【連載】『第61回早慶戦特集』 第9回 AT松田宗大×SC大野龍仁

米式蹴球

 選手の体調管理や体作りを担うのがSC(ストレングス&コンディショニングトレーナー)、AT(アスレティックトレーナー)の仕事である。選手がグラウンド上でベストなパフォーマンスをするために彼らはサポートをする。今回はAT松田宗大(スポ4=愛知・明和)、SC大野龍仁(スポ3=兵庫・西宮北)の2人にトレーナーを目指した理由や自らの仕事について語ってもらった。

ケガをした選手のリハビリを担う松田

ケガを乗り越えて選手は成長していく

――もともとアメフトに興味はありましたか

松田 スポーツとしては知っていましたけど、そこまでアメフト部に入ろうと思ってきたわけではないです。

大野 僕も漫画では知っていたぐらいです。

――ではなぜアメフト部に入ろうと思ったのですか

松田 BIG BEARSに入ろうと思ったのは、フェスタに参加して先輩達と話して憧れて入りましたね。

大野 漫画を読んでいて興味があって、勧誘されて試合を見に行った時に格好良くて。「うおおー」って思いました(笑)。あと、トレーナーの勉強もしたくて、ここならやりたかったストレングスの勉強ができると思ったので。

――選手としての気持ちはありましたか

松田 なかったですね。高校まで野球をやっていたんですけど燃え尽きたというか。「もういいかな…」思いました。あと少しケガがあったので。やれる範囲でしたが無理してやるのはどうかと思いました。トレーナーとしての方に行くつもりだったので、大学ではそっちの道へ行こうと。

――普段はどのような仕事をしていますか

松田 普段はリハビリやテーピングは基本ですね。選手のケアとかですね。状態の悪い選手のパフォーマンスを上げて練習に参加させるかということですね。

大野 僕は健康な選手のパフォーマンスを引き上げるのが僕の役割です。具体的にはウエイトとかですね。色々やっています(笑)。

――昔からトレーナーなどに興味はありましたか

松田 昔からありました。野球は高校までやっていましたが、大学はワセダに来てしまったので…(笑)。無理だと思って。逆にあきらめがつきました。一回トレーナーとしてやってみようと野球部の方にも行ってみましたが少し違いましたね。

大野 興味があったと言えばありましたけど、なろうと思ったのは高1のときに職業を調べようという時間があって、スポーツが好きなので調べていたらトレーナーがありました。これになりたいと思って、大学もスポーツ系の大学に絞りました。

松田 へえー(笑)。動機すごいな(笑)

大野 興味が無かったわけではないので(笑)ほんとになろうと思い始めたのはその時ですね。

――やりがいは

松田 一番嬉しい嬉しいと感じるのは長期リハビリで苦しんだ選手が普通に何事もないようにプレーして活躍する時ですね。

大野 日々ウエイトをしているなかで、回数が上がったことを嬉しそうに報告してくれるときですね。

――逆に大変な事は

松田 ぼちぼちありますけど…もともと大変な職業なので、想像の範囲内というかそれをやらなければ意味がないというかやるべきことですね。つらいですけどもう嫌だというくらいにはならないですね。

大野 ありますけど…主任ということで立場的に4年生の上に立って指導しなければいけなかったり、自分は口下手なので選手を駆り立てられなかったりとうまくいかないこともありますが楽しい時の方が強いのでやっていけます。

松田 こいつは苦労していますよ(笑)。

大野 苦労していますが、松田さんとか他の4年生のスタッフさんにすごく助けられているのでやっていけてます。

――大きなケガをしてしまった選手などに対して気をつかったりしますか

松田 基本的に僕が直すわけではないので。ケガを乗り越えて選手は成長していくものだと思っていますし。自力で這い上がらなければいけないので、その手助けはします。落ち込んでいて辞めそうだった選手もいましたが、それはトレーナーとしてではなく同期やチームメイトとして接しては言います。けど、トレーナー対選手となった時に気にすることはありません。

大野 自分は健康な選手なので、すごい意識してやっていることはあまりぱっと思いつかないですね(笑)。プラスになっているかわかりませんが皆に同じ接し方はしません(笑)。あまり詳しくない選手には噛み砕いて話して、細かい筋肉の名前まで知っている選手には簡単に言ったりします。選手の個性に合わせて話すことはありますね。

3年生ながら主任として奮闘する大野

新入生が描くトレーナー像に近い

――トレーニングの意識が高い選手は

大野 DL篠澤さん(慶、人4=埼玉・川越東)ですね。4年生になると高まってきます。LB西田さん(啓祐、文構4=東京・早大学院)や裕一さん(DB末吉、商4=東京・早大学院)ですね。

松田 4年生かつディフェンスだな(笑)。

大野 うちの代で言ったらOL中村洸介(スポ3=東京・日大三)ですね。

――いままで見てきた中で大きなケガをして復活した選手は

松田 今の代でいえば主将のOL小笠原(知也、スポ4=東京・戸山)や副将のLB岩井(康祐、商4=東京・早大学院)、WR脇屋(慶、政経4=東京・早大学院)ですね。彼らは全員幹部でビックリしているんですが、成長したからなったのかと思いますね。きょねんだったら長尾篤さん(平25教卒=東京・早大学院)ですね。あの人はすごく大きなケガだったので、任された時には責任を感じました。あれ以上のケガは今後出ないと思いますね。完全にスポーツができるような状態ではなかったんですけど、それでもやっていたのはあの人の強さだと思います。

――トレーナーに向いている人とは

松田 向いている人…

大野 献身的な人ですかね。選手のためと思ってやっているわけではないですけど、実質選手のためですよね。自分のプラスよりは選手のプラスのためにというので献身的な人ですね。

松田 我が強い人はダメですね。

――早慶戦の雰囲気はどうですか

大野 いつもドラマが生まれる。

松田 (笑)。何が起こるかわからないのでワクワクしますね。選手はすごく緊張すると思うんですけど、僕はプレーするわけではないので。やることは他の試合と変わらないので忠実にやった上で楽しみたいです。観客も多くてワンプレーで沸くし。そこで選手がどうやって成長するかが楽しみです。

大野 絶対に負けてほしくないです。ワセダである以上、慶大には勝ちたいです。でも何でですかね?(笑)。関東に来るまで早慶戦の存在も知らなくて、早慶戦という大きな試合があって、両校が激しく争っていて…

松田 関立戦みたいなものだろ

大野 なるほど。入ってみると勝ちたいという気持ちが大きくて。その日に僕が何をするというわけではないですけど、松田さんの言った通りいつものことをする中でいつも以上に応援する自分がいると思います。

――新入生に一言

松田 そんな言える立場にはないですけど(笑)。ここはすごくいい環境だと思います。アメリカンフットボールというケガが多いスポーツで、やりがいはありますし。新入生が描いているトレーナー像にすごく近いと思います。他のスポーツでは慢性的なケガが多いので。アメリカンフットボールという馴染みのないスポーツで抵抗感はあると思いますがトレーナーを本気で目指す人には楽しい場所だと思います。

大野 SC側の話をさせてもらうと、アメフトという競技の特性上身体を大きくしなくてはいけないし、体重増やしたりなどがすごく重要になってくるので経験を積めると思います。描いてるトレーナー像は松田さんみたいな人だと思いますが、トレーニングを見たいやコーチングをしたいという人は来てみてください!

――ありがとうございました!

(取材、編集 田中竣)

◆松田宗大(まつだ・のりひろ)

 1991年(平3)10月14日生まれ。愛知・明和高出身。スポーツ科学部4年。AT。最近は生理学や神経学に興味があるという松田さん。好きな筋肉は僧帽筋と肉離れが起きやすいハムストリング。ケガが多いアメフト選手の支えとなる!

◆大野龍仁(おおの・りゅうじ)

 1992年(平4)9月11日生まれ。兵庫。西宮北高出身。スポーツ科学部3年。SC。選手のお腹を掴むのが趣味と語る大野さん。好きな筋肉は広背筋。力あふれるBIG BEARSの選手の身体づくりを担う