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第1回に登場するのは、チームを率いる高岡勝ゼネラルマネージャー(平4人卒=静岡聖光学院)。就任9年目を迎え新たな体制で迎える今季、目指すチーム像や、悲願の日本一に向けた熱い思いについて伺った。
※この対談は、4月18日に行われたものです。
――昨年のチームを振り返っていかがですか
だいぶ昔の話になって忘れかけているところもありますが(笑)、昨年のチームはキャプテン選出からすでに話し合いを重ね、どういうチームにしたいかを徹底的に議論していました。最上級生の団結力が非常に強く、チームの活動目的をしっかり考えてくれました。また、今年の主将を務めるLB功能誠也(教4=東京・西)が3年生ながら副将という立場から、1年生から3年生までがどう関わっていくかということも考えてくれました。戦績としては(全日本大学アメリカンフットボール選手権)ベスト4でしたが、試合の最後の1秒まで全員が自分の持てる力を出し、アスリートとしての姿勢をしっかり見せてくれた1年でした。
――ご自身の中でうまくいった点や反省点はありましたか
8年目を迎え、以前から「強いチームには10年かかる」と聞いていた通り、積み重ねの重要性を感じました。もちろん年によってチームのカラーは異なりますが、毎年少しずつチームの歴史として「自分ができることを考える姿勢」が浸透してきているのがうれしい点です。一方、フットボールのスキル面や、競技に臨む意欲の面では、自分がもう少し選手たちに気づきを与えられたらと思っています。
――昨年は副将が4人体制になるなど、組織面でも変化がありました。どう振り返っていますか
基本的には部員たちに「自分たちのチーフをどういった組織運営をすべきか」というお題を毎年出しています。昨年良かったことは、副将それぞれに明確な役割を与えたことで、誰が何を担っているかが部員全体に伝わる体制になったところです。今年もその方針は同じように継続しています。
「もう少し厳しさがあってもいい」
就任9年目を迎える高岡GM
――今年の主将である功能選手にはどのような印象を持っていますか
昨年から副将を務めていたこともあり、リーダーシップは十分に備えています。皆から一目置かれる存在である反面、周囲から期待されすぎるところもあるかもしれません。ただ、自分がやるべきことを前面に出して引っ張るタイプで、頼れるキャプテンです。
――今年の副将たちにはどのような役割を期待していますか
私から与えるというよりも、それぞれが自分でやると表明してくれているかたちです。RB安藤慶太郎(社4=東京・早大学院)はプレイヤーとしても抜きん出た存在ですが、「誰にでもできることを、どれだけ高いスタンダードでやるか」を重視しています。これはプレーだけでなく、生活態度や学業にも通じるもので、彼自身が率先してその姿勢を見せています。それをいかに周囲に波及させるかが今後のポイントです。LB原康介(法4=東京・早大学院)は、フットボールに関してプレイヤーだけでなく、スタッフを含めたチーム全体の動きを見て仕切っていく存在です。彼と安藤の役割がやや重なる部分もあるので、そこは私の方でも声がけの仕方を工夫しています。OL柳島将歩(政経4=東京・早大学院)は論理的思考に優れており、改善活動のリーダーとして限られた時間やリソースをどう効率よく使ってチームを動かすかに取り組んでいます。ミーティングの進め方や、報告・連絡・相談の方法、ツールの使い方にもアイデアを出してくれています。最後にDL伊藤寛太郎(商4=東京・成蹊)は、基本的なテクニックの伝達を重視しています。正しいやり方を下級生にもきちんと伝え、「人に干渉する=相互理解を深める」という観点で、チームとしての一体感を形成する役割を担ってくれています。
――新チームの雰囲気はいかがですか
これまでは前年のチームを否定するような傾向がありがちだったのですが、今年は「良かった部分はそのまま引き継いでいこう」という姿勢が見られます。非常に和やかな雰囲気の中で練習が進んでいますね。ただ、私個人としては勝負の世界である以上、もう少し厳しさがあってもいいのではと感じています。特に今は早慶戦から本格的なシーズンのスタートになるため、選手自身が「自分がその試合にどう臨むか」を強く意識する必要があります。
――今年の4年生についてどう見ていますか
今年の4年生は入部当初から個性が非常に強い代でした。正直「誰がリーダーになるのか」「後輩たちはついてきてくれるのか」と不安に思うこともありました。しかし、3年生の途中から「このままではいけない」と危機感を持ち始め、学年間のコミュニケーションやミーティングにも多くの時間を費やすようになりました。その結果、最終学年として大きく変化を遂げた印象があります。1年生の頃と比べても、成長は非常に大きいですね。
――今年のチームカラー、昨年のチームにはなかった強みなどがあれば教えてください
昨年のチームは、3年生の頃から試合に出ていた選手が4年生になっていたため、2年かけてチームを作り上げてきた印象がありました。それに対して今年は、昨年のレギュラーメンバーが非常に少なく、新2年生や新3年生が輝き始めています。試合に出られなかった選手たちが良いプレーを見せ始め、全員が「自分にチャンスがある」と感じながらチャレンジしています。そういう意味で非常に野心的な立ち上がりとなっています。
――功能主将は「チーム全体の経験値が少ない」点を課題として挙げていました。その点についてはどう考えていますか
今年からヘッドコーチに就任した荒木延祥ヘッドコーチ(平10スポ卒=大阪・高槻)は、昨年までアドバイザーとしてチームに関わっていました。彼はXリーグで長年トップの経験を積んでおり、ファンダメンタルの重要性を非常に重視しています。これまでも基礎は大切にしてきましたが、今年は特に経験不足を補うことを意識して取り組んでいます。学生たちもその方針にしっかりと同調してくれており、春のシーズンでは自分たちがやっていることをどれだけ信じられるかが問われていると思います。身体的な強化も進んでいるので、今取り組んでいる基礎の強化がどれだけ試合につながるかを見極める時期です。
――監督として今年はどのようなテーマを持っていますか
今年は現場のことを荒木さんにある程度任せて、私は部全体の強化、システムの構築といったところを見ています。部員全員で「チームとしてどう取り組んでいくのか」というテーマのもと年に4回研修を行っており、これはもう6年目になります。やはり「自分を知って他人を知る」という信頼関係の大切さを昨年あらためて実感しました。今年もその姿勢を継続して、学生たちと共に取り組んでいきます。
――他の体育会よりも大所帯の部ですが、学生と接する上で意識していることはありますか
選手たちの表情を常に見ることを大切にしています。正直、フィールドで活躍しているメンバーは自発的に頑張るものです。でも、それ以外の選手たちがどうモチベーションを維持するのか。そこに声をかけていくこと、自分が今何ができるかを考えてもらうことが、私にとっても、チームにとっても非常に大切なことだと思っています。
「学生アメリカンフットボールの頂点に今年こそ」
質問に応える高岡GM
――これから3試合控えていますが、試合展開や注目ポイントはありますか
今年は定期戦が2つあり、さらに立命大との交流戦も約2年ぶりに予定されています。いずれも15分クォーターで行われ、全日本大学選手権の準決勝以上を想定した試合展開を見据えています。チーム力が問われる試合が続くので、選手層の厚さをどれだけ確保できるかというのが大きなテーマです。いずれも非常に強い相手との対戦になるため、我々にとっても非常に楽しみな試合になります。
――4月末には早慶戦も控えていますが、意気込みを教えてください
これは毎年のことですが、絶対に負けられない一戦です。昔、小学生のチームを見ていた頃から「慶應にだけは負けるな」と言ってきました。チーム全員がその気持ちを持って臨む必要がありますし、「紺色の服は絶対に着るな」というくらいの強い意識で、試合に臨んでいきたいと思っています。
――早慶戦後には関西との2戦が始まりますが、その中で特に意識している対戦相手はいますか
やはり関西大や立命大など、昨年の大学日本選手権で戦った相手です。もし秋のリーグ戦を勝ち進んでいけば再び戦う可能性のある相手なので、探るというよりも全力でぶつかり、その中で我々に足りないもの、相手に優れているものをしっかりと見極めていきたいと思っています。そうしたプロセスを通じて、自分たちをどれだけ高められるかが重要です。
――今年キーマンになる選手は誰だと考えていますか
昨年までは安藤がディフェンスのキーマンとして活躍していました。今年も彼が引き続きキーマンとなるとは思いますが、再構築のシーズンでもあるので、実際にはすべてのポジションで新たなキープレイヤーが現れてくることを期待しています。特にソフトボールの切り返しやキッキングゲームなど、試合の流れを左右するプレーが重要になります。昨年を振り返っても、キッキングでの成功や失敗が勝敗に直結していたので、そこで光る選手が春の段階からどれだけ出てくるかが鍵になると思っています。
――春の3戦を通して、秋のリーグ戦に向けて選手たちに期待するプレー、またどんな姿勢を見たいと思っていますか
今年は経験値の少ないメンバーが多いので失敗を恐れず、でもやるべきことはしっかり理解した上で、一歩を踏み出すようなプレーを期待しています。
――最後に今シーズン全体への意気込みをお願いします
もう一度甲子園に行って、学生アメリカンフットボールの頂点に今年こそ立ちたいと思っています。
ーーありがとうございました!
(取材、編集 大村谷芳、植村皓大)
◆高岡勝(たかおか・まさる)
静岡聖光学院出身。1992(平4)年人間科学部卒。選手たちとのコミュニケーションを大事にしている高岡ゼネラルマネージャー。その秘訣は「ダルがらみする」ことだそうです!就任9年目の今季もチームをけん引する姿に注目です!