屈強な相手に立ち向かい、走路をこじ開け、守備では味方を守る防波堤の役割を果たす――。今回はチームの最前線で体を張りつづけるOL島崎貴弘(スポ4=神奈川・横浜立野)とDL植森翔(社4=東京・早大学院)、DL武上雅将史(社3=神奈川・法大二)にアメフトとの出会いから、現在のチーム状況に至るまで語っていただいた。
※この取材は4月10日に行われたものです。
さらなるフィジカル強化を目指すOL島崎
――最初に今に至るまでの経緯をお聞きしたいのですが、まずアメフトを始めたきっかけはなんでしょうか
島崎 小さいころから体が大きくて、何かに生かしたいなと思っているときに、ちょうど『アイシールド21』が流行って、このスポーツ自分ならできるのではないかと思って始めたのがきっかけです。
植森 僕は『アイシールド21』みたいなきっかけがあったわけではなくて、高校で何か新しいことを始めたいなと思っているときに、早大学院のすごい勧誘にあって、そのままグラウンドに来てやってみたら楽しかったというのがきっかけですね。
武上 自分はもともと野球をやっていて、高校でもやるつもりだったのですが、乗り遅れたといいますか。入学して1週間してから野球部に行ってみたら、それまでにある程度シメみたいなものが始まっていたらしく、これはまずいなという雰囲気を感じて。でも、そんなときに勧誘してくれたアメフト部はすごく風通しの良い感じでやっていたので、そこに惹かれて入部しました。
――なぜ大学でも続けようと思ったのですか
島崎 僕はスポーツ推薦だったのでアメフトをやるということは決めていました。いろいろな大学の中でワセダを選んだのは、植森みたいに高校時代に3回日本一になっている人たちとプレーしてみたいと思ったからです。
植森 僕は早大学院でやってはいたのですが、いつも試合に出ているというわけではなかったので、大学ではやらないつもりでした。ただ、1年生のときに、春の関大戦のキック1本で試合が決まったのを見て、そういうことが起こるなら大学のアメフトも面白そうだなと思って、その次の日にはやろうと決めました。だから入部したのも多分同期で一番遅くて、1年生の6月の最後のほうでした。
武上 自分はもう迷わずというか、自然にやるのが決まっていて。ワセダを選んだのは、見学した中で一番雰囲気が良くて、大学のアメフトで泥臭くやっているのも良いなと思ったからです。
――実際BIGBEARSに入ってみて、どう感じましたか
島崎 僕の出身高校がアメフトでは無名校だったので、環境の良さには驚きました。芝のグラウンドがいつでも使えて、トレーニングルームもあって、周りのアメフトへの理解というかフットボールIQみたいなものもすごく高くて、入ったときはしどろもどろでした。
植森 僕は高校が学院だったので、ある程度イメージはついていたのですけど、高校と大学のレベルの違いには驚きました。あとは設備ですね。もちろん高校時代もここ(東伏見)を使っていたのですけど、一部使えないところとかがあって、そういうものを大学では使えるようになったので。
武上 入ったときに一番感じたのはワセダってしっかりしているなということです。声を出すにもただ叫ぶのではなくて、指示を出していたりする。あとは、入ったときにちょうど上に中村洸介(平28スポ卒=東京・日大三)さんがいて、はじめてラインではこの人にはかなわないなというのは感じました。
――今のポジションになった経緯は
島崎 僕はオフェンスとディフェンスというふうに分かれている高校ではなかったので、OLとDL両方で出ていて、大学ではどっちをやるか迷いました。アメフトの花形ってやっぱりQBとかで、OLは目立ちづらいのに、プレーはできて当たり前というか、減点式みたいなところがあって。それがすごく悔しくて、じゃあ自分がOLで目立って、チームを勝たせられるような存在になろうと思って、このポジションに決めました。
武上 高校のときから一人だけすごく大きくて、目立っていましたよ。自分も島崎さんも同じ神奈川地区で、僕が1年生のときに試合に出ていて、でかい人がいるなってなっていました。
植森 最初はロングスナッパーで入りたいと思っていました。ただ入部式というものがあって、新人戦の後にポジションの発表をされるんですけど、そこでいきなりDLと言われて、その流れで今のポジションになりました。
――そこで言われるポジションというのは適性を見て決められたということなのでしょうか
植森 そうらしいんですけど、もしかしたら人数が少なかったっていうのもあるかもしれませんね。
島崎 そもそもラインズが少なくて、僕とあともう一人のTEとLBをやっていた人がDLになっていたりしたので、その年がたまたまそういう年だったのかもしれないですね。
――武上さんはどういう経緯で今のポジションになられたのですか
武上 ジュニトマっていう中学のアメフトでやっていた人と高校で友達になって、その人がエンド面白いよと教えてくれたので、最初はDLの端っこのディフェンスエンドというところから始めて、今は中央のほうになりました。
――自身のポジションの魅力はなんでしょうか
島崎 極端に言えば、僕らが強くて道をこじ開けられればそこは誰でも走れますから、目立たないけど本当に重要っていうところが魅力だと思います。
植森 DLは練習が大変で体も大きくしないといけないんですけど、試合では最前線にいるので、絡もうと思えばどんなプレーにも絡んでいけるのでそういう意味では魅力的ですね。あと、QBサックはDLができることなので、成功すると楽しいです。
武上 OLと駆け引きをできるというところです。自分は1対1の当たりは強いほうではないんですけど、駆け引きをすることでやり方次第ではOLに勝てますし、力だけじゃないということが魅力だと思います。駆け引きは楽しいですし。
――自分のポジションをやっていて大変なところは
武上 DLはやはり大きい相手と当たりつづけないといけないところですかね。
植森 体が疲れますね。
武上・植森 しんどい。
一同 (笑)。
――何も制約がないとしたらやってみたいポジションはありますか
島崎 僕はDLがやりたいですね。二人が言ったように駆け引きをしてどうOLを倒していくかっていうのを考えるのが面白そうですし。ボールを持っている選手を倒した時の快感も味わってみたいです。
植森 やっぱり目立つQBですかね。WRも目立ちますけど、僕は無防備な状態でタックルされるのは怖いですし。
武上 LBですね。適度に当たれて適度にパスカバーもできるので。
――お互いを見てすごいと思うところはありますか
島崎 武上は執着心です。絶対にこいつに勝ってやろうという気持ちが、当たっていて伝わってきますし、僕もそこは見習っていかないといけないので。植森は自分のポジションにプライドを持っているというところですかね。
植森 二人に共通しているのはストイックなところで、島崎はウエイト主任ですごくこだわってやっていますし、武上は一見ふざけているみたいな感じがするかもしれないんですけど、フットボールに対しては本当にまじめで。後輩ではありますがそこはすごいなと思います。
武上 島崎さんはとにかく強くて、自分のことを執着心があるっておっしゃってくれたんですけど、そのくらい本気で当たらないと押し戻されちゃうんですよ(笑)。植森さんはタックルした後とかのウイニングランがかっこいいです。
島崎 すかしているんですよね。
植森 すかしてないよ(笑)。
武上 自分はそういう盛り上がるところが足りないかなと思うので、植森さんを見習っていきたいです。
――オフシーズンはどんなトレーニングをされていたのですか
島崎 ウエイトですね。僕らのチームはスポーツ推薦とかでたくさん集められるわけではないので、自分たちでどれだけサイズアップできるかがシーズンにつながってきますし。オフシーズンは週5,6でずっとトレーニングをやっていました。
DLの中核を担う植森
「超越」
――今年の個人の目標はなんでしょうか
島崎 ベンチプレスをもっと強くしないといけないのと、個人的には6月のユニバーシアードにエントリーしていて、大学生活もあと一年しかないので、在学中に日本代表に入りたいです。あとはやはり日本一です。
植森 いろいろ課題はあるんですけど、まずチームの日本一に貢献できる選手になることです。4年生なので試合に出るというのは当たり前にして、そこからさらに活躍できるようにしたいです。
武上 DLとして、後輩の手本になるような選手になるということです。あとは島崎さんと同じく自分もユニバーシアードを受けているので、今年こそは行きたいですね。
――今年のチーム状況はいかがですか
島崎 雰囲気は良いです。ただ全員わかっていると思うんですけど、今年はリーグで追われる立場になるので、現状に満足しちゃいけないというか、生半可な気持ちでいてはいけないなと思います。もっとできるところはあるので。
植森 やはり僕らディフェンスはきょねん中心だった4年生が抜けたので、頑張らないといけないという意識はあります。あとは佐藤敏基(平28社卒=東京・早大学院)さんくらいのレベルのキッカーが抜けてしまったは大きいです。戦術にも影響してきますし。
武上 雰囲気は良いんですけど、それで実力がかき消されちゃっているというか、ミスをしているのに気づかないことがあるのが今のDLの課題なので、そこは修正していかないといけないです。あとはきょねんより練習でOLにプレッシャーをかけるのが少なくなっていて、力の差が開いていると思うので頑張っていかないといけないと思います。
――今年のスローガンはなんでしょうか
一同 『超越』です。
――そこに込められた意味は
島崎 意味はそのままで、きょねんギリギリのところで大学日本一を逃してしまったので、やはりそこを超えていかないといけないということです。僕らの最終目標は社会人を倒して日本一になることですし、そのためには個々人も自分を超えていかないといけないという意味も含めてこれに決まりました。
――主将と副主将の印象はいかがでしょうか
島崎 本人にも言うくらい口下手なんですけど、背中で見せるタイプというか、誰よりもストイックにやっています。副将の中でも加藤樹(商4=東京・早大学院)はフットボールになると目の色が変わるというか、切り替えがしっかりしていますね。あと鈴木隆貴(法4=東京・早大学院)はとにかくうるさいです。
一同 (笑)。
島崎 ただそのうるさいっていうのも良い意味です。チームが沈んだりしているときや、言いづらいときにズバッと言ってくれたりするので。
植森 松原寛志(法4=東京・早大学院)は本当にフットボール好きですね。あとは誰にでも信頼される人間なので、主将らしさはあると思います。さっき口下手って言われていたんですけど、主将になってからはコミュニケーションを取りに行くようになって、自分なりのやり方でチームをまとめようとしているのが感じられるので、じゃあ松原のために頑張ろうという気持ちにさせてくれます。央次朗(樋口、創理4=東京・早大学院)は高校のときから変わらず元気で真面目という印象です。加藤はプレーでも引っ張りますし、頭も良くてチーム全体が良く見えていますね。隆貴(鈴木、法4=東京・早大学院)は寮の部屋が一緒なんですけど、やっぱりうるさいです(笑)。でも自分の思ったことをどんどん発信してくれるので、リーダーらしさがあるなと思います。
武上 三人とも普段とフットボールをしているときとが全然違っていて、切り替えがすごいですね。あと隆貴さんは良い意味でうるさいです。
島崎 たまに個人レベルだと普通にうるさいときもあります。
一同 (笑)。
――きょねんはあと一歩で日本一というところまで行きましたが、反省点を強いて挙げるとすると、どこになるでしょうか
島崎 OLは単純に層が薄かったので、下の代を育てられなかったのが課題かなと。今の2年生は経験者が一人しかいないのに、自分たちが試合で一杯一杯になってしまって、どうしても目が行き届かなかったというのはあります。あとはオフェンスの得点力です。きょねんはディフェンスのチームと言われていて、日大戦で顕著だったんですけど、ケビンさん(コグラン、平28商卒=東京・早大学院)が守備の選手なのに攻撃で一番目立っていて、オフェンスは何もしていないというようなこともあったので。
植森 OLと同じくDLも選手層の薄さです。卒業した代がディフェンスの核を担っていて、昨年秋の慶大戦が特にそうで、その人たちが抜けるとチームが崩れてしまうことがありましたので。あとはケガ人の多さです。主力が100%の状態で甲子園に出られなくて、自分たちで自分の首を絞めちゃっていたので、そこはやはり課題ですね。
武上 自分も甲子園ボウルで庭田(和幸、平28創理卒=東京・早大学院)さんが抜けた穴を埋められなかったので、二本目の実力の無さというのは感じました。/p>
DL武上は駆け引きの魅力を語ってくれた
「シーズンの流れが決まる」
――最後のテーマとして、早慶戦について伺いたいのですが、早慶戦に対するこだわりのようなものはありますか
島崎 高校が外部だったので、世の中が盛り上がっていても、何でだろうと思っていたんですが、やはりワセダの人間になると慶応には負けられないというのが出てきますね。1年生のときは正直そうでもなかったんですが、2年、3年とやっているうちに先輩たちの思いみたいなものが重なってきて、そう感じるようになりました。
植森 自分も学年が上がるごとにというのは同じで、あとは単純に春の早慶戦はたくさんの人が見に来てくれるので、テンションが上がるというのもあります。
武上 基本的にはお二人と同じで、きょねんの秋に大敗しているので、負けられないですね。
――慶大で警戒する選手は
島崎 誰か一人というよりは、相手ディフェンスの仕組みに注意という感じですね。高校から上がってきた選手もいて、ワセダのやり方を知り尽くしてディフェンスの体系をしいてくるので、そこをいかに崩すかがカギになると思います。
植森 まず絶対止めなければいけないのはRB李卓です。ただ、彼を走らせないためには、まずOLとの勝負に勝つということが大事になってくるので、OLにも注意しないといけませんね。
武上 李卓を止めるために、相手のOLに勝つか、あるいはうまく使って、走るコースを限定させたいです。
――ワセダのキーマンは誰になってくるでしょうか
植森 島崎じゃない?
島崎 (笑)。まあ、LBの加藤ですかね。今年の目標にエースを止めるというのを掲げていましたし。あとはQBです。まだ誰がスターターになるかわからないんですけど、みんなタイプが違うので、QB次第でオフェンスもがらりと変わってくると思いますし。
植森オフェンスだとOLがどれだけ押せるかがキーになってきます。ディフェンスだとやはりLB加藤ですかね。あとは武上が李卓をタックルしてくれるかにかかっているんじゃないでしょうか。
武上 やめてくださいよ(笑)。
島崎 武上がスピードに乗る前に止めてくれれば。
武上 (笑)。僕も加藤さんですね。加藤さんにいかにタックルさせられるようにするかが大事だと思うので。
――最後に早慶戦に向けての意気込みをお願いします
島崎 春は最後ですし、4年間の思いがつまった一戦なので、絶対負けられないです。最後の早慶戦に負けると、社会に出ても言われるというのを聞いたことがあるのでそういう意味でも勝ちたいです。
植森 まず戦うべきというか、唯一秋のリーグで負けてしまった相手なので、今回は自分たちの実力を出し切って勝ちたいです。
武上 シーズン最初の試合で、ここの勝敗次第で流れが決まると思うので、絶対に勝ちたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井上陽介)
最前線の戦いにも要注目だ
◆植森翔(うえもり・しょう)(※写真右)
1994(平6)年9月8日生まれ。179センチ、92キロ。東京・早大学院高出身。社会科学部4年。DL。どの質問にも冷静かつ的確に答えてくださった植森選手。今回話題にもなった、タックルが成功したあとのウイニングランで会場を盛り上げてくれるはずです!
◆島崎貴弘(しまざき・たかひろ)(※写真中央)
1995(平7)年2月22日生まれ。183センチ、107キロ。神奈川・横浜立野高出身。スポーツ科学部4年。OL。高校時代から大柄で目立っていたという島崎選手ですが、さらなるフィジカルアップに取り組んでいるとのこと。その強靭なパワーで絶えずRBの走路を切り開いてくれることでしょう!
◆武上雅将史(たけがみ・まさし)(※写真左)
1996年(平8)2月23日生まれ。175センチ、90キロ。大阪・神奈川・法大二高出身。社会科学部3年。DL。終始笑顔を見せながら語ってくださいましたが、内容はフットボールのことを真剣に考えている様子が伝わってくるものでした。駆け引きにこだわりを持つ武上選手の、試合での動きに注目です!