昨秋、終盤戦で立大、法大に連敗を喫し、まさかのブロック3位に終わったBIG BEARS。巻き返しを誓う今季はどのようなプランをもってリーグ再編された強者揃いの新リーグに臨むのか。立て直しを任されたOL中村洸介主将(スポ4=東京・日大三)に早慶戦への思いなどを含め語ってもらった。
※この取材は3月6日に行われたものです。
『本気』
――新チームの雰囲気はいかがですか
日本一という目標を掲げていて、その目標に対する一人一人の取り組みがまだまだ甘いということを感じています。もちろん意識の高い選手もいますが、一つ一つの練習や、ウェイトトレーニングでまだまだ温度差があります。それらを埋めていければもっと良いチームになると思います。
――現在はどのような練習をされているのでしょうか
現在はフィールドトレーニングと基礎を固めるファンダメンタル、そしてウェイトトレーニングの3種類の練習を行っています。実戦に近いかたちの練習もしていますが、防具などをすべて付けるフルスタイルでのトレーニングは3月12日からになります。
――現在まだ実戦的な練習をしない意図を教えてください
きょねんの4年生が引退されてから約3か月、この間は体つくりに専念します。それは僕らと他のチームでは体格の差があると思っているからです。主にウェイトトレーニングを中心に行い、体重を増やしたり、ウェイトトレーニングを数値を挙げることが目標です。そこで基礎を固め、他校との差を埋めようという考え方です。
理想のチーム像を語る中村
――どういった経緯で主将に就任したのでしょうか
僕らの代はきょねんの4年生を含め全員で投票しました。その後、コーチとの面談を経て、僕が主将に決まりました。
――主将の経験は初めてですか
いえ、高校時代も主将でした。でも高校と大学では主将の役割というものは全く違うものです。高校では監督に指示されたことを自分たちでそのままやるというだけなのですが、大学では監督も毎日いらっしゃってくれますが、基本的には僕たち幹部が練習を統括し、チームの方向性などを考えていきます。主将に求められる役割が断然大学のほうが多いですね。
――そういった中で自分に求められている役割とはどのようなものだとお考えでしょうか
それはもちろん運営をしっかりするということは大切ですが、僕が一つ考えていることは、自分が一番アメフトに対して真摯に取り組み、プレーすることで周りも付いて来るということです。僕が一番高い意識を持つことで、他のポジション主任であったり、副将にしっかりまとめてほしいという姿勢を見せる必要があります。そういった幹部を中心にチームを運営していきたいと思います。
――ことしはポジション主任に下級生が多い印象ですが
主任は基本的に立候補制です。各ポジションのコーチと面談して決定するかたちになっています。下級生が多いのは特にディフェンスなのですが、ディフェンスは3年生のLBコグランケビン(商3=東京・早大学院)などは能力が高く、リーダーシップもあり、今のうちから主任をやっておいたほうが、今後のためにも良いと思っています。
――副将のお二人にはどういった役割を期待されていますか
それぞれ北村(TE北村卓也、先理4=東京・早大学院)がオフェンスリーダー、峯(LB峯佑輔、教4=東京・早大学院)がディフェンスリーダーを務めるかたちになっていますが、それだけでなく新1年生抜きで120人を超えているこの大所帯を僕だけではなく、いかに共にまとめ上げられるかということが副将の役割になってくると思います。二人とも性格は非常に真面目で、でも非常にストイックなので、彼らに信頼を置いて3人で引っ張っていきたいと思います。
――ことしのスローガン『本気』について教えてください
スローガンは4年生ミーティングで決めました。どういうチームにしたいかとどういう4年生になるつもりかということを一人一人意見を出し合い、それを実際に書き出しました。みんなフットボールに対してはもちろんですし、勉学面、生活面において、全てにおいて『本気』で取り組まなければならない。一人、誰かが手を抜いてしまうと、全体としての意識が崩れてしまうと思うので、そこは全員すべてに対して『本気』で取り組もうということです。実際はまだフットボールに対しても、生活面に対しても本気で取り組めていない人間はいます。まだ取り組めていないという現状を考えたうえで『本気』というスローガンにしました。
――それが達成できた後に輝かしい結果も見えてくるのでしょうか
全員が本気で全てに対して取り組むということは全員が同じ方向を向くことだと思います。僕の考えでは、チームが一つになり、全員が同じベクトルを向けば、日本一になれると思います。
――昨年と違う習慣などを取り入れたりはしましたか
一体感を出すという狙いで、フットボールの練習終了時はもちろんだったのですが、週3回のフィールドトレーニングでも最初、最後のハドルはどんな理由があってもマネージャーも含め、全員でハドルを組んでいます。
「毎年日本一になりたい」
――ワセダを志望された理由を教えてください
一つは色んなチームでプレーしたかったというのがあります。もう一つはまだBIGBEARSが日本一になっていないということです。どうやったら日本一になれるかというチーム作りも僕がしたいですし、僕がこのチームを日本一にするんだという気持ちは高校生のときから自分の中にありました。
――高校2年次に日本一に輝かれましたが、それでモチベーションが下がってしまうことなどはありませんでしたか
特にはありませんでした。自分の考え方として、毎年日本一になりたいということがあります。高校3年次には日本一にはなれていませんし、大学に入ってからの3年間もです。毎年日本一を目指している以上、結果を出せないと自分しては満足はできません。高校で一回日本一になったということは正直全く関係ないです。
――大学と高校の違いは感じられましたか
チームのやり方が高校と大学では全く違います。生活面などでは多少苦労しましたが、フットボール面ではあまりありませんでした。1年生のときも、早慶戦には出場することはできませんでしたが、立命大戦や関大戦ではスターティングメンバーで出場しました。大学界のトッププレーヤーと当たりましたが、一生勝てないなと感じることはありませんでした。自分が今まで積み上げてきたものは間違っていなかったなということを実感しました。
――大きなケガもされましたが
2年秋の第2戦でケガをしました。3年生の夏まで復帰できなくて、かなり長い期間の戦列離脱はモチベーションがかなり下がりました。ただ、よくケガをしている時間は衰退の時期だとかいう風に言われますが、自分は全くそういうことは考えていませんでした。ケガをした部分を弱味にするのではなく、自分の強み、盾にするという考え方でやっていけば、復帰しても全く問題なく、むしろさらに良いプレーができるようになると思います。これがケガをして得た考え方ですね。
――話は変わりますが、今季注目の選手を教えてください
もちろん絶対にこの質問で出てきてしまうのがLBコグランケビン(商3=東京・早大学院)ですね。プレーヤーとしての能力も高く、チームをまとめる能力もありますし、全てにおいて長けているというのが特徴です。僕が個人的に推しているのは、庭田(DL庭田和幸、創理3=東京・早大学院)と村橋(DL村橋洋祐、スポ3=大阪・豊中)です。二人ともことしから主任についていて、ディフェンスもですが、新3年生を引っ張っていく存在になっていくと思います。彼らは後輩ですが、僕としてはライバルとして考え、ともに成長していければと考えています。
――3年生がカギを握ってくるということでしょうか
そうですね。あとはオフェンスで挙げると、RBの北條(淳士、社2=東京・佼成学園)です。彼自身、奢りは全くなく、どんな練習に対しても本気で取り組んでいます。それは彼がボールを持ったときに、最後まで足を止めないところなど1ヤードでも稼ごうという気持ちが非常に強く感じられて、OLの立場から「走らせてあげよう」という気になります。下級生ながら、チームを支えているRBだと思います。4年生に関してはプレーヤー、スタッフ含めて全員に期待しています。
昨年まではケガに泣かされることも多かった
――昨年はどういったシーズンでしたか
チーム全体としては、監督が変わって1年目で春シーズンは立命大戦以外は勝つことができました。しかし、それで自分達が強いと勘違いしてしまいました。「やることをやっていれば勝てるのではないか」という何の根拠もない自信を捨てることができうずに秋シーズンに臨んでしまった結果、立大戦や法大戦で大敗してしまいました。僕個人としては、春は出場できなかったので何も言えないのですが、正直みんなと同じように心のどこかで勝てるという思いがありました。立大戦に関しては、自分たちのミスが多すぎて負けた印象ですが、法大戦はスコアにも表れている通り、1つのプレーであったり、1つのプレーコールに対する自分たちのリアクションもそうですが、全てにおいて自分たちが足りなかったということを痛感させられました。まだ法大に勝てるチームでは全くありませんでした。
――早大と他校の違いを教えてください
これはよく聞かれることなのですが、未経験の選手が多いチームです。未経験の選手たちはやはり関学大や立命大、日大、法大といったチームには少ないです。でも僕たちは
そういった選手を積極的に受け入れています。確かにスタート時の差は大きいですが、1年2年と全員同じメニューをこなしていけば、全く差はなくなります。フットボールはポジションによって役割が全く違うので、絶対に自分の持ち味を生かすことができます。スポーツ推薦も少ないですし、そういったメンバーで日本一を目指しているのが、僕たちの大きな特徴です。
「意地のぶつかり合い」
――それでは、早慶戦についてお伺いします。早慶戦の具体的な目標などはありますか
もちろん勝利することです。慶大は攻守ともに僕らのアサイメントを壊してこようとすると思うので、それに対して、僕らが崩されないようにプレーして、とりあえず勝とうというのが目標です。
――早慶戦の印象はどのようなものですか
春シーズンで一番盛り上がる試合だと思います。早慶戦は歴史ある伝統の一戦で、早大と慶大との意地のぶつかり合いです。お互い勝ちにこだわっています。
――慶大のキーマンはどなたですか
一人はDBの三津谷郁磨選手です。4年生になって話す機会があったのですが、チームをどうしたいのかや自分がどういうプレーヤーになりたいのかというビジョンを明確に持っている選手で、さらなる高みを目指している選手だということが非常によく伝わってきました。オフェンスに関してはQBの高木翼くんです。冷静で的確なパスを決めてくるのが、彼の持ち味だと思うので、そこを活かしてくるとちょっとやっかいです。あと李卓くんです。彼は三津谷と話をしたら、どうやらうちの北條と同じようなタイプのプレーヤーのようで、フットボールに対する姿勢だったり、高校時代からきょねんも含めて結果も出しているが、もっとやってやろうという気持ちを持ち続けている選手です。かなり警戒しています。
――春シーズンの目標は
きょねんは立命大戦や拓大戦で負けてしまいましたが、ことしはもちろん全勝が目標です。
――最後に新入生に一言お願いします
熱い4年間、何か一つの目標に取り組めるのは早大BIG BEARSだと思っているので、そういった情熱を持っている人は、早大BIG BEARSという組織、チームを選んでほしいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井上義之)
◆中村洸介(なかむら・こうすけ)
1992(平4)年7月21日生まれ。185センチ、115キロ。東京・日大三高出身。スポーツ科学部4年。この対談後に行った紙面用の写真撮影。風が非常に強く、立っているだけでも身震いするような寒さでしたが、こちらのリクエストしたポーズや動きをやって頂き、納得する写真を撮影することができました。部員一同感謝しています!