【連載】競走部 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)事後特集 『蕾(つぼみ)』 第2回 山口智規

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 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では、2年連続「花の2区」を任された早大のエース・山口智規(スポ3=福島・学法石川)。区間順位こそ惜しくも振るわなかったが、学生トップ級の選手たちに果敢に挑んだ山口智の走りは、来年に向けさらなる躍進を予感させた。そんな山口智に、箱根の振り返りと駅伝主将として臨む1年について伺った。

※この取材は1月25日に行われたものです。

ーー箱根後は疲労の面でいかがでしたか

 3日ほど走らずに休んで、その後すぐに都道府県駅伝(都道府県対抗男子駅伝)だったので走り始めました。かといって、日本選手権(1万メートル)が4月でシーズンインが早いので、なるべく早くスプリントの動きに移行したいなということで、短距離の練習に混ぜてもらったり、疲労を抜いたりしつつも先を見据えて練習していました。

ーー解散期間はどのように過ごされていましたか

 解散期間は本当に3日間くらいしか実家に帰らず、すぐ所沢に戻ってきて練習を再開しました。授業もあったのでそちらにも行きながら、リフレッシュしつつも都道府県駅伝やトラックシーズンを考えながら生活していました。

ーー先ほどもおっしゃっていた通り、1月19日には都道府県対抗男子駅伝に出場されました

 正直、タイムとしてはあそこまでいくとは思っていなかったです。ですが、やはり中高生が頑張ってくれたのでその努力を無駄にすることはできないなという思いと、自分としてもなかなか結果につながらない駅伝シーズンだったので、その悔しい思いを晴らせたらなという思いがありました。1つ結果を出すことができて良かったなと思います。

ーー改めて2区出走を花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)から伝えられたのはいつ頃でしょうか

 伝えられたことはないです。2区走るでしょうという意思疎通くらいでした。全体ミーティングの際に、(区間の)想定表が出るのですがそこに名前が入っていたので、その時点で確定したという感じです。

ーー2区出走に向けて練習の時点で意識したポイントなどがあればお聞かせください

 やはりアップダウンがタフなコースなので、その点は自主的にアップダウンの多いコースに取り組みました。昨年よりも質を上げて練習もしましたし、距離も増やしたりしたので、その点は自信を持ってスタートすることができました。

ーーレース前の心境をお聞かせください

 純平(間瀬田純平、スポ3=佐賀・鳥栖工)は調子いいけど、昨年ほどではないかなと思っていたので、中盤手前くらいで来る想定でいました。その想定の中で思ったより早く来てくれたのですが、前に来てくれる分には嬉しかったです。ただ昨年はレース中に花田さんから「前で行くから準備していて」と言われて後ろの方だったなと。そんなことをぼんやり考えながら待っていました。

ーー間瀬田選手にタスキ渡しの際に声をかけられましたか

 「ナイス!」くらいです。あまり覚えていないです(笑)。

ーー4位でタスキを受けました

 正直、ひとつ想定はしていましたが。まさかこの位置で来るとはという感じでした。

ーー今回のレースプランとして前半15キロと後半8キロを分けていたとお伺いしました

 そうですね。やはり権太坂を上った後の走りが勝負を決めるということはもうずっと言われていることなので、その8キロをどのように勝負するかと考えた時に、恐らく真っ向勝負をしても勝負できないので。権太坂までの走りと同じペースで行っても勝てないと思ったので、このペース配分にしていました。

ーー昨年は同区間で早大記録を更新されましたが、今回の目標タイムなどはあったのでしょうか

 本当に区間賞を目指せれば区間賞を取りたかったですし、それこそタイムも65分くらい出さないと区間賞を取れないと思っていました。なので、65分台と区間賞を取りたいなという気持ちはありました。

ーー前半はハイペースで入っているように感じられました

 ハイペースではあったと思うのですが、僕の中では別にそんなに頑張っている感覚はなかったです。あのイメージ通りの走りができればそんなに失速もなかったと思います。評価としては、ハイペースで入ったからだよというものになってしまうのは一定仕方のないことだとは思うのですが、自分の中では心地の良いペースだったなと思っています。

ーー前半で篠原倖太朗選手(駒大)の前に出て走られた理由をお聞かせください

 昨年の経験から10キロまである程度きつくても、権太坂以降にアップダウンをうまく使って回復しつつ走れればいいなと思っていました。篠原さんの後ろで貯めながら走ると少し余裕がありすぎるなと思ったので、自分のペースでガンガン行こうと思いました。

ーー権太坂や戸塚のアップダウンはいかがでしたか

 やはり15キロ以降準備する中で、権太坂の上り2キロを大事にしたいと考えていました。想定だとその2キロは自分のリズムで行きたかったです。ですが、やはり追いつかれてしまいました。後ろからまた集団が来るということは分かっていたので、なかなかそういう選択が取れずに相手にレースをされてしまったなと思います。その点は少しきつかったなと思います。

ーー改めてご自身の走りを振り返っていかがですか

 自分の役割としても果たせなかったですし、往路は3位で良かったものの、やはり総合4位で菅野さん(雄太、教4=埼玉・西武学園文理)があのような悔しい思いをされたというのが、非常に申し訳ないなと思っています。攻めた走りという評価はされますし、自分の中では攻めたことに対しての後悔はないのですが、菅野さんに悔しい思いをさせてしまったり、その要因になってしまったりしたことに対して非常に申し訳ないなと思っています。

ーーレース後に花田監督から何かお言葉はありましたか

 「(箱根駅伝は)通過点だから。」というお話をレース前からされていました。レース後も「世界を目指すうえでは良い経験だったんじゃない」と。「あのペースのまま行けるような力をつければ良いだけ。後半上げるのは誰でもできるけど、前半思い切っていくような勇気を持っている選手はいないから」と言ってもらいました。

ーー改めて、総合4位という結果に対してどのようにお考えですか

 出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)と全日本(全日本大学駅伝対校選手権)でなかなか勝負できず、箱根前も4年生が調子悪いというような雰囲気が僕たちの中でもありました。3位以上を目指すという目標は若干ぼんやりとした目標ではありました。ですが、いざ往路が終わって復路を4年生で固めると決まった時に、本当に3位以上を目指せる位置にいるということが非常に嬉しかったです。今まで、目標を上げても届かないことが多かったので、その点は非常に嬉しかったです。

ーー山口智選手から見て、特に印象的だった選手はいますか

 もちろん往路を走った僕以外の選手も良かったと思います。ですが、特に山﨑(一吹、スポ2=福島・学法石川)が非常に僕たちの中でも不安があるような感じではありました。下りは上手だったのですが、長い距離に対しての準備はうまくできていないような感じではあったので。その中で、しっかり58分台で走ってくれたので、苦しんだシーズンの中でも活躍してくれたのはやはり嬉しかったです。

ーー来年の箱根駅伝では総合優勝を目標に掲げていらっしゃいました

 総合優勝というのは僕たちからしたら未知の世界です。何をしたらいいかというところは正直正解は分からないのですが、その点は本当に仲間と話し合ったり、学年ミーティングを重ねたりしてみんなで頑張っていきたいです。

ーー箱根後には「トラック頑張る」とおっしゃっていましたが、改めて今年のトラックの目標をお聞かせください

 やはり世界陸上を目指していきたいのですが、自己ベストとしては遠い目標になってしまいます。ですが、可能性としてないわけではないと思うので、そこに向かって全力でチャレンジしていきたいです。また、5000メートルも1万メートルも早大のものだった学生記録を取られてしまったので、僕が4年生のうちに取り返したいなと思っています。

ーー新体制が発足し、部の雰囲気はいかがですか

 戦力としても、チームの精神的な面でも支えてくれた4年生が抜けてさみしく感じる部分もあるのですが、実力のある選手がそろっています。下級生も非常に意識高く取り組んでくれているので面白いチームだなと感じています。やはり新入生も強い選手が入ってくるので、みんな本当に負けられないという気持ちで練習に取り組んでくれています。

ーー最初のミーティングではどのようなお話をされたのですか

 ミーティングではやはり総合優勝するために今のチームの現状に何が足りていないのかを非常に熱心に話してくれました。今はまだ箱根に届かないような選手であっても、チームに対しての意見や、客観的な意見なども言ってくれます。みんな頭がいいので、よく考えてくれますし、競技に対しても熱いので、そういった点で熱いミーティングをしてくれました。

ーー今季は駅伝主将としてどのようなチームをつくっていきたいですか

 あくまでチームも個の集まりなので、僕がどのようにチームをつくるかというよりはみんなでチームをつくって行くようなものだと思っています。その中でも、僕がどのように個をつなげていこうか考えていきたいです。花田さんも「指導者は辞書と同じだから、ちゃんと自分で引き出しなさい」と常々おっしゃっているのですが、僕がその架け橋であったり、そういう役割を担えたりできたらなと思っています。

ーー差し支えなければ今後の予定を教えていただきたいです

 2月からオーストラリアに合宿に行く予定です。

ーー最後に、個人としても部としても1年間の抱負をお願いします

 チームとしては(箱根駅伝で)総合優勝を本当に狙っています。その総合優勝に向けての出雲、全日本という捉え方で戦っていきたいです。個人としては、トラックで日の丸を背負うチャンスが多くあると思うので、そのチャンスをしっかりつかんで世界で勝負できるような選手を目指します。また、駅伝シーズンも区間賞を当たり前のように取れる選手を目指していきたいなと思っています。

ーーありがとうございました!

 

(取材・編集 草間日陽里)

◆山口智規(やまぐち・とものり)

2003(平15)年4月13日生まれ。172センチ。福島・学法石川高出身。スポーツ科学部3年。第101回箱根2区1時間7分01秒(区間11位)。今流行りのMBTI性格診断の結果をお伺いしたところ、ISTPの巨匠タイプと教えてくださいました。日本でも数少ないMBTIだそうです!