【連載】 野球部 新体制始動特集『AGGRESSIVE 』 第5回 田和廉×前田健伸副将

特集中面

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 第5回は、ともに東京六大学秋季リーグ戦(リーグ戦)で大きく飛躍し、チームの連覇に大きく貢献した前田健伸副将(商3=大阪桐蔭)と田和廉(教3=東京・早実)が登場。最高学年となった2人は、チームを引っ張る上でどのような思いを抱いているのか、伺った。

※この取材は1月11日に行われたものです。

「明大2回戦を抑えられたのは奇跡のようなもの」(田和)

――紅白戦等で対戦する際のお互いの印象を教えてください

前田 投げっぷりの良さがあって、球速も速いので、嫌なピッチャーだなと。味方で良かったなと思います。

田和 1、2年生の頃に対戦していた時よりも三振しなくなったイメージがあります。追い込まれてもしっかりファールで粘ってくるので、そういった部分で嫌なバッターですね。

――新チーム始動後、監督と何かお話はされましたか

前田 (卒業後の)進路を少し話したくらいです。

田和 新チームになったからといって特に話したことはないです。

――新チーム始動後のチーム全体の印象を教えて下さい

前田 自分たちの代になったので、自分たちでやらないといけないという気持ちを持って、みんなフレッシュな気持ちで元気を出して練習できているかなと思います。

田和 投手、野手関係なく、小澤主将(小澤周平主将、スポ3=群馬・健大高崎)がずっと言っている「勢いのあるチーム」を目指す上で、活気は以前のチームよりあるかなと。声を出すことだったり、全力疾走だったりを徹底していこうという話をしていたので、そういった意味ではちゃんとできている部分もあるのかなと思います。

――新主将となった小澤主将の印象を教えて下さい

前田 背中で引っ張っていく主将だなと思います。自分は副将として支えていく立場になったのですが、小澤主将を胴上げしたいなと強く思います。

田和 新チームが始まった時に、小澤なりに何か変えたというか。元々はふわふわとした雰囲気を持っている感じがあったのですが、新チームになってからは、練習中にそういった雰囲気は見なくなったので、メリハリがつくようになって、チームも締まってきたのかなと思います。

――昨季の振り返りに移ります。チーム全体を振り返っていかがでしたか

前田 4年生を中心に引っ張ってもらって、自分たちは下級生としてのびのびとプレーさせてもらったなと思います。

田和 夏頃に復帰して、チームに加わったのですが、オープン戦やリーグ戦を戦う中で、本当に負けないチームだなと思っていました。それはピッチャーが抑えることもそうですし、取られた点を取り返してくれる打撃陣もいたので、自分たちもそういったチームにするための目標の一つかなと思います。

――昨季のMVPを挙げるならどなたですか

田和 ベストナインも獲った石郷岡(大成、社3=東京・早実)です。高校時代からずっと一緒にやってきて、当時から小柄で足を生かした守備や走塁が持ち味でしたが、そこに打撃の技術力や選球眼もプラスされて、出塁することに関して誰よりも考えていただろうなと思います。高校から同じチームでやっていた身としては、すごく成長したなと思います。

前田 松江(一輝副将、人3=神奈川・桐光学園)かなと思います。春の明治戦で逆転打を放つシーンもありましたし、一番大事なシーンで出てくる選手なので、ちょっとしたヒーローというか、大きくは出てこないですが、そういったところでMVPかなと思います。

――一番印象に残っている試合を教えてください

前田 春の法政戦かなと思います。篠木(健太郎、法大4年)投手から逆転打を打てたことが嬉しくて印象に残っています。

田和 (秋の)明治戦の12回引き分けの試合です。自分は2イニング回またぎでやらせてもらったのですが、10回の先頭で飯森(太慈、明大4年)選手をツーベースで出してしまった時に、今でも映像で振り返るのですが、よく0点で抑えたなと思います。100回やったら90回くらい点取られてたと思うので(笑)。それくらいの奇跡というか、自分でもなんで抑えられたんだろうと思いますが、そういった場面で抑えられたことが自信にもなりました。

「強い打球を打とうとした結果、長打が増えた」(前田)

――個人の質問に移ります。前田選手個人にとって昨季はどんなシーズンでしたか

前田 状態は良かったので、最終的にシーズンを通して打率を維持できたのは成長点かなと思います。守備の方でも、内野手からの送球はエラーしなかったので、そこも成長したかなと思います。

――ショートバウンドの送球に対しても、安定感のあるキャッチングを見せていた印象でしたがいかがですか

前田 多少自信はあるのですが、いい意味で適当にやるというか、力を抜いた中で動かすことで、対応できるようになったという感じですね。

――昨季は長打が増えた印象ですが、何か意識の変化はありましたか

前田 状態が良かったのもそうですが、強い打球を打とうという考え方に変えたら、結果として長打が増えたのかなと思います。大きいのを狙うのではなくて、強い打球を間に打てば、その延長線で長打につながったのだと思います。

――来季はどのようなポジションでチームを引っ張っていきたいですか

前田 昨年はクリーンアップを任されていたので、バッティングでチームを引っ張って、チャンスの場面でもどんな形であれ点が取れるようなバッティングができる選手になりたいと思います。

――大学日本代表の強化合宿で刺激を受けた選手はいますか

前田 刺激を受けたのは立石(正広、創価大3年)です。チームは違いましたが、山口の同じシニアの舞台で戦っていて、自分にとって身近だった選手がドラフト候補に上がっていて、久々にバッティングを見たらすごいなと思ったので、そういった選手と話して、どういった待ち方をしているのか、打ち方をしているのかなどを聞いて、自分にとって成長できた合宿だったのかなと思っています。

――印象に残っている選手はいますか

前田 神奈川大の松平君(松平快聖、3年)です。長身ですがアンダースローで、球も速いピッチャーでした。そういった選手と対戦して、もっと成長したら脅威になるのかなと。長身でアンダースローというのも脅威だと思うので、特に印象に残っています。

――田和選手への質問に移ります。個人として昨季を振り返っていかがでしたか

田和 1シーズン通してケガなく終われたのは良かったと思いますし、自分の中で試行錯誤というか、長いイニングを投げられない中でどうやってチームに貢献しようと考えたシーズンでした。まずは自分がしっかり投げられるということを他大学にアピールできたことが良かったと思っています。

――昨季は空振りを多く取っていた印象ですが、特に効果的だと感じたボールはありましたか

田和 強い真っすぐを投げられたことが一番良かったかなと思います。真っすぐではほとんど空振りは取っていないと思いますが、そういった球をファールであったり、一球高めに見せたりすることで、スライダーやシンカーが生きて、空振りが取れたのかなと思います。真っ直ぐをしっかり投げられたことが、自分の中では空振りを取ることにつながったと思います。

――来季以降、先発争いに割って入りたいという気持ちはありますか

田和 絶対に先発をしたいという思いは特になく、チームが勝てるならばどこでも投げると思っていて、いきなり先発しろと言われてもできる準備はしていきたいと思いますし、後ろで長いイニングを投げることになっても、どこでも投げられるピッチャーを目指したいと思います。

――ドラフト指名を狙っているという話をされていましたが、よりレベルアップしていくためには何が必要だと考えていますか

田和 まずは真っすぐのスピードを上げていくことが最大のアピールと言っても良いと思うので、スピードにはこだわってやっていきたいです。六大学でまだまだ成績を残せていないと思うので、長いイニングをしっかり投げて結果を残すというところを目的として、そこにプラスアルファがついてくれればなっていう風に思ってます。

――球速はどのくらいを目標としていますか

田和 1つの目標はまず155㌔を目指そうと思っていて、その球速帯でしっかり投げれて結果も残すことができれば、おのずとプロへの道は近づくかなっていう風に考えています。

――田和投手の持ち球で特に効果的なボールがシンカーだと思いますが、どのようなボールなのでしょうか

田和 メジャーリーグで同じようなリリースをしているのが、エアベンダーを投げているデビン・ウィリアムズだと思っています。握りは全然違うんですけど、それに近いボールの投げ出しで、(ウィリアムズが)ボールに加えている圧、力を加える部分が分かるんですけど、そういう部分だったりとか、回転数だったりとかの数値も近いものがあるので、チェンジアップと言われればチェンジアップだと思うんですけど、そんな感じのボールです。

「防御率は0点台が目標」(田和)

――お2人への質問に戻ります。冬の期間、特に取り組みたい部分、強化したい部分があればお願いします

前田 秋は、打率と長打を一応残せましたが、それが秋だけじゃなかったっていう風になりたいので、ちゃんと打率も残しつつ、長打率も昨年の秋よりも上がればという風に思っています。やはりバッティング面になってしまうんですけど、バッティングをもっと強化したいと風に思っています。

田和 まずはしっかり体作りをこの冬にして、球速が上がってもケガしないことが大事です。今は寒いので出力を上げるシーンは少ないですが、春先になって暖かくなってきたらしっかり出力を出すための準備というか、出力を出した時に体が壊れないようにしっかり体作りっていうのをこの日はしっかり取り組んでいきたいなと思っています。

――来季対戦したい選手はいらっしゃいますか

前田 対戦か。髙須大雅(明大3年)ですね。秋は明治戦の前に髙須がケガをして、対戦がなかったので。髙須みたいなプロ注目のピッチャーを打てるようにという風に思っているので、ちょっと対戦したいなっていう風に思います。

田和 自分は明治の小島大河選手(明大3年)と木本圭一選手(明大3年)ですね。秋のシーズンは、同級生で対戦する機会も何度かありましたし、その時にオーラがあるというか、雰囲気があったので、その2人を抑えるためにしっかり練習していこうっていう風に思えるような選手であったので。僕が右で小島大河選手は左ですし、左をこういうイメージで抑えていこうっていう、抑える目標の1つにもなりましたし、その2人をしっかり抑えるために対戦したいです。

――意識している選手や、この選手には負けたくないという選手はいらっしゃいますか

田和 自分は明治の久野選手(久野悠斗、3年)です。彼も2年の秋まで投げていた中で、トミー・ジョン手術を受けて来年の春には多分帰ってくるということだったので。トミー・ジョンのご縁もあって、1度ご飯行く機会もあって、そこでは順調にリハビリの過程を終えているということだったので、同じ手術をした仲間として、もちろんすごい選手ですし、投げ合えたらいいねという話もしてたんで、久野選手はもちろん自分も注目してますし、負けたくないって思いがあります。

前田 今思いついたのは立教の丸山一喜(2年)です。自分が一応先輩で、同じポジションでもあるので、後輩にはちょっと負けられないなっていう風に思ってるんで。負けたくないなって思う選手は丸山ですね。

――来年のチームとしての目標を教えてください

前田 四冠という大きな目標を掲げていますが、四冠を取るためにはまず春を取らないといけないので。四冠という目標は掲げていますが、それを一旦忘れて春を取るっていう風にチームとして目標を掲げてるので、その目標を達成できるようにここからの2ヶ月間強を切磋琢磨(せっさたくま)し合っていいチームにできたらなという風に思っています。

田和 ほとんど一緒になりますが、四冠達成するためにまずは春、と2025年の初日の練習でも小澤主将が言っていたので、 まずは春っていう意識で全員で取り組んでいけたらと思います。

――投手として、野手として目指していることを教えて下さい

前田 今は走塁に力を入れています。走塁の基礎からこの冬は取り組んでるんですけど、そういったところですね。盗塁というのが目に見える数字ではあるんですが、(盗塁だけではなく)走塁全体で点を取れるチームを作っていくことが今年の野手の中で、去年と変わったところなので、走塁意識を高く持っていきたいです。

田和 具体的な数字を挙げてはいないんですけど、新チーム始まる時に、3対1で勝てるチームを目指そうって言っていたので、おのずとピッチャーは防御率が0点台、1点台の前半でなければダメかなっていう風に思うので、多分今シーズンが1.50ぐらい(秋季リーグ戦は1.57)だと思うんですけど、それを超えるというか、1点台前半、もしくは0点台っていうところを目指していきたいです。チームの雰囲気としても、切磋琢磨してやる部分も大切なんですけど、競争意識をより強く持って、勝ち切るための空気づくりを、自分たちがそういう雰囲気を作れるように取り組んでいきたいなっていう風に思います。

――来年の個人としての目標を教えてください

前田 個人としては、打率と打点を意識していきたいです。そういったところは、去年からクリーンアップを任されて、期待されている部分だと思うので、そういった場面でしっかりと(ランナーを)かえせるようなバッターになりたいというのが目標です。

田和 個人の目標は防御率0点台という風に掲げていて、今シーズンもギリギリ0点台で終えることはできたので。もちろん長いイニングを投げればそれがどんどん難しくなるとは思っているので、そんな中でもしっかり長いイニングを投げて0点台を出す、としっかり目標を立ててやっていきたいなと思います。

――最後に今年1年の意気込みをお願いします

前田 やっぱり今年は四冠を目標に掲げて、チーム一丸となってその目標を達成できるように頑張りたいなという風に思っています。

田和 優勝、四冠をしっかり達成するために、自分のおかげで勝てたって言われるくらいの成績と、チームの中心になれるような 存在になるために頑張っていきたいと思います。

ーーありがとうございました!

(取材・編集 林田怜空、西本和宏、長屋咲希)

◆前田健伸(まえだ・けんしん)
2003(平15)年5月23日生まれ。177㌢、88㌔。大阪桐蔭高出身。商学部3年。前田選手の持ち味について、田和選手は「真ん中辺りに集まると一発もあるし、際どい球をバットに当てる技術もある」とその実力を高く評価していました!

◆田和廉(たわ・れん)
2003(平15)年5月2日生まれ。183㌢、85㌔。東京・早実高出身。教育学部3年。前田副将からは、「投げっぷりの良さからくる球威のあるストレートと、シンカーが武器」と評価されていました!