初回を飾るのは今季の早大を春秋連覇に導いた先発2本柱。伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)は絶対的エースに君臨し、宮城誇南(スポ2=埼玉・浦和学院)も先発に定着して成長を見せた。さらなる飛躍が期待される2人が、来季に懸ける思いに迫る。
※この取材は12月18日に行われたものです。
「アドバイスし合うことが1番大事」(伊藤樹)
――まず、お互いの日常面での印象をそれぞれ教えてください
伊藤樹 誇南は結構マイペースな感じです。外出する時に一緒に出かけることが多いのですが、いつも僕が急かしています(笑)。僕がせっかちなのか、早い早いっていつも言われるのですが、誇南はいつも時間ギリギリでマイペースに過ごしている印象があります。
宮城 樹さんは逆で、きっちりされている印象です。やはり何事も段取りよくやってくれるので、自分はそれについていく感じです。何もしなくても色々やってくれるので、いつも面倒見てもらっています。
――2人ではどこか出かけたりしますか
宮城 ご飯連れていってもらったりとか、それこそショッピングまでは行かないですが、都心に出たりとかしたりはします。
――投手としてのお互いの印象を教えてください
伊藤樹 投手としては、ザ・左ピッチャーといった感じのスライダーや、一番の良さは左バッターの内側にもストレートやスプリット、縦に落とす球をしっかりと投げ切れるところかなと思います。
宮城 自分からすれば全てにおいてのレベルが高いことが一番です。それはピッチングだけではなく、投げる部分以外のフィールディング、けん制面など、全てにおいて行き届いているというか、全てに気を使って投げられているので、本当にすごいなと思っています。
――ご自身の投球スタイルや持ち味はどういうところなのか教えてください
伊藤樹 今誇南にも褒めてもらいましたが、投げるだけじゃないところ、一番はゲームメイク能力の高さが持ち味だと考えています。どれだけ長いイニングを投げて、最小失点で抑えられるかが大事なので、 そこには自信を持って投げていました。
宮城 自分はまっすぐでしっかり空振りやファウルが取れること、更には全ての球種でカウントも、空振りも取れることが理想ではあります。
――新チームが始まってしばらく経ちましたが、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から何か言葉などはかけられましたか
伊藤樹 練習の時ではないのですが、新チームが始まるにあたって、前年度のチームの幹部の方たちがとてもしっかりとしていて、 新チームが始まってからの1週間の練習がとても良く、そもそものチームの完成度が高かったと仰っていました。なので、それを超える練習とチーム作りをしなければならないと言われていました。小宮山監督が今どう評価しているかは分かりませんが、主将の小澤(周平、スポ3=群馬・健大高崎)を中心に活気があるので、今のところは良いチームになっていると思います。
――新チームが始まってからの練習の様子や、雰囲気についてはいかがですか
伊藤樹 ピッチャーに関しては、今は投げ込みの量を増やすことを学生の投手コーチと一緒に決めました。しっかりと投げ込んで、フォームや投げる球種を覚えることをまず第一にやっています。まだ結果を出す時期ではないので、年が明けてから実戦が入ってくる中でこの投げ込みが生きてくればいいかなと思うので、今は皆で試行錯誤やアドバイスし合いながらできているなとは思います。
宮城 本当にその通りで、練習時間内での野球に関してや、ピッチングについてのお互いの意見交換やコミュニケーションが増えたと思います。学年関係なしに、どう投げているのかや、どんな意識で投げているかなどを聞くなど、コミュニケーションが多いので、それが相乗効果というか、お互い切磋琢磨(せっさたくま)できているのかなと思います
――新しいチームに入って、主将に小澤選手が就任されましたが、どのようにご覧になっていますか
伊藤樹 高校の時にキャプテンをやっていて、自分は何回か試合もしていて面識もあったのでキャプテンとしての小澤を知っていましたが、おそらくその姿を知らない人たちからすると、かなりおちゃらけている部分の方を多く見ていたと思います。少しイメージと違うキャプテンにはなっているかなと思いますが、やる時はしっかりと真面目にやりますし、チームを良くしていこうという姿勢はとても見えます。大事なことは、主将、副将だけでなく役職がないメンバーがどれだけついていけるかだと思うので、今のところはチーム全体としての練習やチーム運営のところはしっかりできているかなと思うので、継続してやっていきたいと思います。
宮城 ほとんど同じですが、小澤さん自体がガッツや、勢いのあるところが持ち味の選手なので、そこにやはり自分たちがどれだけ乗っかっていけるかがとても大事だと思うので。自分たちがどれだけついていけるかが大事かなと思います。
――小澤選手は野手としてキャプテンをされていますが、投手陣の中でまとめ役のような選手はいらっしゃいますか
伊藤樹 自分になると思います。
――何か意識していることはありますか
伊藤樹 特に変わったことはしていませんが、僕自身かなりコミュニケーションを取ることが得意なので、誇南も言っていた通り、下から上、上から下にちゃんと声をかけてコミュニケーション取ってアドバイスし合うことは自分が1番大事にしていることです。自分がコミュニケーションを取ることでみんながしやすくなると思うので、自分から意識しています。うまい人の技術を真似ることは大事なことなので、コミュニケーションを通じてそういった知識の引き出しを得ることも大事にしています。
――そんな伊藤樹選手をご覧になっていかがですか
宮城 やはり昨年からエースとしてずっとプレーされていて、コミュニケーションが取りやすくなったこの雰囲気を1番作っているのは樹さんだと思うので、雰囲気作りなどはやってもらっているかなと思います。
「優勝が良い成功体験になった」(宮城)
――続いて、今シーズンの振り返りに入ります。今シーズンは春秋連覇を達成しましたが、全体を振り返っていかがですか
伊藤樹 リーグ戦だけを見たら、春秋連覇で本当にいい形で終われたなと思いますし、優勝が遠ざかっていた中で今年2回取れたのはチームとしてすごく良かったなと思います。
宮城 自分たちが入ってきて1年目は 4位、5位という早稲田を見てきた中で、今年2回勝てたのは、いい成功体験というか、貴重な経験にはなったのかなと思います。
――投手陣にフォーカスして見てみると、1年間通してチーム防御率がリーグ1位でしたが、投手陣全体を振り返ってみていかがですか
伊藤樹 主には自分と誇南が投げて、後ろには田和(廉、教3=東京・早実)や安田(虎汰郎、スポ1=東京・日大三)が控えている状態で、1番はこの先発2人が1年間投げ切ったことが大きいと思います。エースとして1戦目、3戦目を投げることは六大学でやる以上課せられたものですが、それ以上に2戦目の出来が大事だと思っています。昨年、一昨年と、自分が2年間(第2先発を)やってきて、2戦目の出来が良くなく3戦目にその流れで行ってしまうことが多かったので、誇南が1年間怪我せずゲームを作り続けたことは、負けたとしても次につなげられる試合が多かったので、その大役を果たしたことは素晴らしいなと思います。
宮城 今かなり褒めてもらってはいましたが、やはり春は右も左も分からないままとにかく自分ができることをやろうという中でのシーズンで、あっという間に終わった感じでした。それを踏まえて、秋は神宮の雰囲気にも慣れてきた中で投げられました。ただ、その中で不完全燃焼というか、悔いが残る登板が多かったです。やはりそれがこの勝ち星にも表れていると思うので、もう少し樹さんを楽にできたのかなとは思います。
――チーム全体を見た中で、今年の中でMVPだと思う選手や一番成長したなと思う選手はどなたですか
伊藤樹 ピッチャーでは、誇南だと思います。あとは石郷岡(大成、社3=東京・早実)です。歩かせてもいい状態や、自分が送りたいからランナーに出ないといけないなど、色々と難しい8番だと思いますが、その中で一番仕事をしたのかなと思います。なので、石郷岡が野手のMVP。ピッチャーのMVPは成長したという点でも誇南です。
宮城 石郷岡さんや前田健伸さん(商3=大阪桐蔭)にはたくさん秋打ってもらったので、そう考えるとその2人になるのかなとは思います。
――ご自身の今シーズンの投球を振り返っていかがですか
伊藤樹 今シーズンは春に7回で降りていたところを8回以降まで投げようと、あと1イニングというのを大事にしていたので、 完投できたケースもありました。1番良かったのは、優勝決定戦でのピッチングです。自分の4年間の中でもかなりトップクラスになるだろうなというピッチングでした。ゲームメイク能力に長けているところ以外の、大一番でしっかり結果を出すという気持ちの強さみたいなところも、3年目でやっと出てきたのかなと思うので、能力だけではなくメンタル的な部分は今シーズンでさらに成長したと思います。
宮城 春はリーグ戦序盤があまり良くなく、カード後半になるにつれて良くなっていった感じでした。それを踏まえて秋は最初から高いクオリティで投げていこうと臨みましたが、なかなか中盤の2カード目、3カード目で思うようにいかないところも多かったです。3カード目が終わったタイミングで、樹さんから自分のピッチングを見た印象や考え方などを言ってもらい、自分の中で複雑に考えていたことがシンプルに考えられるようになりました。 そうして臨んだ4カード目、5カード目はそれなりのピッチングができたかなと思うので、やはりピッチングで常に高いパフォーマンスを発揮できるようにならなければいけないというところが、シーズンを通して先発を投げさせてもらって思ったところです。
――伊藤樹選手は手ごたえについて語られていましたが、新しく出てきた課題や今後改善したい点はありますか
伊藤樹 課題として残ったのはカットボールとスライダーの精度の低さです。元々そういった変化球を得意としていたのですが、縦系の変化球を投げるようになってからコントロールが定まらないことがありました。その精度をもう一度上げないと苦しくなってしまうと思うので、カットボールとスライダーの精度を上げることが1番の課題かなと思います。
――これから冬の練習に入っていく中で、どんなところを強化したいですか
伊藤樹 継続してトレーニングはずっと行っているので、トレーニングをして球速を上げることと、 そのトレーニングしたものをピッチングにつなげることは必ずやっていかないといけないことだと思っています。まずは体が資本のピッチャーなので、トレーニングを積んで、 実戦に合わせて課題をつぶしていくことを地道にやっていかないといけないなと思いました。
宮城 自分は今、一旦実戦が始まるまでの間は出力アップというか、スケールアップに重点を置いています。やはり体を大きくしたり、球速などをもう1段階レベルアップできるように今やっているところです。また技術的なところで言うと、9回投げ切る体力も強化したいポイントです。まだまだ完投する力はなく、 7、8回でパフォーマンスが落ちている自覚ががあるので、 そこでもう1段階上げて投げ切れるようにすることは来季のテーマに必ずなってきます。そのために、投げ込みなどから意識して練習しています。
「来年につながるボールを投げられた」(伊藤樹)
――ここからはそれぞれにお聞きします。まず伊藤樹選手に伺います。特に秋季リーグ戦では真っ直ぐで決めに行く場面が多く見受けられましたが、全体的にこれまでと比較して真っ直ぐで押していける手ごたえはありますか
伊藤樹 神宮のスピードガンでは全然スピードが出ていないのですが、トラックマン(計測機器)では球速も出ているので、球速に対して悲観的になっていることはないです。あれだけ真っ直ぐで空振りが取れているのは、確実にスプリットなどに対する意識が強いということの表れが1つあるのと、それを狙われていてもしっかりと空振りを取り切れているのはストレートの質がすごく上がってきたなとも感じています。特に今年は高めのストレートの三振がすごく取れていて、自分のデータをしっかりと見直した上で、ああいった配球を組んで、しっかりと投げ切れたのは、1つ自分の中で成功体験として良かったことだと思います。今季ストレートであれだけ取れたのは、相手からしても悪いイメージを植え付けることができた状態でシーズンを終えられたので、来年につながるなと思います。
――高めの球ではアウトハイに抜けていくようなボールが特に効果的な印象がありました。ストレートでインローに投げる時とアウトハイに投げる時で意識の違いはありますか
伊藤樹 元々ストレートがシュートするタイプなので、高めに投げるとシュートライズみたいなイメージになります。左打者に関してはインコース高めよりアウトハイの方が多少ストライクに見えやすく、自分の中では1番強いボールで当てられたとしてもファウルになりやすいボールなので、左打者へのアウトハイはかなり有効的に使っていました。そこにさえ投げられればボールでも落ちる球でもインコースのストレートでも、主として入ってくるストレートが効果的になるので、そこの使い方が今季はうまくいったかなと思いました。
――早慶戦前のインタビューでは秋にチェンジアップの比率を高めたというお話がありましたが、チェンジアップの比率を高めていた意図や効果はどのように感じていますか
伊藤樹 スプリットとの区別をしっかりつけたかったのと、スプリットとその他の割合を下げたい意図がありました。チェンジアップを使うことでタイミングも外せ、割合的にチェンジアップもあるっていう頭だと、ストレートかスプリットのどちらかに対応することは難しくなるので、打たれたとしてもとにかくゾーンにチェンジアップを投げ続けるっていうことを大事にしていました。その意図がありながらも見逃し三振を取れたり、簡単にカウントを稼げていたのでかなり良かったです。
――秋季リーグ中で特に効果的だった球種はありますか
伊藤樹 カーブです。ストレートとスプリットから遠いボールがカーブで、球速帯、曲がり方も違います。カウントもある程度取れるので、カーブで行ける自信がついたのもそうですが、配球の中で大事にしていたところなので、カーブの使いどころは一番良かったです。
――環太平洋大戦後、4年生の方々と話していた姿が印象的でした。 4年生の方々からはどのような言葉をかけられましたか
伊藤樹 最後、ああいう形で終わってしまったので、とても申し訳ない気持ちが僕の中ではずっとありました。ただ、4年生の方々からは、僕がここまでしっかりと投げられたから、優勝して今のこの試合ができているから、そんなに泣くことじゃないぞという風に声をかけてもらっていました。
――秋の大学日本代表候補選手強化合宿にも参加されました、合宿中、特に刺激を受けた選手はいらっしゃいましたか
伊藤樹 青学大の中西投手(聖輝、3年)です。同じようなタイプのピッチャーで、先発として長いイニングを投げる中でどういった様に考えているのかは非常に気になっていたので、そういった話を聞けて面白いなと思いました。また東洋大の島田(舜也、3年)、東北福祉大の堀越(啓太、3年)はまた違うパワーピッチャーで、純粋に能力的にすごいなと思いました。
――続いて宮城投手に伺います。昨季は目標に掲げた防御率1点台を達成しました。その要因をどのように分析していますか
宮城 シーズン途中は(防御率)2点台前半くらいだったのですが、シーズン中盤で調子が悪いなりに持ちこたえたことで、最後良くなってきた時に、1点台まで下げることができたことが要因だと思います。それと、法政戦を除けば、1イニングに複数失点していないんです。失点しても、その回を最少失点で乗り切るということは大切にしていました。それもあってなんとか1点台に乗せることができたかなと思います。
――秋季リーグ戦では春季リーグ戦と比べて、奪三振の数が増えました。三振を奪うのに最も効果的だった球種は何ですか
宮城 スプリットですね。半分以上がスプリット(で奪った三振)だったと思います。春は操り切れていないと感じる部分も多かったのですが、夏の練習で精度が増して、ストライクゾーンでカウントを稼ぐ球種としても、ストライクからボールに変化させて空振りを奪う球種としても、投げ切ることができるようになったことが三振を奪えた要因だと思います。春はそもそも、変化球のストライク率が低く、変化球でカウントを悪くして、投げる球がなくなったところで直球を投げて痛打されることもあったのですが、秋は変化球でカウントを整えることができたと思います。
――今、変化球のお話がありました。スプリットに加えて、カットボールが非常に効果的だったと感じています。カットボールを投げる際に意識していることを教えてください
宮城 球速をほかの球種とずらすということを意識しています。この状況では(カットボールを)待っていないだろうなと思う時は、鋭く曲げないでゾーンに通すようなカットボールだったり、ここぞっていう場面では指のかけ方も少し変えて変化幅もスピードも出したりという工夫をしています。ほかにスライダーも投げているのですが、それといかに差別化するかを考えていました。打者がカットボールを待っているとき、スライダーを投げて(タイミングを)合わせられないようにして、カットボールはカットボールの待ち方、スライダーはスライダーの待ち方をしないと対応できないという状態を作りたかったのですが、それはできていたのかなと思います。
――オフシーズンは厳しいトレーニングが待っているかと思います。それを乗り越えるための自分へのご褒美などは設けていますか
宮城 K-POPが好きなので、それを聴いてリフレッシュしています。
「樹さんの最優秀防御率を阻止する」(宮城)
――ここからは、来年に向けての意気込みをお2人に聞かせていただきます。まず、意識している選手を教えてください
伊藤樹 六大学の中だと、やっぱり外丸(東眞、慶大3年)ですね。昨秋は、けがとかで全然投げれてなかったんですけど、あれだけ投げてきた男なので、絶対にラストイヤーは戻ってくると思うので、早慶戦で外丸と勝負して勝ちたいと思っています。
宮城 自分は慶応の渡辺和大(2年)ですね。自分と同じ左ピッチャーで最優秀防御率も取ったので、同級生としても同じ左ピッチャーとしても負けられないなと思います。
――対戦したい打者はいらっしゃいますか
伊藤樹 僕は明治の小島(大河、3年)と木本(圭一、3年)。多分一番打たれている2人のはずです。ずっと警戒していて、抑えることができたところもあったんですけど、しっかりとバットの芯で捉えられているのは小島と木本ぐらいかなと思います。来年も確実に中心となって出てくる2人なので、そこを抑えない限りまた明治に勝つことはできないので、その2人です。
宮城 自分は高校で同じチームだった明治の八谷(晟歩、2年)です。頑張ってほしい選手でもあるんですけど、彼と対戦することがあったら死ぬ気で抑えにいきます。
――来季意識するチームがあればお願いします
伊藤樹 僕は慶応ですかね。外丸を過大評価しているか分からないですけど、僕は外丸と結構仲良くしていて、圧倒的な投球が印象的すぎるので、外丸率いる慶応と相対して、優勝のかかった早慶戦で勝つっていうのを、来年は2シーズン繰り返したいなと思います。外丸と投げ合って勝つというところかなと思います。
宮城 自分は明治かなと思います。顔ぶれを見ても、投手も野手も高校時代から第一戦で活躍してきた選手ばかりなので一筋縄にはいかないだろうなと思います。しっかりそこに勝って完全優勝で春秋連覇を達成して日本一になるのが最終目標なので、それを達成できるようにしていきたいと思います
――現在早大はリーグ戦2連覇中です。早大の4連覇に対する期待もありますが、4連覇への意気込みなどがあればお聞かせください
伊藤樹 来年は(東京六大学野球連盟創設)100周年で、僕らが4連覇したら(早大は)50勝目になるので、そういう記録を残してもいいんじゃないかなと思います。その記録を残した時のエースが伊藤樹だ、チーム小澤だ、という名前をこの長い伝統の早稲田大学の中で記録に残せるチャンスのある代だと思っています。実現可能だと思っていますし、春秋連覇して4連覇で、100周年で、50勝で、というのはOBの方々も望んでいることだと思うので、記録と記憶どちらも残す代になりたいなと思います。
――リーグ戦優勝を目指す上で投手陣の活躍は欠かせないものだと思います。投手陣として来季目指すことがあれば聞かせてください
伊藤樹 (宮城から)最優秀防御率を取ると、宣戦布告をされているので、1位、2位で防御率ランキングを争いあって、どっちかが取ればいいかなと思います。先発陣で台頭してくる選手ももちろんいると思うんですけど、僕が一番面倒見ているのは誇南なので、第2戦を投げてもらいたいです。先発がしっかりしていれば、これだけ勝てるっていうのが明確に分かりましたし、後ろにはあれだけの投手たちが残っています。個人としては、僕が今年のように勝ち星を上げ続けて、リーグ戦通算20勝と最優秀防御率の個人タイトルを取れるように頑張ります。
宮城 それを阻止するのが自分の役目だと思っています。先発のサバイバルにもう一度勝って、日曜日の先発をしっかり取って、土曜日、日曜日のピッチャーがどちらも完投できる状態を作りたいと思っています。自分も完投、完封を目指して、さらにそれを任せていただける実力と信頼を、春までの期間でしっかり勝ち取っていきたいです。具体的な数字で言うと、防御率0点台で最優秀防御率を取って、樹さんの最優秀防御率を阻止するつもりです。(樹さんは)今年の2シーズン(最優秀防御率を)取れるところで逃しているので、取れるときに取らないと苦しむよ、というのを感じさせたいです。今年はまだ(自分のことは)眼中にないみたいな感じだったんですけど、勝ち方っていうところを土曜日に背中で見せてもらって、たくさんいいところを盗んでるつもりです。とにかくそうですね、0点台で最優秀防御率をとることと、3年生の間に球速150㌔も一つの目標に掲げてやっていきたいなと思っています。
――宮城投手がこのようにおっしゃってますが、伊藤樹選手から宮城選手に対して何かありますか
伊藤樹 自分のチームのピッチャーに負けてるようじゃ、エースではないですよね。(最優秀防御率賞を)取れるところで2回逃しているので、ダサいんですけど。4年目で圧倒的に結果を残して、2位を突き放して取ってやりたいなと思っています。そのぐらいできたらかっこいいかなと思います。
――お2方とも好成績を収めていると感じていますが、近年では圧倒的な投手として早川隆久投手(令3スポ卒=現楽天)が挙げられると思います。早川投手の成績に対する対抗心などはありますか
伊藤樹 尖った回答になってしまうんですけど、僕は僕でしかなくて誰かと比較してというのは、今までやってきていないですし、自分しか見ないでやってきてるので(特にないです)。でも、あれだけ抑えていて、ドラフト1位でいっているというのは1つ目標ですね。僕は僕の道を自分で歩んできたつもりなので、それが正しかったと証明してドラフト1位でプロに行けるようにするつもりです。
宮城 同じ左ピッチャーで、ドラフト1位で指名されて、どれくらいの成績を残せばドラフト1位でプロにいけるのかという良いお手本になると思います。でも、そこを目指しているようではそこ止まりになってしまうと思うのであくまでも早川さんの成績は早川さんの成績だと思っていますし、それを上回るぐらいの気持ちでやっていかないと、そこに並ぶことすらできないと思います。早川さんが4年生の時の圧倒的な投球のように、来年、再来年自分がそれくらい圧倒的に無双したいという気持ちは強いです。
――来年、伊藤樹投手はドラフトを迎えます。また宮城選手もドラフトを徐々に意識する学年に入ってくるかと思います。そんな来年に向けて具体的な数字の目標や意気込みをお願いいたします
伊藤樹 代表合宿にも参加して、同じ学年にもいいピッチャーがたくさんいて、社会人、高校生にもドラフト1位になるだろうなという選手がたくさんいる中で、僕はとにかく成績を残さないといけない、成績を残すことで評価を得られると思っています。成績を残すためにトレーニングをして、球速を上げて、変化球をもっと投げれるようにしてというのはもちろん大事なんですけど、とにかく長いイニングを投げて最少失点で抑えることが一番評価につながると思います。伊藤樹に対していろいろな意見があるとは思うんですけど、そんな声もかき消すくらい圧倒的な数字を残して、ドラフト1位と評価される選手になりたいなと思います。来年、特に春ですかね。春に圧倒的な結果を残せるようにこの冬頑張りたいと思います。
――今投球イニングに関するお話がありましたが、現在2季続けてリーグ最多投球回となっています。この点に関して意識していますか
伊藤樹 まあ、2戦目で勝たなかっただけなので(笑)。それは冗談ですけど、長いイニングを1試合目、3試合目と投げて、長いイニングを最少失点でというのはかなりできて、そこは評価していただけるんじゃないかなと思うので、とても価値のある3年目だったかなと思います。
――宮城投手の来年の目標は
宮城 とにかく負けたくないので。今年は3敗してしまったのですが、勝ち星は自分のピッチング以外の要素も多いと思うので、まずは0で抑えて負けないピッチャーになりたいです。そういう状態を作ることができたら、自然に勝ち星もついてくると思うので3年目の樹さんを超える気持ちで頑張りたいなと思います。
――最後にチームの目標を教えてください
伊藤樹 日本一になることです。あれだけいいチームだったというふうに監督さんから言われるようなチームでも、日本一には届かなかったので。今はどういう野球をしていけば勝てるのかという見直しをしていますし、投手陣に関しては競争を激化して、先発争いや、能力の引き上げというのはずっとしているので、100周年で50勝目を取るために、まずは春のリーグ戦で優勝して日本一になって、秋に向かうというのが一番いい流れだと思うので、日本一と100周年で50勝目を目標に掲げたいなと思います。
宮城 自分もほとんど同じです。秋の時もそうだったのですが、10連勝で優勝というところを監督さんが仰っています。一度も星を落とさずに土日だけで終わらせて優勝というのは、自分やピッチャーが頑張れば達成できないことではないと思っているので、それを達成できるぐらいのピッチャー陣を自分や樹さんでこの冬作り上げて、春を迎えられたらいいのかなと思います。
ーーありがとうございました!
(取材・編集 植村皓大、石渡太智、林田怜空、西本和宏)
◆宮城誇南(みやぎ・こなん)※写真左
2004(平16)年9月5日生まれ。174㌢、77㌔。埼玉県・浦和学院高出身。スポーツ科学部2年。来季は、完投、防御率0点台での最優秀防御率賞を目標にすると語った宮城投手。神宮球場のマウンドで、圧倒的に無双した投球に期待がかかります!
◆伊藤樹(いとう・たつき)
2003(平15)年8月24日生まれ。176㌢、78㌔。宮城県・仙台育英高出身。スポーツ科学部3年。下級生とのコミニュケーションを大事にしているという伊藤投手。エースとしての圧倒的なピッチングだけでなく、投手陣をまとめる姿にも注目です!