第二先発として東京六大学春季リーグ戦では初めての完投・完封勝利、防御率はリーグ2位と昨年からの成長を示している宮城誇南(スポ3=埼玉・浦和学院)。しかし本人は今季の投球内容を「納得のいくものではない」と語る。そんな宮城に今季の印象的な試合の振り返りと早慶戦に対する意気込みを伺った。
※この取材は5月24日にオンラインで行われたものです。
いろいろなことを経験させていただいているシーズン

――今シーズンの投球内容を全体的に振り返ってください
(立大2回戦で)完封することはできたものの、それ以外の投球を振り返るとあまり納得のいくものではなかったです。良くも悪くもいろいろなことを経験させていただいているシーズンだなと思っています。
――自己最高球速を147㌔に更新しました
147までは出たんですけど、どこかでもう1、2㌔出せたんじゃないかという思いがあるので、それについても満足はしてないです。
――今季、技術的な面でうまくいっていること、うまくいっていないことがあればそれぞれ伺いたいです
一球一球の精度は上がってきているなと思うんですけど、今季はそれを操り切れていないという思いが強いです。特にそれが四死球の数にも表れていると思います。真っすぐ、変化球ともにいいボールは増えてきていると思うんですけど、その再現性に課題があります。
――今季は打撃が好調だと思いますが打席ではどのようなことを考えていますか
基本的には真っすぐを張っているんですけど、カウントによっては配球を読みながら変化球を待つこともあります。(自分は)ピッチャーバッターで、裏をかくような配球は少ないので、素直に(配球を)考えて待っています。
飛躍への道半ば

――ここからは、立大戦と明大戦についてお話を伺います。立大2回戦では初完投を初完封で飾りました。ご自身でその要因をどのように分析しますか
その試合はどんどんストライクゾーンに投げ込むことができて、カウントを有利に進めることができたので、結果的に少ない球数で9回まで投げることができました。その日の調子はあまりよくなくて、それに早めに気づいたので、力まず、低めに丁寧に投げることに気持ちを切り替えることができたのも0で抑えることができた要因だと思っています。
――調子がよくないと感じたのはいつだったのでしょうか
試合前のブルペンの段階で真っすぐがあんまり走ってない感じがありました。それと法政戦で制球に苦しんだことが反省点として挙がっていたので、真っすぐ、変化球ともに丁寧に投げようと、試合が始まってからも心掛けることができたのが良かったと思います。
――試合中に完投や完封への意識はありましたか
試合前から、1回戦を落としてからの2戦目に先発するのは昨秋の早慶戦以来で、絶対に落とせないと思っていましたし、樹さん(伊藤樹、スポ4=宮城・仙台育英)に投げさせるわけにはいかないということを考えていました。それを踏まえて、あの日は普段より1イニングでも多く投げようという気持ちがありました。7回を過ぎて100球に届いていなかったので、自分でなんとか最後まで投げ切りたいと思いましたね。
――翌日の立大3回戦もベンチに入りました。連投に対して不安などはありましたか
どちらかというと連投耐性はあるほうだと思っているので(不安は)特になかったです。あの日は想定外のことが重なっての登板ではありましたけど、身体のコンディション的には問題なかったです。
――9回からの登板となりました。この日は普段と異なり気持ちが全面に出ていたと思います
今までずっと勝たせてもらった樹さんが初めてああいう形(伊藤樹は3回8失点)で降板になって、チームとしても何とかしてやろうという気持ちが出てた試合だったので、自分がそれを崩すわけにはいかないという気持ちで投げていました。
――1点を勝ち越して迎えた延長12回裏、無死一塁からサヨナラ本塁打を打たれてしまいました。この対戦を振り返っていただきたいです
瑞樹さん(吉田瑞樹副将、スポ4=埼玉・浦和学院)と自分的には、そのイニングに入る前から絶対に先頭を出したくないと話していたんですが、それを結果的に出してしまったところで、もう勝負はついてしまっていたのかなという反省があります。ホームランを打たれた打席よりもその前のバッターをしっかり抑えることができていれば、また違う結果だったのではないかと反省しました。
――サヨナラ本塁打を打たれた後に、マウンド上で立ち尽くしていたのが印象的です
申し訳なさすぎて、独りよがりに悲しんだりできなかったです。自分よりも樹さんのほうが苦しかったと思うので、自分が終わらせてしまったことにぼう然としていました。
――その次のカードの明大戦では1回戦に先発しました。1回戦での先発は昨春の東大戦以来となりましたが普段と心境は異なりましたか
(明大は)優勝を争っているチームだったので、絶対に1戦目を取って2回戦以降につなぎたいと思っていたんですけど、なかなか思うようにいかずといった感じでした。
――この試合は、1、2、3回で1点ずつ失い、4回以降は無失点でしたが、失点したイニングと無失点で抑えたイニングで何か意識は変わりましたか
多分、先頭打者を出してしまったイニングで失点してしまっているんですけど、序盤で失点してしまってある意味開き直れたというか、4回以降は開き直れて自分のテンポが戻ってきた感じがありました。
――続く2回戦では伊藤樹選手が早大史上2人目となるノーヒットノーランを達成しました。ベンチからどのように見ていましたか
本当にとんでもないなと思いながら見ていました(笑)。
――続く3回戦でも先発投手として登板しました。苦しい内容になったかと思っているのですがご自身ではどう振り返りますか
3戦目の投球は苦しかったというか、我慢すべきところで踏ん張り切れずっていうのが続いてしまった結果失点してしまいました。とにかくピッチングの内容が良くなかったです。
――3回には今季開幕前に対戦したいとお話があった高校時代の同級生である八谷晟歩選手(明大3年)が代打で出場しました。結果は適時打を浴びてしまいましたが振り返っていただけます
シンプルに八谷に打たれてしまったなという感じです。
――お互いのことは知り尽くしているなという印象なのでしょうか
そうですね。真っすぐを張ってくるバッターなんで、本来なら絶対に真っすぐから入らないんですよ。なんですけど前のバッターに7、8球連続で変化球を投げてしまっているのもあって、変化球から入りにくかったんです。そこを変化球でいけなかったっていうのは自分の弱さですね。あそこは(変化球から)行くべきだったなって後から思ってしまったので、(直球から入っていなければ)防げたタイムリーだったとも思いますし、バッテリーとしても反省しています。
早慶戦で勝ってこそ

――最後に早慶戦に向けての質問に移ります。現在のご自身の体調はいかがですか
万全です。
――早慶戦まで1週間を切りましたがチームの雰囲気はいかがですか
優勝自体は他力になってしまうんですけど、早慶戦は早慶戦なので、慶応に勝って勝ち点4で終えることを目標にやっています。
――主戦力となってからは3度目の早慶戦となります。早慶戦に対して何か特別な思いはありますか
まだ早慶戦では勝てていません。早慶戦で勝ってこそだと思っているので、今年の早慶戦はしっかりとしたピッチングをして、チームの勝利に貢献して、自分自身にも勝ちが付けば最高の形なのかなと思います。
――早慶戦に向けて調整していきたいところはありますか
明治戦は自分の中で納得がいく球も少なからずあって、自分自身状態が悪いとは思わなかった分余計に悔しかったので、早慶戦は調子がどうこうではなく、とにかく0で抑えるイニングを増やしていくことだけを考えて投げていけば、おのずと結果はついてくるのではないかなと思っています。
――最後に早慶戦への意気込みとファンの方へメッセージをお願いします
早慶戦では与えられたイニングを0で抑えて後ろのピッチャーにつなげて、2連勝で、いい形で勝ち切れるようなピッチングをしたいと思います。たとえ優勝がなくなっていても早慶戦で勝つことに意味があると思うので、そこを勝ち切れるように残り1週間チーム全体として準備していきます。
ーーありがとうございました!
(取材、編集 石渡太智)
◆宮城誇南(みやぎ・こなん)
2004(平16)年9月5日生まれ。175㌢、80㌔。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部3年。立大2回戦後のヒーローインタビュー時、英語でコメントを求められた宮城投手は「ハッピーです」と答え、笑いを誘いました。早慶戦ではチームに勝利を呼び込みます!