【連載】『第61回早慶戦特集』 第2回 QB木村隆×QB内村竜也

米式蹴球

 「オフェンスの司令塔」――。QBというポジションを表す時に多く使われる言葉だ。QBは冷静にフィールドを見渡す頭脳やパスの能力、時に自ら走ることも求められるなどチームの勝利の立役者となるため様々な能力を必要とされる。今季、ワセダの攻撃を率いるQB木村隆(教3=東京・早大学院)、QB内村竜也(法3=東京・早実)の二人に昨年の早慶戦の悔しさやことしの意気込みを語ってもらった。

息が合った会話を見せる二人

QBはオフェンスの司令塔

――アメフトを始めたキッカケは

内村 自分は友達に誘われて高校から始めました。小学校からずっと野球をやっていて、中学でケガをして野球ができなくなった時に誘われて始めました。

木村 自分は中学まではアメフトと全然違うスポーツをやっていたんですけど、野球とか水泳とかやっていて。高校に入った時に部活でしかできないスポーツをやろうと思って。アメフト部に勧誘されて、グラウンドへ行ったら設備がすごくよかったのでそれで入部しました。

――QBとはどのようなポジションですか

内村 QBはオフェンスの司令塔なので、オフェンスを引っ張っていく存在だと思います。

木村 自分も同じです。QBはオフェンスの中心でなければならないと思っています。プレー面だけではなくて、私生活から常に視野を広く持っているのが必要なポジションだと思います。

――QBに向いている人とは

木村 ポジティブな人です。あとは…

内村 リーダーシップのある人ですかね。

――それは上級生を引っ張っていくことも大切ですか

内村 はい。

――QBをやっていて嬉しいことなどは

木村 単純にチームを勝利に導けた時です。あとはパスが決まった時ですね。

内村 僕も同じです。難しいことはQBというのはアメフトのポジションの中で一番難しいポジションだと思うので、100パーセントのプレーがいつも出来るとは限らないのでそこが難しいです。

――どんな練習をしていますか

木村 股関節がボールを投げるのにとても大切なので、股関節周りを使う練習をしています。

内村 ぼくも同じです。練習は一緒にしているので(笑)

――他のポジションの経験は

木村 ないですね。QBしかないです。

内村 僕もです。

――やってみたいポジションは

木村 ボールを取っているので、レシーバーをやってみたいです。

内村 オフェンスなら僕もレシーバーで、ディフェンスならLBはやってみたいと思います。

――ここはちょっと厳しいかなというポジションは

木村 OL、DLです。ボールに触れないので(笑)

内村 僕にはOLはできないと思います。線が細くてやられちゃうと思うので。太れないんです。

――QBとして自分の長所は

内村 勝負所で決められるという自信があるところです。

木村 ディフェンスをリードするという力には自信があります。相手がどんなディフェンスをしてくるかというのをセットした時に予想できる力です。

――新入生に一言

内村 アメフトはすごくやりがいのあるスポーツなので一度見れば興味が湧いてくると思います。

木村 アメフトと言うのは適材適所のスポーツなので、肩が強いとか足が速いとか何か一つでも抜けたものがあればすぐに活躍できるスポーツです。ワセダは未経験者が多いチームなので、1年生からでも試合に出ることができると思います。

主任としてQBユニットを引っ張る木村

皆で競争していきたい

――内村選手は昨年スタメンとして試合に出場することが多かったですが、ご自身のプレーについてはいかがですか

内村 うーん難しいですね(笑)合格点はあげられないです。50点か60点という感じです。QBは後輩先輩関係なくチームを引っ張っていかなければいけないのですが、自分がきょねんのオフェンスリーダーの小林勇気さん(平25政経卒=東京・早大学院)やQB主任が福井さん(裕二、平25政経卒=東京・早実)などの4年生に頼り過ぎていた部分がありました。自分が試合に出ているのにオフェンス陣にリーダーシップを発揮できなかったです。

――木村選手は昨季出場機会にあまり恵まれませんでしたが

木村 そうですね。バックアップという形になったんですけど、法大戦でファンブルしてしまったり、自分のせいで負けたことがあったので悔いの残るシーズンでした。

――昨年一年間で成長した部分は

内村 1年生の時はただがむしゃらに投げているだけでしたが、2年生になって相手のディフェンス全体が見渡せるようになったのが成長かなと思います。

木村 いつ出場できても準備ができるようになったことが成長だと思います。

――ここはまだ足りないと思うことは

内村 結構あるんですけど(笑)細かいコントロールだったり、リーダーシップなどはまだ全然足りないと思うのでこれからもっと精度をあげて、私生活でも皆を引っ張れるようにしていきたいと思います。

木村 内村と同じでもっと細かい所にこだわっていかないと、上のチームには勝てないと思っています。ステップなどもっと細かいところから見直していかなければと思います。

――他のQBで気になる選手や目標にする選手はいますか

内村 昨年はやっぱり畑さん(関学大)がすごかったです。尊敬しています。自分と同じ学年に良いQBがたくさんいて、斎藤圭(関学大)であったり、高木翼(慶大)くんであったり。そういう人たちが自分の中ではライバルとして置いています。

木村 自分が目標にしているのは法大OBの菅原俊(オービックシーガルズ)さんです。身長も体格も同じぐらいですけど今社会人で日本一のチームを率いているということで、学ぶ所がたくさんあるので。

――QBユニット全体で目指す所は

木村 今年のQBはファミリー感というのを重視しています。良いプレーをしたら褒めたり、逆に厳しく言えたりもします。まとまりを意識しています。全員が100パーセントのプレーを出来るわけではないので、皆で競争して良いユニットを作っていきたいです。

――後輩のQB政本悠紀(基理2=東京都市大付)については

木村 体が強いのと、意外な所で「おっ」と思わせるようなプレーをしてくれますね。(笑)

内村 身体能力が高いので、球も速いですし足も速いので、ピンポイントで良い球が通ったりするので、すごい武器だと思います。

――春はどのような取り組みを

木村 ずっときょねんからですけど、股関節の使い方などを修正して。春は細かい所にこだわっていけば成長すると思うので。

内村 僕も春の段階では投げ方を習得して、QBとしてもっとチーム全体を引っ張っていきたいです。

昨季はスターターを獲得した内村

どんな形でも最後に勝っていればいい

――昨年は最後のプレーコールにミスがあり敗戦しましたが、その時緊張などはしていましたか

内村 その前に3連続でパスを通して、あと残り6秒くらいで。その時は未熟だったのでランプレーが入ったときは「やっぱりワセダの看板プレーであるランで勝負を決めに行くのか」と思っていたんですけど、残り時間とかを考えるとそれはミスだったので…。今でも後悔しています。

――木村選手はサイドラインから見ていてどう思われましたか

木村 まず選手も違っていて。タイムアウトも残っていなくて。ひたすらTBの小林さんに祈るしかなかったです。

――相手の慶大で注意している選手は

内村 オフェンスだったら同じQBの高木くんです。同年代ですし、今年オフェンスリーダーになったらしくて。結構注目しています。ディフェンスだったら、秋のリーグ戦で慶大と試合した時に負傷してしまった原因のLBのライト太一くんで。素晴らしいタックルでやられたので(笑)

木村 一番警戒しているのはDB三津谷選手です。去年の早慶戦でもインターセプトされた相手なので。今年も警戒したいと思います。

――インターセプトされた瞬間は

木村 あれは単純にスローイングミスです。試合前の練習では調子が良くて、投げた感じは通ったかなと思ったんですけど。やっぱり三津谷選手がすごかったです(笑)

――ワセダの注目選手は

内村 WR金澤(秀明、教3=東京・早大学院)やDB石川瑛二郎(人3=東京・早大学院)ですね。

木村 どっちも同期だな(笑)

内村 そうですね(笑)他にもいるんですけど、その二人を。

木村 レシーバーだったらWR鈴木拓馬(社2=大阪・豊中)です。ディフェンスだったらLBコグラン・ケビン(商2=東京・早大学院)やLB峯佑輔(教3=東京・早大学院)です。

――最後に意気込みを

内村 春の早慶戦も負けましたし、秋のリーグ戦でも途中で交代してしまったので、今年の早慶戦は気合を入れていきたいです。お互い指導者が代わってシステムも変わったので、自分達が変わったところを見せたいです。

木村 ワセダに入ったからには慶大には絶対に負けられないと思っているので。とにかくどんな形でも最後の残り0秒の時に勝っていればいいと思います。

――ありがとうございました!

(取材、編集 田中竣)

◆木村隆(きむら・たかし)

 1992年(平4)2月11日生まれ。174センチ、81キロ。東京・早大学院出身。教育学部3年。QB。試合のある2日前にはスーパー銭湯、前日には映画鑑賞に行くと決めている木村。取材の日もこの後、銭湯に向かったそうです。早慶戦でもリラックスしてTDを決めることができるか

◆内村竜也(うちむら・たつや)

 1992年(平4)9月12日生まれ。182センチ、81キロ。東京・早実高出身。法学部3年。QB。趣味はドライブや銭湯に通うことと語る内村選手。昨年の早慶戦では自らの未熟さが出てしまったと悔しそうに語ってくれました。今年は昨年の雪辱を晴らすべく自らのTDで勝利に導く