昨年準優勝と惜しくも王座優勝を逃した早大アーチェリー部女子。今季王座に出場するのは、主将の立場でチームを引っ張ってきた渋谷樹里女子主将(スポ4=エリートアカデミー)、3年連続王座出場の髙橋梨杏(スポ3=神奈川・横浜)、大学からアーチェリーを始めて王座初出場の浅田陽香(スポ2=東京・昭和)、1年生ながらチームをけん引する五関晄子(スポ1=エリートアカデミー)の4人。王座経験者、未経験者がバランスよくそろうなか、それぞれどんな思いで王座に挑み、昨年の雪辱を果たすのか。熱い思いを伺った。
※この対談は6月4日に行われたものです。
お互いについて
――はじめに、お互いの他己紹介をお願いします
渋谷 2年の浅田陽香です。いつもニコニコしていてすごい明るい子なんですけど、試合になると緊張して顔が固まっちゃうところがあります。お菓子が好きで(笑)、ちょこちょこ食べて嬉しそうにしています。
浅田 3年生の髙橋梨杏さんです。気軽に話しかけてくださって、よく冗談を言って笑わせてくれます。アーチェリーだけじゃなくて、普段の生活でも頼りにさせていただいている存在です。
髙橋 1年生の五関晄子ちゃんです。経験者で入ってきて、部活の雰囲気を明るくしてくれるし、点数の面でも本当に貢献してくれるので、期待の星という感じです。競技以外だとおっちょこちょいなところもあるんですけど(笑)、そこが晄子の良いところだと思うので、しっかりしつつ抜けているところがあるのもご愛嬌という感じで、伸び伸びやってくれたらいいと思います。
五関 4年生の渋谷樹里さんです。樹里さんは、高校時代は被っていないですけど直属の先輩で、競技面では主将ということもあって1年生の私に気をつかってコミュニケーションを積極的にとってくださります。樹里さんらしくないと思ったりするけど、面白いことを言ってくれる先輩で、あんまりボケたことを言ってくれない先輩だと思っていたけど(笑)、新たな一面を見せてくれました。真面目そうに見えていたので、良いギャップでした。
――アーチェリーを始めたきっかけはなんでしょうか
渋谷 私は今年、滋賀県で国民スポーツ大会があるんですけど、それに向けたアスリート発掘プロジェクトで色んな競技を体験する中で、アーチェリー楽しいなと思い始めました。
浅田 私はアーチェリーを大学から始めたんですけど、高校までは違うスポーツをやっていて、大学で新しいことを始めたいなと思って、たまたま友達に新歓誘われてアーチェリーを体験したらすごく楽しくて始めました。
髙橋 私は浅田と一緒で、高校に入ってから新しいことを始めようと思って、本当は弓道をやりたかったんですけど学校に弓道部が無く、校内マップを見ていたらアーチェリー場があって、同じ弓だよなと思って体験に行ってみたら楽しかったので気づいたら始めていました。
五関 私は兄がアーチェリーをやっていて、私もなんかやってみようという感じで小学校4年生の時にアーチェリーを始めました。
王座について
――ここから個人質問に入らせていただきます。まず渋谷選手から伺いますが、今回主将として王座を迎えますが、主将としての思いがあれば教えていただきたいです
渋谷 もちろん優勝というところは目指したいと思っているのですけど、これまで本当に先輩に頼った状態で団体戦に出ることが多かったので、緊張というかプレッシャーは感じつつも10年目の競技の知識で迎える最後の大会なので、思い切って挑戦する気持ちで頑張れたらなと思っています。
――今年で最後の王座出場になりますが、今までやり残してきたことがあれば教えてください
渋谷 私は1年生の時と3年生の時に両方とも王座の決勝戦を経験して、どっちもけっこう自分のミスが負けに繋がったと感じている部分があって、やっぱり緊張した時に決めきれない部分が自分の中でどうしても心残りだったので、今年はそういったところでもちゃんと決めきれるように、たぶん3番手で射つ予定なので、ビシッと決められるように頑張りたいと思います。

最後の王座となる渋谷
――続いて浅田選手に質問します。王座初出場ですが、自分の強みをどう生かしていきたいか教えていただきたいです。
浅田 自分の強みは、全部が初めてなので不安なことも多いですけど楽しめるというところで、緊張しちゃうと思うんですけどそれも楽しみながら明るい雰囲気を作っていけたらいいなと思います。
――大学生から始めて初の団体での大舞台だと思いますが、なにか感じていることがあれば教えてください
浅田 王座って誰でも出られるわけじゃないし、機会に恵まれて出場できることになったので、そのいただけた機会に感謝して、不安はいっぱいあるけれど全力を出すことを頑張りたいと思います。

王座初出場となる浅田
――次に髙橋選手、3年連続の王座出場になると思いますが、昨年度よりどう成長してきたか教えてください。
髙橋 去年は本当に調子が上がらなくて、おととしから下がっている状態で迎えた王座だったので、すごい不安が残っているまま本番を迎えたんですけど、今年はけがの調子も良くなって最近点数も上がってきたので、点数面では入学当初とかそこあたりまで戻ってきました。気持ち面でも3年連続というのもあって、王座でも緊張せずきっと楽しくできると思うので、技術面だけじゃなくてメンタル面でも成長している、安定しているんじゃないかなと思います。
――去年は調子が悪いとおっしゃっていましたが、悪い時にはどう工夫して試合に臨んでいましたか
髙橋 自分をだましだましというか、大丈夫と思うしかできなかったので、高校生の時に調子が悪くなったり肩をけがしてから、先生に「ここだけやれ、ここだけ意識して射ちなさい」とか、「こういう気持ちでやりなさい」と言われていたのを本当に自分の中で徹底して、いかに試合中にミスらないかっていう不安を減らすというのを考えながらやっていました。2日目のトーナメントでは中てるしかないので、「しゃーやるぞ」という気持ちが強く本番では不安だったというわけではないんですけど、それまでは「やばいどうしよう、3番までに入らなかったらどうしよう」みたいな不安がいっぱいあったので、どうしていたかと言われると難しいですけど、いかに自分を鼓舞するか、自分で自分を上げられるかっていうのを考えていたかなと思います。
――最後に五関選手に伺います。高校時代には世界ユース選手権など数々の大舞台を踏んできていると思いますが、今回大学入学後初めての全国大会出場に対してどう感じていますか
五関 初めての王座ということで、緊張も試合本番になったらあると思うんですけど、今は「王座」という試合を精一杯楽しむことを目標にしたいなと考えています。団体戦なのでチームワークとか、明るく精一杯楽しむことを意識しています。
――今のチームでは唯一の1年生で周りは全員先輩ですが、どういう気持ちでチームに入っていますか
五関 先輩だからこそ逆に安心して射てる感じがします。射つ順番的にだいたい一番手が多いんですけど、私が一番手で射っても後ろが先輩なので、「先輩だからなんとかしてくれる」と思え、気持ちは楽だと感じます。
――ここからは、王座について再び全員に聞いていきます。まず、王座出場選手選考会の雰囲気を教えてください
渋谷 並び順は男女混ぜて選考していたので、もちろん緊張している人も多かったですけど、けっこう的の中でコミュニケーションをとっている選手も多かったかなと思います。
髙橋 けっこうピリついてましたよね。
渋谷 女子は人数が少なく点差もあったけど、男子がけっこう同じ点数くらいで団子になっていて、本当に誰が入るのか分からない状態だったので、全体的に緊張感のある選考だったのかなと思います。
――緊張感のあるなか、選考を勝ち上がるために何か意識した点はありましたか
浅田 今まで選考なくて初めての参加ですごい緊張したんですけど、さっき樹里さんが言っていたように、的間のコミュニケーションをとって緊張を和らげることを一番意識していました。
髙橋 私は選考の期間も特別調子が上がっていたわけではないんですけど、人数少ないなかでも推薦で(早稲田大学に)入っているというのも自分の中で大きくて、プライド、絶対選手に入んなきゃと思っていたので、公式の試合ではないんですけど、試合を想定して緊張感もあり、気持ち的には試合に近かったのかなと思っています。プライドが大きくて、「絶対に入らなきゃ」というのを強く思っていた感じです。
五関 私は選考1回、2回目が終わった時に、点数的に一番上だったので、3回目の選考の時は自分にプレッシャーを与えるんじゃなくて、自分が射ちたいフォームで練習通りの感覚と一緒に射つことで、試合と同じような雰囲気だったので、その中でもどれだけ同じフォームで射てるのかなというのを考えていました。フォームを意識して射っていたのが、結果的にも良くて3回目の時は良い練習になったのかなと思います。
渋谷 選考始まる直前の時にフォーム変えて、本当に中らなくなっていて、中てなきゃいけないという思いもあったのですけど、そのうまくいかないなかでどうやって最低限点数を出すかというのは試合にもつながるのかなと思って、冷静にやることだけを徹底して射つよう心がけていました。
――選考後の練習で工夫していることがあれば教えてください
渋谷 さっき言ったみたいにフォーム変えてたというところがあったので、それをとりあえず安定させられるように、本数はたくさん射つようにしています。ある程度中ってきたなかメンバーも決まってきたので、ちゃんと順番きめて団体戦のなかで少ない本数でもちゃんと決められるような練習ができるように、集中して射つようにしています。
浅田 私も選考終わってからたくさんの人にフォームを指導してもらって、今はそのフォームを安定させることを意識しているのと、団体戦の練習が始まったので2本でちゃんと決めるっていうのをするために、ただがむしゃらに本数を射つというよりかは集中してその1本をちゃんとしたフォームで射つことを意識して練習しています。
髙橋 王座選考と同じくらいの時期に、国民スポーツ大会の県予選も始まっていたので、国スポ予選で自分のなかで2射ずつ区切って射ったらけっこう感覚が良かったというのが見つかったので、普段の練習から2射ずつ、2射射って1回呼吸おいて、2射射って1回呼吸おいてっていうのを今徹底的に練習するようにしています。あとはリーグ戦の時に、スコープについてもらっていた、2年生の野田(慶一郎、スポ2=エリートアカデミー)とこういうところ直していきたいよねと話していたところがあったので、そこを重点的に練習しています。
五関 私はけっこう唐突にミスしてしまうことが練習でも試合でもあるので、まず練習からミスをなくすという気持ちで練習して、もちろん試合でもミスしないようにという思いが強いです。ミスしないって思いながら練習しています(笑)。

1年生ながら王座出場を決めた五関
--チームの強みと課題について教えてください
渋谷 強みだと思うのは、結構みんな(射つ)テンポが速いので、時間的な余裕があるというのは技術的なところではあるかなということと、時間的な余裕もそうだし、スパンと射っちゃうので、見ててチームメイトも不安は感じないような射ち方をしてくれる人が多いということかなと思います。もう一つは結構ずっと雰囲気が明るいので、どんなときでも雰囲気から崩れることはあまりないというのは強みかなと思います。課題としては、結構ミスが大きい人が多いなあというところはもちろんあるんですけど(笑)。それをカバーできるぐらい当てられる人も多いと思うので、ミスはもちろん減らしたいですけど、それ以上にちゃんと、ここぞという時に決められるような団体戦の練習ができたらなと思っています。
浅田 チームの強みは、やっぱり安心感があります。技術面でも、ミスしても誰かがカバーしてくれるって私も思えるので、強気で行けるっていうのもありますし、競技じゃなくても、例えば弓のこととか相談したら、すごい一緒に考えてくれたり。フォームもたくさん見てもらってるので、コミュニケーションとかが多くて、居心地が良いっていうのが強みかなって思います。課題は、前の日体大との練習試合の団体戦の時に、一番手が暁子で、いつも10点とか決めてくれるんですけど、その時にミスをしてしまって。次が多分私だったんですけど、そのミスから切り替えられずに、そのエンドがあまりうまくいかないってことがありました。前の人のミスを引きずらないようにするっていうのが課題かなと思います。
髙橋 強みはみんな性格的に明るいっていうのがあります。私で言うと、基本的にふざけてるので、試合でメンタル的に病んだりとか、ガクッと落ちることがないんですけど、それはきっとみんなそうです。緊張してあまりしゃべらなくなることがあっても、「どうしよう」みたいになる人が居ないから、やっぱりそこは本当に強みだなと思います。それは平射ちだけじゃなくて、団体戦になっても「大丈夫大丈夫、次頑張ろう」っていうふうに切り替えられるポイントでもあると思うので、そこは結構強み、良い部分なんじゃないかなって思います。課題は、髙橋が外すことですかね。団体戦のミスがあまりにも大きすぎるっていう。
渋谷 みんな(ミスが)でかいときはでかいです。
髙橋 やっぱりミスは自分的にほぼ無くしていかなきゃって思っているところでもあるんですけど、チームの課題か…。どうにかなりそうだから、あまり不安な部分はないです。なんだろう…プレッシャーがかかっているときに、いかに当てられるか。今の団体戦(の練習)、もちろん流れだったりをつかむためにやっているんですけど、勝たなきゃいけない場面、当てなきゃいけない場面でどうなるかっていうのが、本番になってみないとわからない部分でもあると思うので、そこはちょっと分かんないなって感じです。そこだけじゃないですかね。他は全然私はあまり心配に思ってることとか、ここが課題だなあっていうのはあんまりないです。
五関 チームの強みは、当てても外しても一定のテンションと雰囲気。当てたから「やったー」って感じでもないけど、別に外したから「やばいやばい」っていう雰囲気にもならないので、結構情緒が安定しているというか。チームの情緒が安定してるのが、相手チームにもプレッシャーじゃないけど、弱みは見せないかなってところが強みだと思います。チームの課題…。
髙橋 むずいよね。
五関 …ない。
髙橋 いいこと(笑)。
--昨年度の王座では準優勝と、優勝まであと一歩の成績でしたが、どうリベンジを果たしていきたいですか
渋谷 去年は本当にすごい点数に波があるチームで、技術的なところで満点ではなくて、本当に中る時に思いっきり当てて勝ち進めたみたいなところがありました。今年は練習を見てる感じでも点数が安定しているので、そのベースアップっていうところは勿論必要だと思います。私は参加できないんですけど、今週末の練習会でも、そういった緊張感ある中でも切り抜けられるような、決勝で勝ったことがない早稲田というのを塗り替えられるように最後の緊張のところで決められるチームにしていきたいなと思います。あと2週間もないですけど、頑張りたいと思います。
髙橋 私も去年決勝で負けて、一昨年は3位決定戦で負けて。最後の最後で負けた記憶が、きっとOBOGさん、現役を含めみんなの記憶に残っていると思います。それをいかに考えずに、どの試合も同じくらいの気持ちで「ここには絶対勝つ」と思えるか。去年も日体大と2回戦目とかで当たって、「まじか、ここで日体大と当たるか」って思ったんですけど、強いと言われている大学と、そうでない大学と当たった時の気持ちが全然違うので、そこをどの大学でも同じ気持ちで挑めるか。「ここには勝てるでしょ」じゃなくて、どこにでも圧倒的な勝ち方ができれば、最後の最後、「決勝だから」とか、「近大だから」とかっていう風にはならないんじゃないかなって思うので、やっぱり一番は負けを想像しないこと。去年やそれまでを思い出さないことが一番じゃないかなと思います。決勝で「やばい、去年ここでミスった」って思っちゃったり、その場になって思い出しちゃうことがあると思うんですけど、そこで思い出さずに、目の前に集中してちゃんと一本一本、丁寧に射てれば勝てると思います。

王座に向けて思いを語った髙橋
――最後に、王座を控えて個人的な心境と意気込みを教えてください
渋谷 私個人としては、もちろんインカレ(全日本学生個人選手権)とかで秋に試合はあるんですけど、自分自身の競技生活の中で、部活としての大きな団体の試合が本当に最後なので。もちろん早稲田として楽しむことは一つですし、やっぱり優勝して、最上級生としてかっこよく終わりたいなと思います。
浅田 とりあえずたくさん練習して、王座という大きい舞台を、最後終わって悔いがないように。あと残り2週間ないですけどできることをして、本番当日も少しでも早稲田に貢献できるように、自分で「ここは決める」っていうことを守って挑みたいと思います。
髙橋 去年一昨年であと一歩というところで逃してきたので、そこをちゃんと勝ち切るというのと、楽しむことはもちろんなんですけど、今年も王座に出られるということに感謝したいです。次は自分の代になるので、気持ち的にも部活の雰囲気的にもいいスタートを切れるように、そして64代を良い形で終われるように貢献したいな思いとます。
五関 私は1年目ということもあって、まずは気持ちを楽に王座の雰囲気とか感じ取って。次の年は先輩になるので、今年感じたことや学んだことを次の1年生に教えて、自分のためにも気持ちの余裕を見つけられたらなと思います。
(取材 飛田悠那、編集・写真 飛田悠那、神田夏希)

対談後の女子選手たち
◇渋谷樹里(しぶや・じゅり)
エリートアカデミー/東京・足立新田高出身。スポーツ科学部4年。最近は引退した後に行きたいところをSNSでリストアップすることにハマっているそうです。
◇髙橋梨杏(たかはし・りあん)
神奈川・横浜高出身。スポーツ科学部3年。最近の趣味は、グリークヨーグルトを一から作ってきなこをかけて食べることだそうです。
◇浅田陽香(あさだ・はるか)
東京・昭和高出身。スポーツ科学部2年。色んなアプリでアルバイト探しをすることにハマっているそうです。ビアードパパで働くことが夢だとか。
◇五関晄子(ごせき・あきこ)
エリートアカデミー/東京・足立新田高出身。スポーツ科学部1年。食べたいものを食べるをモットーに、色んなおいしいものを食べることが趣味だそうです。最近は自炊したものが一番おいしいとか。