【連載】『覇者で在れ』第4回 岩下和史、鈴木翼沙、水嶋優斗

特集中面

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 第4回は、岩下和史(スポ4=神奈川・神大附)、鈴木翼沙(スポ4=東京・日大櫻丘)、水嶋優斗(スポ4=東京・高輪)の4年生トリオが登場。3人は今季そろって自己記録を更新するなどの活躍を見せ、中距離ブロックを勢いづけている。4年間互いに高め合ってきた彼らに、今までの歩みや最後の日本学生対校選手権(日本インカレ)へ向けた意気込みを伺った。

※この取材は8月26日に行われたものです。

――他己紹介をお願いします

水嶋 鈴木翼沙選手です。鈴木翼は中距離ブロックで800メートルのメンバーとして活動しています。足が長く、走りのストライドが大きいところが僕はすごく好きです。最近は非常に上り調子で、日本インカレに向けてすごく良い練習を積めていると思います。特に足首をテーピングで固め始めてから調子が良いので、非常に期待しています。岩下も鈴木翼も4年間ずっと一緒に頑張ってきたので、4年目にみんな調子が良いタイミングで、日本インカレの決勝に3人とも残って一緒に活躍したいと思っています。岩下と鈴木翼は一番仲が良い競走部のメンバーです。

鈴木 岩下は大学2年の秋からずっと中距離ブロック長を務めてくれています。常に冷静なので、中立的な視点でいつもアドバイスをしてくれます。2年時から学生個人(日本学生個人選手権)で入賞していて、結果でずっと中距離ブロックを引っ張ってくれています。私がストライドで走るタイプであるのに対し、岩下は淡々とピッチを刻んで走るタイプです。いつも水嶋と「エリートランナーの走りだね」と話すくらい、常に安定した走りをできることが岩下の強みです。 先ほど水嶋が話した通り、このブロックの同期3人は非常に仲が良く、私がしんどいときも常に2人が支えてくれていたので、日本インカレではこの3人で勝ちたいと思っています。

岩下 水嶋は言わずもがな同期で、僕が神奈川の高校出身、水嶋が東京の高校出身ということもあり、高校2年生の頃から名前は知っていました。 高校3年生のインターハイ(全国高等学校対校選手権)の地区予選では4位と5位で順位が並んだこともあり、今までかなり長い年月を一緒に歩んできたという印象があります。先ほど鈴木翼が言ったように、僕の走りはピッチ型ですが水嶋の走りはストライド型で、僕の持ち味が安定感なら水嶋の持ち味は爆発力です。 水嶋は僕と真逆の位置にいる存在だからこそ、僕に足りないものをたくさん持っています。うらやましいと感じるところが多く、非常に魅力的な人です。

――4年生の仲が良いというお話がありましたが、思い出に残っているエピソードがあれば教えてください

水嶋 3人とも住んでいるところが違い、生活を共にしてはいませんが、ずっと仲が良いです。

岩下 3人で一緒に試合に出ることがあまりなかったのですが、最近あったホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)という北海道の大会で、初めて3人で遠い地の試合に出て移動をしたり、OBの飯島(陸斗、令2スポ卒=現阿見AC)さんと一緒に行動したりしたことは1つの思い出です。

鈴木 ホクレンの後にホテルでジンギスカンを食べたことは特に記憶に残っています。

水嶋 3人のグループLINEがあるのですが、グループ名が「中距離1年」のままずっと変わっていません(笑)。1年生からの仲なのだと感じています。

――普段の中距離ブロックの練習の雰囲気はいかがですか

水嶋 すごく和気あいあいとしています。後輩たちも中距離ブロックが好きな選手が多いと思いますし、とても仲が良いです。一方でポイント練習のようなきつい練習の時はみんなで声を掛け合い、集中力を発揮してみんなで頑張ろうという意識があります。非常にバランスの取れた良いチームです。

鈴木 ロングとミドルで各自やっているメニューは違いますが、だからといってバラバラになっているわけではありません。先輩後輩関係なく、男女問わず日常的にコミュニケーションを取れています。

岩下 最近中距離コーチに就任した江本(亘中長距離コーチ、令4スポ卒=愛知・岡崎北)さんに、練習メニューを管理していただいています。(練習を)管理をしてもらいつつ選手の主体性を残すことができていて、立場に関わらず円滑にコミュニケーションを取れています。僕たちが1年生の時は僕たち3人と上の代の先輩が4人ほどの小規模なブロックだったのですが、僕たちが4年生になって気が付けば倍くらいの人数になりました。スポーツ推薦で入った人はいませんが、大きなブロックになり、感慨深いものがあります。

――3人にとって江本コーチはどのような存在ですか

水嶋 何でも話せて、的確なアドバイスをくださる方です。頼りがいのあるお兄ちゃんのような存在です。

鈴木 江本さんは長距離のコーチも兼任されているので非常に忙しく、その合間を割いて中距離の練習を見てくださっています。歳が私たちと近いということもあって、話しやすい方です。

岩下 僕と水嶋で接し方が少し違い、僕に対しては壁打ち役として接してくださいます。僕が思っていることを試行錯誤しながら的確にかたちにしてくれます。江本さんはもともと長距離を専門としていた方なので、中距離にアジャストするために認識をすり合わせ、日々試行錯誤して少しずつかたちにしていることがすごく面白いです。

――今シーズン前半を振り返っていかがですか

水嶋 僕はシーズンが始まる直前の3月ごろに大きな肉離れをしてしまって、学生個人には出場できませんでした。関東インカレ(関東学生対校選手権)も目前に控えていたので回復が間に合うか不安でした。ですが、トレーナーさんたちや同期の2人に励ましてもらい、周りの力を借りてなんとか3本のレースを走り、結果を残すことができました。ハンディキャップがあった中、100点のシーズンを過ごせていると考えています。

鈴木 高校3年生の時からずっと自己記録を更新できていませんでしたが、今年の関東インカレで4年ぶりに更新することができました。更新したタイムは0秒03と、800メートルにおいては小さいですが、自分の壁を突破できたことが自信になりました。大学4年間で1回も更新できていなかった自己記録を今シーズンに入って3回更新することができていて、すごく充実したラストシーズンだと感じています。トワイライト(トワイライト・ゲームス)では、2分一桁台で走るという陸上競技人生を通しての目標も達成できたので、今シーズン前半を振り返ると100点満点だと思います。あとは日本インカレでしっかりとラウンドレースを勝ち上がることができれば、花丸がつくと思っています。

岩下 2人は満点に近いシーズンだったと振り返っていますが、僕は高くても50点で、難しい春だったと感じています。春夏の最大の目標は自己記録を更新して日本選手権に出場することでした。良いタイムを出して流れをつくり、自己記録を更新することはできましたが、あと0秒01届かず日本選手権の出場を逃してしまいました。それがきっかけとなりタイムを追って試合に何本も出た結果、関東インカレではガス欠に近い状態となり、本調子で臨めず予選落ちをしてしまいました。関東インカレを終えて反省し、ホクレンでは春に出した自己記録をさらに更新して、800メートルにも久しぶりに出場して1分50秒の壁を破ることができ、良かったと思っています。ですが、春の失敗や日本選手権に出られなかったことを踏まえると、あまり良いシーズンではなかったです。

――日本インカレに向けての仕上がりはいかがですか

水嶋 練習を一緒にしていて、3人とも今までにないほど良い仕上がりだと感じます。合宿でも、みんなこれほど走れるのだと思うほど走れていました。

岩下 関東インカレが終わってから練習を積む期間を経たあと、少し練習量を落としてホクレンに出場し、その後はスピード練習などの試合に特化した練習を行うというスケジュールでした。合宿ではこなせるかどうか不安に思う練習がいくつかありましたが、合宿という特殊な環境のおかげか自分の力がついたからか、やり切ることができました。設定よりも速いタイムで練習を終えられたこともあり、練習はかなり積めていると思っています。

鈴木 鍛錬期で疲労がたまっている中ですが、以前と同じ練習でもタイムをまとめて練習できていることが多いので、3人ともかなり上り調子だと思っています。

――好調の要因はどこにあると分析されていますか

岩下 自分は4年生であることが大きな要因だと思います。僕たち3人は今年で陸上競技を引退するので、そのようなモチベーションによる影響が大きいです。

――早大競走部での4年間は皆さんにとってどのようなものでしたか

水嶋 いろいろなことがありました。人に迷惑をかけてばかりでしたし、厳しいこともありましたが、総じて僕は競走部に入って良かったです。中距離ブロックの一員として先輩とも同期とも後輩とも切磋琢磨(せっさたくま)してすごく楽しい4年間でした。生まれ変わってもまた入りたいくらい中距離ブロックのことが好きです。

鈴木 競技に関しては大学2年生ごろまでずっとつらかったのですが、その時に同期や中距離ブロックの仲間、先輩が支えてくれました。つらいことがあったからこそ、かけがえのない思い出ができました。競走部に入って良かったですし、競走部に入ったからこそいろいろな人と出会えて思い出ができたと思っています。本当に充実した4年間でした。

岩下 大変だったことはたくさんありましたが、今振り返るとすごく楽しかったですし、入って良かったと感じます。この2人をはじめ、他大学の強い選手や社会人でも陸上を続けている先輩のような、競走部に入ったからこそ出会えた多くの人たちと話す中で、彼らの信念や生き方を吸収してきました。自分自身の視野を広げることができ、学びの多い時間だったので、価値がある4年間だったと日々感じています。

水嶋 僕らが1年生の時の上級生である坂本(達彦、令3スポ卒)さんや筒井(滋史、令4スポ卒)さんという先輩たちに会えたことは僕たち3人にとってすごく大きかったと思います。今でも自己新記録を出した時に真っ先に連絡をくれるのは先輩方です。とても魅力的な方々です。

鈴木 六大学(東京六大学対校)などの大会も毎回見に来てくださっています。また日本インカレも見に来てくださると聞いたので、頑張りたいです。

――この4年間で一番印象に残っているレースはありますか

岩下 大学2年時の関東インカレの1500メートルです。そのレースがターニングポイントになり、その後の競技人生が変わったと思っています。もともと僕たち3人は高校生の時から800メートルをやっていたのですが、大学1年生の2月の合宿中に、突然大前(祐介、平17人卒=東京・本郷)監督から1500メートルをやるように言われました。春から1500メートルを始めてみると関東インカレで4位に入り、意外と1500メートルも走れるのだと思いました。 本格的に1500メートルをやりたいと思ったきっかけのレースなので、一番印象に残っています。

水嶋 昨年の関東インカレです。僕は大学3年時に800メートルで1分49秒台を出し、関東インカレでは初めて決勝に残りました。準決勝を1着で通過して、決勝で表彰台や優勝を狙えるところまで戦えたことがすごく印象に残っています。特に決勝ではスタート直後から先頭に出て700メートル付近まで引っ張り、そこまで「僕は関東の頂点にいるのか」というハイな状態で走っていました。最後の100メートルでは地力の差で抜かれて負けてしまいましたが、すごく気持ち良かったですし、応援も背中に受けて、大学陸上の真髄を感じたレースでした 。

鈴木 トワイライト・ゲームスです。2分10秒を突破することができましたし、私が中学生の頃からホームグラウンドとしてきた思い入れのある世田谷の競技場(世田谷区立大蔵運動公園陸上競技場)で自己記録を更新できたことにも、大きな意味があったと感じています。高校の時にお世話になったコーチがタイムの読み上げをしてくださって、その方の前でずっと目標にしていたタイムを更新できたこともすごくうれしかったですし、水嶋と一緒に自己記録を更新できたことも記憶に残っている理由です。

――日本インカレの目標順位や記録を教えてください

水嶋 今の自己記録が1分48秒なのですが、そこから1秒、2秒と縮めて1分47秒台、46秒台を目指します。早稲田記録として残っている下平(芳弘、平20スポ卒)さんの記録を抜いて、自分の名前を早稲田記録の一番上に載せたいです。それを狙っていく中で予選、準決勝と勝ち上がっていくことはマストだと思うので、決勝に進んで(会場を)沸かせられるような自分らしいレースをしたいです。

鈴木 毎ラウンドで自己記録を更新することが目標です。2分6秒や7秒台が必要になってくると思います。新田(望、令7スポ卒)さんが早稲田記録を持っているのですが、お世話になった新田さんの記録を越すことで恩返しをしたいと思っています。一番の目標は決勝に行って、早稲田の女子のトラック総合で歴代最高得点に貢献することです。

岩下 表彰台に上がり、しっかりと点数を持って帰ってくることが目標です。チームのために走る最後のレースなので、チームへの恩返しとして表彰台を狙って走りたいと思っています。予選と決勝が同じ日で(レースの)間隔も6時間、7時間くらいなので、記録を狙えるレースにはならないと思っていますが、僕も2人と一緒で早稲田記録を狙っています。山口(智規、令8スポ卒=現SGホールディングス)さんや本田桜二郎(スポ1=鳥取城北)が持っている記録に挑んでいきたいと思っています。

――改めて最後に日本インカレへの意気込みをお聞かせください

鈴木 ラストシーズンは、根拠はありませんがかなり自信があるので、やってやるの一言です。大学の3年間は活躍できませんでしたが、4年目でしっかり活躍して、今までの自分を越えて何が何でもやってやりたいです。

水嶋 過去一番の仕上がりですし、試合に向けてワクワクしています。速い選手たちとしのぎを削って、その上で勝ちたい、追い越したいと思っています。自分がどこまで行けるか楽しみですし、行けるところまで行って、後から振り返った時に頑張って良かったと思えるような結果を残したいです。

岩下 個人としては4年間の集大成だと思うので、悔いなく調整していって、レースを走り終えた時に最大限やれたと思えるようなレースにしていきたいです。800メートルと1500メートルに出場しますが、各種目で点数を持って帰ってきて、競走部として中距離ブロックの存在感をしっかり出して、僕たちが卒業した後も後輩が中距離ブロックに愛着を持って活動してくれるようなレースをつくっていきたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材 石本遥希、永尾早渡、編集 阿部仁胡)

◆水嶋優斗(みずしま・ゆうと)

2004(平16)年6月15日生まれ。東京・高輪高出身。スポーツ科学部4年。

◆鈴木翼沙(すずき・つばさ)

2005(平17)年1月15日生まれ。東京・日大櫻丘高出身。スポーツ科学部4年。

◆岩下和史(いわした・かずふみ)

2004(平16)年10月2日生まれ。神奈川・神大附高出身。スポーツ科学部4年。