昨季の明大2回戦では早大史上2人目のノーヒットノーランを達成するなど、チームの3連覇に大きく貢献した伊藤樹(スポ4=宮城・仙台育英)。今夏はフォーム改造に着手し、投手として一層の進化を遂げている。迎える最後のシーズン、悲願の日本一、そしてプロ入りに向けた熱い思いに迫る。
※この取材は9月11日にオンラインで行われたものです。
チームの勝ちのために

――春のリーグ戦は3連覇を達成しました。改めてご自身の投球振り返っていかがですか
前半はかなり苦しんだというか、コンディション不良がありながらの登板になってしまったので、どうしても納得いかない投球がずっと続いていました。ただ、明大2回戦以降はかなり良い状態で投げることができ、チームの勝ちのために必死になって投げられたかなと思います。
――全日本大学野球選手権ではベスト8という結果でした。この大会を通じて個人、そしてチーム全体として見つかった課題はありましたか
投手陣としては経験不足が出ていたかなと思います。投げるボールやコントロール以外の部分、テンポの良さやフィールディングなどの部分がまだまだ投手陣としてレベルが低く、もっと夏以降にレベルアップしなければならないと思いました。高校時代から有名な選手も多いですが、投げる以外の部分はまだまだ練習が足りないところが見えています。今のチームは4年生投手が2人の若いチームですが、自分たちで話し合ってここまではやってこれているので、なんとかいい形で秋のリーグ戦に向かえるかなと思っています。
――日米大学選手権(日米野球)では3連覇に貢献しました。大会通じての投球として振り返っていかがですか
大事な初戦を任せていただいて、本当にいい経験になりました。第1戦をいい形でゲームを作っていけたことが、第2戦、第3戦につながっていったのかなと思うので、自分の中では高評価したい試合でした。
――日米野球では他大学の選手と交流する機会も多かったと思いますが、印象に残っている選手はいますか
青学大の中西投手(聖輝、4年)はピッチングに関して色々考えていたので、かなりいろんな話をしていました。
――夏の練習を通して重点的に取り組んだ点はありますか
まずはフォームを変えたので、そこのメカニクスや、どういった感覚で投げていけば良くなるかをトレーニングから投球につなげることに練習の時間を使っています。キャンプに関しては、とにかく運動量の確保をすることを1番に念頭に置いて練習をしていました。疲れはありましたが、それを乗り切るために運動量をしっかりと確保できたので、かなりいいキャンプだったなと思います。
――フォームは具体的にどこを変えましたか
足を2回あげるフォームだったのを1回にしました。とにかく早く前に対して動きを強めるっていうところを最優先に考えた新フォームにしています。
――8月のオープン戦の際に、新しい球種を取り入れているという話がありました。球種と手応えを教えてください
球種としてはワンシームです。感覚としてそれなりに形にはなってきたなと思うので、リーグ戦でもおそらく使うことになるかなと思います。悪い部分も登板重ねるごとに見えてきているので、しっかり修正してリーグ戦に向けて準備したいと思っています。
勝負の世界で自分もプレーしたい
――ドラフト会議が約1か月後に迫ってきましたが、改めてプロ野球への思いを率直に教えてください
野球を始めた頃から常にテレビで見てきたのはやはりプロ野球ですし、その舞台で立ってプレーすることが野球選手として1番のことだと思うので、そこを目指してずっとやってきました。自分としては初めてのプロ志望届を出すことになるので、本当に不安など色々あります。ただ、今できることをしっかりやれば結果はついてくると信じているので不安がありながらですが、当日まで必死に頑張りたいと思っています。
――実際プロを目指した時期やきっかけはありましたか
野球を始めてからプロはずっと目指してやってきましたが、やはり高校2年生の時に1個上の入江大樹さん(楽天)がプロに行く姿を見たのが大きかったです。こういった選手がプロに入って活躍していくのだなというのを目の当たりにして、プロ野球の輝かしい世界というか、勝負の世界で自分もプレーしたいなと高校2年の時に強く思って、目指すようになった形です。
――ドラフト会議までの残りの期間で、自分のどんな所をアピールしていきたいですか
まず引き出しの多さと、総合的に高いレベルで投げられるところは評価していただいている部分で、自分も武器としているところです。ただ、まだまだ伸びしろがあるところも見せたいなと思っています。新フォームを始めて投げられるボールも変わってきましたし、スピードも変わってきているので、トレーニングを積んでいけばまだまだ伸びしろがあるぞというのを見せられればそれだけの評価になると思っているので、そういった部分をあと1ヶ月でしっかりと示していきたいなと思います。
4連覇とタイトルを

――今回のリーグ戦が4年間で最後のリーグ戦になります。率直に今の心境を教えてください
もう終わってしまうのだなという感覚はかなりあります。1年生の春からずっと投げさせていただいていますが、もう最終学年のラストシーズンということで、優勝して終わりたい気持ちが強いです。個人的にドラフト会議があったり、タイトルを取れるラストチャンスだったりなど色々ありますが、やはりみんなで優勝して終われたら全て良しぐらいの気持ちでいるので、その気持ちが1番強いです。
――現在の調子はいかがですか
状態としては点数で言えば60点から70点ぐらいですが、ここから徐々に疲れを抜きながらリーグ戦を戦っていくことになるので、だんだん上がってくるかなと思います。
――リーグ戦直前で意識して練習していることはありますか
とにかく疲労を抜くことと、練習量を確保するところのバランスを自分でしっかりと見極めながらやることを意識しています。
――投手陣全体の状態はどのように見ていますか
状態自体はみんな悪くないとは思います。ただ春のように、オープン戦で良かったメンバーが急にリーグ戦で変わってしまうのはみんな経験していると思うので、しっかりと経験したことを秋に生かせればいいかなと思います。頼もしい後輩たちがたくさんいるので、しっかりと彼らにつなげるように頑張りたいなと思います。
――今季優勝すると2003年以来の4連覇、さらに早大としては節目の50勝になりますが、優勝に対してはどんな思いですか
自分たちが昨年2連覇した時点で、4連覇すれば記念すべき50勝だということをみんな理解してこのチームをスタートさせました。50という数字に強いこだわりがあるわけではないですが、4連覇はみんな強く意識しているところなので、とにかく1戦1戦大事に戦っていければ、春のように結果がついてくると思います。
――最後に秋のリーグ戦に向けて意気込みをお願いします
チームとして4連覇、その先の日本一をずっと目指しているので、1戦1戦大事に戦いたいと思います。個人としてはまだ最優秀防御率のタイトルは取れてないので、そのタイトルとともに優勝がついてくれば自分自身としては最高のシーズンになると思うので、1イニング1イニング丁寧に投げることは変えずに必死に頑張りたいと思います。
ーーありがとうございました!
(取材、編集 植村皓大)
◆伊藤樹(いとう・たつき)
2003(平15)年8月24日生まれ。177センチ、84キロ。宮城・仙台育英高出身。スポーツ科学部4年。六大学オールスター戦の翌日が誕生日だった伊藤樹投手。現地で行われた野球教室の後に、他大学の選手も一緒にお祝いしてくれたことが印象に残っているそうです!