【連載】『PRIDE』第1回 QB坂梨陽木×LB田口凌×DL武上雅将史

米式蹴球

 近年まれにみるルーキーの活躍が印象に残ったことしのBIGBEARS。その中心となったのがQB坂梨陽木(政経1=東京・早大学院)、LB田口凌(社1=東京・早大学院)、DL武上雅将史(社1=神奈川・法大二)だ。未来のBIGBEARSを担う3人のホープに高校と大学のアメフトの違いや4年生への思いなどを伺った。

※この取材は11月13日に行われたものです。

シーズン中に成長を実感

――まずは大学でもアメフトを続けた理由を教えてください

坂梨 僕はアメフトを始めたのも兄の影響で、高校も大学も同じで、小学生のときからワセダのフットボールに憧れていました。大学に入っても日本一になりたいなと思って入部しました。

田口 僕は高校からアメフトを始めました。グラウンドの反対側で練習されているBIGBEARSの方々が格好良かったというか憧れで、レベルの高いフットボールを大学で続けていきたいと思っていました。

武上 大学でアメフトを続けた理由というのは自然なかたちであって、ワセダを選んだ理由は、他大に行くことは決まっていたので、様々な大学の練習を見学させてもらっていました。その中で環境面や設備面からワセダを選びました。ワセダに行きたいと思った理由はアメフトが第一です。

――今のポジションを始めた理由は

田口 僕は最初高校で入部したときに3年生だったケビンさんを見て、いいなあと思ってLBになりました。

坂梨 QBも練習してたじゃん(笑)。

田口 あれはカウントしない(笑)。

坂梨 ポジション体験というのがあって、様々なポジションを回る機会があって。投げるのが上手いんですよ。

田口 ちょっと憧れていましたね。

既にチームに欠かせない選手と成長した坂梨

――じゃあもしQBを続けていたら坂梨選手と今頃ポジション争いをしていたかもしれませんね

田口 まあそうしたら勝っていたかな(笑)。

一同 (笑)

坂梨 僕は最初はQBかWRか、DBをやりたくて、その時に自分の兄がやっていたので。そこで先生に「QBかWRをやりたいです」と言ったら、先生に「投げてみろ」と言われ投げてみたら、そのままQBになりました。結構WRとかも楽しそうだなと思いますが、僕はQB一筋ですね。

武上 自分も高校のときからずっとDLをやっています。当時の先輩が格好良かったですね。まあワセダのDLもカッコいいですが。

一同(笑)

――濱部昇監督(昭62教卒=東京・早大学院)はどういった監督ですか

坂梨 僕は小学生のときから知っている先生でもあって、よく兄から話を聞いていました。自分も直接指導を受けることになったのですが、とにかくプレー面もそうですが、人格形成の部分に力を入れてらっしゃる先生だと感じます。先生(濱部監督)に会って、自分の人格が変わったと感じる部分もあります。先生がよくおっしゃるのは「社会に出てからもリーダーになれるような選手、人になれ」ことで、何回も言われています。

田口 全くその通りだと思います。

坂梨 ちゃんと言えよ(笑)。

武上 本当に坂梨くんに同感です(笑)。

――プレー面で高校と大学の違いは一番どの部分に感じますか

坂梨 QBの目からですと、やはりディフェンスのカバーのバリエーションがかなり増えて、投げるのが難しくなったと感じています。でも、高校に比べて大学ではAS(アナライジングスタッフ)などの方々から分析の面ではかなり助けてもらっているので、見つかった課題をミーティングなどでつぶして、今ではかなり慣れることができました。

田口 プレースピードが高校とは全く違いました。OLが速いのはもちろんですし、スキル陣も足が速くて、クイックネスもすごくて、最初はプレースピードについていくのに必死でした。またディフェンスの理解度が高校レベルとは全く異なって、高校では自分のポジションの動きだけ分かっている人も多かったのですが、大学ではミーティングも長く、アサイメントの共通理解度が格段に違います。

武上 自分はDLで、直接OLと当たるポジションなのですが、やはり当たって感じるのは、強さとうまさが全く異なりますね。ブリッツなども高校の何倍もあって、一つ一つのブリッツの完成度を上げるために、練習を何倍もしています。

――通用すると感じた部分、自信を持った点はありますか

坂梨 僕は高校のときから濱部先生から教わっていて、作戦も高校時から似ている部分もあり、慣れ親しんだプレーをできるという点では、プレーの理解度は負けていないと思います。

田口 まだ全然通用できていないですね。高校で培ってきた感覚というか、1対1で勝てないときに避けたり交わしたりという技術は、コンタクトを避けることができるので、使えるなと思います。

武上 正直、通用すると感じている部分は少ないですね。辛うじて対抗できるレベルにあるのは、スタートの速さです。

――1年生というと新人早慶戦がありますが、振り返ってみるといかがでしたか

坂梨 慶大は慶應義塾高出身でフットボールを経験してきた選手が多くいたのですが、僕らのチームは経験者が半分ぐらいでそんなに多くなかったので、とにかくみんなでミーティングして、やるしかなかったという感じでした。オフェンスは僕のミスでかなり負けてしまったので、今でも本当に悔しいです。

田口 今思うと勝ちたかったですね。勝ちたかったのですが、試合内容としては非常に良い試合でした。ディフェンスは出されつつも止めつつといった感じで、内容の濃い試合でした。最後、結果としては負けてしまったので、そこは悔しかったです。まあ良い経験でした。

武上 自分はちょっと1Qにけがで抜けてしまって(笑)。1年生だけでプレーする唯一の試合で、とてもまとまりが生まれた試合だったと思います。

――ことしの1年生というのはどういった代ですか

坂梨 仲が良いですね。

武上 うん。

――どこか遊びに行ったりすることはあるのですか

坂梨 夏休みには全員で海に行ったりしましたね。バレーボールとかして。

田口 うん、楽しかった。

坂梨 合宿後とかちょっとオフがあるので、遊びに行きました。

「日大を強く意識し過ぎた」

――坂梨選手は春からスターターでしたが

坂梨 春はとにかくがむしゃらにプレーしていました。QBは4人いて、春の段階では、全員イーブンの状態から始まりました。週ごとにスターターが変わって、1本目の選手が次の週は3本目になっていたりしていて、その中で自分が意識していたことは、1本目2本目に関係なく自分のプレーをやろうということでした。たまたま調子が良いときにスターターをやらせてもらっていたという感じでした。とにかく一生懸命やっていたなというのが感想です。

――明大戦は途中からの登場となりましたが

坂梨 公式戦初試合でいきなり出場させて頂いたわけですが、その時も緊張というよりは、与えられた仕事をやるしかないという気持ちで割り切ってプレーしていました。

――逆転勝利に貢献されましたが

坂梨 あのパスは僕の力ではないので(笑)。あの試合はあのパスしか決まっていないので。決まったパスも隆貴さん(WR鈴木隆貴、法2=東京・早大学院)がナイスキャッチしてくれたものでした。

――武上選手も春からスターターとして試合に出場されてきましたが、最初に抜擢されたときはどういった気持ちでしたか

武上 特に緊張とかはありませんでした。春は自分のことしか考えていませんでした。というのもとにかく自分のせいで負けたくなくて、ミスにしないようにプレーしていましたが、秋は負けたら終わりという状況で自分が1対1で勝たなきゃいけないと考えて、チームのことも考えることができるようになりました。

――田口選手は控えとして、立大戦や法大戦などで出場されていました

田口 いつでも出場できるように準備していました。フィールドに立てば、そこでプレーしている者が1枚目なので、出たチャンスをものにしたいなと思いながらプレーしています。

――立大戦では第1クオーター(Q)でゴール前での4thダウンを止めたプレーは大きかったのではないでしょうか

武上 そうですね。あのプレーで試合の流れが変わりましたし、勢いがこちらに戻ったと思います。ゴール前まで追い込まれて、相手に傾きかけた流れがこっちに戻りました。チームを救ったプレーだと思います。

田口 (笑)

――あれはどなたが止めたプレーだったのでしょうか

田口 庭田さん(DL庭田和幸、創理3=東京・早大学院)がタックルしていたのを、ぼくがサポートしたかたちになりました。

タックルへと向かう武上

――その後、日大、法大と強豪2校と対戦しましたがいかがでしたか

坂梨 昔から知っているすごく強いチームで、兄の代から力があるチームだったので、とにかく気持ちで日大を強く意識し過ぎたのかなと思います。「あの日大と戦うんだ」とかなり意識過ぎて、体が固まってあまり自分のプレーができませんでした。その次の法大戦は負けてしまって、後がなく失うものは何もない状況だったので、あの法大だけれども、名前に負けずにとにかく思い切りやろうという気持ちでオフェンス一丸となって臨むことができました。

武上 自分は法大二高出身で法大に所属している先輩などからも試合中も「元気か?」などと声を掛けられることもありました(笑)。自分は倒しにいく気持ちでしたが、向こうは余裕を持たれていて、圧倒されたという感じでした。

田口 WRを中心としたスキル陣が一回りぐらいすごい選手がたくさんがいて、速くてすごくて圧倒されました。

――他の対談などでも坂梨選手は「リーダーシップが出てきた」という声も聞かれるのですが、意識されていることもあるのでしょうか

坂梨 僕が思うQBはオフェンスを作っていかなきゃ存在だと考えていて、結構先生から高校のときからQBとはこうあるべきものといったものを教えてこまれています。例えば高校のときには練習の2時間半くらい前から来て、一番早く来て一番遅くまでグラウンドに残って、そういったことで姿を見せていくといったことを教えられてきました。大学では授業の関係などもあり、そういったことはできないのですが、そういった教えを実践する気持ちは強くなってきています。まだまだ全然甘いですが、とにかくオフェンスを円滑にプレーさせられるようにというのは非常に強く意識しています。

「勝利にこだわってやっていきたい」

――早慶戦にはどういったイメージを持っていますか

坂梨 とにかく絶対に負けられない試合だと思います。本当に小さい頃からワセダが好きで、赤と紺色のTシャツは着たくないというレベルだったので。春の早慶戦は観客もたくさん入って楽しいイメージがありますが、今回は最終戦なので、とにかく本気でぶつかり合う試合というイメージです。

田口 お互いそうだと思うのですが、早慶戦となるだけで(他の試合とは)気持ちは全然違うと思います。うち(の勢い)も上がってる分、あいても上がってると思うので、どっちが勝利してもおかしくない試合になると思います。高校のときは一度も負けていなくて、春は負けてしまったのは今回リベンジしたいですね。

武上 チームの取り組み方や実際に試合に出場して、特別なものを感じますし、それだけ負けてはいけないと思います。

立大戦、田口のゴール前でピンチでの活躍も光った

――慶大の印象は

坂梨 オフェンスの目線からだと、すごくアグレッシブな印象です。マンツーマンなどもしてきますし。うちのWR、RB陣は本当に上手いと思うので、そこで負けていかないようにしたいです。

田口 ザ・大学というか社会人みたいなクオリティーの高いチームだなというのはスカウティングをしていて思います。QBもWRもRBも全員すごいので、そのすごいオフェンスを止めたいという気持ちもあります。点の取り合いになるかもしれないですね。

――ではオフェンスに期待ですね

武上 そうですね。

坂梨 なんでそういうところだけ早いんだよ!(笑)

武上 勢いのあるチームだと思います。ノッているときは大量点を取ってくるので。相手のペースを崩していければと思います。

――4年生と共に戦うのは次戦が最後になりますが、4年生に対する感謝の念はありますか

坂梨 挙げきれないですね(笑)

武上 やはり自分のポジションの方を上げさせてもらうと、DL鈴木啓士さん(社4=東京・早実)です。いまはあまり試合に出場できていませんが、本当に試合に出てほしいという気持ちはあります。あと、峯さんにはディフェンスを一つにまとめてもらっているので、有終の美を飾ることで、感謝の気持ちを伝えたいですね。

坂梨 僕は同じQBの内村さん(QB内村竜也、法4=東京・早実)です。本当に本当にお世話になっている先輩で、3月から練習に来ているのですが、その時もずっと声を掛けて下さって、僕が高校3年のときは、先生がBIGBEARSのほうを見ていて、早大学院高にはQBコーチがいなかったのですが、大学に入ってまた一から教えて頂きました。私生活でも結構面倒を見て頂いたので、内村さんのためにも頑張りたいです。

田口 僕も同じポジションの先輩の峯さんなのですが、峯さんはプレーの理解度とかもすごいと思うんですが、ケビンさんや加藤さん(LB加藤樹、商2=東京・早大学院)とかはトップアスリートで真似できるところと、正直できないなと感じる部分もあるのですが、峯さんはすごいトップアスリートではないのですが、理解度であったり、練習で培った努力でカバーしている面があって、自分もそういったところは真似していきたいと思っています。

――今後どういった選手に成長していきたいですか

坂梨 僕は先ほどリーダーシップという話がありましたが、もっとリーダーシップを持ってオフェンスを引っ張ることができるような選手になりたいです。具体的には、ハドルワークといって、「この試合頑張りましょう」だとか「このプレー集中しましょう」などとハドルの中で言うのですが、よりオフェンスがスムーズに気持ちよく滞りなくオフェンスを作れるQBになりたいです。

田口 見た通り身長も低いのですが、先ほどの峯さんの話でもあったように理解度や経験で磨いていきたいと思います。また、ビッグプレーができる選手は非常に重要だと思います。極端な話、多少ミスをしても、ディフェンスはボールを奪うためにプレーしているので、それをカバーできるタックルやインターセプトをできるような選手になりたいです。

武上 誰よりも練習してディフェンス全体を引っ張れるような存在になりたいですね。

――最後に慶大戦への意気込みをお願いします

坂梨 最終戦で、4年生とプレーできる最後の機会なので、いつも言っているのですが、4年生のために勝ちに行きたいです。オフェンスで勝ったと言われるような試合にしたいです。

田口 まだスターティングメンバーに入れてはいないので、正直まだ出場できるかは分かりませんが、先輩がけがしたとしても質が落ちないと言われたくないので、しっかりと準備していきたいと思います。さっき陽木も言ったように、勝利にこだわってやっていきたいです。

武上 4年生最後の試合ということで、チームにとって最善のことをして、とにかく勝ちたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井上義之)

★BIG BEARSを応援しよう!

早大生は早稲田側の窓口で学生証を提示すると先着50人は入場無料!

みんなで横浜スタジアムに駆けつけてBIG BEARSに声援を送ろう!

日時:11月23日(日) 10:45キックオフ

会場:横浜スタジアム(JR根岸線関内駅より徒歩1分)

料金:大人¥1,200 高校生¥500 中学生以下は無料

◆坂梨陽木(さかなし・はるき)(※写真左)

1995(平7)年5月17日生まれ。172センチ。70キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部1年。毎試合前必ず茄子のスパゲッティ―を食べるという坂梨選手。「自分でもいつからか分からないけどいつも食べています」。決して好物ではないと坂梨選手自身は語ってくれましたが、無敵を誇った早大学院高時代から続くこのゲン担ぎが坂梨選手の安定したパフォーマンスの源となっているのかもしれませんね!

◆田口凌(たぐち・りょう)(※写真中央)

1995年(平7)7月25日生まれ。170センチ。76センチ。東京・早大学院高出身。社会科学部1年。普段はボールを触ることはあまりないLBのポジションの田口選手。基本的に全員攻守双方のポジションに就く新人早慶戦ではRBとしても出場したとのこと。キャリーは一回に留まったものの、念願のボールを持って3ヤード走れたことに「あれが僕のハイライトです」とご満悦な様子でした。

◆武上雅将史(たけがみ・まさし)(※写真右)

1996年(平8)2月23日生まれ。177センチ。90キロ。神奈川・法大二高出身。社会科学部1年。武上選手はLB加藤樹選手(商2=東京・早大学院)と非常に仲が良いとか。「試合前はいつも加藤さんと試合の展開がどうなるかなどと話をして心を落ちかせています」。そんな武上選手は将来つけたい背番号に加藤選手が現在つけている7番を選択。「いつの日にか譲ってもらえれば」と語ってくれました。