【連載】野球部 春季早慶戦直前特集『臙脂の誇り』 第5回 尾瀬雄大

特集中面

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 早大不動のリードオフマンとして打線をけん引している尾瀬雄大(スポ4=東京・帝京)。今季は打率こそ低調ながら、開幕カードの東大1回戦ではいきなり三塁打を放ち、リーグ戦の幕開けを飾った。残り少なくなった早慶戦を前に、尾瀬が思うこととは。

※この取材は5月23日にオンラインで行われたものです。

置きティーで自分の形を作る

――リーグ戦中の忙しい中で、どのように息抜きをされますか
 とにかく甘い物を食べるという息抜き方法をしていて、この前はクリームがいっぱい乗っているパンケーキを食べに行きました。

――練習の中で調整方法などはありますか
 そんなに調整しようとかは、考えていないです。

――バッティング練習をされる中で、様々な方法があると思いますが、どのようなメニューをされるのですか
 置きティーが多いですね。

――置きティーは実践から遠いイメージがあるのですが、どういう意識でやられていますか
 自分の中で置きティーがバッティングの全てというくらい大事にしていて。置きティーは置いて打つわけじゃないですか。ピッチャーの球が来ても、結局は置きティーで置いているところに球が来るので。どんなに速い球が来ようと、どんなに曲がろうと。置きティーで置いてるところに自分が思ったようにバットが出せていれば、実戦でどんな球が来ても対応できるだろうという考えで、置きティーはすごく大事にしてます。

――実践で打つときも、来た球に自分でやっているスイングを合わせていくというイメージなんですね
 そうですね。自分の形がちゃんと置きティーで出来上がっていれば、それをただ試合でやるだけという感じです。

――ティー打ちなどをする中で、数で目標を決められているのですか
 数で決めることはあまり無いです。練習終わりにやって、また夜にやってみたいな感じでやっています。

――自分の納得がいくまでというところですか
 そうですね。

自分が打たないと早稲田の攻撃はうまくかない

――ここまでのリーグ戦振り返ります、まずはリーグ戦を全体的にチームとして振り返ってみていかがですか
 本来はこのチームはやはりピッチャーが良くて、それで守り勝とうみたいな。少ない点、チャンスをものにしてみたいなイメージでやってきたんですけど、その通りにはいってなくて。ピッチャーはちょっと崩れることもあったり、点取られることも多いです。でも、大差になっても逆転できたりとか、シーソゲームをものにできたりというところで、試合をやるごとにチーム力が上がってきているのかなと思います。

――ここまでの試合の中で、印象に残ってる試合はありますか
 やっぱり立教の3戦目の負けた試合なんですけど、樹(伊藤樹、スポ4=宮城・仙台育英)があれだけ打たれて、大差で負けてる中で、みんなでつないで粘って、1回は逆転までいって。そういう試合だったので、すごく印象に残ってます。

――尾瀬選手自身は4安打されたと思いますが、自分の役割的な思いなどはありましたか
 やっぱり去年からずっと樹に助けられてきて、試合以外でも樹に助けられてる部分はあるので、あいつがああやって打たれて、そのまま終わるわけにはいかないなというのは思いました。みんなでつないでつないでという思いで、逆転まで行けたのでよかったですね。

――尾瀬選手ご自身のバッティングの調子についてはいかがですか
 悪くはないというくらいですかね。

――数字的にはあまり振るわないように見えている部分もありますが、内容としてはいかがですか
 そうですね。六大学もやっぱりレベルが高くて、警戒もされるので、簡単には打てないというのは最初から分かっていました。その中で、自分の調子自体は悪いとは全く思わないです。もうちょっと打てれば良かったですけど。

――東大の1回戦で、チームの最初の打席で三塁打が出た時の気持ちはいかがでしたか
 そうですね、最初がちょっと昔すぎて、なんか色々ありすぎて、思い出せないですね(笑)。最初打った時は、なんかほっとした気持ちが大きかったような気がします。やっぱりずっと試合に出ていても、そのシーズンの最初のヒットが出るまでは、不安というか、まず1本出したいなという思いがあるので、最初に出て良かったなと思います。

――直近で言うと、明大戦は1回戦、2回戦とノーヒットでしたが、焦りなどはありましたか
 焦りは別にないんですけど、多分向こうも自分のことを研究してきた責められ方やシフトをされたというのがあったので、そういう日もあるだろうというくらいで、切り替えました。

――その後、3回戦で8回にヒットが出て今季一番のガッツポーズが出ましたが、ヒット出た時の気持ちはいかがでしたか
 やっぱり自分が打たないと早稲田の攻撃はうまくいかないので。2試合ノーヒットで、あの試合もそこまでノーヒットで、自分の中の焦りというより、チームに申し訳ないというか。自分が打たないとチームが回っていかないので、そういう部分で迷惑をかけているなとずっと思っていました。そこで追加点になるタイムリーが打てて、すごく嬉しかったので、あのガッツポーズが出たと思います。

――追い込まれての変化球を片手でうまくライトに持っていきました。ツーストライクになってからのゾーンの見方で、意識していることはありますか
 自分はいつもあまりツーストライクとかは意識していないです。とにかく来た球を打つ、ストライクに来た球を打つというのはずっと意識しています。あの打席で言うと、ピッチャーは大川(慈英、明大4年)は150㌔を超えるピッチャーで、打ったのはチェンジアップなんですけど。150㌔の真っすぐにも対応する中で、抜いてきた球に体がうまく反応できたというか、粘って打てたので良かったなと思います。

――結果的にチームの中では三振数一番少なく3つですが、結果的に三振が少なくなっているのですか
 コンタクト能力みたいなところが自分の一番の武器だと思うので、リーグ戦でもできているのかなと思います。

――一方で、ヒットの数が現役で最多ですが、何か目標や意識はありますか。
 まず100本っていうのが一番大きな節目だと思います。今シーズン達成するのは無理なんですけど、早慶戦でもうちょっと打って100本に近づけて終わりたいですね。

――今シーズン途中からは石郷岡大成選手(社4=東京・早実)と1、2番の打順を組んでいますが、思い入れなどはありますか
 明治だったり法政だったり他の大学でも1、2番コンビで注目されていることも多くて、記事が出たりしているんですけど、自分と石郷岡のコンビも負けてないと思います。

――石郷岡選手と夜練習をするルーティーンをお伺いしましたが、今季も継続してやられていますか。
 はい、やっています。

――試合前の整列でも、一番後ろが尾瀬選手、前に石郷岡選手と並んでいますが、そこももう決めているのですか
 そうですね、決まっていますね。

――いつも試合前にグータッチをされていますが
 あのグータッチは去年は僕と吉納さん(吉納翼、令7スポ卒=現楽天)でやっていたんですよ。自分が1個前で、吉納さんが1番後ろで。それを引き継いでやっているという感じです。

――リーグ戦前に体重を落として体のキレを出すというお話があったと思いますが、戦っていく中で体のキレに対する実感はありますか。
 やっぱり盗塁数がちょっと増えたっていうのもそうですし、キレが出たことによって、打球もちょっと飛ぶようになったかなっていうのを感じています。ライトオーバーもセンターオーバーもレフトオーバーも打ちましたし。 逆にいつもならライト前に落ちているのに、ライトライナーになったりとか。レフト前に落ちているのに、レフトフライになってしまったみたいな打席もあったりして。でも全体的に見て、打球が少し飛ぶようになっているのかなっていうのは思います。

――一方で、守備についてはここまでいかがですか
 この前は寺尾(拳聖、スポ3=長野・佐久長聖)と衝突したり、お見合いみたいになって間に落ちたりしたので。今はそこを練習しています。

1試合1試合を大事に

――最後に早慶戦に向けてのお話を伺います。まずは今シーズンの慶大の印象はいかがですか
 慶大は結構強いなっていう印象があって。まずピッチャーは先発2人とも良くて、外丸(東眞主将、慶大4年)と渡辺和大(慶大3年)と良いピッチングをしていたので、なかなか点が取れないだろうなというのがあります。打線もみんな1発もあるし、バットが振れている印象で、すごい怖いなというのはあります。

――対戦が楽しみで、自分が一番打ちたいと思うピッチャーの方はどなたですか。
 いや、2人ともですね。外丸と渡辺和大は2人とも面識があって。外丸はずっと仲が良いですし、渡辺も去年オールスターとかで一緒になって、で、ジャパン合宿(日本代表強化合宿)でも一緒になって。話すこともあるので、2人とも打ちたいです。

――野球部の皆さんは広池浩成選手(慶大4年)のSNSはご覧になりますか
 見ますよ。

――広池選手の印象はいかがですか
 広池はもうなんかえぐい球投げていそうなんですけど、でも最近はベンチに入ってなくて、ケガしたのかなみたいな。どうなるか分からないですけど。

――打席の中で、球速は見られますか
 球速は一応見るんですけど。やっぱり同じ145㌔とか150㌔でも、ピッチャーによって全然見え方や勢いの感じ方は全然違うものなので。球速というよりかは、打席に立って感じたことの方が大事ですかね。

――早慶戦は大勢の観客の方が入りますが、そこに対する特別な思いなどはありますか
 やっぱり元々早慶戦に憧れて、早稲田に入りたいと思って。それで早稲田に入ってきているので。もう自分も4年生になって、早慶戦に出れる機会も本当に少なくて、春と秋であと4試合で終わるわけなので。1試合1試合を大事に噛みしめていきたいなというのはあります。

――早慶戦に憧れたのは、どのタイミングだったのですか
 小学校の時に、1回見に行って、そこから早慶戦という存在をずっと知っていて。ここでやりたいというのはずっと思っていました。

――では、その早慶戦での個人としての目標をお願いします
 慶応戦では、とにかく自分の武器というか、ヒットを打って、フォアボールを取って。目標はとにかく塁に出ることです。

――チームとしての最終節の早慶戦に向けて意気込みをお願いします
 今週の明治と法政の試合も優勝争いのすごく大事な試合で、それがどうなるか分からないんですけど。僕たちは慶応に勝って、優勝して、やっぱり去年全日本選手権で最後に決勝で負けているので。今回また、東都は青学が優勝しそう(23日午後に青学大の優勝が決定)なので、最後にまた全日本に行って、青学を倒して日本一になりたいっていう思いまであります。早慶戦は2連勝して、優勝したいなと思います。

ーーありがとうございました!

(取材、編集 西本和宏、辻岡真波)

◆尾瀬雄大(おせ・ゆうだい)
2003(平15)年8月14日生まれ。172㌢、77㌔。東京都・帝京高出身。スポーツ科学部4年。ここまで現役最多の88安打を記録している尾瀬選手。六大学節目の100年目に100安打を狙います!