【連載】ア式蹴球部 新体制対談『挑戦』 第7回 兵藤慎剛監督

特集中面

連載トップに戻る

 

対談第7回は今季もア式蹴球部を率いる兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)。



ーー昨年をどのように評価していますか

 

兵藤 就任3年目だったので、自分の色が濃く出始める年なのかなっていうのはシーズンのスタートのところから思っていました。1、2年目、結果がわずかに足りなかったっていうところに対して、何かを変えていかないといけないというところをずっと考えながら進めていました。その中で日常でのアンテナの張り方だったり、ピッチ上でのアンテナの張り方だったりというところが少しずつ定着し、1点差のゲームとか厳しいゲームをものにできる機会が増えたのかなっていうところでは、成果っていうところで良くなった部分といかなって思います。その反面、1、2年目にそこができなかったっていう個人としての反省というの点も考えさせられるシーズンだったなと思います。

 

ーー厳しいゲームを勝ち切れるようになったのはどういう点が変わったからだと見ていますか

 

兵藤 基本的にサッカーは守備の部分の原理原則をしっかりと守れば失点はないと考えています。また、就任したての時には、学生からも点を取りたいを言われて、点を取ることに課題を抱えてますっていう風な状態だったので、点を取らせるチームにしようっていうところで、2部リーグの中なら1番得点が取れるチームを目指していました。だから練習でも、攻撃に割く時間っていうのが圧倒的に多かったです。そして、守備に関しては大学サッカーで上のレベルまで来てる子たちって、基本的にそこは体に定着してる部分だよねっていう風に認識してたというか、僕が求めるできるのレベルが多分高く想定してたっていうのも正直あるかなとは思いました。そこのできるだろうっていう見込みの甘さが我慢できないとか試合に対して出たのかなと。勝負どころで我慢できるかできないかっていうのは、どれだけ定着させられているものをトレーニングで仕込んだかっていうところで、どちらかというとそこを得点で引き離すっていう練習はしたけど、チームとして我慢強くっていうところでのトレーニング量は少なかったのかなっていうのはありますかね。

 

ーー 3年間で感じた大学サッカーならではの難しさとかっていうのはありますか

 

兵藤 1年ごとに全く違うチームに変わるっていうところと、あと組織の体系というか運営自体も毎年さが変わっていくんで、そこらへんは難しいかなと。プロだったら基本的に組織の根幹は大きくは抜けないっていう中に、新メンバーを加えて肉付けするような作業があるのかなっていうとこなんですけど、大学は中心選手から運営のトップから全て一掃されるので、そこに対して何を残して、何を削るのかの見極めの作業のか卒業生がどれだけ下に、残せるものがあるかっていうのは、大学サッカーならではかなと思います。

 

ーーこれだけは続けたいところや、続いて欲しいところはなにがありますか



兵藤 早稲田らしさは何かと言ったら、凡事徹底や、愚直にできるっていうところが100年続いてきてる伝統なのかなっていうのはあります。例えば、挨拶だったり時間を守るだったり、そういう感謝の気持ちを持った行動を取るっていうところの徹底は残していきたいですし、継承し続けないといけない部分かなっていうのはあります。そこにプラスアルファで必要なものっていう風に考えた時に、気配りとか心配りができるような人間になってほしいっていうのは学生には伝えてて、そういう部分で日頃からなんか高いアンテナを張ってねってと言っています。だから、プレイ中だったら、味方が何をしたいか、どういうことを考えてるかっていうのをやっぱり感じ取ってあげて、そういうやりやすいようなパスを出してあげたりだとか、その人がプレイしやすい環境を全員で作り上げるっていうところ。それがポジションを早く取るとか、そういう戦術的な部分に繋がってくると思います。普段の生活だったら、一流を目指す中で、何気ない気配りとか、一流のビジネスマンとかもさらっとしていると思います。そういうところを早稲田のア式蹴球部を卒業した子は、気配りとか心配りができる子だよねっていう風な感じで卒業してもらえると、自分的にはすごくありがたいのかなと思っています。

 

ーー社会に出てからも凡事徹底だとか、挨拶の部分を、大切にして欲しいと

 

兵藤 そうですね、当たり前のことを当たり前以上にできるっていうのが1番評価される人だと思うので、その感覚を持って卒業してもらいたいなっていうのは思ってます。

 

ーー監督として3年前に早大に帰ってきました。そこで感じたギャップなどはありましたか

 

兵藤 伝え方とか受け取り方っていうのは、違うなっていうのはありますね。僕らの世代はまだギリギリ昭和の世代というかっていうところで、どちらかというと自分たちで何かに気づいて行動を変えていくというものでした。その人の行動を真似してみたりとか、自分で見て何かを感じ取らないといけなかったのが、今の子たちは何も感じ取らなかったとしても情報は溢れてるんで、その情報を自分がどう掴んで利用していくかに変わったかなと思います。昔だったら、がむしゃらに、自分で体当たりしていきながら見つけていた道が、今は基本的にこういうのが模範解答だよねっていうのがありながら進んだ方が、選手たちは腑に落ちるのかなと。けど、やっぱり変わってない部分っていうのは、サッカーが好きっていうとこは変わらないなと思います。サッカーが好きっていう熱量はありながらも、そこを表に出せる、プレーに出せる子たちが多いかどうかっていうところは多少あるかなっていう感じなんですけど、根っこの部分に持ってる、こうサッカーが好きだっていうところは、今も昔も変わらないのかなっていうのは思いますね。

 

ーーここは今の方が、逆にここは昔の方が、みたいな所があると思いますが、具体的に教えていただけますか

 

兵藤 今の方が組織作りはしやすいかなと。素直な子が今の方が多いです。これやってって言ったらやってくれるみたいな。昔はこれやってって言った時になんで、こっちの考えの方が優れてるじゃんっていう、自分の意思とかを結構ちゃんと言えるような学生が多かったというか、僕らは結構そこを発してて、このプレイの選択肢もあるけど、こっちの方が自分はいいと思いますっていうところで結構言っていました。それに対して今の子たちは、「こういうプレーをの方がいいんじゃない」って言ったら、すんなり受け止めてくれる部分はすごくいいなっていうところはあります。だから、形作りはしやすいけど、ここから最大化するって時に形にはまっちゃって大きくなりづらい部分もあるっていうのが、いい部分でもあり、悪い部分でもあるのかなっていうところはあるんで、どれだけ余白を持たせてあげるかっていうのは大事かなと思ってます。指導するときに型にはめすぎると伸びる部分も伸びにくいので、そこはきをつけてますあ。ただ、組織を運営するとかチームをまとめる中では、サッカーだからこそある程度の枠組みはないといけないです。だからそこはしっかりと整理してあげながら、ただ、ここの局面になった時に最終的に選ぶのはやっぱプレイヤー、そのボールを持ってる人含めたところで、そこには、自分が責任持ってプレイしてくれれば全然いいよっていうところではミスも全然許容してます。ただ、何も考えてないようなミスだけはやめろよっていうところでは思っています。だけど、もっとこう尖った学生がいてもいいのかなっていう風には、思いますね。尖ったやつばっかいると、今度まとめる側としては難しいなってなるんですけど、だけど、そのぐらいの方が、お互いにぶつかり合った方がいいものって生まれるし、素直に聞いてくれるのがいい面、もっとこういうアイディアありますよとかを主張してくれた方が、もっとその子自体もなんか良くなったりとか、組織自体も良くなったりするのかなっていうのは思っています。そこはもっと自分たちからこうやりたいとかっていうのがあってもいいのかなっていうのはあります。

 

ーー確かに今の若い世代は、自分から意見が言えないという話もあります

 

兵藤 ちょっと思いますね。だけど、サッカーってボール1球しかないし、主張のやり合いだと思ってます。「俺はこのプレーがしたい」という主張に、「俺はこのプレーがしたい」っていう主張がぶつかって、より良いものをそれぞれが選択してくっていう中で、主張がなかったら、それはどうなのっていうところになってくるし、だからそこサッカーって主張しないといけないよねと思います。スポーツの特性というか。ラグビーとか野球というのは、決まったサインプレーを基本に忠実に再現性高くやるんだと思います。サッカーもそういう時代にはなってきていますけど、やはり足でやる分、イレギュラーが起きるのも特性で、中で瞬間の対応力の速さがすごい求められるし、その瞬間自分がここに欲しいっていう主張のぶつかり合いがより良いものを生むと思ってるんで、うもっと喧嘩すりゃいいのになとは思います。どっちが最適だったかは、今映像とかも常に撮ってるので、後でジャッジ自分たちでしてもいいし、こっち側からミーティングで、この時の判断ってやっぱこっちの方が見ていいと思うんだけど、どうですかっていう感じで促して、確かになっていう風な納得感も得られるかなっていうのはあります。昔だったら映像撮ってないから、「いや、そん時お前の感覚じゃわかんないよ」とかいうけど、映像があると説得力も増すし、じゃあ次そういうプレイ選択しようかなとか、周りに伝わりやすくもなるんで、そういう主張はもっともっとしてもらいたいなっていうのはいつも思ってます。

 

ーー兵藤監督が現役の時と比べて色々技術なども進歩していると思います。それに関してはどう見えていますか

 

兵藤 全体的なボールを扱う技術とかは底上げはされてるのかなと。ただ、同じような特徴の選手が増えてるのも、ちょっとあるのかなと。上手い選手はそこそこいるけど、すごい選手は減ったなっていう印象ですかね。こいつバケモンみたいな感覚っていうか、とんでもないことするなっていう選手は減ったなと思います。このくらいできるよねっていう、計算通りに動ける選手とかはいるんですけど、お前こんなことできんのかよっていう、びっくりするようなものは、減ったかなと。

 

ーー海外サッカーなどでも、そういう傾向があるように感じます



兵藤 ファンタジスタみたいなのが、今絶滅してて、だから昔の選手からしたら、サッカーのエンタメ性や面白さがなくなったっていう人たちもいるけど、それはそれでサッカーの進化だと思うし、その時代時代にあったものをその監督がチョイスして提示してるだけかなと。ファンタジスタって多分奇想天外なプレーをするとか、フィジカルに特化してないとかっていうのが多分昔の人のイメージだけど、フィジカルに特化しながらもすごいプレーができてるっていうか、そのハイブリッド型みたいなのが今の本当に世界のトップの方だと思っています。だから昔のファンタジスタタイプがいないからサッカー面白くないっていうよりは、もうアスリート能力までマックスになったファンタジスタスタイルがただ存在してるだけ。ただ、合理的なものを要求する監督が増えたとは思いますね。組織として動く、勝つためにっていうのがよりなんか最大化されてるし。だから1個人のその人が目立つ局面っていうよりは、組織で90分間戦えるチームの方が結果残してるっていうところでは、見る人から見れば面白くないって言うかもしれないし、けど、発展していろんな細部まで徹底されてるよねっていう見方もできるし、どこを切り取るかだと思います。その人の好きなものってか、サッカーの何が好きかで多分感想は変わりますね。

 

ーー監督的には合理性のあるサッカーとすごい化け物が1人いるサッカー、どちらが好きでしょうか

 

兵藤 僕は合理的にの方が好きですけど、合理的にやる中にも局面を変える選手がいないとゴールって生まれないかなと。その中に絶対そういうやつが潜んでるなってもいつも思ってますし、だからなんかそういうのを目指したいなって思いながらも、結構学年が変わったりとか、大学ってずっと循環してくんで、多分そういう代じゃない時もあるなと。時に1人のなんかとんでもないやつが全部流れ持ってったりするのも、どっかのタイミングで当たったら面白そうだなとは思ってます。

試合中の兵藤監督

ーー監督はアマチュア時代エリート街道を歩んできたと言って過言ではないと思いますが、その立場から今どう見えていますか

 

兵藤 結果だけ取られると、結構エリート街道走ってるよねとか言われるんですけど、あんまりなんか自分の中でエリートで育ってきたなっていう感覚はないてます。別に中学時代に日の丸つけたこともないですし、チームとしてたまたま運良く強いチームにいられたっていうところはあったのかなっていうとこですけど、自分をエリートだなって感じる瞬間はないです。ただ、誰よりも一生懸命やるとか、好きなことでは誰にも負けたくないっていう気持ちは人一倍あったんで、それが当たり前だよねっていうところの人との基準の違いになったから、多分成長できたっていう部分があるのかなと。で、国見高校にしろ早大にしろ、周りに恵まれてたと感じます。サッカーって1人じゃできないし、その中でキャプテンもやらせてもらって、自分が先頭切ってやってる時にみんながついてきてくれたっていうのも当然ありました。ついてきてくれる人がいなかったらどうにもならなかったと思いますし、そういう部分では本当に仲間に恵まれたっていうところはあって、ただ誰よりも負けない熱量っていうのは自分の中ではあったつもりなんで、そういうのが今の子たちにももっと表面化させればいいなと。その内なる闘志みたいなのは秘めてる子たちはいるとはおもいるんですけど、周りに影響を与えられてるかっていうところでは、どうかなという。自分自身とかはすごい個人で頑張ってるけど、リーダーみたいな人って、その人が頑張り出したら周りも急に熱量上がって、自分の力以上のものを出させてくれるみたいな人は少ないですね。火をつけられる人がいないっていうか、自分はついてるんだけど、その火を人に伝染させるまでには行ってないかなっていうなるほど感じありますかね。

 

ーーその外にエネルギーを出すという観点で見ると、鈴木大翔主将(スポ新4=ガンバ大阪ユース)はかなり変わったように感じました

 

兵藤 周りの人がそういう風に感じ取ってるってことは、確実に変化してると思います。人って多分自分の中で何か変えたいとか変わりたいって思ってる中で、多分自分なりには変えてる選手はいると思うんですけど、こいつ変わったなって人から思われた時に初めてなんか多分評価ってついてくるっていう中では、鈴木がそういう風に思われてるっていうところでは、あいつの中で何か変えないといけないっていうのがちゃんと表面化できて、それを周りに伝わるまでできるようになったっていうのが、あいつが頑張ったっていうか、殻を破った部分かなと。だから、いい意味でこっちも助けられた部分で変わってくれて、ポジションも変わるっていう時にネガティブに捉えるんじゃなくて、ほんとに前向きにチャレンジしてくれたっていうところから、チームにすごいいいエネルギーを与えてくれたっていう中での、やっぱそのままの流れで、やっぱりキャプテンかなっていう感じで僕も思ってました。4年生自体も、自分たちで話し合いをする中で、自分たちの中でも鈴木っていうのがわかったし、こっちからも鈴木の方がいいんじゃないかっていうところでマッチしたっていうのが前向きに進んでるところかなって思います。

 

ーー主将が鈴木選手になったと思うんですけど、副主将に海本(慶太朗副将、スポ新4=大宮アルディージャU18)選手と西(凜誓副将、社新4=名古屋グランパスU18)選手がなりました。お2人にはなにを期待していますか

 

兵藤 もともと凛誓が多分キャプテンをするような代かなっていうのはあって。ただ、この学年は圧倒的なリーダータイプがいないなっていうのもずっと僕が1年から見てる中であったんで、常に個人面談する時に危機感っていうのは訴えかけていました。そういう中で、凛誓が今回キャプテンじゃなく副キャプテンっていうところで、だけど凛誓に対しては、「お前がキャプテンのように振る舞えよ、お前がやらないと基本的にはこの代は成り立たないぞ」っていうところは伝えてます。

海本も2年、3年と浮き沈みがすごくありながらも、新4年になってラスト1年しかないっていう時に、やっぱ覚悟っていう部分が固まってくると、やっぱりプレー面にもいいように作用して、安定感っていうところ、今まであいつに1番足りなかったものが少しずつ身についてるっていう中では、役職を与えることで、もしかしたら成長する部分もあるのかなっていう部分で、期待をしています。

 

ーー新4年生の自覚といった面については、監督はどのように見ていますか

兵藤 ここが学生サッカーの1番面白いところかなと思います。1年から4年まで同じ365日なのに、どこが1番成長するのかというと、やっぱり4年生の1年間が他の3年分に匹敵するぐらい成長するなとずっと思っています。なぜだろうと考えた時に、「覚悟が決まる」からだと思います。なんとなく「4年生になるな」「最終学年になったな」という状態から、「最終学年として絶対に1番上に立たないといけない」「自分たちがやらないと組織はどうにもならない」という覚悟が決まるタイミングが、たまたまそこに来るわけです。覚悟が決まると、一つひとつの言動に勝手に責任感が伴ってきて、「4年がミスをしてはいけない」「下に示しがつかない」という風に作用してくるだけで、持っているポテンシャル自体は、3年生の最後の時と今でそんなに大きく変わらないと思うんですよ。でも、たった一つのメンタル、「覚悟」と「責任」がくっつくだけで、人はこんなに変われるんだなと。指導するときも、「あいつ、数ヶ月でこんなに良くなるのか」と驚くとがあります。人間の持っているものというか、何かに対して本気になった瞬間、人が1番強いということを体現しているのだと思います。ただ、自分たちで「日本一」を掲げている以上、まだまだ足りない部分もあるので、その危機感は常に持たせたいです。

ーー毎年プロを目指す選手が多い中で実際にプロに行く選手そうでない選手の違い、あるいは「こういうやつがプロに行くよな」という特徴はあったりしますか

兵藤 マインドですね。トップチームにいればある程度の技術はある中で、やっぱりマインドがすごく大事だなと思っています。まず、メンタル面がプロ向きかどうかというのは間違いなくあります。あとは、頭をどれだけアップデートできるかというところですね。良い選手というのは、その状況に応じた最適なプレーを常に披露できて、ドリブルが最適ならドリブルをするし、パスが最適ならパスをする、それも短いパスなのか長いパスなのか、速いボールなのかゆっくりなのか。それを一瞬で判断します。時間を与えられれば人間誰でもできますが、サッカーという時間がない中で「何をチョイスして、何を実行するか」ができるかどうか。技術よりも頭やメンタル面が、プロになる選手とならない選手の差かなと思いますね。

ーー先日駒沢(直哉、令7スポ卒=現横浜FC)選手が4点取ったり、森田(大智、令8スポ卒=現AC長野パルセイロ)選手が開幕戦からデビューしたりといった活躍がありましたが、そういったプロでの活躍をどのように見ていますか

兵藤 大学時代から覚悟が決まっていたなと思います。駒沢に関しては、点を取ることに対して長けていた部分がありました。「プロ1年目からしっかりと常に準備をしておけよ」と伝えていた中で、試合に出られる期間もそうでない期間も、ブレることなく準備し続けたからこそ、今回たまたま4点取れた結果に繋がっただけだと思います。これで満足して準備を怠れば、また試合に出られない時間が増えると思います。森田に関しては、元々良いものを持っていた中で、4年の時に一つのきっかけがあり、そこから明らかに責任感が変わりました。それがプレー面にも大きく変化を及ぼし、チームを勝たせられるような選手になったので、彼が1番劇的に変わったんじゃないですかね。森田自身も、卒業する時のノートに「1番大事なものは覚悟だ」といったことを書いていました。そこが決まっていなかったからプレーもフワフワしていた部分があったのが、それがパッと決まるだけで、しっかりと試合に出続けられるようになりました。プロに行っても、同じように覚悟が決まった人たちの中で遜色なくできているというのは、やはりメンタル面の強さが出た結果かなと思います。

ーー監督は現在、解説業もやってらっしゃると思うのですが、監督 督業と解説業の両立は大変ですか

兵藤 指導の延長線上に解説業はあるものだと思っています。良い指導をするためには、今のサッカーのトレンドを知らないといけないし、学び続けないといけません。その中で、海外の試合や日本の試合は絶対に見るものじゃないですか。当然、自チームを見るのがメインですが、その中で良いものは吸収したいし、「そのトレンドに対して今の学生はどうなの」という視点もあります。見る時間を増やさないといけないので大変ですが、それが指導力にも繋がりますし、学生に還元できる量も増えます。大変だけど面白いし、自分のためにも学生のためにもなるので、楽しみながらやれています。

ーーここから来シーズンの話に移っていこうと思います。昨年のチームと比べて、プレシーズンにおける今のチームの大きな違いは何だと思いますか

兵藤 僕が提示したサッカーに1番長く触れている選手たちが多いので、戦術が定着するスピードは速かったと思います。プレシーズンでチームとして戦う時にも、バラバラ感が1番少ない代かなと。「こういうサッカーをする」という時に、攻撃の時はどうするかなどをちゃんと理解した上で行動してくれていますし、最後のアイデアなども自分たちから出そうとしてくれています。守備のところも、決まり事をどれだけ守れるかにチャレンジしてくれているので、去年のプレシーズンよりは、やるべきことの目線が揃っているチームだと思います。

ーー今年の1部リーグをどう見ていますか

兵藤 個で仕事ができる選手が2部より圧倒的に多いと思うので、そこでの違いは絶対に抑えないといけないところですね。また、関東リーグの1部は全国的に見ても基本的には強度が非常に高く、J下位リーグのプロにも負けないぐらい強い部分があります。その強度にどれだけ耐えられるか。身体的にどうしても勝てない部分をどう補うかと考えた時、僕は絶対に「頭」だと思っています。190ある人に170の人がフィジカルで勝ってこいなんて、僕は全然思いません。そういう部分では、「どうやったらそういうバトルにならないようにできるのか」、あるいは「そうなった時に、負けても相手に自由にはやらせない」「自分がゼロ点にならないような戦い方」を賢くできるかがすごく大事になってきます。そういった駆け引きが、1部の相手にどれだけ通用するかというところはポイントになると思います。

ーー今年のチームの鍵はなんだと思いますか

兵藤 特定のキープレイヤーというよりは、「トランジション」が鍵だと思っています。切り替えのところでどれだけ相手を上回れるかが常に勝負ですね。現代サッカーはそこに集約されている部分もありますし、どのチームも特化してきていると思いますが、そこで負けると早大はズルズルいってしまう気がします。「トランジションとその後の一つ目のプレー」という感覚です。攻撃であればトランジションした瞬間の1本目のパス、守備であれば奪われた瞬間の1歩目の位置取りを誰がやるか。そういった部分が今年のチームで1番鍵を握りそうだなと思っています。

ーーチームとして今シーズン目指すものを教えてください

兵藤 4年生が自分たちの中でしっかりと話し合って掲げてくれた目標に対して、僕らは手助けをするのが役割だと思っています。そういった意味で、「日本一」という目標は学生とともにしっかりと達成したいです。また、2部から1部に上がってきてそのままリーグで優勝するという、かつて柏レイソルがJリーグで成し遂げたような形を目指すのが1番かなと思っています。

ーー最後に、開幕となる筑波大学戦に向けた意気込みをお願いします

兵藤 楽しみでしかないですね。「筑波大と開幕戦でやりたいな」と思っていたぐらいです。多くの人に見られる環境で試合ができるのは幸せなことだし、むしろラッキーだなと。その中で何ができるのか。自分たちが持っているもの以上の力は基本的に出ないと思っているので、その中でどう戦うかです。選手たちはガチガチに緊張すると思うので、そういった部分も含めて楽しんでプレーできるような準備をしていきたいなと思います。

 

 

兵藤慎剛監督(ひょうどう・しんごう)

1985年(昭60)7月29日生まれ。国見高校時代、全日本ユース選手権、インターハイ、高校選手権の三大タイトルを獲得。早稲田大学入学後は、東京都1部リーグからスタートだったが、1年次に関東リーグ2部昇格、2年次に関東リーグ1部に昇格し、4年次にはキャプテンとして大学選手権優勝を果たす。在学中、U-20日本代表でもキャプテンとして日の丸の10番を背負い、ワールドユース選手権に出場しただけでなく、全日本大学選抜として2度ユニバーシアード世界大会に出場し、金メダル獲得にも貢献。卒業後は横浜F・マリノスでプロとしてのキャリアをスタート。北海道コンサドーレ札幌、ベガルタ仙台、SC相模原に所属し14年間のキャリアを終え、2023年から早稲田大学ア式蹴球部監督に就任。

(早稲田大学ア式蹴球部公式ホームページより)

(取材、編集 安田直樹)