早大BIG BEARSの強み、それは何と言っても豊富なRB陣であろう。パワー型、スピード型、カットバック型…、様々なタイプのRB陣を擁し、相手ディフェンスには的を絞らせない。第1回はそんなRB陣の新旧エース、昨年エースRBとしてチームを引っ張ってきた井上広大(教4=東京・早大学院)と前年チーム内新人賞を受賞し、2年目のシーズンにさらなる飛躍を誓う北條淳士(社2=東京・佼成学園)にお話を伺った。
※この取材は3月29日に行われたものです。
「目立てるし、かっこいいポジション」
――アメフトを始めたきっかけは
北條 一つは漫画の影響ですね。アイシールド21という漫画の主人公に憧れて、アメフトを知ったということと、中学で入るつもりはなかったんですけど、たまたまアメフト部の顧問の先生に「お前いいぞ!」と言われて、褒められて伸びるタイプなので、嬉しくなって入ってしまいました(笑)。
井上広 僕も高校でアメフトとか入るつもりもなかったし、ルールなども知らなかったのですが、新歓でグラウンドに行く機会があって、それで人工芝だし環境がいいな、と思って。あと、中学時代の同級生でWR井上岳(社4=東京・早大学院)っていう同期がいるのですが、その子が入ると言うので、じゃあ一緒に入ろうかな、と。中学時代からサッカー部が一緒で、たまたま高校の入学式で一緒になったので、入ってしまいました(笑)。
――RBを選んだ理由は
北條 僕はアイシールド21の主人公がRBだったので、もともとRBがやりたかったからです。あと、広大さんよりは全然速くないですが、人並みに走れたので。リレーの選手とかでしたし(笑)。それで、自分は走るポジションかな、と思ってRBにしましたね。あと、鬼ごっことかも結構得意だったので(笑)。
井上広 僕はポジションとか全然知らなかったし、アメフトにもともと興味もなかったので、入った時にやれって言われたのがRBだったってだけですね(笑)。他のポジションもやったことないので、選んだ理由とかは特にないです。入部して最初のポジションを決めたときに言われたまま、その延長でやってるって感じです。
――足は速かったのですか
井上広 僕もリレーの選手だったってくらいですね(笑)。そんなにめちゃめちゃ速かったってわけではないです。
北條 めっちゃ速いじゃないっすか(笑)。
井上広 いや、そんなに速くないよ。
――北條選手は他のポジションをされていましたか
北條 中学の時に、あまり人数がいなかったしタックルではなくタッチだったので、ディフェンスでLBをやっていました。高校生からはRB一筋です。
スクリメージを駆け上がる北條
――RBとはどのようなポジションだと思いますか
北條 アメフトの中だったら1番目立てるし、かっこいいポジションだな、と思いますね。僕は目立ちたがり屋なので、合っていると思います(笑)。
井上広 どんなポジションか…。よくわからないですね(笑)。
――ご自分に合ったポジションだと思いますか
井上広 いや、合ってないですね(笑)。アメフト自体がそんなに向いていると思っていないし、好きな競技ではないので(笑)。体が小さいし、人と当たるのが嫌いなので、フィジカルで勝負が決まるスポーツ自体があまり好きではないんです。それなのに、RBってめちゃくちゃ人に当たるポジションだし、人に突っ込まなきゃいけないので、自分に合ってるとは思ってないです。
――RBに求められている能力とは何だと思いますか
北條 何かの言葉で聞いたことがあるのですが、RBはパスプロテクションとレシービングの二つができることが必須で、走るのはボーナスポイントらしいので、それがRBですかね(笑)。
井上広 度胸ですね。「練習してなくても走れるぞ」っていう度胸かな。ぶっつけ本番ってわけではないのですが、明らかに自分より練習してたり、体が出来上がっている選手に突っ込むのは怖いし、嫌なのですが、そこをなんとか行かなきゃいけないので、その度胸が必要なんじゃないかな、と思います。
――RBをやっていて楽しい時は
北條 やっぱりTDを決めた瞬間ですね。僕は結構体で表現してしまうタイプなのですが、スコアできたときとかはやっていてよかったな、って思います。
井上広 試合の流れを変えられるプレーができたときですね。僕は得点をしたときに、あまり興奮するタイプではないので、試合中もそんなに興奮しないのですが、試合の流れを自分のプレーでバチって変えられたときはすごく嬉しいです。
――TDのこだわりなどはありますか
北條 僕はアウトサイドのランより、インサイドのランで抜ける感じの方が頭の中でイメージできていますね。広大さんのように、オープンでスピード出して上がっていくより、インサイドのカウンタープレーの方が得意ですし、頭の中でイメージできています。
――井上広選手はアウトサイドのランの方がお好きですか
井上広 さっきも言った通り、人に当たるのが嫌なので(笑)。嫌というか、当たったら負けてしまうので、自分から避けているんです。本当は駄目なんですけど(笑)。オープンのプレーとかアウトサイドゾーンの自分で自由に走るところを決められるプレーの方が好きですね。自由なところを走れるプレーが好きです。
真剣な面持ちで話す井上広
――コーチや監督から選手によってプレーを決められることはあるのですか
井上広 コーチや監督が人を見てこのプレーをやるように決めることはないですね。3人ぐらいで交代しながら試合に出ているので、そのプレーの中で自分が当たる回数が多いだけですね。
――RBをやっていてつらいときは
北條 RBが1番タックルされるので、肉体的なダメージが他より多くて若干つらいと思います。ケガも1番しやすいポジションだと思うので、そこがRBのつらさじゃないですかね。
井上広 僕も一緒で、人に当たるのが怖いので嫌です。交通事故みたいなんですよ(笑)。そういうのはすごくつらいし、嫌だなって思います。
――お互いをどのような選手だと思いますか
北條 僕は高1の時に、広大さんの高3時代を知っていて、その広大さんとワセダで同じチームとしてプレーできるということがすごく新鮮で、本当に尊敬しています。でも、尊敬で終わっていたら、自分も成長できないと思うので、ライバルとしても見ています。尊敬しつつ、1ライバルとして抜かすことを目標に頑張っています。
井上広 僕も高校3年生の時に、1年生にすごくうまい子がいるって知っていたので、その選手がワセダに来てくれてすごく嬉しかったし、一緒にプレーできるのは今も楽しいです。でも、かぶってしまいますが、後輩だけどすごくうまいので、ライバルとしても見てるし、先輩として自分の方が結果を出さなきゃいけないな、とも思っています。
――尊敬しているところは
北條 タテに上がるスピードですね。広大さんのスピードは全国でもトップレベルだと思います。そんな存在が先輩にいるっていうのは、僕にとってもアドバンテージだと思っていて、日々研究してかなり見ています、広大さんのことを(笑)。
井上広 タックルされてからのセカンドエフォートとかは自分より全然上手だなと思いますし、足は遅いけど走り方はすごくうまいので(相手を)抜くことができているんじゃないかなって思ってます。「よくここを走ったな」とか、自分だったら選ばないルートを走ったりするので、そこはすごいなと思います。
――お手本にしている選手は
井上広 北條君です。
北條 僕ですか(笑)。僕は、NFLのラダニアン・トムリンソンっていう選手ですね。アイシールド21のモデルになっている人なんですけど(笑)。
井上広 誰だよ(笑)。
北條 小さいんですけど、カットがキレッキレでかっこいいんです。
プレー中の視点
――昨年を振り返っていかがですか
北條 僕は高3の時にケガをしていたので、大学でアメフトを再スタートして、すごく新鮮な1年でした。1年生でいろいろなところで使って頂いて、監督とかコーチにも感謝していますし、その経験がことし生かされればな、と思います。きょねんよりもさらに上を目指して頑張りたいと思います。
井上広 昨シーズンからポジションリーダーっていうのと、キックのスペシャリストのリーダーをやらせてもらって、3年生からチームの運営にも携わらせて頂いたので、自分としては1、2年生の時よりきょねんの方が充実していたな、って思います。でも、立大と法大に負けてしまったので、そこの点はやっぱりすごく悔しかったです。ことしはそこに勝つためにどうやっていくかを考えて実行して、ポジションとかチームで一丸となっていきたいと思います。
――RB以外のプレーも重視されているのですか
井上広 スペシャリストっていうのが、リターナーとかキッカーとかキックチームで変な動きをする人たちの統括だったので、そこの部分ではちゃんと結果を出したいな、と思って取り組んでいました。流れを変えるのってキックのプレーとかの方が多いよね?
北條 ビッグプレーが生まれると思います。
井上広 さっきも言った通り、自分の裁量で走るところを決められるプレーの方が好きなので、キックとか結構おおざっぱですが、そういうのが好きなので活躍できたのかな、と思いますね。落としちゃったらやばいので、キックの方が全然緊張するんですけど(笑)。でも、「その分やってやろう」みたいな気持ちが強いです。RBはそんなに緊張しないですね。いや、緊張しないというよりも、後ろでぼーっとしていることが多いです。北條とかはセットした時、うーってなってるよね(笑)。
北條 はい(笑)。力入れちゃうタイプです。
井上 僕はぼーっとしちゃうので。でも、キックの時は、いい緊張を保ってグラウンドに立てていると思います。
――北條選手はセットの時どこを見ていますか
北條 僕は最初に走るところを見ている、とよく注意されるので、最近は気を付けていますね。自分でランだったら、僕も結構何も考えていないですね。前に、ってことを意識しています。とりあえず「突破」って感じですね(笑)。
時折笑みを浮かべながら答える北條
――人によって違うのでしょうか
井上広 プレーの種類によってみんな変えていると思います。一番手前を見ちゃうと駄目なんだよね?
北條 そうですね。
井上広 自分たちもよくわからないのですが、一番手前の敵を見ているとあまりいいランが出なくて、調子がいい時とかいいランが出た時とかはすごく奥の方まで見えてるんですよ。ディフェンスの一番奥にいる選手が、どういう動きをしているのか見える状態が一番いいと思うので、それを意識してやっています。昨シーズンの立大戦で長いランが出た時は、一番後ろの選手まで見えていました。
北條 すごいですね…(笑)。
井上広 一番後ろを見れば、たぶん視覚的に全体が見えてくるからうまい具合にいくんだと思います。だからぼーっと見てるんです。1カ所を見るのではなくて、一番奥のスコアボード見るぐらいの気持ちでぼーっとしながら見ているといいプレーができますね。
北條 僕はそんな奥までは見えていないですけどね(笑)。
井上広 良いときは奥まで見えてるでしょ?
北條 まぁ…。はい(笑)。いや、たぶん奥まで見えているのは広大さんぐらいだと思います。僕も、ぼーっとしてますけど。
井上広 ぼーっとしている方が気持ち的にも楽になるし、いいと思います。手前を見ちゃうと、段階がいっぱいあるじゃないですか。1人目抜いたら2人目見て、2人目抜いたら3人目…ってやっていると、きりがないので。だから一番奥の選手の動きを見ていればいい感じになるんだと思います。僕もあまりよくわかってないんですけどね(笑)。
――感覚的なものですか
井上広 たぶんそうだと思います。手前を見ない方がいいっていうのはわかるんですが、それがどうしてかはよくわからないです(笑)。
――ことしのRB陣の強みは
北條 RB陣が豊富で、全員のタイプが違うところだと思います。広大さんだったらスピード派だし、吉原さん(猛、社4=東京・日大三)はパワーバックでごりごり進んで行く感じだし、みんなタイプが違うからハンドオフを受けても走るコースが違うと思うんですよ。そうなると、ディフェンスは結構守りにくいんじゃないかな、と思うので、元気なRBがどんどん出てくるところがワセダの強みだと思います。
井上広 僕も一緒で、能力にはそんなに差がないと思っています。誰が出ても戦力が落ちないというか、誰が出ても同じような動きができると思っているのでそこが強みだと思います。今北條も言っていたように、そのおかげで全部のプレーで元気な選手が出られるし、タイプが違うから守りにくいんじゃないかな、って思っています。
――そのRB陣の中でどのような存在になっていきたいですか
北條 僕は勝負どころでキャリーさせてもらえる信頼されたRBになりたいですね。サードダウンとかここでファーストダウンが取れれば、ってところで使ってほしいです。
井上広 個人としては、きょねんの途中からポジションリーダーをやっているので、リーダーとして全員を試合に出させられるようなフォローをしていきたい、と思っています。最上級生だし、リーダーとして、試合で1番結果を出したいです。でも、最終的には個人の結果はどうでもいいので、試合に勝たせられるようなRBというユニット作りをしていきたいな、って思っています。
「まずは絶対に勝利したい」
ことしも井上広にはビッグプレーが求められる
――早慶戦にはどういった印象を持ってらっしゃいますか
北條 昨年、新人早慶戦には出場させてもらいましたが、その試合ではTDとかとることはできなくて、ケガもしてしまったのであまり良い思い出がありません。なので、今回でそれを打開したいということと、ワセダに入学したからには、早慶戦って一番盛り上がるじゃないですか。早慶戦で活躍するのは一種の親孝行だと思うので、感謝の気持ちを持って走りたいです。
井上広 僕はあんまり早慶戦だからって気持ちが高ぶるとかないんですよね。普通の試合ですし、相手が慶大というだけで試合に勝つという気持ちは変わりませんし、あんまり気負わずに取り組みたいという気持ちは毎年持っています。比較的大学に入ってから早慶戦では良い走りがができているので、ことしも早慶戦に勝って、シーズンへの弾みをつけたいと思います。
――シーズン最初の試合という位置づけが大きいですか
井上広 僕としてはそれが大きいですし、それが早慶戦ということでその重みもより一層深いと思います。
――そういった意味ではどういった目標になってきますか
井上広 まずは絶対に勝利したいです。絶対に勝たなければいけないと思っていますし、ここで下手にコケてしまうとズルズルといってしまう印象があるので、ここでバッチリ勝って、シーズンもトントンと行きたいなと思います。
――慶大で警戒している選手はいますか
北條 警戒というか僕がライバル視しているのは慶大の2年生RBの李卓くんです。2年生の中ではトップレベルのRBで、同期にいて意識しないわけがないので、とりあえず彼には走り勝ちたいです。
井上広 かぶりますけど、李くんは本当に良いRBで、この前のユニバーシアードの合宿でもすごく上手かったし、スタイル良いし、イケメンだし、慶大だし、ステータスが僕らよりも一枚も二枚も上でなので、勝ちたいですね。
――濱部昇監督(昭62教卒=東京・早大学院)の下では2年目となりますが
北條 きょねんも非常にやりやすかったので、ことしも頑張りますので、色んな場面で使ってくださいって感じです(笑)。
井上広 僕は高校時代から濱部先生に教えて頂いていて、すごく感謝していますし、すごく好きですし、尊敬していますし、その方にご指導して頂いてるのはありがたい環境だと思っています。自分たちが期待に見合った結果を残せるように頑張っていきたいです。
――今シーズンの目標を教えてください
北條 スターティングメンバーになることです。目標は日本一のRBなので、そのためにも、ワセダで一番になることをまずはですね。
井上広 リーグ再編があって、序盤から強豪校との対戦があるので、それに向けて準備していかなければなりません。それに先ほども言いましたが、層が厚いといっても、一人二人がケガするとたちまち苦しくなってしまうので、最終戦まで戦えるようなコンディション作りをしていきたいです。チームとしては全試合に勝利して日本一になりたいです。
――最後に新入生に向けて一言お願いします
北條 ワセダに入ったらアメフトだと思うので…
井上広 それ、何でそう思うの?
一同 (笑)
井上広 おまえだけだよ、ワセダだったらアメフトって思うの。僕も高校でアメフト始めたときも、大学でも続けることを決めたときもすごいガリガリで体重も全然増えない体質でしたが、そういう選手でも試合に出場できて、活躍するチャンスがあるスポーツだと思っているので、自分に向いてる、向いてないと思わずに一度チャレンジしてみて欲しいです。一緒にアメフトしたいなと思ってます。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井上義之、山口智子)
◆井上広大(いのうえ・こうだい)※写真左
1992(平4)年6月17日生まれ。168センチ、66キロ。東京・早大学院高出身。教育学部4年。同ポジションの吉原選手にプレハブの上で生活するのはやめた方がいいんじゃないかと一言。しかし「吉原がいるから助けられている」と仲間への感謝の気持ちも忘れませんでした。
◆北條淳士(ほうじょう・あつし)※写真右
1994(平6)年5月10日生まれ。163センチ、71キロ。東京・佼成学園高出身。社会科学部2年。ゲン担ぎが大好きという北條選手。試合前日夜はうなぎを食べ、「朝起きたらとろろなんですよ。あと餅。」と毎回この順番で試合を迎えているそうです。