【連載】『第61回早慶戦特集』 第10回 小笠原知也主将インタビュー

米式蹴球

 「考動」――本年度、早稲田大学米式蹴球部が掲げるスローガンだ。BIG BEARSの主将としてスローガンを体現するのはOL小笠原知也(スポ4=東京・戸山)。チームとして目指すべき所や早慶戦の重みについて語る。

早慶戦への意気込みを語る小笠原

人としての成長を

――昨季を振り返って

きょねんのメンバーは甲子園ボウルとあずまボウルを経験している唯一の代で、上のレベルと戦ったことがあるからこそ勝ち方を重要視していて、イメージできていたと思います。春もどこまで強くならなければいけない、フィジカルを上げなければいけないというのは明確だったんですけど、夏の不祥事があってすべてが崩れてしまったという印象です。ただ、きょねんの代で良かったのはメンバーがいない中でも、前半戦はOLが頑張っていて、メンバーが戻ってきてからも亀裂が入ることなくやれて一致団結できたことです。最後の早慶戦で勝って終われたというのはきょねんのメンバーの強い部分だと思います。

――どのようなチーム作りを目指していますか

まず指導体制が変わって、新しい考えや方針を感じていく中で濱部監督代行と一緒に頑張っていきたいというのがあって。きょねんのようなことは未来も含めて絶対に起こさないようなチームにしたいというのがあります。一番重視しているのは人としてどうやって成長していけるかということですね。選手としての成長と共に人としての成長です。そこはきょねんは選手としての成長が強調されていたので、そこの違いを出していきたいです。

――そういった所が主将として気をつけていることですか

そうですね。普段の生活から、授業や、グラウンド外での態度はずごく気をつけているところです。

――小笠原選手は高校時代も主将でしたか

いえ、副将でした。

――主将というのは初めてですか

そうですね。中学時代に部長はやっていましたが、大きな組織をまとめるのは初めてですね。

――苦労などはありますか

苦労はいっぱいあって。例えばゴミが落ちている時、自分が気づいて綺麗にするのはすごく簡単なことですけど、それは自分自身も得意なことで。ただ、まとめる立場になって初めて、それを人に伝えるかというところが難しくて。この程度のゴミならいいやという考えにさせないようにするのが難しいです。

――ワセダを志望した理由は

単純に憧れがあって。慶大を受験しなかったのは高校の時から接点がワセダにあったからだと思います。高校のアメフト部の時にワセダの学生が教えに来てくれることがあって、身近に感じていました。BIG BEARSの人がすごくカッコいいと思い、ワセダが良いなと思っていました。

――大学に入る前からアメフトを続ける気持ちでしたか

高校を引退した直後は燃え尽きて、絶対にもういいやという気持ちでした(笑)でも一浪して長い間スポーツから離れ、なんとなく体を動かさない日々が続いているとまたやりたくなってしまいました。その時に見えてきたのがBIG BEARSでした。

――BIG BEARSとはどのようなチームですか

それは毎年4年生が考えてなりたいBIG BEARS像を考えるのですが、ことしは特に個人が考え、グラウンドでどう動くかが大切で。その中でも、いままではワセダといえば最後まで泥臭くやりきるというイメージを自分たちも描いていて、描こうとしていたのですが、それ以上にワセダとしての頭の良さや判断の早さなどスマートさを求めてもいいんじゃないかというのはことしガラッと変わった部分で。だからといって途中でプレーをやめてしまうのはいいことではないですけど、それらを兼ね備えた上でどうしていくかを個人で考えていくチームです

――実際にあるチームで目標にしているところはありますか

学生の心意気や心構えがすごいと感じているのは関学大です。4年生がどうやって勝とうと日々の取り組みを考えているチームで。関学大や法大など学生主体となっているチームは普段の面からも意識しています。

――スローガン「考動」についてはどのように決定しましたか

4年生の中で候補を上げて、多数決でした。いくつかある候補の中のひとつでした。他の候補とも競っていて最初はこれでいいのかという所から始まったのですが、普段の取り組みを見ていると、考えて動くということは自分たちも思っていて周りからも言われることで。このスローガンで良かったと後々に気づいてきました。

――副将の存在というのは大きいですか

自分がいない時に伝えたいことを伝えてくれる存在で、主務を含めて一番考えを共有しています。最初、自分が体調を崩して2、3日練習に参加できなくなってしまったことがあって、不安で主将はグラウンドにいなければいけないという思いが強かったんですけど、副将いるから平気だろうと思えたのは大きいですね。

プレーでもチームを引っ張る

早慶戦は想いの積み重ね

――早慶戦の印象は

憧れでした。外部からの入学だったので、ワセダとして慶大と戦えるのは誇りに思います。正直、ワセダだから勝たなければいけないというのが最初はよくわからなかったですが、慶大という相手になぜ負けてはいけないかを考えたときにやっぱりOBの想いがあると思います。エピソードなどを聞いて、現役の選手に言ってくださるのは「とにかく負けるな」という言葉です。そういった想いの積み重ねが早慶戦にはあると思います。

――そういった想いを聞いて緊張とかはありますか

OBの方々が一番願っているのは学生に全力を出して欲しいということだと思います。そこは心意気を感じて、全力でやるだけですね。

――ワセダのキープレーヤーは

成長したら勝てると思っているのは、QB内村(竜也、法3=東京・早実)、QB木村(隆、教3=東京・早大学院)です。もっともっと自分勝手に貪欲になって欲しくて。彼らのリーダーシップが見られたらオフェンスのテンポも上がって得点が取れると思います。ディフェンスは完全に個人的にLBコグラン・ケビン(商2=東京・早大学院)です。慶大の主将もLBで、法大の主将もLBなんで彼らを想定した練習ができますし、ことしケビンが学生で日本一のLBになれたら、どのLBにも負けない自信がつくと思います。彼にはそれくらいの能力があるので。

――慶大のキープレーヤーは

ディフェンスだとDLの唐神選手です。下の学年からずっと試合に出ていてサイズも大きいですし、一番ワセダのことを知っていてどうやったら勝てるかを知っている選手だと思います。オフェンスで言えばQB高木くんです。うちのQBと同じ学年で、そこでパフォーマンスの違いをこっちが見せるか、相手に見せられるかでチームのモメンタムが変わってくると思います。

――ことしの早慶戦はどのような試合に

特にことしチームで変えようとしているのは色んなスピードの面で、クイックネスや次のプレーまでのスピードやプレー自体のスピードも速くしようと心がけています。それはいままでのワセダにはない部分で。むしろ慶大の方にあった部分だと思っているので、そういうイメージをガラッと変えたいです。慶大みたいになったとは言われたくないですけど(笑)ワセダ違うなという所を見せられると思います。その部分は自分たちが自信を持って取り組んできたので、そういったところを出せれば自分たちのペースに持っていけると思います。

――今の心境は

練習も数少なくなってきているので、あとは具体的に相手をイメージして練習できるかだと思います。やっぱり慶大も関学大と試合があって、具体的に相手が見えてくると思います。それをいかに皆に伝えて、東伏見のグラウンドを駒沢陸上競技場に見えるくらいの練習をしていきたいです。

――早慶戦への意気込みをお願いします

2013年度のBIG BEARSらしさをフィールド上やサイドラインで体現して、勝ちます

――ありがとうございました

(取材、編集 田中竣)

◆小笠原知也(おがさわら・ともや)

 1990年(平2)7月6日生まれ。180センチ、89キロ。東京・戸山高出身。スポーツ科学部4年。OL。常に周囲にアンテナを張り、気になったことをメモするという小笠原主将。特に作家の石田衣良さんの言葉が心に刺さるそう。気配りを忘れないBIG BEARSの主将としてチームをまとめる姿に注目だ!