衝撃の復活を遂げた昨秋から一転、今春は苦しいシーズンを過ごした田和廉(教4=東京・早実)。それでも、夏のオープン戦では152キロを計測するなど復調傾向。ドラフトを控えるエンジの守護神に、4連覇への思い、リーグ戦に向けた意気込みなどを伺った。
※この取材は9月11日にオンラインで行われたものです。
東海大戦のホームラン

――春のシーズンを振り返って一言お願い致します
自分自身、先発など色々チャレンジしたシーズンで、その挑戦でチームに迷惑をかけたなっていう風に、リーグ中盤から思うことが結構ありました。それでも、明治、慶応戦あたりは、自分の本来のピッチングを取り戻せたかなと思っています。
――かなり苦しいシーズンになったかと思いますが、その中で発見できた課題や、その中で自信を深めた部分はありましたか
ストライクゾーンに放ることが大事かなっていう風に気付いたことが一番ですね。立教戦であんまり自分の思うような投球ができなくなった時に、コーチの方であったり選手のみんなから、真ん中でいいから自分のボールを腕振って放っとけば大丈夫だよっていう風におっしゃっていただいたので、そこは自信を深めた部分でもありますね。
――田和選手のストレートはかなり特徴的な球質をされていますが、春はストレートを低いゾーンに投げる場面がかなり増えました。チーム内の方針等はありましたか
基本的にはピッチャー陣全体として低めにまっすぐを投げることが、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)や金森助監督(昭54教卒=大阪・PL学園)から言われていることなので、それを意識してたっていうのはあります。ただ、自分のタイプ的にそれがあってたか合ってないかは、まだ分からない状態です。ここ最近のオープン戦では、低めは意識しているんですけど、低めに行くか行かないかよりも、低めを狙って、その結果強いボールが発射できれば良いと吉田瑞樹副将(スポ4=埼玉・浦和学院)と話しています。秋はまっすぐを低めに集めるというよりは、強いまっすぐをしっかり放るっていうことが大事になってくるのかなっていう風に思います。
――以前ストレートに関して、「回転効率が出せていればライズしようが垂れようが構わない」とおっしゃっていましたが、低めに投げる場面で意識が変わることはありますか
回転効率自体はほぼ100%に近い球を放れてはいたので、ライズしようが沈もうが良かったんですけど、一般的な良いコースに自分の中で強く投げたまっすぐがバットに当てられるというケースが増えたので、そういう意味ではまっすぐを使うタイミングや、沈まないまっすぐを低めに放る技術も必要かなっていう風に思いました。東海大戦でホームランを打たれた球が、自分にそう思わせてくれたかなっていう風に考えています。
――あのボールは自信を持って投げたボールだった
(そう思って)放ったんですけど、あの場面で、代打の1年生っていうところで、自分のまっすぐでファウルを取りに行った強いボールが、しっかりアジャストされてポール際に入れられたので、もう1つ、スピードや強さが必要だなっていう風に思わせてくれた球でしたね。
――リーグ戦中、夏のオープン戦も含めて150キロ前半ぐらいが現状のマックスですが、2年春の衝撃的なデビューや3年秋の投球から見ると少し伸び悩んでいる印象があります。ご本人としてはどのような捉え方をされていますか
この春、自分の最速である152キロを超したいっていう風に、去年の秋が終わった時点からずっと思ってはいたんですけど、その結果、あまり伸びなかったっていうのが春の結果で。最速も151.8キロで、更新とはいかなかったので、そういうこともあって、力みにつながっていったのかなっていう風に思っています。先発をしてる時は特に、球速にこだわりは持っていなかったんですけど、リリーフになった時ぐらいから、更新したいなっていう欲が出て、フォームとかもちょっと乱れてたのかなっていう風に今振り返って思います。
――変化球への手応えというものは変わりませんか
変化球自体は、自分の中ではどんどん良くなってるかなっていう風に思ってはいて。もともとスライダーには結構自信があって、変化量であったりキレは自信あったんですけど、カットボールは自分の中でいまいち使いどころが分からなかったんですけど、夏のオープン戦含めて、カットボールへの手応えは結構あって。球速自体も最速は140キロは超えてきますし、平均でも140キロ近く出るようになったので、スライダーとストレートの中間球として、スライダーも生かせるし、真っすぐも生かせるような球になってるのかなっていう風に思います。
球速は勝手についてくる

――夏を経て成長した部分は
球速を求めすぎて崩した部分があったという反省はあるので、しっかり投げ込みをしつつ球速を上げてくっていう風に、シフトチェンジした中で、軽く力を入れなくても150キロ近い真っすぐが放れるようになってきたなっていう印象があって。オープン戦であったり紅白戦、シート打撃含めて140から147キロで推移してきた中で、オープン戦で150キロも出ましたし、全早慶では152キロまで表示も出ていたので、出力自体は自分の中で力を入れなくても上がってきたなっていう印象があります。そういう意味ではこの夏意識はしてなかったんですけど、ウエイトだったりランニングだったりを経て、しっかりこう身についてきた部分があるのかなっていう風に思っています。
――秋のベンチマークとして置いている数字としては
ずっと155キロを大学生の時に投げたいっていう風には思ってたんで、そこはブレずに155キロを放りたいっていう風に思ってはいます。ただ、春の反省として、それを出しに行きすぎると良くないので、この調子で普通に投げれば155キロは行くと言うか、全力で抑えに行った結果、勝手についてくるぐらいで思いながら、秋は放りたいかなっていう風に思っています。
――ドラフトも迫っています。田和選手として、プロ野球にはどのような印象を持っていますか
小学校の頃からもちろん憧れの存在ではあったんですけど、中高を経て、現実的な目標だ、っていう風にずっと思っていました。中学校のコーチからも野球をやってる以上、プロ野球を目指さないとダメだっていう風にずっと教えられてきたので、(目指せるところに)やっと来たなっていう思いもありますし、プロ野球自体にも憧れはありますし、ここまで来たなら、行きたい思いはあります。
――気持ちとしてはプロ1本
大学2年生のあたりから、社会人の今決めたチームからお声をいただいていて、そのチームからの熱意もだいぶ感じていたので、プロ1本だと自分の中では思っているんですけど、そのことも考えた時に両方考えないとダメだなっていう風に思っている感じですね。
――六大学からドラフト指名された選手の中で、去年で言えば明大の浅利太門選手(日本ハム)、法政大の山城航太郎選手(日本ハム)が1つ指標になるかと思います。その選手と比べてご自身の優れているところ、より自信を持っている部分はどの部分になりますか
ずっと見ていて、ストレートの強さや、三振を奪える変化球という意味では、自分はお二方よりも、もしかしたら低いのかもしれないっていう風に分析してはいます。自分にあるとしたらリリースアングル。右のスリーサイドでこのストレートと変化っていうのは、他の選手とは違う部分だと思います。もちろんまっすぐも変化球も負けてはいけないと思うので、この秋、その2人に追いつき、追い越せるような成績を残してドラフトにかかればなっていう風に思います。
最後の仕事は4連覇
――ここからは秋のリーグ戦についてお聞きします。ここまでの調整具合はいかがでしょうか
チームとしては、ピッチャーとしてはだいぶ仕上がってきているなっていう印象があります。春終わったタイミングで、樹(伊藤樹、スポ4=宮城・仙台育英)以外は全員フラットな目線で見るということで、しっかり競争がまた始まって、自分はあまり調子は良くなかったんですけど、9月に標準合わせてやってきた中で、コントロール、出力含め、調整はできてきたかなっていう風に思っています。チーム自体も、自分みたいな選手が多くいるなっていう印象でしたね。初めはあまり良くなかったんですけど、リーグ戦に向けてだいぶ上がってきたなっていう風に思います。
――夏の対外試合では、春に「もっとやれる」と田和選手がお話しされていた髙橋煌稀選手(スポ2=宮城・仙台育英)が目立つ活躍を見せましたが、成長した部分はどの部分だと思われますか
まずは自分の真っすぐをちゃんと信用して放っているなっていう風に思っています。もちろん、そのまっすぐが元々いい選手なんで、まっすぐ3球で3つ空振りで三振取ったりする場面も増えていますね。本人の中でも出力が上がった部分含め、フォーム含め、まっすぐにやっぱり自信を持って放ってる印象があります。本人もカットボール、スプリットと色々放ってはいたんですけど、オープン戦の投球割合とかを見ると、やっぱりまっすぐ中心で押せていることは良いことだと思います。
――チーム内で期待する打者、期待する投手を挙げて下さい
打者は清宮福太郎(社4=東京・早実)と黒﨑将太(文4=東京・国学院久我山)です。2人は多分右の代打として出ることが増えると思うんすけど、オープン戦でも打っていましたし、特に黒﨑は終盤のここ1番で打ってほしい場面で打っている印象があるので、リーグ戦でも1打席はもらえると思いますし、3、4打席はもらえるかなっていう風に思っているので期待しています。福太郎は、高校からずっと一緒にやってきて、ホームランを見たいっていう理由であげさせてもらいます。投手は香西一希(スポ3=福岡・九州国際大付)です。復帰したシーズンという意味では、去年の自分と重なる部分もあるので、しっかり活躍してくれるという期待も込めて。やっぱり春、投手陣として厳しかったのは、左投手の存在で、ブルペン陣にリーグ戦でたくさん投げたような左ピッチャーがいなかったっていう意味では、自分も左バッターに投げる場面も多かったですし、香西が入ったことで、もう一層ブルペン陣に厚みが出ると思うので、期待しています。
――田和選手としては左相手に投げることは苦しい
苦手っていう印象はないんですけど、実際の成績を見た時に、春も去年の秋も含め、顕著に出てますね。ただ、被打率が高いのは今の六大学に良い左打者が多いっていうのは多分あると思います。そういう理由も含めて苦手ではないですけど、やっぱり数字は気になります。
――他大学で意識している選手を教えて下さい
投手は明治の久野悠斗(4年)。同じトミー・ジョンを経験したっていうのもありますし。本人もこの春投げたかったとは思うんですけど、登板ゼロで終わっていて、1年半ぐらいリーグ戦には出てきていないので、この秋への思いは強いかなって思っています。明治は久野がガンガン投げてくる方が怖いので、個人的に頑張ってほしいです。打者は法政の今泉秀悟(2年)。本塁打を打たれましたし。ただ、春はBIG6TVのコメントに「ストレート勝負お願いします」って書いてあったんですけど、思いっきり張ってましたみたいな感じでカットボールをホームランにされたんで、今度はちょっと、真っすぐ勝負して抑えたいなっていう風に思いました。
――チームは4連覇をかけて臨みます。100年目の六大学での4連覇というところで、意気込みはありますか
4連覇に挑めるチームっていうのは数少ないわけであって、個人的に思っていることですけど、後輩に何か残していけるものがあるとしたら、5連覇への挑戦権だと思っています。そういう意味でも、最後の仕事として5連覇はしておきたいなっていう風に思います。
――今後の人生がかかるシーズンになるかと思います。意気込みをお願い致します
まずはチームとしての目標はもちろん4連覇。そこに自分がどう関われるかっていう風に考えるなら、大事なのは、9回を任されるとしたら、8回終わって早稲田が勝っているならもうゲーム終了だなって思わせる、味方にも相手にも思ってもらうことがまず重要かなって思っています。それくらいの支配力を見せる、もう点を取られない。目標は失点0でいきます。もちろん難しいのは理解していますし、どれだけ投げれるかによってその難易度も変わってくるとは思うんですけど、僕が投げるからには取られないっていう意識でいます。球速目標はないです。まずは、このチームの集大成を早稲田ファンの皆さんにお見せするっていうのが第一。やるべきことを当たり前にやれば優勝できると思うので、自分含め4年生中心にやるべきことをこなしていくこと。その結果、優勝できれば最高かなっていう風に思っています。
ーーありがとうございました!
(取材、編集 林田怜空)
◆田和廉(たわ・れん)
2003(平15)年5月2日生まれ。183センチ、88キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。ドラフトを直前に控え、運命の秋のシーズンを迎える田和投手。人生をかけて臨む最終シーズンに注目です!