【連載】早慶レガッタ直前特集「To Win」第1回 阿二真樹監督×杉嶋俊幸コーチ

特集中面

 第1回は早大漕艇部を指導する阿二真樹監督と杉嶋俊幸コーチ。昨シーズンの振り返りと、選手に対する指導法、さらにきたる早慶レガッタへの思いを伺った。

※この取材は3月2日に行われたものです。

「細かいことにこだわることが出来るようになってきた」(阿二監督)

質問に答える阿二監督

――自己紹介をお願いします

阿二 監督の阿二と申します。2023年の3月1日付で監督に就任いたしました。私は平成4年卒で、大学時代は漕手でした。社会人になってから、他大学を出た人と、自分たちの趣味として艇を買って漕いでいました。その時の経験が結構大事だと思っています。ボートっていうのは環境スポーツです。お金があって艇を買うことができても置き場がなかったり、自分たちで試合会場まで艇を運ぶ手配が必要だったり、試合に出るのにエントリーをしなきゃいけなかったりとか、とても大変です。そこでいかに早稲田大学の選手の置かれている立場が恵まれていたのかを実感しました。そのあとに大学や高校などで何年もコーチをやりました。そして丁度引退しようと思ったタイミングで、前任の木目田監督が急遽海外転勤になって、私が後を継ぐという形になりました。でも、本当にこれが最後のご奉公と思っています。年を重ねて広い目線でのバランス感等の良い部分も沢山ありますが、勝利に向かって貪欲に突き進むようなチャレンジ精神が足りなくなってきたなと分で感じる時があって、もうそろそろ監督を引退してもいい時期かなと思っております。

杉嶋 杉嶋です。私は早稲田のOBではなく日本大学を卒業しています。日大を卒業した後、東レ株式会社に入社してそちらのボート部で社会人選手として活動しておりました。2020年5月に現役を引退してそこからは社業に専念しました。そこでボートから一旦離れたんですけど、2022年10月に千葉県に転勤になりまして、その際当時の早稲田大学漕艇部の監督の木目田(健二氏、平22法卒=東京・早大学院)さんから「早稲田でコーチをしてみないか」という声をかけていただいてそこからチームに関わるようになりました。競技歴としては、中学から初めて17年間ボートを漕いでいました。高校3年生の時には19歳以下の日本代表、大学2年生の時に、23歳以下の日本代表を経験し、東レ入社後も日本代表をやって、いろいろな世界を見てきたので、それを今このチームに還元しています。

――昨シーズンを振り返っていかかですか

阿二 おととしの早慶戦は監督を引き継いですぐに試合がありました。その年の早慶戦に対してはすごく強い思い入れを持てて挑んだわけではなかったのが正直なところです。結果は負けてしまい、多くのOB・OGや大学関係者に残念な思いをさせました。なので、昨年は絶対に勝ちたかった。早慶戦に負けると一歩つまずくという感覚があって、そのあとに続く全日本(全日本ローイング選手権大会)やインカレ(全日本大学ローイング選手権大会)に引きずってしまうことが分かっていたので、絶対に勝ちたいと思っていました。ただ、正直に言うと(昨年の早慶戦は)すごくいい状態で臨めている感覚はなかったのですが、勝ててほっとしました。そのあと全日本で思うような成績が出せずつまずいてしまったのですが、そこから9月のインカレに向けてきっちり切り替えができたのが良かったです。特に男子のエイト種目の選手が、「ここで終わるわけにはいかない」っていう感じで火がついて、練習に対する態度もすごく変わりました。僕はどのクルーが一番早く集合して準備しているかって結構大事だと思っています。一番早く集合するっていうことは、気持ちの準備が一番できているってことだと思っているということです。去年のインカレに関しては、エイトクルーの全員が練習5分前には集合して、いつでも出る準備が整っていました。これが、他のクルーに対してもいい刺激になって、全体としてすごくいい状態でインカレに臨めました。エイトはインカレの1、2週間前まではこれはいけるんじゃないかと思っていましたが、最終的にはやはりなかなか壁は厚くて、優勝できませんでした。ただ、今までは、いまひとつよくわからない状態、絵にかいた餅のような状態で、「目標はエイト優勝」って話していましたが、昨年を経ることで本当に目指すものがどこにあるのかと言うことをはっきり理解できました。インカレについては今年に向けてすごくいい形で終われたなと思っています。

杉嶋 昨年はトータルしてよかったシーズンだったと思います。着任して3年経ちますが、当初は勝てないチームだなというのが第一印象でした。そこで選手みんなに「結局何したいの?」って問うことからスタートして、トレーニングメニューもガラッと変えて、それを一年間しっかりやって去年のシーズンを迎えました。男子のエイトは早慶レガッタで勝ってそれで勢いが付きました。私がちょっと多めのトレーニングメニューを作って、選手たちとコミュニケーションをとりながら調整しながらやっていましたが、徐々に慣れてきてそのままできるようになって、インカレは準優勝まで来たと。選手たちとしては、納得はしているけどやっぱり勝ちたかった、という話でした。実は優勝した日大のエイトと2,3週間前に一緒に練習してるんですよ。1000メートル、並べてどっちが勝つかなってところで勝ってるんですよ。そこで本当にいけるぞってなったときに、日大の優秀な選手が世界選手権から帰ってきて、彼がエイトに乗った途端スピードが変わりました。日大の監督さんはその選手を乗せる予定はなかったんですよね。ただやっぱり早稲田に練習で負けてこれは急遽乗せなきゃいけないという形を作ったのが、よくもあり、悪くもあったところでしたね。

――この1年間どのような指導を行ってきましたか

阿二 強化というかですね、私は就任してから「きれいにしよう」と伝えてきました。今の艇庫はとてもきれいだと思います。過去からきれいにしようとは標語のように言われてきましたが、ここまできれいだったことはないと思います。多分、普通の大学生が集団生活をしていたらどんどん汚くなってしまう。私が就任したときにその代にもきれいにしようと伝えたのですが、ほとんどきれいにならなかった。その次の代に、学生に任せるだけでは難しいと感じて、私ともう一人のスタッフで、掃除というかですね、要らないものを捨てることを始めました。これをやってみたら初めて分かったのですが、要は学生にとっては、古くから保存されている物の中で、何が必要で何がいらないのか判断が付けられていなかったのです。そこで監督の責任でこれはもういらないから捨ててもいいと言って、積極的に物を捨てました。誰も使っていない、見てもいない、あってもしょうがないようなものがいっぱいあったので、それを全部捨てて、きれいにするということを1年かけてやりました。残念ながら昨年は学生の意識改革まで出来ておらず、気づいたらまたゴミが散らかっていたり、ものが放置されていたりして、このイタチごっこでした。ただ、今年の代に変わってからは、学生が自分たちで自主的に掃除をして整理整頓をするようになってきました。これはすごくいい状態だなと。どういうことかというと、自分たちの環境に対し、細かいことにこだわることが出来るようになってきたということなのだと思います。こういう細かいことを何も感じない意識ってもう絶対に駄目で、そういう人たちは細かいことにこだわって練習できるはずがないんです。教育的な意味もありますが、むしろ散らかっていることに私が我慢できない(笑)。ずっとこの中にいると麻痺してしまうのですが、我々が外から入ってきたときに、これは何とかしてほしいというのがいっぱいあったのですが、今は何か探してももう片付けるものが見つからないんです。それは学生が自分たちで意識的にいろいろなことをやっているからで、とても良い状態です。それが力を入れてやったことかなと思います。

杉嶋 私も土曜日、日曜日は桟橋の掃除からスタートしています。最近は、私が一人でやっていると、コックス(ボートのかじ取りを担う選手)も一緒にやってくれたり、学生が先に始めていたりといい感じになってきていますね。私は、トレーニングや漕手に対する声かけをすることがメインなのですが、私が来る前は、おそらく日本ローイング協会のホームページに掲載されている日本代表の練習メニューを参考に練習していたと思うんですね。それが間違っているかは置いといて、基礎が整っている社会人がやるならそれでいいと思うんですよ。でも、早稲田大学みたいに大学から競技をスタートする選手もいる一方で、中学生時代からやっている人もいるというバラバラな層が混在するチームでそのトレーニングをすると結局4年じゃ仕上がらないんですよ。そう思って、私が着任して早々に、「みんな、勝ちたいの?」、「勝つってどういうことなの?」「じゃあ勝つためにはどうしなきゃいけないの?」、「速くならないといけないでしょ」っていう話をしました。ボートってすごく単純なんですよ。一番早くゴールしたクルーの勝ちなんです。だからスピードを出さないと意味がないんです。そして、「スピード出てるの?」って話して。陸上でいえば毎日ジョギングをして、フルマラソン優勝したいですって言ってるようなものでした。こういうことを1年間ずっと言い続けて、根気強くやって、それを踏まえて全員で目標へ向き合うことができたと思います。

――早稲田大学漕艇部の強みを教えて下さい

阿二 男子も女子もいること、出身の形態が全然違う人たちが集まっていることが強みでもあり、もしかしたら弱みでもあるかもしれないのですが、特徴ではあると思います。例えば推薦制度で入ってくる人、いろいろなやり方で受験をしてくる人、付属高校から入ってきている人、色々な形で集まってきています。こういう人たちがいることで、例えば1年生に未経験で大学から競技を始めた子たちが数名いるのですが、彼らのやる気だとか、彼らが追いついてくる感覚というのが高校からやっていた子たちをある意味では焦らせて、負けられないからもっと頑張ろうと刺激になっていると思います。あとは、ボートだけ漕いでいた子たちより、受験とかを経験することで、視野が広く柔軟な考え方をできるということもありますので、そういうところはいいところだと思っています。

杉嶋 私がいた日大のボート部、東レのボート部も男子しかいないんですよ。高校は男女両方いましたけど、男子が10人くらいに対して女子が3、4人でほぼ男子のボート部みたいな。それに、日大のボート部は全員推薦ですし、東レも当然一般の社員はボート部入れないで。そういう環境にいたので早稲田の環境は正直やりにくいなと感じましたね。それなりのレベルの選手に教えることしかしてこなかったので、ボート最近始めましたっていう選手に、どうやって教えればいいんだろうってところからのスタートでした。そして女子がいない環境でしかボートをやってきていないんで、女子とどうやってコミュニケーションをとるのかとか、女子と男子でトレーニング量を変えた方がいいのかとか私は全然わからない。今でもわからないなと思いながら教えています。ただ逆に強みとすれば、そういう環境にいたからこそ(女子に対して)手加減をしない。女子だからこんなもんだよね、みたいなことは一切しないです。確かにスピードには差がありますが、勝つためにはどうしなきゃいけないってことは変わりがないですし、何をすればよいのかを伝えると女子の選手もくらいついてきます。男子に対しても、私は勝ってきている選手ではあるので、その時どうしていたのかっていう話をよくします。今はその時よりもさらにレベルが高いはずです。それを私が基準として培ってきているので、それを伝えてしっかりくらいついてきてくれる、積極的にやってくれる、夢物語じゃないと理解して練習してくれるのはすごくいいチームで、強みだなと思っています。

「力の差を見せて圧勝したい」(杉嶋コーチ)

質問に答える杉嶋コーチ

――ここからは早慶レガッタの質問に移ります。まず、他の大会と比べた早慶レガッタの特徴を教えてください

阿二 いくつかありますが、一つは環境についてで、どうしても波が立っちゃうんですよね。これは自分たちで立てているというところもありますけど、レースがあった後に後ろから審判廷がついていったりとか、水上バスなども商売ですから止められなかったりします。それで立った波が、護岸のコンクリートの壁にぶつかってもどってきて、それが繰り返されると三角波っていう特殊な波がずっと残ることになってしまって、その波の中でのレースになってしまうんですね。これは世界のボートレースの中でもかなり劣悪な環境で、戸田のいつものコースで漕いでいる学生にとっては驚きの環境なんです。もう一つは相手が慶応大学ということです。早慶戦には負けたくないというお互いの思いをひしひしと感じながらマッチレースを行うというのが少しやりづらいところではありますね。

杉嶋 やっぱり(早慶レガッタは)環境が特殊なんですよね。私も戸田含めてキャリアの中で世界中いろいろなところで漕ぎましたけど、あの波の中で漕ぐっていうのはちょっとどころではない特殊さがあるなと思います。あとは1対1での勝負ということですね。早慶レガッタもトーナメントではなくて一発勝負で負けたら終わりっていうところは相当緊張するんですよね。インカレとかであれば予選で調子が悪ければ次で調整ができますけど、それができない。しかも距離が3750㍍あって序盤で持っていかれてしまう可能性もありますし、結構長丁場なレースにはなるので常に緊張感を持ってレースをしないといけないなというのも特殊なところかなと思います。私は早慶レガッタを初めて見たのが2年前です。私が現役の時から、早稲田と慶応を比べたら早稲田のほうが上っていう印象がありました。だから心配することはないかなと思っていたら、まさかの(2年前の早慶レガッタは)惨敗でした。その時にこんなところでレースをするのかと初めて目の当たりにして、これは何があるかわからないレースだなと。なので去年は勝てる自信はあったけど、レースの様子は動画すら一切見れなかったです。もう心配で。ここで(戸田で)並べたら絶対に負けるはずがないというクルーでいったけど、途中何があるかわからないし、環境要因で、レーンの取り方で、コックスのミスで負けてしまうので。その時の運もあるというのも改めて感じて去年勝てたなと思っています。ただまた今年もこのシーズンが来たなと。心配は心配ですね。早慶レガッタでは、乗っている漕手が強ければ勝つっていう定石が通用しないなと感じているので今年もしっかり準備しています。

――今年のクルーが決まったのはいつ頃ですか

阿二 2月中旬くらいですね。

――仕上がりはいかがですか

阿二 まだ仕上げてはいないです。仕上げてはいないんですけど、男子に関していうと、そもそも昨年のインカレの流れが続いていて、そもそものスタート台が昨年よりも高くはあります。取り組んできたことが代をまたいでようやくつながってきている状態なので、杉嶋さんにコーチをやっていただいたところからの流れでいうと、ようやく完成してきたところかなと思っています。

――第二エイトと女子の仕上がりはどうですか

阿二 第二エイトはですね、これは頑張って仕上げないといけないなという段階にあります。というのも、大学からはじめた1年生も結構乗りますし、そもそも隅田川を経験している人がほとんどいないのでこれから波をいっぱい経験させないといけないし、早慶レガッタを見据えた練習をさせないといけないと思っています。今まで第2エイトにしばらく負け続けているので、今年は絶対に勝ちたいと思っています。女子の方は今まで何年も勝ってきていて、これは逆に油断できないと思っています。距離も1000㍍で短いですし、スピードレースになりますので、ちょっと失敗すると足元をすくわれるみたいなこともあり得ます。昔であれば実力差がかなり大きかったのですが、今はそんなにうまくはいかないと思っています。なので、選手たちも真剣ですし、特に気持ちの準備をさせて臨ませないといけないと思っています。

杉嶋 第二エイトで去年隅田川を漕いだのは、コックス入れて9人のうち佐藤(淳平、法2=埼玉・早大本庄)の1人だけかな。なので今年隅田川はほぼ全員が初めてで、あの雰囲気に飲まれないかっていうのはすごく心配しています。自分たちが漕いでいる上から応援されるというのは経験したことないですし、そもそも競技歴が浅い漕手も多いです。この1年トレーニングを積んできてしっかり体力もついてるのでその点は十分できてきているんですけど、やっぱりテクニカルな面っていうのは漕いできた距離が少ないので仕上がりはまだまだこれからです。去年のセカンド(第二エイトのこと)は競技を経験してきた選手が多く乗ったのですが、それと比べても大きな差はないくらいの実力のある選手が育ったなという印象です。このまましっかりやっていけば、セカンドで勝つっていうのもいけるんじゃないかなと思っています。

――対校エイトはいかがですか

杉嶋 対校はめちゃくちゃいい感じですよ。昨年のインカレのクルーが半分くらいは残っているのでスタートラインが高いですし、特に私とのコミュニケーションが成り立つようになってきました。私、かなり感覚派なんですよ。「こうやったらこうなるでしょ」とか、「もっと船を立ち上げるような」とかそういう感覚の話をするんですよね。これは私が来たときはやっぱり通じなかったんですよね。ですけど2年経ってそこが共通言語になってきている印象を受けます。そういう意味でもレベルの高いクルーだと思います。私の伝えたいものがダイレクトに伝わるので修正や改善のスピードも速いです。残り一か月で仕上げにかかりますけど、しっかり仕上がっていくんじゃないかと思います。

――対校エイトの中で注目選手がいたら教えてください

杉嶋 私は小山(知起主将、創理3=東京・早実)かな。彼、早実の野球部から入ってきて、1年目は何もわからないままボートを漕いできた彼です。私が来て2年目の時は、体はでかいけどボートをうまく走らせられない選手で、もったいないなって思っていました。去年も悪くはなかったんですけど、エイトっていう競技はチームでやるもので、みんなで同じような動きをしないといけない。例えば体の柔らかい選手が多くいる中で、体の硬い選手がいると、全体最適にはならないんです。そうすると柔らかい選手を乗せたくなる。去年、彼は私の中でその対象になったんですね。そこで彼に説明して対校エイトではなくて第二エイトに出てもらったんですね。彼も凄く悔しい、降ろされたことに納得はできていないけど理解はしている、という様子でした。なのでそこから全日本選手権に向けて小山を重点的にコーチングして、舵手なしフォアという種目で準優勝しました。そのタイミングでかなりよくなっていて、これだったらエイトに乗せても全く問題ないとなって、インカレで一番重要なストロークというポジションでエイトに乗せて準優勝でした。その彼がそのままいい状態で来ているのでね。多分初めての対校エイトですよね。去年は第二エイトだったし、さらに今年は主将としての早慶レガッタなのですごく緊張すると思います。彼の力がないと今年の対校エイトは勝てないですからね。大学から始めて、去年は私にダメだって言われて降ろされた選手が一番大事なポジションを任されているというところで、やっぱり小山に一番期待しています。

阿二 前田(蓮、文3=東京・早実)かな。彼の活躍がすごく大事ですね。川のレースなのでコースはちゃんと浮標があるわけじゃありません。なのでコックスは最短コースを進まなければいけないんです。コックスはいろいろなタイプがいますが、前田というコックスはすごく生真面目なタイプかというとちょっと違いますが、その分、視野が広くていろんなことをよく見ているし、意外と準備をちゃんとやるんですよね。今年はもう彼にだったら全幅の信頼を置けると思っています。川って橋脚を工事するとかで、毎年状況が違うんですが、そういうのも自分で見に行ってチェックして、コース取りをしっかり研究しています。あとコックスっていうのは勝負師じゃなきゃいけないとダメだと思います。ここぞっていうところで、「いけ」って言えるかどうかなんですよ。そして彼は思いを伝える能力があって、みんなに「俺のことを信じろ、いけ」って言える。彼はいつも勝負所を読めているので、彼がキーマンだと思いますね。

――最後に早慶レガッタにむけて意気込みをお願いします

阿二 高校1年生の時に(漕艇部の勧誘を受けて)早慶戦に連れてこられて、それが15歳の時ですから、それからまさに40年、55歳になります。私はこの9月に監督を引退すると決めていますので、これが監督として最後の早慶戦です。もちろん絶対に勝ちたいなと思います。ただ、監督になってからは、勝ちたいというよりも無事に終わってほしいという気持ちが強くなってきています。川のレースですので危ないですし、無事にレースができて、納得いくレースができたなというふうに終われればいいかなと。早稲田と慶応というのはよきライバルで、慶応の監督と2人で話しているときも、やはりそういう話しをします。こういう感覚は、私と慶応の小仲監督しかわからない気持ちですかね。でも心の底では絶対に負けたくない(笑)。全勝するぞと思っています。

杉嶋 まずは勝ちにこだわりたいですし、ここで終わりではないと選手と共有しています。そして力の差をしっかり見せてほしいという風に思っています。今シーズンの全部のレースに関わってくると思っているので、力の差を見せて圧勝したいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 長屋咲希、石渡太智)

◆阿二真樹(あに・まさき)

平成4年理工学部卒業。東京・早大学院高校出身。

◆杉嶋俊幸(すぎしま・としき)

平成25年日本大学卒業。東京・高島高校出身。