新人合宿――4年後の100周年に向けて

山岳

※この記事は、6月28日に行った取材をもとに執筆いたしました

 3人の新入部員を迎え、また新しく明るく生まれ変わった山岳部。新入生にとって初めての合宿となる新人合宿が行われた。2020年に100周年を迎える部の伝統を受け継ぐべく、6日間にわたって新入生に基礎が教え込まれた。毎年のごとく天候のすぐれない日もあったが、事故もなく参加者全員にとって充実した合宿となった。

 新設されたばかりのバスタ新宿から夜行バスで向かったのは長野県上高地。1日目はバスの疲れが残る体で重い荷物を背負い、上高地から合宿拠点となる涸沢へ。その途中ではトレーニングとして雪の斜面で競争が行われるなど、初めての1年生にとってはハードな初日となった。迎えた2、3日目は、雪の上での歩行訓練が行われた。「山岳部員として立派なクライマーにする」(小川惇一郎主将、スポ4=東京・小石川中教校)という上級生の意気込みの下、1年生には山を歩くトレーニングや安全を確保するための技術を教えられた。新人の成長ぶりについて、「乾いたスポンジが水を吸うように吸収していった」と鈴木健斗(教3=東京・早稲田)は語る。そして2日間の練習の後、それを生かすための本番として行われた実践的な登山。「スポンジに速乾性がかなりあって」(福田倫史、スポ3=栃木・宇都宮)と笑いながら振り返ったように、行動の遅さやロープワークの不徹底を繰り返し指摘される場面もあった。そんな中でも4日目は北穂高岳、そして5日目には標高3190メートルの奥穂高岳の登頂に全員が成功した。さらに5日目には、先に山頂に到達した部員が一行の最後尾に付き、再び登り直すという過酷な練習が行われた。下山日前日の疲れに加え悪天候もあり、上級生からの激励が飛びながらの登山であった。特に1年生はあまりの厳しさに精神的に追い詰められる場面もあったようだが、全員で乗り切り無事に合宿は幕を閉じた。

1年生の成長ぶりを好評価した鈴木(左)と新人の小野(右)

 去年の秋に入部した中島崇景(文構2=愛知・菊里)は、練習期間が長かっただけに思い入れも強い。「特に最終日(5日目)は大変だったが最後には何とか形になったと思う」と自身の成長を振り返った。また同じく新入生の小野峻(政経1=長野・諏訪清陵)は、「厳しかったが、先輩方のフォローのおかげで無事穂高岳、奥穂高岳に登れた」と語り、この合宿で学んだことを今後に繋げることを誓った。ことし主将を務める小川は「1年生を教える上級生がとても優秀で、僕はただ見ているだけだった。ことしの部は風通しがよく雰囲気も良い」と今回の合宿を評価した。

合宿中に起こったハプニングを笑顔で振り返る中島

 新入生にとってはもちろん、上級生にとっても得るものの多かった新人合宿。次の合宿は剣岳での夏山合宿だ。さらに1年の集大成として行われる春山合宿に向けて、また部員たちは厳しい訓練を積んでいく。記念すべき100周年にふさわしいクライマーを誕生させるため、部員たちの挑戦はまだ始まったばかりだ。

(記事 石塚ひなの、写真 中村朋子、太田萌枝、山岳部提供)

奥穂高岳山頂での一枚。グローバルエデュケーションセンターの夏期講座、「山岳基礎」では山岳部員と一緒に山に挑戦できるそうだ。興味のある学生は参加してみてはどうだろうか。

コメント

小川惇一郎主将(スポ4=東京・小石川中教校)

――今回の合宿を振り返っていかがでしたか

下山した時、1年生の充実した顔が見れてよかったのかなと思います。また、健斗(鈴木、教3=東京・早稲田)や福田(倫史、スポ3=栃木・宇都宮)、田中(颯、人4=兵庫・加古川東)が本当にいい指導をしてくれたので、自分は見ているだけでちょっと楽をしていた部分が多かったのですけど、上級生の存在感というのを改めて感じることができて、改めていい合宿だったなと感じています。

――今後への抱負をお願い致します

今年度は上級生と下級生の数が同じくらいで難しい面もあるのですが、自分たちが最大限努力して1年生の力を引き上げられるようにして、助けてもらうところは助けてもらって、計画を立てながら頑張っていきたいです。

田中颯(人4=兵庫・加古川東)

――今回の合宿を振り返っていかがでしたか

4年生なので、組織として1年生がパワーアップするのが必要だと思ったので、今回は特にそこに重点が置かれた合宿だったので、それができたのではないかと思います。

――今後への抱負をお願い致します

せっかく約100年近く続く素晴らしい組織に入れたので、自分のことだけではなくてやはり組織のことを考えて一年過ごしたいなと思います。

鈴木健斗(教3=東京・早稲田)

――今回の合宿を振り返っていかがでしたか

1年生にとっては大変な合宿だったと思うのですが、山というのは自然環境も厳しく、そもそも過酷なもので、どうしても沈みがちになってしまうこともあるのですが、今年は良く、明るく、盛り上がれるようなチームになってきたと思うので、気を引き締めるところは引き締めて、エネルギッシュなチームとして1年間継続していけたらなと思います。

――今後への抱負をお願い致します

ことしは結構下級生が多く、それだけ伸びる余地があることだと思うので、しっかり1年を終えて大きくチームがパワーアップできるようにやっていきたいなと思っていますし、また、事故等起きないように、安全にも配慮して活動していきたいと思っています。

福田倫史(スポ3=栃木・宇都宮)

――今回の合宿を振り返っていかがでしたか

1年生の教育というのが主な合宿の目的だったので、そこで一週間しっかり教え込みをして、1年生の中では辛いこととかもあったと思うのですけど、結果的にはアタックも成功して、すべて予定を遂行して下山できたので、1年もポジティブな感想を持ってくれているので、いい合宿になったと思います。

――今後への抱負をお願い致します

1年生が2人入ってきてくれて、部の雰囲気もとてもいい感じになってきているので、このまま勢いに乗ってことしいっぱいであったり、100周年にむけて、飛躍の年になればと思います。

中島崇景(文構2=愛知・菊里)

――今回の合宿を振り返っていかがでしたか

主に僕からアクシデントが起きてしまったのですけど、最後には何とか形に出来て。最終日もきつかったですけど、今思えばありがたい指導だったと思っています。成長できました。

――今後への抱負をお願い致します

新人合宿を終えて、課題も結構見つかったので、次の目標である夏山合宿にむけて、あと1ヶ月少し課題を一つ一つこなしていきたいと思っています。

小野峻(政経1=長野・諏訪清陵)

――今回の合宿を振り返っていかがでしたか

6日間とても厳しかったですが、無事奥穂高岳、北穂高岳には登頂することができて、これも部として先輩方がフォローしてくださったおかげで達成できたことなのかなと感じて、この合宿で学んだことを忘れずに今後つなげていきたいと思います。

――今後への抱負をお願い致します

100周年という大きな目標を見据えながら、1年生のうちは一つ一つの合宿を丁寧にこなしていきたいと思います。