山岳部夏合宿2

山岳

8月1日から15日にかけて行われた山岳部の夏合宿。小池崇仁(商4=東京・芝)、真道虎太郎(政経4=神奈川・湘南)、岩波健(法2=東京・芝)、鎌形祐花(法2=千葉・市川)、上村拓也(基理2=東京・早大学院)の5名で行われた。対象は、定着が北アルプス劔岳、縦走が北アルプス 雷鳥沢〜浄土山〜五色ヶ原〜越中沢岳〜薬師岳〜黒部五郎岳〜双六岳〜槍ヶ岳〜横尾〜上高地となっている。以下、山岳部提供の夏合宿の記録。なお、上村は山岳部1年であるため、文中では1年として記載されている。

縦走パート(8月11日~15日)

8/11 天気 晴れ 気温 雷鳥沢15℃ 五色ヶ原25℃ 2:00 起床 ~3:22 出発 ~4:18 室堂発 ~5:50 浄土山 ~6:58 獅子岳手前~ 9:10 五色ヶ原キャンプ場TS(電波◎)~18:00就寝

縦走初日。撤収作業で遅れる。下級生同士のコミュニケーションが不足し連携が上手くできていないようだ。各々が炊事リーダーのつもりで、先を想像し次にやるべきことを考え積極的に周りに指示を出すことを心がけたい。鎌形、上村、岩波、小池、真道で隊列。鎌形がトップなのは初。分岐を見逃し間違えることが多々あるので注意。室堂でゴミと空のガス缶を廃棄。浄土山頂上で小雨が降ってきたので雨具ザックカバーを着用。鬼岳と獅子岳のコルで雨は止み日が顔を出す。雨露で輝くミヤマトリカブト、ハクサンフウロ、シシウドの群生。獅子岳頂上で撮影。ザラ峠への下りで上村のペースが鈍化。ザックで肩が痛いとのこと。ガンバ!五色に着いたので予定通り幕営。太陽もこれからが本番という時刻での帰幕で、日差しが痛い。五色ヶ原と言いつつ、咲く花々はチングルマとハクサンイチゲの白一色のみ。それでも花の百名山に相応しい綺麗なお花畑の中で、鍋を頂き本日は終了。

8/12 曇り 15℃ 2:00起床~ 3:15 出発 ~4:10 鳶山 ~5:35 越中沢手前 ~6:50 スゴ頭手前 ~8:06 スゴ乗越 ~8:56 スゴ乗越小屋TS

本日は定刻通りの出発。上空は晴れていて視界良好。しかし、越中沢の頂上から、薬師岳頂上一帯が唯一分厚い雲に覆われていることを確認。風も強そうだ。間山くらいまではガスってはない。スゴ乗越で小雨が降る。予定通り小屋で幕営した。本日南から薬師を超えてきた人の話曰くやはり稜線は風雨が強かったとのこと。

8/13 晴れ 15℃ 2:00起床 ~3:13出発 ~4:25 間山 ~5:35 北薬師手前 ~6:52薬師岳着 ~7:15薬師岳発 ~9:00薬師峠キャンプ場TS ~9:00 帰幕

1本日は台風8号メアリが東海付近に上陸する予報だが、幸い我々がいる山域への影響は少なそう。朝から快晴。北薬師に登る途中遥か南に巨大な雲の塊が見える。メアリだろう。薬師岳頂上の薬師如来に芝高校仕込みの祝詞を捧げる。いつもはガスっている薬師岳。こんなに晴れているのは初めてだ。昨年も雲海の下に沈んでいた特別天然記念物の圏谷群が一望できた。撮影を済ませ下降開始。ベニヒカゲが飛び交う薬師平を抜け、薬師峠に到着。

珍しく霧がかかっていない薬師岳

腹に日焼けのベルトができるので絶対に真似しないでください

8/14 晴れ後雨 12℃ 2:00起床 ~3:15出発 ~4:21 2450m ~5:26 北ノ俣岳 ~6:37 中俣乗越 ~8:26黒部五郎岳 ~10:23黒部五郎小屋 ~12:28 三俣蓮華岳 ~13:46 双六岳 ~14:30 双六小屋TS~19:00就寝

16日から荒れる予報なので、本日中の双六小屋着を目指し行動開始。太郎平の緩やかな木道の登りが続く。北ノ俣岳で今合宿初のご来光。チングルマの果穂が赤く揺れすでに秋の予感。ガスで景色ゼロの黒部五郎岳で百名山二座目。定刻通りに小舎に着き、隊員も余力があるのでそのまま双六小屋を目指す。三俣蓮華岳を通過した辺りで雨が強まり雨具とザックカバーを出す。西風だったので、休憩は稜線の東側で取りながら双六岳へ。東側は比較的穏やか。双六岳通過後、オーダーを変え、テントを持っている岩波、1年上村、小池を先にテン場に向かわせる。鎌形、真道も遅れて帰着。テント設営がちょうど終わるころに雨足が強まり、テント内に逃げ込む。衣類が濡れてしまったのでガスを焚き乾燥。浸水対策をして就寝。

黒部五郎小屋

8/15 雨のち曇り 12℃ 2:30起床~ 3:45出発 ~7:20 千丈沢乗越 ~9:00槍ヶ岳山荘 ~12:00ババ平キャンプ場 ~14:20 横尾~15:30徳沢園 ~17:00上高地=下山

天気は曇天。2ピッチ目くらいで雨がパラつくので雨具を着用。千丈沢乗越を越え飛騨沢側に出ると風が強い。一旦風の弱い所まで引き返し、ペースを上げるため鎌形の荷物を抜く。槍ヶ岳山荘まで1h10minノンストップで進む。乗越から200mも上がると、大喰岳の陰に入ったからか風は弱まる。岩波、上村、小池は先に向かい、山荘で全員合流。山荘外の風避けスペースで休憩するが、上村が濡れて寒そうなので衣類を貸して温める。休憩中、北鎌尾根を上がってきたというバイタルな関西人女性2人組に元気をもらう。それでもやはり槍ヶ岳の頂上は雨風が強そうなので、登頂は断念し、下山開始を決める。9時雨足が弱まった頃に下降開始。槍沢側は雨風はあまり強くない。傾斜がゆるやかになったババ平手前辺りで、先頭の鎌形が右足首を捻る。骨折ではなさそう。自力歩行は可能なようなので、荷物を抜いてひとまずババ平を目指す。テン場で泊まり明日また行動するより、今日中に下山して最善の処置をした方が良いと判断し、上高地に向かうことを決めた。一の俣まで来ると傾斜は無くなり、鎌形もピッケル等の補助も使わずに歩けそうだ。徳沢園で挨拶をしてコーヒーフロートを頂く。17時にバスターミナルに到着して下山した。

総括

まずは、すべての行程をやりきることができたことは喜びたい。2週間以上山の中で生活し続けるという貴重な経験もできた。昨年できなかった剱岳での定着登攀もできた。

2年生について。当たり前だが大きく成長していた。まず、自分の意見を持って積極的に隊の行動判断に加わっている点はよかった。ただ、自分視点での意見が多かったので、下級生や天気など絡めて隊にとって一番いい選択肢を客観的に総合的に判断できるとさらにいい。また1年生の面倒をよく見ていた。自分のことだけではなく周囲のメンバーのケアをできるようになっている。ただ、アフターケアが多かったので、先のことを想像・予測して、1年生に対してその事態が起きる前の予防的なケアができるようになればもっといい。

今合宿は初めてのことが多かっただけに課題もたくさん見つかったのではないか。アルパインでの初リード、バリエーションや縦走でのトップを経験し、先頭に立ち、自分が隊を動かしていく立場の体力面、判断面の大変さを実感したのではないか。先輩や前の人に盲従するだけの1年生は卒業し、隊を俯瞰し主体的に動ける隊員になれるように、頑張っていこう。あと、同期同士の連携、横のつながりを大事に、協力する意識をもっと持って欲しいと思う。

上村は1年生一人の中で、新人合宿とは比べものにならないスケール、長い期間のなかで、全てがはじめてづくしの頑張っていた。クライミングセンスや理系仕込みのロジカルさなど光るものを感じるので、基礎体力、山の知識をもっとつければ伸び代はかなりあると思う。天気やルートの詳細など分からないことをすぐ先輩に聞くのではなく、自分で調べて考える癖をつければ、どんどん成長すると思う。

 次は新雪期合宿だ。厳しい冬山シーズンに入る。今回の合宿で自信がついた部分、課題だと感じた部分両方あると思うが、次の合宿に繋げていこう。

(記事・写真 山岳部提供、編集 槌田花)