アメフトが究極のチームスポーツと呼ばれる所以には、選手を影で支えるスタッフの存在がある。アスレティックトレーナー(AT)、ストレングス&コンディショニングトレーナー(SC)、アナライジングスタッフ(AS)といったスタッフ陣の中で、今回はマネージャー(MGR)に着目。選手にとって心地の良い環境を整えるために尽力するマネージャーの役割とは。主務の櫻井綾乃(商4=東京・佼成学園女子)、相澤恵(法3=神奈川・日女大付)、徳前藍(政経3=石川・金沢泉丘)、牧山加奈子(創理2=福岡・明治学園)、4人の素顔に迫った。
※この取材は11月12日に行われたものです。
MGRとは
――アメフトというスポーツを知ったきっかけは
櫻井 私は父が元々アメフトをやっていたので存在自体は知っていたのですが、入学してからBIGBEARSの勧誘を受けて早慶戦を見に行ったのが最初にアメフトというスポーツをしっかりと認識したきっかけです。
――高校のときにアメフトを見たことはありましたか
櫻井 NFLをテレビで見るぐらいで、日本のアメフトを見たことはほとんどなかったですね。
櫻井主務
――相澤さんはいかがですか
相澤 兄が他の大学でアメフトをしていたので、高校生のとき、受験勉強の息抜きにアメフトを見に行っていました。独特の雰囲気を肌で感じて、大学に入ったら私もアメフトに携わりたいと思って。受験でワセダに入ったので、ワセダでしかできないことをやりたいなと思っていて、サークルに入るのもちょっと違うし、どうせなら体育会に入ろうと思っていたらたまたま縁があったのでBIG BEARSに入りました。
――BIG BEARS FEASTAには行きましたか
相澤 それが行ってないんですよ(笑)。
櫻井 突然現れたよね(笑)。
相澤 そうなんです(笑)。先輩に突然連絡して入部しました。
――徳前さん、牧山さんはいかがですか
徳前 石川県出身なんですけど、地元にはアメフトというものがほとんど存在していなくて、高校生はアメフトの存在をほぼ知らなかったんです。東京の大学に入って体育会には入りたいと思っていたのですが、最初アメフトには全然興味がなくて。BIG BEARS FESTAに行ったときにもすごい激しいスポーツだなと思って、痛そうだし大変だなと思ったんですけど、見ているうちにアメフトならではの熱さに惹かれてBIGBEARSに入りました。
牧山 私はアメフトという言葉は知っていたんですけど、意識し始めたのは吉田さん(WR吉田朋恭、創理4=東京・早実)に勧誘されたときです。吉田さんは同じ学部で、「アメフト興味ある?」と言われたのがきっかけで新歓に行って、最近になってようやくどんなスポーツか分かってきました。最初はルールもなにも分からなかったので。
相澤 最初牧山はすごいお嬢様キャラだったんですよ。いまはこんな感じで落ち着きましたけど(笑)。
牧山 そんなことないですよ!お嬢様ではないです(笑)。
――数あるスタッフの中で、なぜマネージャーを選んだのですか
牧山 マネージャーしか頭になかったですね。
櫻井 私もそうかも。
徳前 マネージャーしかないかなと思っていました。
櫻井 今はアナライジングスタッフ(AS)がいるのですが、私が入部したときにはその役職があまり確立されていなくて、部に入るとしたらトレーナーかマネージャーしか選択肢がなかったので迷わずマネージャーを選びました。この子たち(相澤、徳前、牧山)はある程度の選択肢があったと思います。
――マネージャーの仕事内容は、学年によって役割が違うのですか
相澤 1年生が基本的にグラウンドワークでビデオを撮ったりしていて、2年生ぐらいからそれぞれ仕事を引継いでもらっていくという感じですね。
櫻井 2年、3年は同じような仕事をこなして、4年生は全然違う仕事内容をしています。私がやっている主務は特に違いますね。4年生という視点になるので、関わり方がだいぶ変わってくると思います。3年生は2年生の延長のようなイメージですね。
牧山
――主務はどんな仕事をしているのですか
櫻井 マネージャーの仕事だけというよりは、あらゆることを自分につなげないといけないですね。例えば選手がちょっとしたミスをしたりトラブルをしたことも、個人としては関係なく見えても結果的にはチームに全体に関わってくるので、自分が首を突っ込んである程度解決まで図って、という仕事もあります。1、2、3年生のときに関係のなかったことも4年生になると関係してくるので、いままでとはモノの見方が変わりました。実感としては4年生になってまた一から色々なことを覚え直していったという感じですね。
――練習中にはどんな仕事をしていますか
徳前 ボトルワークとビデオ撮りと、ビデオをパソコンに落としたりするのが1年生を中心にする仕事で、上級生は声出しをします。
櫻井 声出しだとなんか・・・(笑)。チアーアップです(笑)。
牧山 雰囲気作りですね(笑)。
――試合中はどのような仕事をしていますか
相澤 試合中は受付でチケットを売ったり物販をする役割と、牧山は記録委員といって、試合全部の記録をとる係をしています。
牧山 記録はことしの早慶戦から覚え始めました。最初はヤード数を見るのに精一杯で大変でしたね。
徳前 スポッターもやっています。
相澤 コーチ同士が無線で試合中連絡を取るんですけど、その準備ですね。ね、徳前(笑)!
徳前 そういうことです(笑)。
「勝ったときが一番うれしい」
――お互いの他己紹介をお願いします
相澤 じゃあまず主務(櫻井)が思う牧山の良いところを(笑)。
櫻井 牧山は入ってきたときには不安な面もあったんですけど、2年生になってから私が学年でひとりということもあって通常の2年生よりも仕事をやらせることが多かったのですが、いまは責任感を持って仕事をやってくれますね。なによりあまり感情の起伏がない、落ち込むことがないから周りも気を使わなくていいですね。ミスをしてもポジティブに切り替えて仕事をやってくれるので、私は頼もしいと思っています。
相澤 あと面倒見がいい!
徳前 うん、そうそう。こう見えて後輩をまとめていて。
櫻井 親分(笑)。
牧山 もうちょっといい言葉に変えてくださいよ(笑)。
一同 (笑)。
相澤 あと、いい意味で気が強いですよね。自分の意見をちゃんと言えるのはすごくいいことだと思います。
徳前 左右されないもんね。
牧山 ありがとうございます(笑)。でも、こうなれたのもBIG BEARSのおかげだと思ってるので。
一同 おお(笑)!
相澤
――では次に徳前さんについてお願いします
櫻井 徳前は特にないんで(笑)。
徳前 え、なにかありますよね(笑)?
相澤 いつもニコニコしているところかな(笑)。マネージャーらしいマネージャーです。
牧山 チアーアップされたい存在ですね。
櫻井 そうだね(笑)。
相澤 人の気持ちには敏感だと思います(笑)。
櫻井 人の気持ちに敏感っていうのは、困って相談したときにちゃんと相談にくれるっていう優しさがあるっていうことだと思います。
相澤 優しいですね。あと、こうやっていじられるのもいいキャラだと思います(笑)。愛されキャラですね。
――相澤さんについては
徳前 頭がいいと思います。効率がいいし、マネージャーに向いているなと思います。
櫻井 それは思う。すごく気を使えるよね。
牧山 視野が広いと思います。
徳前 そうそう。マネージャーになるべくしてなった、という感じです。
――では、主務も務める櫻井さんはどんな方ですか
相澤 度胸がある(笑)。
徳前 わかる。主務より主将キャラ(笑)。
牧山 サバサバしていますよね。
相澤 いい意味で男っぽい感じです。
牧山 綾乃さん(櫻井)こそ落ち込まなくないですか?
徳前 そうそう。上がり下がりがなくて、後輩からしたらとても頼もしい存在です。
相澤 あとは変に上下関係を気にしすぎない、フランクな先輩です。相談しやすいし、接しやすいですね。
櫻井 ありがとう(笑)。
試合中の記録を取るのもMGRの仕事だ
――マネージャーをやっていて、どんなときにやりがいを感じますか
相澤 やりがいとはちょっと違うかもしれないんですけど、早大に入れたことがすごく嬉しくて、早大生として早慶戦の運営に関われていることをすごく嬉しく思います。
徳前 わかる。『紺碧の空』を聞いたときに感動しますね。
櫻井 私は色々な人に会えるときですね。BIG BEARSというだけで普段会えないようなOBさんや会社の社長さんにすんなり会えるのはすごいことだと思いますね。同じ位置で話してもらえたり、アメフトという共通の話題があることで人脈が広がったと思うので、体育会に入ってよかったです。
牧山 すごい単純ですけど、私は試合に勝ったときです。私がやったことの意味があったのかな、と思えるので。選手にとって直接は影響を与えられてないかもしれないけど、勝てたらチームの一員として嬉しいです。
櫻井 かわいいね(笑)。
徳前 うん、マネージャーっぽい(笑)。マネージャーって試合に直接関わるシーンが少ないのでやりがいを感じることが難しかったりもするんですけど、選手には感じることのできない、BIG BEARSを支えてくれているOBさんとかファンクラブの人とかの気持ちを直接聞くことができることがいいところだと思います。
――ではマネージャーのみなさんから見た、各学年の選手のみなさんの印象を教えてください
櫻井 学年でマネージャーがひとりだということもあってすごく甘やかしてもらっていて、怒られたこともないので、私は同期のことをすごく好きですね。悪い人がひとりもいないです。自由な学年なんですけど、それぞれの人柄がすごくいいと思います。みんな優しいです。
相澤 3年生は不器用だけど真面目な学年ですね。
牧山 2年生は、メリハリのある学年です。
『日本一』にふさわしいチームに
――春の早慶戦はチームが中心となって運営されましたが、結果としてはどうでしたか
櫻井 結果としてはしっかりと運営できたと思ったんですけど、まだやれることはあったのかなと思います。反省があるのは仕方ないので、しっかりと来年に引き継いで、次の子たちがちゃんとやってくれればいいなと思います。でも試合には負けてしまったので、それがすごく悔しかったです。
相澤 いま綾乃さんが言ったように、観客数の点で見たら前年より人が入ったので良かったと思うのですが、主務の4年生がひとりという状況の中で下級生にできたことがもっとあったのではないかと思います。ドタバタして綾乃さんに任せてしまう場面があったので、そこは反省点だと思いました。
徳前
――3年生は来季のトップとして、早慶戦運営への意気込みをお願いします
徳前 来季は主催校ではなくなるので仕事の量としては減るのですが、ことしの反省をもう一回見つめ直してそれを生かしたいと思います。
――櫻井さんは2週間後の早慶戦で引退となりますが、そこまでどのように過ごしたいですか
櫻井 「日本一」という目標はなくなってしまったのですが、4年生全体でこのチームが日本一としてふさわしいチームだったと思えるレベルまで持っていくという意思統一を図ったので、それに向かって努力をしていきたいです。最終戦が早慶戦ということですが、春に負けたときは本当に悔しかったので、今回は絶対に負けないように自分のできることはすべてやり尽くして早慶戦に向かいたいと思っています。努力を怠らないで、勝っても負けても終わったときに「これでよかったな」と思えるような2週間にしたいです。同期でも一生会わない人とかも出てくるかもしれないし、後輩も会う機会もなかなかないと思うので、残り少ないですけど、同期や後輩含め色々な子と話し尽くしたいということをいまは考えています。
――ありがとうございます。相澤さん、徳前さん、牧山さんも最終戦への意気込みをお願いします
相澤 私はこの一年間気を抜きがちだったというか、緩んでいてやる気がなかった時期もあったし、周りに迷惑をかけていた時期もありました。4年生の引退が近づいて次に自分たちがトップになるので、それをすごく反省して、いまは色々な大学の人と話を積極的にしようと思っています。いままでスタッフにとっては「日本一」が具体的な目標として見えないと思っていたときもあったんですけど、逆に考えるとスタッフは選手より人数が少なくて、一人ひとりが活躍できる場が多いので、来年は後悔しない1年間を過ごしたいなと思います。毎日自分との戦いになると思いますが、選手とスタッフ全員が目標にしている「日本一」に絶対なりたいので、もうやるしかないなと思います。
牧山 まだ2年生で来年のことや4年生になったときのことは全然考えられないんですけど、私はいまのチームがすごく好きなので、この2週間はなるべく選手と近くにいるように努力して、早慶戦は絶対に勝ちたいと思います。
徳前 ことしは3年生としての自覚が足りなかったと思っていて、来年4年生になることに対して毎日不安なんですけど、もうトップになるので、自分にできることを精一杯やりたいです。マネージャーはいままでグラウンドに出て声を出すことがあまりなくてチームとの一体感をそこまで感じられなかったのですが、来季はスタッフと選手がもっと一丸になるためにもっと積極的にチアーアップしていきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 巖千咲)
◆櫻井綾乃(さくらい・あやの)(※写真中央左)
1992年(平4)4月11日生まれ。東京・佼成学園女子高出身。商学部4年。主務。好きな食べものはラーメンで、高田馬場周辺にある「三歩一」というラーメン屋さんが特にお気に入りだそう。4年生対談でもラーメンの話題がありましたが、ハードな日々をこなすみなさんのソウルフードなのかもしれませんね
◆相澤恵(あいざわ・めぐみ)(※写真左)
1993年(平5)9月8日生まれ。神奈川・日本女子大付高出身。法学部3年。最近、スパに行くことにはまっているそう。普段はチームのために働く相澤さんも、オフの日は日頃の疲れを癒すべくゆったりした時間を過ごしているそうです
◆徳前藍(とくまえ・あい)(※写真右)
1993年(平5)9月7日生まれ。石川・金沢泉丘高出身。政治経済学部3年。ストレス解消法は食べることだという徳前さん。好きな言葉は「大盛り」だそうで、細い体からは想像できない意外な答えが返ってきました
◆牧山加奈子(まきやま・かなこ)(※写真中央右)
1994年(平6)5月3日生まれ。福岡・明治学園高出身。創造理工学部2年。オフの日にはプールにいって息抜きをしているという牧山さん。平均で1・5キロ~2キロも泳ぐそうで、パワフルな一面も知ることができました