日大・法大を倒し5年ぶりの関東制覇を決めた早大BIG BEARS。その原動力となったのが、最上級生の4年生であることには疑う余地はないだろう。連載5日目となる今回はその中からDL村橋洋祐主将(スポ4=大阪・豊中)、LB塚田紳太郎(商4=東京・早実)、K/P佐藤敏基(社4=東京・早大学院)、DB藤原健太郎(政経4=東京・早大学院)に、リーグ戦での戦い、4年生の絆、そして甲子園ボウルへの意気込みについて話を伺った。
「成長するきっかけ」(佐藤敏)
キッカー専任としてキックでチームに貢献しているK/P佐藤敏
——リーグ戦の振り返りをお願いしたいのですが、まず完封勝利を収めた中大戦を振り返っていかがですか
村橋 初戦だったので不安な気持ちもありました。オフェンスが出ていなくて結構しんどい展開だったのですが、ディフェンスとかで踏ん張りました。完封でしてが、内容は全然悪くて危機感を持った試合でした。
塚田 初戦ということもあって、不安だったのは一緒でした。内容はともかく完封できたということで、少しは自信につながりました。
佐藤敏 今季の初戦なので緊張はあったと思うのですが、勝てたのはすごく大きかったです。完封してくれたディフェンス陣には安心感がありましたし、オフェンスはオフェンスで課題が見えたのは良かったのかなと思います。
藤原 初戦で緊張していたということは皆と一緒で、実際自分たちがやってきたことがどれくらいなのかということが不安だったのですが、結果としては完封できましたし良かったということがあります。ただチームの出来としてはまだまだだなという部分があり、反省が見つかったかなと思います。
——続く明大、日体大、専大戦ではスコアの上では完勝でしたが内容の上ではいかがですか
村橋 明大戦は一番ひどかったなと。オフェンスは全然でないし、ディフェンスは要所で止めていたとはいえ結構ドライブされていました。勝ったのは良かったのですがこのままでは日大や法大に絶対勝てないなと思いました。明大戦でかなり危機感を持って、チームを変えようとなったので、日体大戦や専大戦では頑張れたと思います。
塚田 快勝できた中でも内容が悪かったというのは一緒です。日大戦の前に課題が見つかったことは良かったと思います。
佐藤敏 いい調子で問題なくシーズン終えられるのが一番いいとは思いますが、明大戦で課題とかが見つかって、チームを見直して、日大戦までに成長していくというきっかけとしてはいま考えると良かったと思います。
藤原 明大戦の前は、練習から雰囲気が良くなくて、全員が必死になりきれておらず、その結果内容として良くなかったと思います。チームが一つ変わるきっかけとなったのが明大戦だったと思います。
——そしてついに日大を倒しました。振り返っていかがですか
村橋 日大戦はスタッツ上ではぼろ負けなのですが、勝負所でディフェンスが機能して、総力を出して勝てたという感じで本当にうれしかったのですが、まだまだというところもあり、勝って反省できたのは良かったと思います。
塚田 結果としては勝ちでしたが内容では負けていました。その中でも要所要所で勝ちを拾ってこれる勝負強さのあるチームだと感じました。
佐藤敏 勝ってうれしいということが大きくて、スタッツ上は負けていても勝ちは勝ちということで日大に勝ててうれしかったのですが、個人的には反省とかミスが多い試合でした。
藤原 勝ちは勝ちだと思うのですが、要所でミスが自分にもあって、自分たちの実力半分、相手のミス半分で勝った感じです。このままだと自分たちの目標としている日本一にはまだ遠いなとは感じました。
——日大戦の試合前にはいけるという手ごたえはありましたか
村橋 準備はかなりやったつもりだったのですが、日大がどれだけ強いかはやってみないと分からないので、不安の方が大きかったです。
塚田 日大は一番準備してきた相手だったので、そういう自信もありましたが、王者と呼ばれる相手がどれだけ強いかやるまで分からなかったです。
佐藤敏 日大は強くて不安もありましたが、日大に勝てば甲子園に近づけるので、期待する気持ちも大きくて、不安と半々でした。
藤原 日大戦は夏からずっとフォーカスしてきた試合だった
ので、僕は皆と違って結構自信があって、絶対に勝てると思っていました。特に自分の関わっているディフェンスとキッキングという部分では、分かりきったことをやっていたので、試合に臨むうえで不安に思う部分は無かったですね。
——そして法大に勝って優勝を決めました。その試合を振り返っていかがでしたか
村橋 法大戦に関しては、準備の段階でチームの雰囲気が少し緩んでしまっていたので、それで少し苦労しました。1週間くらい前になってようやく士気も上がり始めて、モチベーションとしてはいい形で臨めたなと思います。負傷者が多くて不安だったのですが、総力戦でオフェンスも機能しましたし、ディフェンスも機能して全員で勝てたと思います。
——チームを引き締めるために工夫したことは
村橋 工夫というよりは厳しく、甘いところに関しては妥協せずにやりました。
——他のお三方は法大戦を振り返っていかがですか
塚田 こちらの攻撃も出て、ディフェンスも止めたいプレーは止まっていい感じだったのですが、逆に要所でミスをして、危ない試合になったので、そこをもう少し練られればこの先も勝っていけると思いました。
佐藤敏 村橋が負傷してしまって、日大戦に勝った後で緩みがちだったのですが、しっかりと村橋が締めてくれたので試合前に雰囲気が良くなりましたし、試合の日も村橋を甲子園に連れて行こうという気持ちもあって一丸となって戦えたので、法大戦前は日大戦と違って根拠はないですが負けないだろうなとある程度自信をもってやれました。
藤原 チームの雰囲気とか気持ちの部分では、最初は不安でしたが、ゲームウィークになるにつれてそこは良くなっていたのでそこは心配していなかったのです。逆に自分が負傷してしまい一回も練習できなくてその中で法大戦を迎えたので、日大戦より不安な気持ちで臨みました。それなので勝てて良かったなと思います。
「まだまだうまくなれる」(塚田)
未経験者ながら今季スターターを勝ち取ったLB塚田
——ではシーズンを通じたご自身のプレーを振り返っていかがでしたか
村橋 シーズン通じてあまり出ていないです。調子は良かったんですけどね。今季は結構マークされていたと思うのですが、結構プレッシャーをかけられたかなと思います。パフォーマンス自体は昨年より結構良くなっていると思ったのですが、いいところで負傷して悔しい部分が多いので、甲子園では借りを返そうと思います。
塚田 いいプレーもいくつかあったのですが、ミスもすごく多くて、これからまだまだうまくなれるところがあるなと思いました。
——LBの守備は外からの評判も良かったかと思いますが、手応えはありましたか
塚田 外からの評判はいいプレーばかり取り上げられてて、ミスなど反省することがすごく多いので、言われるほどではないかなと思います。
——佐藤敏選手はいかがですか
佐藤敏 FGとか決めるべきところで決められたのは良かったのですが、成功率が昨年と違い100パーセントではないのと、キックオフやパントでミスをすることもあったので、甲子園ボウルまでにレベルアップして、全てのキックで最大のパフォーマンスを発揮できるようにしたいです。
——佐藤敏選手はFGの記録がかかっていますね
佐藤敏 僕がFGの記録を更新することはチームの勝利につながると思っているので、記録を更新したいです。今季一本60ヤードを外しているのですが、次60ヤードがきたら決めたいと思います。甲子園で決めたら後世に名前が残ると思うので頑張ります。
——藤原選手はいかがでしょうか
藤原 今季は夏から負傷続きで練習をすごいやったかと言われるとそうでもないです。ただ昨年と比べて、昨年僕はタックルが課題で、タックルミスとかが多くてそれが原因で負けたこともあってすごく悔しいシーズンだったので、今季は練習出来る時はタックルを練習していました。成果が出たかは分からないのですが試合ではミスをしていないので成長したなと思います。練習できていない、試合もそんなに出れていないという面では、もう少し強い体を作るべきだったと思います。
——藤原選手はSFからCBにコンバートされましたが経緯は
藤原 元々自分の能力的にSFよりCBの方がいいという声を他の選手から聞いていて、自分の中でも考えているうちにCBで負傷者が出て、CBの久保颯(国教2=東京・早大学院)が留学でいなくなって人数的に層が薄くなったということがあって、前から話していたことが現実味を帯びてきました。やってみたら最初は慣れない部分もあったのですが、意外とできたのでそこは良かったなと思います。今は結構試合をこなして練習でもずっとCBをやっているのでもう慣れました。
「切り替えがちゃんとできている」(村橋)
今季主将として米式蹴球部を引っ張るDL村橋主将
――少し視点を変えた質問ですが4年生の雰囲気はいかがですか
村橋 4年生ですか?すごい仲良しです(笑)
塚田、佐藤敏、藤原 (笑)
佐藤敏 史上最高に仲のいい学年です(笑)
村橋 でも練習中は結構緊張感が張り詰めた感じですね。
藤原 オフェンスとディフェンスが思っていることをぶつけ合っています。毎週4年生でミーティングをやる機会があるんですけど、その時にお互いを指摘し合っていて、いい意味で緊張感を持ってやれていると思います。
――練習以外の時はどうですか
藤原 どうですか?
村橋 いいんじゃないでしょうか(笑)切り替えはちゃんとできています。いまは忙しいんで引退したら皆で遊びに行きたいと思います。
――春の対談でもお聞きしましたが村橋主将の印象はどうですか
藤原 誰よりもストイックですね。取り組みという部分でも同じ寮に住んでいるんですけど、一番早く起きて一番夜遅くまで何かをやっているのが村橋なので。そういう部分でもストイックだなって思います。妥協をしていないと感じますね。
塚田 すごい自信を持っているなと思いますね。すごく大きいし堂々として見えるので、自信があって頼れる存在ですね。
佐藤敏 ストイックでやることをしっかりやっているので、村橋に何か言われたら何も言えないですね。説得力があります。でもオフの時とかは気さくにいろんな人に話しかけているので、オンとオフがしっかりしているなと思います。
――村橋主将はストイックにやろうと心掛けていますか
村橋 いや、僕は普通にやっているつもりです。
一同 (笑)
佐藤敏 どんどんいいやつになってるじゃん(笑)
塚田 本当だよ。なんか一個くらい言っておかないと(笑)
村橋 ストイックというか、いろんなことを言わなければいけない立場なんで、その時にちゃんと言えるように何でもやり切るようにしています。僕が変なことをやっていたらチームが崩れちゃうので、僕が指摘するとちゃんとなるのでやるところはやろうと意識しています。
――キャプテンとしての理想像は
村橋 誰よりも取り組んで、その上でおかしいと思ったことはちゃんと言って妥協することなくやることが理想だと思っています。
――次に塚田選手の印象をお聞きしたいんですが
藤原 4年生になってすごい変わった選手の一人で、取り組みの姿勢が変わった印象です。
佐藤敏 徐々にBIG BEARSにはまっていった人ですね。あとは変わった体の構造をしているなと思います。本当に意外と頑張っていますね。
村橋 人に見せないように考えてやっているので。
藤原 フットボール的に頭が良いですね。
佐藤敏 あと未経験の星ですね。未経験者は塚田さんを目指そうってなっていますね。
――次は佐藤敏選手の印象をお願いします。
藤原 いい意味でちゃんと自分の世界を持っていると思います。もともとキッカー専任ということでチーム内に同じポジションの人がいなくて孤独な存在だと思うんですけど、その中で練習メニューであったりテーマを自分で調べたりして少しでもレベルアップにつなげようとしている姿勢があるので、すごい努力をしているなと思います。
塚田 メンタルがすごいと思います。
一同 (笑)
塚田 キッカー専任は周りにそんなにいなくて、お互い分かり合えることも少ないと思うんですけど、そんな中でもちゃんとやってきて試合でも結果を出してきているので、勝負強さはあると思います。
村橋 結構自分のポジションに誇りをもってやっていると思います。早大の歴史上キッカー専任というのはあまりいないと思うんですけど、キッカー専任という文化を引き継げないのは残念ですが、四年間頑張ってきたので、これを継続できたらいいなと思っています。
――藤原選手の印象はいかがですか
佐藤敏 藤原はキック主任をやっているんですけど高校の時は主将をやっていたので、全体の動きを把握していい方向に向かせてくれていると思います。
塚田 すごくリーダーシップがあって引き締める時はしっかり引き締めて、普段はいじられることもあってそのギャップが好きです(笑)
村橋 僕も信頼してて、チームをまとめるような発言をしてくれるので、かなり頼りにしています。
「歴史を変える」(藤原)
DBの核となりチームを支えるDB藤原
――甲子園ボウルへ向けての質問に移りますが、あなたにとっての甲子園ボウルとは聞かれたらどう答えますか
村橋 憧れですね。四年間行ったこともなかったので。ことしは手の届くところまできているので、しっかり甲子園ボウルに行って勝って、これまでの歴史を変えたいと思います。
塚田 僕は大学からアメフトを始めたんですけど、関西のアメフトをあまり知らないのでそれを知ることができるし、新しい世界だと思います。
佐藤敏 大学でアメフトをやっている以上は目指す場所は甲子園ボウルだと思うので、そこに出れるとなったら幸せなことですし、BIG BEARSはいまだに甲子園で勝ったことがないので、勝って初めて甲子園で勝った代として歴史を変えることができたらいいなと思います。
藤原 四年間行きたいなと思って一つの目標としてやってきて、手の届くところまできてそのくらい高いところにありました。いまは甲子園ボウルが現実味を帯びてきたところで、自分たちの目標を再認識できました。甲子園ボウルが目標ではなく、甲子園ボウルで勝って、ライスボウルでも勝つことが最終的な目標なので。
――では最後に甲子園ボウルに向けて抱負をお願いします
村橋 行くだけ満足するのではなく、相手も甲子園という舞台で緊張していると思いますが勝つ準備をしっかりして絶対に勝ちたいと思います。
塚田 甲子園ボウルで勝てばBIG BEARSの歴史上初めてなので、全力で勝ちにいきます。
佐藤敏 甲子園ボウルで勝ったことのないチームなので、甲子園ボウルで勝ってライスボウルに駒を進められるように絶対に勝ちたいと思います。
藤原 僕らが勝つことで学生フットボール界の歴史を変えられるという思いでやってきたので、何としても甲子園ボウルで勝って僕らがやってきたことが間違っていなかったことを証明したいと思います。
——ありがとうございました!
(取材・編集 鈴木泰介、近藤廉一郎)
◆村橋洋祐(むらはし・ようすけ)(※写真中央左)
1993年(平5)9月28日生まれ。身長186センチ、体重105キロ。大阪・豊中高出身。スポーツ科学部4年。主将。ポジションはDL。今秋は負傷の影響もあり試合出場時間が短い村橋主将。甲子園ボウルではこれまでの分も含めて大暴れしてくれることに期待です!
◆佐藤敏基(さとう・としき)(※写真右)
1993年(平5)9月30日生まれ。178センチ、76キロ。東京・早大学院高出身。社会科学部4年。ポジションはK/P。大学屈指のキック力を持つ佐藤敏選手の目標は日本記録のFG。これが決まれば、BIG BEARSの全国制覇に大きく近づくことでしょう!
◆塚田紳太郎(つかだ・しんたろう)(※写真中央右)
1993年(平5)7月23日生まれ。177センチ、81キロ。東京・早実高出身。商学部4年。ポジションはLB。いぶし銀のプレーが身の上の塚田選手。その活躍で関西王者にして最強のランチーム・立命大のアタックを封じます!
◆藤原健太郎(ふじわら・けんたろう)(※写真左)
1993年(平5)4月11日生まれ。177センチ、81キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部4年。ポジションはDB。今季はキック主任も務める藤原選手。見事なキックの裏には、藤原選手の努力があります!