【連載】『第６２回早慶戦特集』　第９回　第６２回早慶戦展望

　早慶アメリカンフットボール対校戦。シーズンの幕開けを告げる伝統の一戦が、４月２９日、駒沢陸上競技場で行われる。昨年はＢＩＧ　ＢＥＡＲＳが３８－７で快勝を収め、フィールドには紺碧の空が鳴り響いた。第６２回を迎えることし、絶対に譲ることのできない対決を制するのはどちらのチームか。

　濱部昇監督（昭６２教卒＝東京・早大学院）が就任して２年目となる今季、チームの戦術理解度はさらに高まっている。ＯＬ中村洸介主将（スポ４＝東京・日大三）が最前線に構えるオフェンスは、経験豊かなタレントが揃い慶大に脅威を与える。昨季から好調のランオフェンスは、ＲＢ井上広大（教４＝東京・早大学院）、ＲＢ吉原猛（社４＝東京・日大三）、ＲＢ北條淳士（社２＝東京・佼成学園）の三枚看板ＲＢがけん引。持ち前のスピードで一気に敵陣へ攻め込む井上とフィジカルを前面に押し出した力強さが特徴でパワー型の吉原、鋭いカットバックで相手ディフェンスを翻ろうする北條、タイプの異なる３選手の爆発力が試合の流れを変えるＴＤにつながる。パスオフェンスでは、ＷＲ金澤秀明（教４＝東京・早大学院）がメインターゲットとなるだろう。昨季はケガに泣き不遇のシーズンとなったが、ラストイヤーとなる今季は完全復活。サイズを生かした得意のキャッチに加え、意識的に取り組んでいるというランアフターキャッチにも注目だ。そして、これらを率いるのが司令塔であるＱＢ。今季のＱＢユニットは実力が拮抗しており、し烈な出場争いが繰り広げられている。ユニットリーダーのＱＢ内村竜也（法４＝東京・早実）を中心として、ＱＢ政本悠紀（創理３＝東京都市大付）、ＱＢ笹木雄太（法２＝東京・早大学院）といった実力者揃いのＱＢ陣をいかに効果的に起用するか。濱部監督の手腕に期待がかかる。

接戦になることが多い早慶戦

　一方のディフェンスは、ＬＢ峯佑輔副将（教４＝東京・早大学院）を中心に鉄壁の守備を図る。ＬＢコグラン・ケビン（商３＝東京・早大学院）、ＬＢ加藤樹（商２＝東京・早大学院）といった主力ＬＢが第１回世界大学選手権の代表メンバーに選出され不在の中、ＬＢ福森稀典（創理３＝東京・早大学院）などスタメンの座を狙う戦力の台頭に注目だ。最前線では、ＤＬ庭田和幸（創理３＝東京・早大学院）とＤＬ村橋洋祐（スポ３＝大阪・豊中）の同級生コンビがツインタワーを形成。昨季、チーム最高の３本のＱＢサックを記録した庭田に、迫り来る相手オフェンスを破壊し一気に流れを奪うビッグプレーが飛び出すか。後方に位置し最後の砦となるＤＢユニットは、主任のＤＢ石川瑛二郎（人４＝東京・早大学院）とともに、ＤＢ寺中健悟（教３＝東京・早大学院）、ＤＢ藤原健太郎（政経３＝東京・早大学院）が盛り上げる。実績ある３年生の活躍が、ユニット全体のレベルの底上げにつながるだろう。固い守備から生まれるインターセプト、そして攻撃権奪取が、勝利をもたらすカギになるかもしれない。

　対する慶大は、ＤＢ三津谷郁磨やＱＢ高木翼といった要注意選手が４年生となり、チームの核として求心力を高めている。成熟度が増す中、ＲＢ李卓といった若手の注目株も成長。奇しくも濱部監督と同様、就任２年目のシーズンを迎えるデイビット・スタントＨＣの戦術がどこまで浸透しているか。両ＨＣの采配対決も見ものだ。今季既に２試合を消化している慶大に対し、早慶戦が初戦となる早大。試合の入り方に十分注意し、主導権を握りたい。

　チームスローガンに『本気』を掲げたＢＩＧ　ＢＥＡＲＳ。揺るぎない目標、「日本一」への道のりの最初の一歩を、勝利で飾ることができるか。今季を占う重要な一戦が、結果とともに実り多きものとなることを期待したい。キックオフの瞬間は、すぐそこに迫っている――。

（記事、写真　巖千咲）