【連載】『第63回早慶戦直前特集』 第10回 第63回早慶戦展望

米式蹴球

 決して負けることが許されない戦いがここにある――。早慶アメリカンフットボール対校戦はそのシーズンの行く末を占う上でも重要な試合だ。ことしで63回目を迎えるこの一戦は29日(水・祝)、駒沢陸上競技場で行われる。昨年は第4クオーター(Q)で慶大に逆転され、苦汁をなめる結果となった早大。何としてでも勝利を手にしたい新生早大BIG BEARSは、慶大UNICORNSを相手にどんな戦いを見せてくれるのだろうか。

 早大の看板とも呼べるオフェンスはランだ。今季はRB藤井光成(政経4=東京・早大学院)、RB須貝和弘(創理3=東京・早大学院)、RB北條淳士(社3=東京・佼成学園)、の三人がランオフェンスをけん引することになるだろう。スピードタイプの藤井、機動力タイプでインサイドの縦への突破が得意の須貝、鋭いカットバックで相手ディフェンスを翻ろうする北條のランがTDにつながる走りを演出する。そのランオフェンスを支える屋台骨となるのが実力者そろうOLユニットだ。OL上石一輝(創理4=東京・早大学院)、OL松原寛志(法3=東京・早大学院)といった経験豊かなタレントが最前列に構えていることは、慶大に脅威を与える。不安視されるとすればWRユニットだろうか。例年に比べ体格の面で少し劣っているが、意識的に取り組んでいるランアフターキャッチやウエイト強化で差を埋められたかが焦点となる。そして、これらを率いるのは司令塔であるQB。今季のQBユニットも実力が拮抗(きっこう)しており、し烈なスターター争いが繰り広げられている。ユニットリーダーのQB政本悠紀(創理4=東京都市大付)を中心に、QB笹木雄太(法2=東京・早大学院)、QB坂梨陽木(政経2=東京・早大学院)といった実力者揃いのQB陣をいかに効果的に起用できるか。就任3年目で真価が問われる濱部昇監督(昭62教卒=東京・早大学院)の手腕に期待がかかる。

互いのプライドがぶつかり合い火花を散らす

 一方のディフェンス陣も経験豊富な選手が多く残っている。ディフェンスの最前列、DLには今季主将のDL村橋洋祐(スポ4=大阪・豊中)とDL庭田和幸(創理4=東京・早大学院)がツインタワーを形成し、慶大ランオフェンスに立ちふさがる。そして、プレー理解度の高く大学日本代表にも選ばれた、LBコグラン・ケビン副将(商4=東京・早大学院)、LB加藤樹(商3=東京・早大学院)を擁するLBは早大の大きな強みだ。課題となるパスディフェンス改善を図れれば鉄壁の守備をつくり上げることができるだろう。また、最後の砦となるDBユニットを、DB寺中健悟副将(教4=東京・早大学院)、DB藤原健太郎(政経4=東京・早大学院)ら実力のある二人が盛り上げ、慶大オフェンスを迎え撃つ。試合の流れを変えるインターセプトが早大の勝利をもたらすカギとなるかもしれない。

 対する慶大は、大黒柱のQB高木翼氏が卒業したことにより、昨年とは異なった戦術を仕掛けてくることが予想される。村橋主将と同じ『90』を背負うDL金子陽亮主将や強力RB李卓を中心にどういったチームを築き上げてきたかは未知数であり、警戒が必要だ。そして、慶大のここまでの急成長を支えてきたデイビット・スタントHCの采配にも注目が集まる。

 今季のチームスローガンに『覚悟』を掲げたBIG BEARS。昨年からの課題であるスタミナとメンタル面を改善し、最後まで戦い抜けるチームとなったかが、この一戦の勝敗を大きく左右することだろう。創部以来いまだ成し遂げられていない『日本一』へつながる最初の一歩を、2年ぶりの勝利で飾ることができるか。熱い戦いを告げるキックオフの瞬間は、間もなくやって来る。

(記事 近藤廉一郎、写真 井上義之氏)

★その他の早慶戦での注目選手

QB坂梨陽木(政経2=東京・早大学院)

昨年、ルーキーながら秋シーズンのスターターを務めたQB。2年目のことしはさらなる飛躍が期待される。

RB北條淳士(社3=東京・佼成学園)

BIG BEARSが誇る多彩なRB陣の一人。鋭いカットバックが得意の機動力タイプのRBであり、慶大ディフェンスを翻弄するランに注目だ。

WR岡田義博(教4=東京・早実)

DBとの駆け引きや競り合いに強く、ロングパスなどのビッグプレーを得意とする選手。今季のWRのターゲットとなるだろう。

DB久保颯(国教2=東京・早大学院)

U―19日本代表に選ばれた期待のDB。長身を生かしたプレーで慶大のパスオフェンスをシャットアウトする。

K/P佐藤敏基(社4=東京・早大学院)

昨シーズンも50ヤードを超えるFGを成功させたキックのスペシャリスト。試合終了間際での出番でもきっちりとFGを決めて勝利をつかみ取りたい。