世界遺産の富士山で新雪期合宿を敢行

山岳

※この記事は12月4日に行った取材をもとに執筆いたしました。

 夏山合宿を終えて、はや3ヶ月。3月の春山合宿成功を最大の目標とする山岳部は本格的な冬山シーズンに向けての訓練のため新雪期合宿行った。合宿地は今年度の新しい雪が最初に降るということで毎年登っている日本最高峰・富士山。特徴の強い風が吹き荒れる過酷な環境にも関わらず、合宿を成し遂げた山岳部。訓練を予定通りこなし、最終目標に向けまた一歩前進した。

山頂で達成感を味わう山岳部

 8月の夏山合宿後に、それぞれスイスのマッターホルンや、クライミングのメッカである谷川岳などで経験を重ね臨んだ今回の合宿。行程は以下の通りである。まず18日にバスに乗って東京を出発し合宿地である富士山まで向かう。バスで富士山の新五合目まで行き、その日は駐車場でテントを張り1泊を過ごす。19日は荒れた天候の影響で登るのを断念し、20日にから本格的な活動が始まる。標高3110メートル地点の七合五勺を目的地とし、距離が長く一般登山客にあまり好まれない御殿場ルートを進む。無事にたどり着くと七合五勺にテントをたて、ここを拠点にその後の訓練を展開した。主な訓練内容としては冬山を極める上で欠かせない滑落停止訓練やアイゼンの歩行訓練などである。山頂に向かい噴火口で訓練をしたり、拠点の周辺で訓練をしたりするなど山岳部は精力的に活動を行った。しかし、訓練の序盤で1年生が足を痛め下山し、さらに冬山用の靴にまだ慣れていない影響から1年生が靴擦れを起こしてしまうなどアクシデントが発生する。靴擦れは山に慣れていない1年生によく起こってしまう出来事ではあるが迷惑をかけたくないという思いから音を上げなかった結果、一般的な靴擦れよりもひどい症状となってしまった。さらに日本最高峰という標高に加え、強風という環境から合宿終盤では次第に1年生に疲労の色が見え始める。これら全ての状況を考慮し4年生は予定を1日早める決断をし、23日に下山した。

 富士山は世界文化遺産登録をされたことなどで、いま多くの注目を浴びている。その知名度から夏は多くの登山客が訪れるが冬の富士山は「命の危険を伴うレベル」と向地晴紀(スポ3=宮城・泉館山)が語るように夏とは全くの別物。その環境の厳しさは山岳部と入れ違いで入山した団体が死亡事故に合ってしまったことなどからも計り知れる。今回、そんな富士山で行われた合宿を先に下山する部員こそ出てしまったが、大きなケガなく成功させた山岳部。1年生が山に慣れ、上級生が課題を発見するなど多くの収穫があった一方で、先頭を歩く役割などを任される重要な学年の2年生が小寺凱主務(人4=東京・国立)いわく「十分じゃない」という不安要素も見つかった。次の合宿は12月の22日から行われる北アルプスを舞台とした冬山合宿。これが、最終目標である春山合宿前、最後の合宿である。この新雪期合宿で得たことを冬山合宿で実践し、自分のものにしていく必要がある。後悔を残さないためにも山岳部はさらなる成長を誓う。

(取材・記事 石丸諒、写真 山岳部)

※掲載が遅れてしまい申し訳ございません。

コメント

小寺凱主務(人4=東京・国立)

――合宿全体を振り返っていかがですか

個人的には、靴擦れや新人の疲労を考慮して予定を1日繰り上げたんですが、その判断が正しかったのかはまだ悩んでいます。ただ、合宿で予定していた訓練はほぼできました。

――今回の合宿の難しかったところは

やはり、靴擦れですかね。毎年、必ずなってしまうんですよね。夏と冬で靴が違うので。新人は慣れてないので必ずなってしまいます。一回なると治らないのでつらいですね。予防としてはテーピングとかがありますので、予防は大切です。

――夏と比べて1年生は成長されましたか

上級生の目から見ると雪山ということで不慣れな点はありました。現に一人降りましたし。ただ、簡単には音を上げなくはなりました。

――毎年、富士山に行かれているということですが、世界遺産登録をされて変わった点などはありましたか

一番変わったのは、僕らはいつも御殿場口という登山口からスタートして、近くの使われなくなった山小屋を風よけにしてテントを張っていたのですが、そういった風よけに使える小屋が無くなっていました。あれは登録された影響だと思いますが、けっこうキツイです。それとこれは余談なんですが、夏でもあんまり登山客は増えてないみたいですよ。

――次は冬山合宿に行かれますが

そうですね、22日から北アルプスの奥穂高と涸沢岳に行きます。例年は白馬岳でスキーをするんですが、今回は春山合宿で剱岳を目指さしているので技術の向上を目的に行きます。