【連載】『第61回早慶戦特集』 第8回 MGR鈴木里果×AS菅井隆史(1)

米式蹴球

 裏方としてグラウンド上だけでなく、チームの運営に関わるMGR(マネジャー)。戦術分析を担うAS(アナライジングスタッフ)。彼らは選手を裏から支える。MGR鈴木里果(政経4=東京・早実)、AS菅井隆史(教4=東京・早大学院)にそれぞれの仕事や苦労などを伺った。

チームを影から支える鈴木

自分から何をやっていくか

――アメフトを知ったきっかけは

鈴木 高校が早実なのでアメフト部があって、友達がいたので試合を見に行ってアメフトを知りました。

――鈴木さんご自身はテニス部だったとお聞きしました

鈴木 小中高とテニス一筋でした。高校時代は自分が大学でアメフト部のマネジャーをやることは全く考えていなくて、ただアメフトっていうスポーツが面白いなと感じたので、自分の部活の合間にアメフト部の試合を見に行くという感じでしたね。

――高校時代、BIG BEARSの試合も見に行ったことはありますか

鈴木 高校のときは見に行かなかったんですけど、自分が1年生の時の早慶戦は見に行きました。

――その時の印象は

鈴木 すごくかっこよかったです。選手というより単純にスポーツがかっこいいなと思いました。私の一つ上の先輩が早実出身で知り合いだったので、自分の知っている人が実際にフィールドに立ってアメフトをしているのを見て憧れました。

――その早慶戦がきっかけとなってBIG BEARSに入ろうと思われたのですか

鈴木 興味があったのはもちろんですが、一つ上に早実の先輩がいたということが大きかったです。

――はじめて練習に参加したときは緊張されましたか

鈴木 すごく緊張しました。でも実際チームに入ってみると先輩や選手たちが優しくしてくれたので緊張はすぐほぐれましたね。

――マネージャーという仕事について、普段どんなことをされていますか

鈴木 ほかの体育会のマネジャーはボトルワークが中心だと思うんですけど、アメフト部のマネジャーはボトルワークはもちろん、下級生のうちはビデオを撮ったりします。上級生になるとプレハブでメールや電話でやりとりをしていることが多いですね。チームと外とをつなぐパイプ役だと思っています。

――やりがいを感じるのはどんな時ですか

鈴木 私は受身の姿勢でいるよりは主体的にチームに関わっていこうと思っているので、時間もかけていますし気持ちも入れている分、単純に試合に勝ったときは選手と同じぐらい嬉しいし負けた時はすごく悔しいです。客観視することなく選手と同じぐらい気持ちを入れているので、選手と一緒に一喜一憂していますね。

――大学ではじめてマネジャーを経験されたそうですが、苦労はありましたか

鈴木 1年生の時は言われたことをがむしゃらにやっているという感じだったのですが、少し落ち着いて考えてみた時に、当たり前のことを当たり前にするだけでは褒められることもないし、常に百のことが求められますし、高校までプレーヤーとして関わっていたテニスでは自分の努力が直接結果に結びついていたので、結果が目に見えないという部分ではやりがいを感じられなかった時期もありました。

――目標とする先輩はいますか

鈴木 私が2年生の時の主務の工藤さん(希、平24政経卒=群馬・前橋女)という方です。実はアメフト部を辞めたいと考えていた時期があって。その時はやりがいを感じられなくて落ち込んでいたんですけど、マネジャーのミーティングの時に態度に出てしまっていたんです。その時に工藤さんの「何のためにマネジャーをやっているの?人のためにやっていると思ってない?」という言葉が自分の中ですごく胸に響いて、そこから与えられたものをやるというよりは「自分から何をやっていくべきか」とか「自分がこれをやっている意味はなんなのか」と考えるようになりました。そこから自分のマネジャーとしてのモチベーションも変わりましたし、これから頑張って続けていこうという気持ちになった瞬間でしたね。落ち込んだ人に対して厳しい言葉をかけるのって逆にマイナスな気持ちにさせてしまうかもしれないし、部活を辞めるきっかけになってしまうかもしれないからすごく難しいことだと思うんですけど、その時の工藤さんの一言はその時の私の状況であったり性格を冷静に判断してくれていて、その言葉をかけたら私がやる気になるってことをすごく理解してくれていたからこそたと思います。上に立つ人間は状況を的確に判断して常に最善の策を考えていく姿勢が大切だということを学ぶことができたので、すごく見習わなければいけない部分だなと思っていますし工藤さんには感謝しています。

――工藤さんとの出会いが転機になったのですね

鈴木 そうですね。工藤さん本人はそのことを全く覚えていなかったんですけど(笑)、私としてはすごく大きく変わるきっかけとなりましたね。諦めないで頑張っていこうと思えた瞬間でした。

――新チームの雰囲気はいかがですか

鈴木 すごく伸び伸びとやれているなと思って、監督も変わって方針も変わって、自主性を重視するようになり、やらされているというよりは自分たちがやるという自主性が見えるようになっているなと思います。でも難しい部分でもあって、縛りや制約がないぶん(力を)抜こうと思えば抜けますし、実際に4年生の中でも、そういう下級生がいることだったり、4年生の意識が足りない部分が問題になっているので、これからはそういう部分をもっと厳しく見ていき、いかに自主性を持って主体的にやっていけるかが問題だと思います。

――いまの4年生はどういう学年ですか

鈴木 4年生は、他の人たちも言っていると思うんですけど、すごく飛び抜けてスキルの高い選手だったり説得力がある人があまりいないので、そういう部分では少し不安だなと思いますし、マネジャーとしては4年生に求めていきたい部分ではあるんですけど。どの学年よりも思いやりとか優しさとかは持っていると思います。

――後輩については

鈴木 後輩はすごくガッツもあるし、それぞれ個性がすごく強い学年なので、そういう部分とチームとして頑張っていくという部分では自分との個性と折り合いを付けてほしいところでもあるし、その個性を生かしてどんどん4年生に刺激を与えて、チーム全体として頑張ってほしいなとは思っています。

――OL小笠原知也主将(スポ4=東京・戸山)はどのような人でしょうか

鈴木 最初みんなが「すごくいい人」って言っていたんですけど、私だけうさんくさいと思っていたんですけど(笑)。でも実際に一対一で話してみると、すごく熱いし、チームのことを誰よりも考えているし、主将としての自覚だったりこれからどうしていきたいというのがすごく明確なので、主将としてふさわしいというか、新しいチームとしての方針にはすごく合っているなと思います。ちょっと上から目線なんですけど(笑)。

――部内で尊敬している選手はいますか

鈴木 2年生だったらDBの藤原(健太郎、政経2=東京・早大学院)ですかね。選手としても仕事目線で見てもすごく単純に上手いなと思いますし、すごくマネジャーのことを気にかけてくれるというか。一対一で話して話を聞いた時に、マネジャーに対してもすごく思いやりがあって自分で考えている部分を私に伝えてきてくれたり、チームとしてどうやっていくかというのをすごく考えていて、私たちの代が2年生だった時よりもすごくチームのことを考えていてくれるなと思うので、頼もしいなと思います。

――オフェンスとディフェンスでどちらが好きですか

鈴木 どっちも格好いいんですけど、どちらかというとオフェンスが好きです。

――その理由は

ディフェンスもすごく格好いいと思っているんですけど、オフェンスというかWRが好きなので、一発TDとかすごくテンションが上がりますし、ディフェンスだったらDLが格好いいと思います。

――もし自分が選手だとしたらどのポジションがやりたいですか

鈴木 DBがやりたいです。WRって(ボールを)取ったら花形じゃないですか。すごく歓声も浴びるし。それを防いで自分が一本持っていったらすごく格好いいなと思うので(笑)

――早慶戦の雰囲気はマネジャーから見てもやはり違いますか

鈴木 もちろん選手の雰囲気も違いますし、半年以上前から準備していて、マネジャーとしてもかける時間が長いのですごく熱い試合ですし、懸ける思いも違うので、チームとして早慶戦はすごく大きな試合で永遠のライバルなのでやはり違いますね。

――学生主体で運営する時の苦労は

鈴木 単純に仕事量がすごく多くて、いまの時期は1年生がいなくて3学年でやっていくのにこの量みたいな(笑)。一から協賛の方を探し出したり、パンフレットの構成や観客の方を動員するためにどうすればいいのかとかを考えなければいけないので。あとは慶大との意思疎通というか、互いにやりたいことがあって、それをどう折り合いを付けてやっていくかというのが難しい部分です。

――早慶戦のどんなところに注目してほしいですか

鈴木 早慶戦は駒沢陸上競技場でやって観客もすごくいると思うんですけど、早慶戦ということに限らずことし初めてのビッグゲームというか、ことし始まって初めての大きな試合なので、チームがどういう風に変わったかというところも見てほしいですし、今後もっとみんなに期待されるチームになっていくところを見てほしいと思います。

――部員に対して伝えたいことはありますか

鈴木 4年生になって思ったことは、1年生の時は全然時間あると思いましたし、まだまだこれから4年もあるのか、というイメージで。入ってきて経験者や未経験者関わらず、部としてどうやっていくかというのをあまり考えずに行動したり、好きなようにやっているという部分があると思うんですけど、楽しい部分を重視するのも分かるしあまり考えずにやれることが下級生としての良さかもしれないんですけど、一つでも小さな目標でもいいので、自分に対してここだけは譲れないというものをつくると4年生になって自信にもなるし、このチームにいる上で成長したいと思うなら強みになるポイントをつくっておくことも大切だと思うので、そういう部分を感じて4年間過ごしてほしいです。まだ私も1年あるんですけど(笑)。

――最後に新入生に向けて一言お願いします

鈴木 最初は特に深いことを考えずに、とりあえず飛び込むだけでもいいので飛び込んできてほしいなと思うので。私も全然考えてなかったですし、アメフトに関わることやマネジャーとしてやっていくことに対して自信もなく、何も分からない状態で入ってきたんですけど、実際になんとかなると思います。その中で得られるものはずっと1年生の時から4年生に言われてたことなんですけど、4年生になってみないと分からない面白さややりがいがすごくあるので、飛び込む勇気を持って入ってきてほしいなと思います。