【連載】『第62回早慶戦特集』 第2回 QB内村竜也×WR金澤秀明

米式蹴球

 ランプレー、パスプレーなど数あるオプションの中から状況に応じた選択をし、全ての攻撃の起点となるQB。そしてQBから放たれるパスを華麗にキャッチし、試合を決めるTDへとつなげるWR。まさにQBは“司令塔”、WRは“花形”と形容される。今季、このホットラインを形成するのがQB内村竜也(法4=東京・早実)とWR金澤秀明(教4=東京・早大学院)だ。お二人に、ラストイヤーの初陣となる早慶戦への意気込みを伺った。

※この取材は3月29日に行われたものです。

一番の信頼感

――アメフトを始めたきっかけは

内村 中学まで野球一筋で9年間やってきたんですけど、実家が後楽園に近かったので、ライスボウルという学生と社会人のトップが戦って日本一を決める大会をたまたま見に行く機会があったんです。その時にアメフトを初めて知ったんですけど、試合に出ていた関学大のある選手のことをかっこいいなと思ってすごく魅力を感じて、それがきっかけで高校に入ったらアメフトを始めようと思いました。

金澤 高校が付属校だったのでフラットな位置から始められるスポーツをやりたいなと思っていて、グラウンドホッケーやラクロスなど色々なスポーツを見学したんですけど、その中でもアメフト部は日本一を目指しているチームだということと、試合を見に行った時にヘルメット同士がぶつかる音が激しくて楽しそうなスポーツだなと思ったので入部を決めました。

――大学でもアメフトを続けようと思ったのはなぜですか

金澤 高校で日本一を達成できたので大学に入ってからアメフトを続けるつもりは全くなく、何か新しいことを始めようと思っていたんですけど、大学での4年間という時間の中で、何か一つのことをやるんだったらまた本気でアメフトをやって日本一になりたいなと思ったので、アメフトを続けることを決めました。

内村 僕も金澤と同じように大学でアメフトを続けようとは思っていませんでした。体育会に入ろうと思った理由は、弱小校出身の自分の実力がトップレベルの早大でどこまで通用するのかを試してみたかったということと、高校の顧問の先生に強く勧められたこともきっかけとなって、もう一度アメフトに真剣に取り組んでみようかなと思い入部しました。

最上級生としてチームを引っ張る内村

――部の新歓には参加しましたか

金澤 しましたね。BIG BEARS FESTAの情報を先輩から聞いていたので、久しぶりに東伏見のグラウンドに足を運びました。「アメフトって楽しいんだな」ということを思い出したきっかけとなったイベントでしたね。

――QBとWRは、それぞれどのようなポジションですか

内村 QBはアメフトの数あるポジションの中で最も難しいポジションかなと思っています。投げることももちろんですが、状況判断であったり、とっさの決断力や身体能力など全てが求められるポジションです。その中でも最も重要なのがリーダーシップだと思っていて、11人のオフェンスの司令塔がQBなので、精神面においても技術面においても一番タフでなければいけないポジションかなと思います。

金澤 WRは一番の花形ではないかと思います。QBが投げたボールをとってTDするのがWRです。例えば早慶戦でも、あれだけ大勢のギャラリーがいる中で相手に競り勝ってボールをとってTDするというのは誰の目から見ても華やかな姿だと思うので、すごく楽しいポジションだなと思って僕はやっています。

――理想の選手像を教えてください

金澤 僕が2年生の時に4年生だった清水さん(清水隆博、平25社卒)という方が理想のWRですね。プレースタイルも僕と似ているところがあって、背が高くて足も速い、最もWRにふさわしい素質を兼ね備えていた方だなと思うので、僕がプレーする中で目標としている選手です。

内村 オービックシーガルズの菅原選手(菅原俊)という方です。シーガルズが4連覇した時の立役者でもあるし、実力とともに高いリーダーシップを兼ね備えた選手だと思います。合同練習をする機会があったんですけど、その時に菅原選手が持っているみんなをまとめる力を強く感じたので、自分のプレーの参考にしていきたいなと思っています。

――オフェンスのホットラインとして期待されるお二人ですが、普段は積極的にコミュニケーションをとっていらっしゃいますか

金澤 プレーについてもプライベートなことについてもコミュニケーションをとりますね。プレーについてだったら、パスはタイミングが大事で、内村がどのタイミングで投げて僕がどのタイミングでキャッチするかということをお互いがしっかりと共有していないとパスは決まらないので、そういう細かいタイミングの調整についてはよく話し合いをしますね。

内村 タイミングはもちろんなんですけど、もう一つは走り方ですね。コースが人それぞれ違うとプレーを合わせるのも難しくなってくるので、そこを統一するためにWRとはよくコミュニケーションをとっています。

――お互いのことをどのようなプレイヤーだと思っていますか

内村 僕はWRの中では一番信頼のあるターゲットかなと思っています。2年生のころから一緒に試合に出ている仲なので、一対一なら勝ってくれるだろうという信頼感を持っていつもパスを投げ込んでいますね。

金澤 内村が言うように、下級生の時からパスを合わせている相手なので意志の統一はできていると思いますし、あとはお互いに結果を出すだけだと思うので、今度の早慶戦をはじめとして、これからもっと結果を出していければと思います。

――いま結果というお言葉がありましたが、今シーズン伸ばしていきたい自分の持ち味を教えてください

金澤 自分は「高さ」ですね。WRとして高さがあるということはそれだけで武器になると思うし、ジャンプ力を生かしたプレーが昔から得意なので、誰よりも高く、というところが自分の持ち味だと思っています。

内村 「勝負強さ」だと思います。プレーにムラがあることが昔からの課題なんですけど、重要なシチュエーションでは常に平常心で取り組めていると思っているので、そこが自分の強みだと思います。

一つ一つ勝ち上がっていく

――昨シーズンを振り返って、どのような収穫と課題がありましたか

内村 僕はやはり、調子のムラがあることですね。調子が良い時は良いプレーができるんですけど、調子が悪い時にいかにそのムラをなくすかということが課題でもあったと思うので、そこを日々の練習の課題として取り組んでいます。収穫としては、視野が広くなったと感じるようになったことです。ディフェンス全体であったり、オフェンスのメンバーに対してもわずかな変化に気がつけるようになったかなと思います。

金澤 法大戦でボロ負けして、法大との力の差がわかったということが一番の収穫ですね。きょねんはケガをしてしまって満足にプレーができなかったので、ケガをしないでシーズン通して戦うことができるかどうかがことしの課題だと思っています。

息の合った会話を見せていた両選手

――QBユニットとWRユニットについて、きょねんとはここが違う、というポイントがあれば教えてください

内村 ことしは全員がイーブンな形で競争できているところがポイントですね。QBユニットは人数が少ないこともあって一番風通しが良いと感じていて、自由に意見を言い合って共有できているということは良い点です。今季はQB主任というポジションのリーダーをやらせてもらっているので、後輩のことであったりチームのメニューに対しても責任が生まれて、3年生の時よりは確実に周りを見ることに意識が向いていると思います。

金澤 WRユニットについては昨年と比べてあまりサイズの大きい選手がいないので、そういう部分ではスピードで勝負していく選手が多いなという印象ですね。後輩も有望で信頼感のある選手が多いので、後輩と一体となってユニットを作っていって、その中で自分が試合を決定づけるような大事な仕事をしていければと思っています。

――今季注目株の選手を挙げるとしたらどなたですか

内村 WRの深栖拓(先理2=大阪・府立北野)という選手がいるんですけど、きょねんから練習にも意欲的に参加していて、いま一番伸びてきている選手かなと思います。

金澤 じゃあ竜也がWRを言ったから(笑)、QBの笹木(雄太、法2=東京・早大学院)と政本(悠紀、創理3=東京都市大付)です。二人とも素質があって、ことしのカギは内村も含めてこの3人のQBが競争してパスユニットとして成長していくことだと思っているで、注目選手として上げるなら政本と笹木ですね。

――最上級生になって意識は変わりましたか

内村 僕はコミュニケーションを積極的にとろうということを常に意識してやっていますね。まとめる立場になったからといって急に怒るようになったりするのではなく、積極的にコミュニケーションをとる中で思っていることを伝えてお互いが意見を共有することがプレーの成長につながることだと思うので、意思疎通することに一番重点を置いています。

金澤 最上級生として気持ちが引き締まるのはもちろんなんですけど、4年生になったからといって気負ってしまうとプレーが縮こまってしまうと思うので、常に平常心でやることを意識していこうかなと思っています。

――新チームが始動してからここまで、どのような練習をしていますか

金澤 まだプレーを合わせる時間はないので、個々のスキルアップに取り組んでいます。WRの後輩を見ていてもすごく数値を上げている選手が多くて、シーズンに向けてそれなりの準備ができてきているのではないかと思います。

内村 パスユニットで合わせる時間を昨年よりも増やしている印象ですね。でもそれではまだまだ足りないかなと思っているので、自主練習をしたり、金澤とも二人で合わせたりしています。プラスアルファでやっていかないと自分も成長しないしチームの成長にもつながっていかないと思うので、パスユニットで言えばいかにタイミングを合わせるかという点に積極的に取り組んでいるところです。

――今季の目標を教えてください

内村 リーグが再編しましたが強いチームに勝っていかないといけないということについて変わりはないので、チームの目標としての「日本一」は変わらないです。個人としては、チームの要であるQBとして自分が結果を残さないと日本一にはなれないと思うので、チームに貢献する活躍をしたいです。

金澤 チームとしては、内村が言ったように目標は「日本一」なので、全勝して一つ一つ勝ち上がっていくということが目標です。個人的にはリーグの再編は楽しみだなと思っていて、相手と戦うことに変わりはないということもありますし、常に接戦が予想される中で自分が活躍できるチャンスも増えてくると思うので、しっかりとTDにこだわって点をとる仕事ができればなと思います。

ことしも圧勝したい

――早慶戦についてどのようなイメージを持っていらっしゃいますか

内村 2年前の接戦で負けた早慶戦で後半から試合に出たんですけど、最後の大事な局面での選択ミスをしてしまったことについてすごく後悔していて、その時の悔しさが一番印象に残っていますね。きょねんの早慶戦では勝つことができましたが、印象としてはおととしの敗戦のほうが強いです。

金澤 僕はきょねんの試合のほうが印象的ですね。試合に出られる機会が増えてきた状況の中で迎えた早慶戦だったんですけど、万全の準備で臨んでいたのにも関わらず個人的には全く活躍できずに終わってしまって、チームは勝ったのですが、その中で自分が何もできなかったことがすごく悔しかったので、その雪辱を果たすために、ことしの早慶戦は強い気持ち取り組もうと思います。

長身を生かした金澤のDBとの競り合いにも注目だ

――キープレイヤーを挙げるとするなら

内村 RBの北條(淳士、社2=東京・佼成学園)ですね。

金澤 みんな言ってそうだし、それつまんないよ(笑)。

内村 たしかに(笑)。

金澤 僕は慶行(DB田中慶行、政経4=東京・早大学院)かな。個人的なことになってしまうんですけど、高校の時のクラスが一緒だったんですよね(笑)。彼は高校ではバスケをやっていたんですけど、運動神経がすごく良くて。学院生としては珍しく未経験でBIG BEARSに入ってから、高校の時はクラスメートだった友達が大学では努力を重ねて今はすごい選手になっているので、一緒に頑張ってきた仲間の一人として4年目の早慶戦では一緒に活躍できればなと思っています。

内村 さっきつまらないって言われましたけど(笑)、僕はやっぱり北條ですね。RBの中でも特に練習熱心で、毎日ひたむきに取り組んでいるので。プレースタイルはカットバックが得意でゴリゴリしているので、早慶戦でも力強いランが見られるのではないかと思います。

――では、慶大の要注意人物は

内村 やはりDBの三津谷(郁磨、慶大)ですね。キャプテンですし、慶大の精神的支柱だと思うので注意したいです。

金澤 QBの高木翼(慶大)という選手ですね。僕は他校に友達が少ないんですけど、高木とはことし縁があってハワイで一緒にトレーニングをしたんです。知っている選手を戦うということは僕にとってはあまりない経験なので、彼は昔からすごく注目されてきた選手でもありますし、楽しみだなと思います。

――早慶戦への意気込みをお願いします

金澤 ことしも圧勝できるに越したことはないよね。

内村 そうだね。

金澤 春シーズンのスタートでもありますし、秋に向けて弾みをつけるためにも絶対に勝ちたいです。

内村 僕たちのオフェンスはテンポを重視しているので、スピード感のあるプレーに注目していただければなと思います。

金澤 毎年、BIG BEARSはランのチームだと言われているんですけど、ことしはパスでも点が取れるということをしっかりと見せることができればと思いますね。

――新入生に対して一言お願いします

金澤 新歓をしていると体が小さいことを気にしている子が多い印象なんですけど、僕も60キロぐらいで早大に入って今は85キロぐらいあるので、体に関しては気にすることはないと思います。一緒に頑張りましょう!

内村 一度アメフト部という部活を知ってもらえればチームの熱い思いを感じてもらえると思うので、ぜひ早慶戦に足を運んでいただきたいです。僕たちと一緒に、熱い気持ちを持ってプレーしてくれる新入生が一人でも多く入部してくれればと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 巖千咲)

◆内村竜也(うちむら・たつや)(※写真右)

1992年(平4)9月12日生まれ。182センチ、81キロ。東京・早実高出身。法学部4年。生まれて初めてアメフトの試合を見たときからQBに憧れを持っていたという内村選手。今季は主任として、オフェンスの心臓であるQBユニットをまとめ上げます。冷静沈着にチームをコントロールする、内村選手の活躍に期待しましょう!

◆金澤秀明(かなざわ・ひであき)(※写真左)

1992年(平4)9月16日生まれ。180センチ。84キロ。東京・早大学院高出身。教育学部4年。7年間のアメフト人生で、WR一筋という金澤選手。明るいキャラクターで取材の雰囲気を和ませてくださいました。ケガから復活した今季、その華麗なパスキャッチで観客を魅了すること間違いなしです!