、社3=東京・法大二高)がケガをして出ないといけない状況で、プレッシャーもあって大変だったと思うんですけど、それをはねのけて活躍していますし、システム理解もしっかりしてくれて動いてくれるので、後ろとしてはすごくやり易さを感じています。三人目はDBの小野寺(郁朗、社2=東京・早大学院)で、彼はもう少し注目されてもいいくらいのプレイヤーで…。未経験であれは化け物級ですね。
一同 (笑)。
加藤 本当にすごいな、という感じで。彼については特にいうことがないです。
一同 (笑)。
――個人として今シーズンのプレーはいかがですか
鈴木隆 点数制?
一同 (笑)。
樋口 点数制難しくないか?(笑)
鈴木隆 僕は本当にチームに迷惑をかけたシーズンだと思っていて、序盤からケガで離れていて、僕が統率をとらなければいけないのにそれを他の人に任せてしまったり、試合に出てチームを助けたいという状況でもそれができないということが多かったです。特に慶大戦なんかは顕著で、自分が一本取らないといけないときに取れなかったりと、自分としてはまだチームへの貢献が足りてないなと思っています。
樋口 OLって自分のプレーを評価するのが難しいと思います。なので(幹部としてで言うと、)二人がケガという場面、プレーで引っ張れるのが僕と松原(寛志主将、OL、法4=東京・早大学院)ぐらいという状況で、もっといろんな面でチームを引っ張れたのかなと思っています。たとえばディフェンスは最初から幹部が加藤一人で、その加藤が出られないときでも、自分はオフェンスを気にしてそっちに気を配れなかったみたいなことがあったので。
加藤 プレーというか、僕は一年間で言うと実際フットボールをしていたのが1か月とか2か月くらいで。シーズンアウトしてしまいそうなケガを何回もして、リハビリもすごくきつかったですし、精神的にも結構きつくて。法大戦には半分ほど出してもらって、楽しかったんですけど、まだ働きとしては全然できていない部分があるので、これからの試合でビッグプレーをしたい、活躍したいという思いがあります。(今までというより)これからですね。
――鈴木隆選手はカレッジ日本代表に選出されていましたが、その経験を振り返っていかがですか
鈴木隆 僕は所用でチームへの合流が遅れて、まず一人でメキシコに到達しないといけないという状態から始まって。
一同 (笑)。
鈴木隆 ダラスを経由してメキシコまで行ったんですけど、ダラスで6時間一人でウロチョロしていたというのも面白い経験で。他にもメキシコに着いたら迎えに来るはずだったタクシーが来てなかったり、来たと思って乗ったら全然違うホテルに連れていかれて、ちょっと危ない思いをしたりだとか。いろんな経験をさせてもらいました。他の選手も大学トップレベルで、対戦相手も…これは僕が楽しみにしていたんですけど、U19で大敗したメキシコとアメリカと試合することができて。デカい選手と戦って自信が付きましたし、逆にもっとやらないといけないと感じたり、またこの人たちと対戦したいと思ったりと色々な思いを巡らせて帰ってきたので、かなり貴重な経験だったと思っています。
――リーグの編成が替わり、シーズン終盤で強豪と当たる仕組みになりましたが、これには慣れてきましたか
樋口 ことしのように相手がだんだん強くなっていくというのは今までなくて、慶大に負けてしまいましたし、まだ慣れてはいないと思います。
鈴木隆 編成が変わって、上位校と下位校という風に分かれているんですけど、実際は戦ってみないと分からなくて、一戦一戦が勝負だったなと思っています。目の前の試合にどれだけ意識を向けられるかというところがずっと課題で、日体大戦や中大戦を1点差やタイブレークでものにできたのは、そういう心構えができてきたことの現れなんじゃないかと思っています。慣れといったら変ですが、その意味では対応できていると思いますね。
「今まで当たったどの相手よりも強い」
――最後に次の日大戦についてお話をお伺いしたいと思います。ことしの日大の印象はいかがですか
加藤 春シーズンにスカウティングをしたときにも一番体が大きいチームで、リーグでも絶対最後は1位の状態で上がってくると想定していました。そうはならなかったんですけど、それでもフィジカルなどの部分では優位に立っていますし、今まで当たったどの相手よりも強いと思っているので、厳しい戦いになると思います。
鈴木隆 やはり日大は関東の中でもトップレベルのフィジカルや個人の能力を主体にしているチームなので、外からの評価はいろいろあるんですけど、強いということに変わりはないと思います。
樋口 言おうとしてたことほとんど言われちゃった。
鈴木隆 (笑)。
樋口 個人の能力はおそらく関東で一番高くて、日大の優勝はないとか言われているんですけど、自分たちが取り組んできた接点の強さだったりということを認識するには十分な相手だと思うので、それを証明するためにも相手が強みとしている部分でしっかりと勝ってリーグ戦を締めくくりたいと思います。
――警戒するプレイヤーはいますか
樋口 主将の趙翔来と萩原篤志(ともに4年)を含めてDLです。自分がOLというのもあるんですが、フィジカルもテクニックもある相手と勝負して、勝つのが楽しみではありますね。
鈴木隆 カレッジのときも一緒だったDBの奥本選手と米田選手(ともに3年)はカレッジで当たったときも「うまいな」と思っていましたし、彼らとまたフィールドで対峙できるというのは楽しみですね。あとはブロンソン選手(3年)です。やっぱり日大ディフェンスといったら彼、というくらいスター性のある選手だと思うので、彼をしっかりと攻略してパスでもランでも攻め立てられるようにしたいです。
加藤 誰というよりもOLの5人ですね。OLが強いチームはオフェンスが強いと思うので。きょねんの立命大戦でもそれを思い知らされていて、OLをいかに攻略できるかがカギになるので、ライン戦が重要だと思っています。
――最後に今後に向けての意気込みをお願いします
樋口 甲子園に行けるかとかは抜きにして、練習でやったことを出して最終戦も楽しめればと思っています。勝つことだけを見据えて日大を圧倒していきたいです。
鈴木隆 今までの自分たちの中で最高のプレーができるように準備をして、試合で目の前のプレーにひた向きに取り組んで、来てくださった方々に感謝や感動を伝えられれば良いかなと思います。やれることはすべてやり切ります。
加藤 とにかくできることは日大に勝つことだけで、そこを目標に全力で取り組むしかないと思っています。自分たちの試合前にどうこうというのはあるんですけど、まずは日大に勝って日本一になるというところだけを想定して準備していきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井上陽介、大槻竜平)
集大成を見せます!
◆樋口央次朗(ひぐち・おうじろう)(※写真左)
1995(平)年2月22日生まれ。175センチ、113キロ。東京・早大高等学院出身。創造理工学部4年。OL。二人の副将を欠く状況でチームを引っ張ってきた樋口選手。精神面でも一回り成長した樋口選手のプレーに注目です!
◆鈴木隆貴(すずき・りゅうき)(※写真右)
1995(平7)年2月25日生まれ。177センチ、81キロ。東京・早大高等学院出身。法学部4年。WR。カレッジ日本代表での海外エピソードを楽しそうに語ってくださった鈴木隆選手。日大戦で持ち前の明るさでチームを盛り上げます!
◆加藤樹(かとう・いつき)(※写真中央)
1994(平6)年5月1日生まれ。177センチ、84キロ。東京・早大高等学院出身。商学部4年。LB。ここまでケガで思うようなシーズンを過ごせていなかった加藤選手。日大戦ではその悔しさをバネに大爆発をしてほしいですね!