今年度、早大スケート部フィギュア部門には10人の新入生が入部した。そこで一人一人にインタビューを行い、競技歴やスケートへの想いだけでなく、大学生活や今後についても話を聞かせてもらった。今後10回にわたり連載する。第6回は、新井さくら(人通1=東京・駒場学園)。
※この取材は9月11日に行われたものです。

競技について
――スケートを始めた時期ときっかけを教えてください
3歳の時にテレビでフィギュアのペア競技を見て「自分もやってみたい!」と言ったのがスケートを始めたきっかけだと母から聞いています。綺麗にお化粧してキラキラの衣装を着た選手が、リフトやスロージャンプをしている姿に夢中になり、初めてリンクに行ったときには、氷の上を滑るだけで精一杯なのに「投げて!」と母にお願いしていたそうです。自分では覚えていなかったので驚きました。流石にリンクでは無理なので、代わりに家でパソコン作業をしている父の腕や肩に立ったりと、おてんばなことばかりしていたそうです。4歳からスケート教室に通い始め、本格的に練習をするようになりました。
――競技の魅力は何だと思いますか
フィギュアスケートの魅力は、「非日常の氷の上」という特別な環境にあると思います。ツルツルとした氷の上でスピードに乗りながらジャンプやスピンをするのは、普段の地面では絶対にできない動きです。その中でスポーツとしての技術と、芸術的な表現を融合させていく点が、ほかにはないフィギュアスケートの面白さだと思います。
――ご自身の強みと、逆に強化したいところを教えてください
私の強みは、スピードに乗ったダイナミックで高さのあるジャンプだと思います。逆に強化したい点としては、ジャンプの勢いや動きが大胆な所に目が行きがちで、細かい部分の表現がおろそかになってしまうところです。これからは繊細さや手先の動きなども意識して、演技全体をより完成度の高いものにしていきたいです。
――福原美和前監督から指導を受けられているとのことですが、どのようなことを教わってきましたか
福原先生にはスケートを始めた4歳からご指導いただいています。スケートの基礎的な部分はもちろんですが、日常生活での礼儀作法など沢山のことを教えていただきました。具体的に細かく指示されるというよりは、大きな方向性を示していただくことが多いので、自分で考える習慣が身につきました。最近は「もっと感情を込めて滑りなさい」と言われることもあり、いまの私の課題です。
――どんな選手になりたいか、選手としての理想はありますか
私の好きな選手は坂本花織選手と三宅咲綺選手です。2人のダイナミックでスピード感のあるジャンプ、そして大きく動きながらも繊細さを兼ね備えた演技に憧れています。自分もそういった迫力と美しさを併せ持った演技を目指していきたいです。
――早稲田大学のスケート部に入部した理由、経緯を教えてください。また福原美和前監督からお話をお聞きになっていたとのことですが、どのような印象でしたか
福原前監督や八木沼監督(平7教卒)の存在が大きなきっかけです。福原前監督は早稲田大学やスケート部のことが本当に大好きで、「早稲田の子はすごいんだよ」とか、早稲田オンアイスの話をよくしてくださいました。その影響もあり、臙脂色のジャージを着た早稲田のスケート部に自然と憧れを抱き、入部を決めました。
――フィギュア部門主催のアイスショーWASEDA ON ICEにはグループナンバーもありますが、今までグループナンバーなどを滑った経験はありますか
これまでグループナンバーを滑ったことはありません。いつも1人で滑ってきたので、部のみんなと演技を作り上げることが今からとても楽しみです。今までにない学びや発見もあると思うので、自分にとって新しい挑戦になるはずですし、部の仲間で一緒に滑ることで得られる一体感も味わいたいです。
――早稲田の先輩や同期ともう交流しましたか。あるいはもともとお知り合いの方などいらっしゃいましたか
2年生の穂積乃愛さん(人通2=東京・駒場学園)が高校の先輩です。普段練習しているリンクもずっと同じだったので、入部前からよくしていただいています。同期では中野真桜さん(政経1=東京・早実)が小さい頃から大会で顔を合わせる仲です。 また、高校時代からインスタなどで早稲田のスケート部の様子をよく見ていたので、勝手にみんなと知り合っている気分になっていた部分もあります笑 今年は夏合宿もあり、先輩や同期とたくさん交流することができました。同期も多く、日々の練習がとても楽しいです。
――早稲田大学フィギュア部門への印象は
入部前から温かい雰囲気のある部だろうなと感じていましたが、実際に入ってみてもまさにその通りでした。早稲田大学フィギュア部門は明るく楽しい雰囲気で、温かい人ばかりです。和気あいあいとしながらも、それぞれが目標に向かって頑張っている姿が印象的です。
大学生活について
――趣味は何ですか
趣味は野球観戦です。兄が早稲田大学の野球部にいるので、六大学野球の試合を観に行くのが最近の楽しみです。春にはフィギュア部門の1年生全員で、大雨でびしょ濡れになりながら早慶戦を観戦したのが特に良い思い出です笑 秋もまたみんなで観に行く予定で、今から楽しみです。
――大学生活には慣れましたか。大学に入って今までと変わったことはありますか
少しずつ慣れてきました。通信制を選んだので、授業を自分のペースで受けられるのが大きな魅力で、時間の使い方の自由度も高くなったと感じています。
――人間科学部ですが、何を勉強しているのですか
フィギュアスケートを科学的な見地から指導する方法を学んでみたいと思い入学しました。 身体を力学や科学的な視点から考える授業に特に興味を持って勉強しています。学んだことは自分の競技にも直接活かせるので、日々の練習にも役立っていると感じています。また、情報や心理学など幅広い分野の知識も学んでいきたいと思っています。
――面白かった授業などはありますか
「行動分析学」や「リハビリテーションと身体科学」の授業は、学んだことを競技に直接活かせる内容で、とても興味深かったです。 行動分析学の授業では、行動は環境との相互作用から生まれると学び、普段の行動にも理由があることに気づけたのが印象的です。 また、リハビリテーションと身体科学の授業では、筋肉の働きや運動の仕組みを数値や実験を通して学び、感覚に頼っていた身体の動きを客観的に理解できました。身近な運動や生活に結びつけて考えられることが、学問としての面白さにつながったと思います。
――学業とスケートの両立は大変ですか
スケートの練習は毎日決まった時間ではなく、朝早かったり夜遅かったりと不規則です。その中で時間をやりくりするのは大変ですが、みんな同じ条件なので自分も頑張っていきたいです。
――スケート以外で、大学4年間でやってみたいことはありますか
音楽を弾ける人に憧れているので、以前習っていたピアノやほかの楽器もまた弾いてみたいです笑新しいことに挑戦したり、友達と一緒にいろいろなことを楽しめたらいいなと思っています。また、大学生活のうちに何か資格やスキルを身につけて、自分の可能性を広げていけたらと思います。
今後について
――今シーズンの目標を教えてください
今シーズンは、新たに団体競技のシンクロも始めるので、シングルとシンクロの練習を両方最大限に頑張ることが大きな目標です。また、ジャンプのレベルアップも目指しています。 9月からシンクロを始めたことで、これまでより滑る時間も増えました。シングルでは、オフリンクのトレーニングも充実させながら、曲の中でのトリプルジャンプの安定性を高め、新しいトリプルジャンプの取得を目指しています。 シンクロでは、団体競技ならではの技術にも挑戦し、4月にある世界選手権を目指して頑張りたいです。
――今シーズンのプログラムを教えてください。また、どんなところに注目してほしいですか
SPは『ムーランルージュ』FSは『Sweet Revenge』です。 ショートはメドレー曲で展開が早く、さまざまな曲調にメリハリをつけ、身体とリンクを大きく動かして表現したいと思っています。 フリーは洋楽で、モダンで不思議な世界観を、力強く、かっこよく、妖艶に演じられるよう表現したいです。音に合わせた動きが多いので、ひとつひとつの動きをしっかり捉えて演じたいと思います。
――大学4年間の目標、ビジョンを教えてください
大学4年間では、競技面でこれまで積み重ねてきた集大成を見せたいです。そのために、技術面では7級を取得し、シングル・シンクロ問わず、1年ごとに着実に成長していくことを目標にしています。また、大きな怪我なく競技を続けながら、高いレベルで戦える選手を目指しています。 そして、早稲田大学の代表として全国大会に出場することも目標です。福原先生の最大限の褒め言葉は「まあまあね」ですが笑 最後には褒めていただけるよう、日々の練習を全力で取り組みたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 荘司紗奈)
◆新井さくら(あらい・さくら)
駒場学園出身。人間科学部1年。所持級はシングル6級。