【連載】早慶レガッタ直前特集「To Win」第6回 岡山凜之副将×亀田純一郎×川上拓海

特集中面

 第6回は、岡山凜之副将(スポ4=愛媛・松山東)、亀田純一郎(スポ4=東京・小松川)、川上拓海(スポ3=愛媛・今治北)の3名。漕歴の長い3選手の、ボートにかける思いや早慶戦に対する心境を伺った。

※この取材は3月12日に行われたものです。

「(岡山は)ボートに真摯かつクレイジーに取り組んでいる」(亀田)

対談中笑顔を見せる3人

――自己紹介をお願いします

岡山 早稲田大学漕艇部4年の岡山凜之と申します。出身校は愛媛県立松山東高等学校で、高校の時からボート競技をしています。

亀田 早稲田大学スポーツ科学部4年亀田純一郎です。ボート競技自体は中学2年生の時に始めて、現在で9年目になります。趣味はマリオカートです。よろしくお願いします。

川上 早稲田大学スポーツ科学部3年の川上拓海と申します。出身校は愛媛県立今治北高等学校です。趣味はパン屋を巡ることです。よろしくお願いします。

――岡山選手の趣味は何ですか

岡山 僕は釣りなど、アウトドアなことが好きです。

――ボート競技を始めたきっかけを教えてください

岡山 僕からお伝えしますね。仲が良かった中学校の先輩が松山高校に行かれていて、2つ上の方なのですが、その先輩がボート部でコックスという舵取りをやっていて。楽しいよと教えてくれました。高校から競技を始める人がほとんどでスタートラインはみんな一緒なので、勝てるよと言われたのが一番大きくて。体験に行って先輩たちの船に乗せてもらって、すごく面白いなと感じました。ありきたりな言葉かもしれませんが、水の上を颯爽と駆け抜けるのってすごくいいな、と思って競技を始めました。

亀田 私は中学2年生の頃、東京都のタレント発掘事業というものに合格しまして。そこでレスリングだったり自転車だったり、いろんな競技を体験した中で、ボートが一番面白かったのでボート競技を始めました。この話をするといつも、両サイドの2人から、競技歴と競技成績があまり相関していないことを馬鹿にされます(笑)。沢目君(沢目真直、スポ4=東京・江北)と同じ方法で始めました。

川上 今治北高校にボート部があって、1年生の時の副担任の先生がボート部の顧問の先生でした。言い方が良くないかもしれませんが、目をつけられて(笑)。「お前こっち来い」と言われて半ば強制的に体験会に連れていかれて、気づいたらボート部に入っていました。で、気づいたら早稲田大学漕艇部まで来ちゃった、という感じです。

――お互いの印象をお伺いしたいです。まずは亀田選手と川上選手から見た、岡山選手の印象をお願いします

亀田 僕から見た岡山選手の印象は、そうですね。まず見た目がでかいということと、内面的な話で言うと、ボートにすごく真摯に向き合っていて、かつクレイジーに取り組んでいるというところが岡山選手の一番の魅力かなと。度を超えた練習量をやるのが特徴だと思っています。

川上 そうですね。同じ愛媛県出身ということもあってよくご飯に連れて行ってもらうのですが、その時もずっとボートの話をしていて、ボートのことしか考えていないのかなっていう。それが一番大きな印象です。

――次に、岡山選手と川上選手から見た、亀田選手の印象をお願いします

岡山 結構真面目な方で、コツコツやってます。就活とかも含めて、計画的なんです。僕は度を超えてやりすぎて怪我をしてしまうことがたまにあるのですが、そういうことが(亀田選手には)あまりなくて。自分のことをよく理解してるからかなと思うのですが、何事も計画的にやっている印象があります。

川上 亀田さんとは寮の部屋が一緒なので、普段からよく話す先輩です。多分周りには真面目に見えていると思うのですが、真面目ではあるけれども部屋の中では結構だらしないというか。「何か作業をしよう」と言ってから動き出すまでに何分もかかっています。

亀田 確かに(笑)。

――岡山選手と亀田選手から見た、川上選手の印象はいかがですか

岡山 川上選手とは1個違いではあるのですが高校の時からよく関わっていて、5年来の知り合いです。彼はオンとオフの切り替えがはっきりしています。ボートをやる時はもうとことんやって、練習が終わったらいい意味で「もう知らない」という感じです。オフの切り替えが上手いので、そこは彼の印象というか、僕が真似したいなと思っているところです。

亀田 僕から見た川上選手の印象は、いい意味でサボるのが上手い、というものです。上手く漕げているからこそ、船とつながって上手に体力を使っているというか。簡単に言うと技術的なところが上手いなと思っています。生活面では、几帳面です。結構美容男子なので、化粧品を使ってこまめにケアをしているってところも印象的な一面かなというふうに思っています。

「今年は強い早稲田を証明したい」(岡山)

色紙に書いた「To Win」の文字を見せる岡山(写真左)

――昨シーズンの1年間は、皆さんにとってどのようなシーズンでしたか

岡山 昨シーズンは早慶戦(早慶レガッタ)から始まりました。早慶戦ではギリギリ勝てたのですが、全日本選手権では思ったような結果がエイトで出せなくて。インカレでは惜しくも優勝には届かなかったのですが、それも間違いなく今年につながってきていると思うので、今年はシーズン序盤の早慶戦からかっ飛ばして、強い早稲田を証明したいなと思っています。

亀田 私は昨シーズンは結構ステップアップをしていった年だと思っています。早慶戦の時自分はセカンドだったので、その敗北から始まったのですが、そこから着実にベストを更新していって、上げていったという印象です。高校以来の自己ベストも出すことができましたし、個人としての成長が大きかった一年だったかなというふうに思っています。

川上 僕自身の去年のシーズンの振り返りとしては、やはり勝ち切れなかったという気持ちが強くて。早慶戦に勝って良いスタートダッシュが切れたのですが、全日本選手権では惨敗で、インカレでは2位でした。インカレが終わった後に、シーズンの最終レースとして全日本新人という1、2年生だけのレースもあったのですが、1人乗りのシングルスカルで出場して、そこで最後に勝ち切れませんでした。個人的にも、シーズンを締めくくるという面においても悔しい結果に終わったシーズンです。今シーズンはやはり、全てのレースで勝ち切るという意思と強いメンタルを持って、モチベーションを高めていけたらいいのかなという思いです。

――その中で特に、前回の早慶戦を振り返っていかがですか

岡山 僕自身、昨年が初めての早慶戦でした。ストロークという一番前のポジションです。ざっくりストロークの役割を説明しますと、艇のリズムを作るといったような役割になるのですが、なかなか8人でリズムを共有することが難しくて。かつ、神田川はかなり荒れることでも有名ですので、やはりそのタフなコンディションの中でのチームマネジメントと言いますか、そういったところが非常に難しかったところが印象に残っています。直前までなかなか上手くいかなかったのですが、なんとかギリギリで勝ち切りました。観ている側としては面白いレースかなとは思うんですけれども、やっている側からすればかなりギリギリのレースでしたので、今年は圧倒的なレースで強い早稲田を証明したいと思います。

亀田 昨年の早慶戦はポイントと呼ばれる両国橋を過ぎた後で、慶應に上手いように行かれてしまったところが敗因だと思っていて。そこで攻めるという意思は全員で統一していたのですが、速度がありませんでした。意識統一の面が去年の反省だったかなというふうに思います。

川上 僕も岡山さんと一緒で、昨年初めて対校エイトに乗りました。隅田川という、普段のコースとは違うコンディションの中で戦うという不安さと、慣れないところでのレースというところもあって、最後までズルズル行ってしまいました。後々振り返っても、もっと中盤で慶應との差を広げれたタイミングが絶対にあったので、そこで勝負を決めてやるという強い意思が足りなかったのかなという感じはしています。今年の冬練は去年よりも確実に距離が増えていて、漕ぐパワーは去年よりも絶対にあると思っています。そこが今年の早稲田の強みだと思っているので、そこをふんだんに生かして、今年は圧倒したレースを展開したいです。

――インカレなど他の大会とは違う、早慶戦ならではのポイントなどはありますか

岡山 普段僕たちは大体2000メートルのレースをやるのですが、早慶戦は3750メートルで約2倍の距離です。しかも隅田川はほとんど海なので荒れますし、そこのコンディションも違います。それによってレースの組み立て方が違うのかなと。かなり注目されている大会ということでオーディエンスも多いですし、漕艇部としてもかなり熱が入っています。もちろんインカレや全日本も熱を持ってはいるのですが、それと同じくらいのレベルで。マネージャーさんも今すごく準備してくれています。早慶戦まであと1カ月ですが、あと少しで始まるなと感じています。

亀田 やはり1対1のタイマンというところが一番違うと思っています。勝つか負けるかの一発勝負なので、ピリつく緊張感のある大会です。岡山君も言っていたのですが、部としては完全優勝を目指していて、セカンドの人たちの力も、マネージャーの人たちの力も、全員の力が必要なので、そこの総力戦というところが一番違うかなというふうに思います。

「一番速いスピードで駆け抜けていくところを見て楽しんでいただけたら」(川上)

2連覇を誓う川上(写真右)

――現段階でのクルーの仕上がりと、これから詰めたい部分などがあれば教えてください

岡山 8割くらいは仕上がっているんじゃないかと思っています。僕は結構今のクルーに対してポジティブな印象を持っていて。なぜかと言うと僕たちが部としての最高学年になってから約半年が経ったんですけども、大幅に練習に対する取り組み方を変えました。何を変えたかと言うと先ほど川上の方からあったんですけど距離が1週間に男子だったら150キロ、一日で言うと20キロ以上漕いでいる計算なんですけど。間違いなくどこの大学よりも今漕いでいるなと自負してますし、それによって有酸素系の能力が向上したと感じています。その結果として、まだエイトを組んで間もないし、諸事情があって数回しか乗り合わせていないんですけども、その中でレースに近い練習をした際に後半になっても大きく垂れない、ペースが落ちないということがこのクルーの最大の魅力かなと思っていて。確実に冬場やってきたことが今に生かされているなと感じています。体力面はもう申し分ないんですけど、まだテクニック面でユニフォーマティを揃えられる部分があるので、そこをあと1ヶ月で詰めていければ確実に圧勝できるんじゃないかと考えています。

亀田 自分としては75点くらいかなと思っていて。技術云々は岡山君が言ってくれたので、自分はほぼ同義なんですけど、体力面に関してはだいぶ仕上がってきていて、あとは細かい技術面をこれからどんどん詰めていく。自分の個人の課題としてもたくさんあるので、そこをどんどん詰められれば、100点とは言わないまでも90後半の完成度にはなるんじゃないかなと思っています。

川上 3番目なので何も言うことがないんですけど(笑)。個人的感覚としては6、7割ぐらいかなと。まだまだ突き詰められるところもたくさんありますし、フィジカルもまだ伸ばせると思っているので。早慶戦まであと1ヶ月もないんですけれども、少しでも伸ばしていければいいかなと思います。

――小山主将はどんな主将ですか

川上 馬鹿真面目っていう感じです。大学から始めて主将という地位に立っておられますし、小山さんが2年生になった時に入学しているのでそのタイミングからの成長しか見たことがないんですけど、入部してからでもすごく成長しているなというのは後輩ながら思っています。僕も小山さんを見習ってもっともっと成長していけるなと思いますし、いいムードを作ってくれる主将だと思っています。

亀田 自分は結構威厳のある主将だと思っていて。練習面でも皆を引っ張っていってますし、今日もあったんですけどセカンドは声をかける役で、どんどん声をかけて引っ張っていく姿はすごく自分の中で印象的で。水上でもそうですし、普段の陸上の練習でもどんどん自分から練習量を増やしていくように心がけているところがリーダーとしていいなと思っています。

岡山 彼はいい意味で後先考えないです。僕は結構考えてしまうんですけど、彼は今やることを全力でという感じなので、練習においても初めからしっかり飛ばしていこうという感覚ですし、それが彼のいいところなのかなと思っています。練習においても、僕は3時間くらい漕いだり結構頭がバグっているようなメニューをやったりするんですけど、誘ったら彼は大体やってくれるので、僕と同じくらい彼も頭がバグっています。彼は大学から始めた初心者なんですけど、どんどんフィジカル面も向上してますし、最近結構僕に張り合ってくるので、面白いなと。2人で楽しく、お互い良い意味で煽り合って向上し合えているのがすごく良い関係だなと思っています。

――副将としてどのように支えていますか

岡山 僕は支えているというよりは、シンプルに勝ちたいという思いでやっています。そのために何が必要か考えた時に、一番初めに思いついたのがやっぱり練習量を見直すというところと、生活面における改善というところで。練習面においては1週間に漕ぐ距離をしっかり決めて、生活面においては基本的なところなんですけど挨拶をきちんとするとか、靴を揃えるとか、しっかり寝るとか。当たり前なんですけどそういったところも主将と一緒に考えてやってきました。それが今少しずつスコアに出ていて。弊部はよく測定をやるんですけど、男子は特にほぼ全員と言っても過言でないくらい毎回ベストを出しているので、それは本当に素晴らしいなと思っています。皆追いつけ追い越せの勢いでやってくれているので、こちら側としてもすごくやり甲斐ありますし、そんなに副将という感覚はなくて、一部員として楽しくやっているなという感じです。

――ご自身の強みは

川上 僕の強みとしては、うまくサボることだと思います。頑張ってそうに見えるんじゃなくて、頑張ってなさそうに見えているのに船が進んでいることが強みだと思っていて。頑張ってそうに見えて艇が進んでいる人はあまりすごく見えないんですよ。でも、頑張ってなさそうに漕いでいるのに進んでいる人は、技術的にも上手い人だと思っているので、僕の強みはそこです。あと、ウェイトのディップスが一番できます。

亀田 技術的に何か秀でているわけではないので、強いて言うなら瞬発力ですかね。長い距離で出さないといけないことは分かっているんですけど、オールへの反応であったり、そういうところは自分の強みかなと思っています。

岡山 僕はフィジカルかなと思っています。ローイングの動作をスケジュールできるマシンがあるんですけど、一応それの学生記録を樹立できたので、フィジカル的にそこが強いのかなと思うんですけど。うまくフィジカルを正常につなげるというのが今の課題なので、そこは精進したいと思っています。あとは体幹が結構強いです。プランクは最近50キロでセット組んでやっているので、人間を乗せてプランクできます(笑)

――レースの注目ポイントは

川上 3750メートルという長い距離の中で、皆が見る場所ってやっぱり最後の桜橋の前だと思っているので、そこのスパートの動きです。絶対今の早稲田のクルーだったら最後スパートで動くので、その躍動感を。最後一番速いスピードで駆け抜けていくところを見て楽しんでいただけたらなと思います。

亀田 最後も勿論見やすいし見てほしいですが、スタートの両国橋のカーブのところがやっぱり一番勝負の肝になるところなので、両国橋までの先手先手を打っていく勢いを見て欲しいです。

岡山 距離が長いのできついのですが、一本一本はどうしても出力が下がるので、ゆとりのあるレースはできると思っていて。去年も一番前で、ニコニコ笑えるくらい楽しんでレースができていたので、それぐらいの余裕を持ってレースを楽しみたいです。隅田川で漕げるのは今年で最後だし、我々しかいないので。ニコニコって言ったら変ですけど、レースを楽しんでいるんだなというところを見ていただけたら。それぐらいの良い余裕を持って変に緊張せずにレースに臨めたらいいのかなという感じですね。楽しんでレースをしているところを見ていただけたらと思います。

――最後に、早慶戦レガッタに向けて意気込みをお願いします

川上 昨年も勝ったので、2連覇します!

亀田 自分はこれで3年間出ることになるんですけど、うち2回負けていてずっと負け続きなので、最後1年くらいは勝って終わりたいなと思っています。絶対に勝ちます。

岡山 今年の弊部のスローガンが「To Win」で、勝つためにという。僕は昨年勝って今年最後なので、勝ち逃げします!

――ありがとうございました!

(取材・編集 長屋咲希、髙杉菜々子、田島凜星、石渡太智)

◆岡山凜之(おかやま・りんし)(※写真中央)

スポーツ科学部4年。愛媛・松山東高出身。

◆亀田純一郎(かめだ・じゅんいちろう)(※写真右)

スポーツ科学部4年。東京・小松川高出身。

◆川上拓海(かわかみ・たくみ)

スポーツ科学部3年。愛媛・今治北高出身。