今年度より指揮を執るのは濱部昇監督代行(昭62教卒=東京・早大学院)。早大学院を3度日本一に導いたその手腕でBIG BEARSの3年ぶりの甲子園ボウルへ進出、念願の『日本一』への期待が高まる。永遠のライバルである慶大への想いや就任後の取り組みについて聞いた。
質問に答える濱部監督代行
もう一度誇れるチームに
――就任して最初に取り組んだことは
きょねん問題があって新しい部長代行からはすべてのことを見直してくれと言われ、全てのことを見直すことからスタートしました。練習の方法やコーチの人選も含め、どのように携わってチーム作りをしていくかを含めてですね。ワセダのスタイルは学生主体ということで、学生が考え主体性を持って行動するというものでした。それは素晴らしいことですが、そこに逆に大人が関わり過ぎていたり、任せっきりになる部分もあるなどバランスがとれていない印象でした。ワセダの学生は優秀でやる気や主体性はありますが、やはり学生なんですね。フットボールに関しては経験者も大勢いますが、長くてもフットボール経験は7年目ぐらいの彼らに様々な事を考えさせるのは限界もある。今までのチーム体制はそこに大人は関わっていましたが、日曜日だけの指導者ということで学生全体をサポートするような体制になっていなかったというのがあります。僕自身、教員というのもありますが、本来フットボールのコーチというのは学生の人間性の部分や戦術的な指導などをフットボールというスポーツを通してするものです。本来あるべきコーチとしての姿としてチームを改革してここまで来ています。平日はコーチが来られないから4年生がコーチとして率いるということで、4年生がだらしない年は勝てなくて、しっかりしている年は勝てるというのが伝統となっていました。しかし、その体制には限界がある。学生はもちろん一生懸命で色んな事をするけれども、僕らが意図する目指す方向でなかったりということが起こりやすくなっていました。そういう意味では自分がコーチである自覚がなかったし、責任が無かったと思っています。チームを支える身近な人間としてコーチの取り組みを見直したい。僕自身も面倒を見ていると意図していないことも起きますが、自分の伝え方が悪かったからなんですね。これから何か問題を起こしたら自分の責任と考えているので、そういう意味では時間をかけて携わるからには責任を感じながらグラウンドに立つという決意を持っています。いままではコーチが「面倒を見てやるよ」とある意味アバウトな所がありましたが、やるからにはきちんとやろうと伝えました。フットボールを教えるのは当然として、学生をあるべき姿にするというのは僕たちの責任だからと言いました。毎週コーチミーティングをしてコミュニケーションをとって、コーチも学生もOBも含めこのチームをもう一回、皆が誇れるものにしていけたらと思ってやっています。
主体性を持たせたチーム作りを目指す
新しいワセダのスタイル
――高校生と大学生の指導方法に違いはありますか
ありますね。大学生の方が大人です。大人の部分を認めて尊重する時も必要だし、逆にジャマになる部分もあります。そういう意味では高校生も多少のメリハリをつけて指導はしてきましたが、大学生は人格を尊重しながら指導しているつもりです。
――いままでのチームに対しての印象は
少し物足りなさを感じている。ことしのスローガンは「考動」ということで、彼らには自由度を与えている環境を作っているつもりですが、もっと貪欲に取り組んでくるかなと思っていました。オフェンスとディフェンスで色が違うと思いますが発信力が少ないと思います。でも今までと運営が180度変わって彼らも戸惑っているし、僕とどのくらいの距離感やコミュニケーションの取り方など探り合いではないですけど(笑)。彼らがやりたいこととかを要望を出してきて、修正もしつつ新たなアイデアを出していきたいです。コーチが主導権を持ちながらも学生に主体性を持たせるような取り組みができればと思っています。まだ主張が遠慮がちだと感じています。
――春シーズンの目標は
オープン戦は多く組んでいます。まず試合は全部勝ちたい。チーム作りの考えを変えて、ワセダという環境で理想的なチームを作れると思っているのでワセダらしいフットボールというのを今シーズン以降確立していきたいと思っています。そのチーム作りの成果をこの春から出していきたいと思います。僕らの目指すフットボールはスピードやプレーのテンポを大事にしていて、考える力はあるので、攻守ともにユニークなプレーを展開していきたい。これが新しいワセダのスタイルというのを確立していきたいです。
――早慶戦に対しての印象は
慶大は好きなチームの一つです。好きだからこそ負けたくないというのかな(笑)。特にフットボールという競技の質では負けたくないと思っていて。昔から慶大は毎年新しいことを取りこんで一歩先を行ったフットボールをやっているという印象です。ここ数年、選手は素晴らしいけれども、力を上手く使えていないという印象でした。潜在的な能力は高いです。ことしからはヘッドコーチが変わって、どういう風に仕上げてチームを作ってくるかというのは怖い部分でもありすごく楽しみです。自分も初戦であるし最高の相手と試合できるのは光栄に感じています。
――オフェンス、ディフェンスの注目選手は
1人のプレーヤーではないですけどOLかな。指と一緒で5人が大事になってきます。いい仕事ができたらいい試合になるし、この5人をキッチリ教えるのは難しいことですが、新チームが発足してプレーのシステムが一新した中、どれだけ実戦の中でやりきれるか楽しみでOLにはものすごく期待しています。ディフェンスも攻撃的なディフェンスが好きなのでLB陣ですね。個人名はなかなか難しいな…きょねんケガをして悔しい思いをしたLB岩井(康祐、商4=東京・早大学院)とかが大暴れしてくれるといいなと思います。
――見に来て下さる方に一言
フットボールを知っている人もよく知らない人も面白く素晴らしいスポーツだと思うので、見た後に「フットボールはいいなあ」と思えるような試合を展開したい。学生には最初から最後まで全力でひたむきにしようと言っているので、そういう姿を温かい目で見てほしいです。
――ありがとうございました
(取材、編集 田中竣)
◆濱部昇(はまべ・のぼる)
1963年(昭38)10月7日生まれ。東京・早大学院出身。87(昭62)年教育学部体育学専修卒。
現役時はQB。2010年(平22)、母校の早大学院を24年ぶりのクリスマスボウル優勝に導き、その後3連覇を果たした。今年度よりBIG BEARSの指揮を執る。初戦である早慶戦を勝利で飾るをことができるか