【連載】新体制始動特集『逆襲』【第2回】伊藤樹×鹿田泰生

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 第2回は、早大の新エースとして大きな期待がかかる伊藤樹(スポ2=宮城・仙台育英)とシーズン終盤に復調の兆しを見せた鹿田泰生(商3=東京・早実)。絶対的エースであった加藤孝太郎(人4=茨城・下妻一)が抜けた新体制では、2人をはじめ投手陣の躍動が欠かせない。王座奪還に向けて意識していることや投球に関するこだわりなどを伺った。

※この取材は12月16日に行われたものです。

「先発にこだわりがある」(鹿田)

――最初にお互いの印象をお願いします

鹿田 甘えてきてかわいい後輩ですが、マウンドに立ったら頼りになるという感じです。

伊藤樹 鹿田さんは先輩といる方が好きで、後輩との関わり方があまり得意な方ではない(笑)と思いますが、野球のことに関しては研究熱心な方です。おちゃらけたい自分と真面目にいきたい自分の両立ができている人だと思います。

――お二人は野球以外でのプライベートで何か関わりはありますか

伊藤樹 たまにご飯行くくらいですかね。

鹿田 そうですね。

――新チームの投手陣の雰囲気はいかがですか

伊藤樹 (昨年は)4年生の投手の方が多くて、それについていく感じでしたが、4年生が抜けて、みんながチームを勝たせるためにやらなければならないことや目標を立てて計画的に進めているので、また違った雰囲気の投手陣なのかと思います。

鹿田 昨年は加藤さんが絶対的なエースでしたが、今年はまだそういう存在がいません。みんなもそのことを自覚しているのでメンバーの人も、メンバー以外の人も自分に何が足りないのかということを考えて、練習に取り組んでいます。

――1年間の振り返りをお願いします

鹿田 自分はひどい1年で、春も秋も活躍できず期待に添えなかった1年だったなと思います。

伊藤樹 春はロングリリーフや抑えをやらせていただいて、シーズン中に肩を痛めながら投げていて、調整というところに課題が残りました。秋は先発として3勝とラッキーな1勝で4勝挙げて、先発で3勝挙げることができたという経験は、とても大きかったです。来春以降も先発として、勝ち星を挙げられるように頑張りたいです。

――今年で一番印象に残っている試合を教えてください

鹿田 春の早慶戦で大量失点を喫したことと、秋はピンチの場面で出て0点で抑えられたというのは、今後の糧になると思います。

伊藤樹 僕は秋の立大戦で完投勝利を挙げたことが一番印象に残っています。

――新チームの主将を務める印出太一(スポ3=愛知・中京大中京)選手と副将を務める吉納翼(スポ3=愛知・東邦)選手についての印象をお聞かせください

鹿田 印出は2年生からずっとキャッチャーをやってきた実力の部分もそうですし、組織力というのを意識してやっています。チームの中での決まりごとをしっかりとするなど、そういったところに力を入れているので、春からまとまったチームをお見せできるのではないかと思います。吉納はプロ一本という責任のもと、とても練習熱心ですし背中で引っ張るタイプです。

伊藤樹 印出さんはキャッチャーとして2年間バッテリーを組ませてもらいました。昨年の(主将の)森田さん(森田朝陽、社4=富山・高岡商)がすごい明るい方だったので、チームの雰囲気として明るい感じになりましたが、印出さんは冷静で周りが見える方で、今はしっかりやることをやろうという冷静な部分が結構垣間見えるので、そういうチームに仕上がるのではないかと思います。吉納さんはどちらかといえばプレーで引っ張るイメージがあります。吉納さんが打つと盛り上がりますし、やはりプレーで引っ張ってくれる存在なのかなという風に思います。

――今年の投手陣のまとめ役はどなたですか

鹿田 いないです(笑)。いないというか一応自分が何となくそれっぽいことをやっているのですが難しいですね。でもみんな課題意識を持ってやってくれているので別にまとめたりすることはないかなという感じです。1年間個人個人でみんな意識高くやってくれていると思うので、まとめ役はいらないかなという感じです。

伊藤樹 最上級生がやればいいやと思っているわけではなく、僕が今のチームの投手陣では一番投げているので、もちろん投げている姿もそうですが他の練習の姿というのも大事にしたいと思っています。鹿田さんや中森さん(中森光希、文構3=大阪・明星)が上の学年としている中で、先ほど(鹿田選手は)期待に添えない1年間とおっしゃっていましたが、実力はあると思います。みんなで頑張らないといけない投手陣の現状なので、鹿田さんがまとめてくれると思いますが個々人が頑張りたいなと思います。

――投手陣の中で注目の選手はいらっしゃいますか

鹿田 やはり最終兵器の伊藤樹投手じゃないですかね(笑)。秋で先発完投いけるというところを見せてもらって、投手陣の軸というのがまだいないので、軸となるような投球を期待したいです。

伊藤樹 鹿田さんと言わなくてはいけないところですが(笑)、自分は宮城誇南(スポ1=埼玉・浦和学院)です。1年目は投げられず同期の香西(香西一希、スポ1=福岡・九州国際大付)や越井(越井颯一郎、スポ1=千葉・木更津総合)が投げていましたが、スポーツ推薦の後輩というのと、結構一緒にいることが多くて本人の思いや、やっていることをずっと見てきたので2年生の春から投げてくれるのではと期待しています。

――野手陣で注目の選手はいますか

鹿田 個人的に田村選手(田村康介、商2=東京・早大学院)のガッツあるプレーが好きなので、そこに来シーズン期待したいなと思います。

伊藤樹 栗田さん(栗田勇雅、スポ3=山梨学院)はキャッチャーとしてバッテリーを組んできたというのもありますし、ここまで印出さんにずっとポジションを取られてきたみたいなかたちなので、頑張ってほしいなという風に思っています。

――お互いに吸収したいところはどこですか

鹿田 先発投手として長いイニングを高い出力で投げるというのが大事だと思うので、何でそうできるのかなというところで、フォームのきれさなどそういうところを見習っていきたいです。

伊藤樹 ピッチングに関しては体格差が結構あるので、練習の部分で熱心に取り組む姿勢や、考え方を吸収して自分の中に入れていきたいです。

「(秋は)先発として3勝を挙げられたのは良かった」(伊藤樹)

――続いて伊藤樹投手への質問に移ります。秋季リーグ戦では主に第二先発を務めていましたが、そこで得た収穫や課題はありますか

伊藤樹 収穫としては1試合通して投げ切ることができたというのと、先発として3勝を挙げられたのは個人的に良かった部分かなと思います。課題としては、1試合しか投げ切れなかったという見方をすれば課題が残ります。また東大戦は5イニングで終わってしまいましたし、(先発した試合を)全て失点してしまっているので、完封勝利を挙げるところまで持っていきたいと思います。スタミナや球速、変化球の精度含めて春までに仕上げていかなければと思っています。

――秋の早慶戦では慶大の胴上げを目の前で味わいましたがいかがでしたか

伊藤樹 本当に悔しいというか4年生に申し訳ないという気持ちがすごかったです。1戦目に僕が(点を)取られて、(裏に)サヨナラ勝ちしてもらいましたが、2戦目も初回に2点取られてしまい、幸先の悪いスタートを切ってしまって、そこから連勝されてしまいました。2戦目でバシッと自分がいけてれば2戦で勝ち切れて終われたと思うので、悔しいという気持ちと申し訳ないという気持ちがすごく強かったです。

――3戦目の試合後のあいさつでは加藤投手と抱き合う姿が見られましたが、何か言葉をかけられましたか

伊藤樹 「来年はしっかり勝てよ」いうのと、「自分がエースとなって投げるんだよ」と言われました。

――現在、強化している部分について教えてください

伊藤樹 主に球速の部分で、MAX球速が151キロと出ているのでそこらへんを投げられるまでもっていきたいと思っていますが、自分の中で大事にしているのが平均球速です。140キロ後半を目標にコンディショニングやフィジカルアップというところを計画を立ててやっています。

――秋はケガの影響もあり平均球速130キロ後半だったと思いますが、その中でどのようなことを意識していましたか

伊藤樹 先発として投げ切ることを常に決めてやった結果がコントロールに目を向けることでした。球速を上げようと思っても上がらなくなってしまったので、コントロールのところに一番フォーカスを当てて投げました。

――変化球で意識されたところはありますか

伊藤樹 カットボールを多めに投げるようになって、左バッターのインコースと右バッターの外にしっかりコントロールできるように使っていました。

――次に鹿田選手に伺います。秋は早慶戦と全早慶戦で登板されました。そこで得た収穫と課題は何でしょうか

鹿田 しびれる場面で投げることができたというのが大きかったです。早慶戦のプレッシャーの中で投げるというのは、先発で投げる時のプレッシャーと似たようなものがあると思います。最後の年でいろいろなプレッシャーを背負いながら投げることになると思うので、そこに生かせるのではないかなというのが収穫です。課題としては安定感がなかったことです。調子を落としてリーグ戦の序盤もベンチ入りできなかったので、最後の年で次がないですし、春秋としっかり投げ切ることを意識して冬の練習に取り組んでいきたいと思います。

――最高学年となりますが、何か意識が変わった点はありますか

鹿田 今まで4年生が多くベンチ入りしていて、チームのことを任せきりになっていたなということを4年生が引退した1、2か月の間で感じたので、チーム力ということを意識してやっていきたいと思います。

――先発のマウンドからは久しく遠ざかっていますが、先発に対するこだわりはありますか

鹿田 やっぱり先発やりたいですね。今のところ先発できそうなのが樹くらいしかいないので、自分が先発として投げなければいけないなという意識はあります。しっかり春秋と先発のマウンドを取って投げ切れるように頑張ります。

――ご自身の課題に対して克服するために現在、冬の練習で取り組んでいることは何ですか

鹿田 課題としては本当に全部でスタミナだったり、球速だったり、コントロールだったり全部です。ですが、まずは冬の時期なので体づくりというところで、主にスタミナや球速というところを重点的に意識して、ウエートトレーニングだったり走り込みだったりというのをやっていきたいです。

――野球人生の将来のビジョンに関してはどのように描いていますか

鹿田 やっぱり野球が好きなので、大学野球を引退してからもやっていきたいなと思っています。

優勝するための投手陣を

――お二人への質問に戻ります。来シーズンに意識する選手やチームはありますか

伊藤樹 僕はやっぱり慶応に勝ちたいなと思っているのと、選手として意識しているのは外丸(外丸東眞、慶大2年)ですね。今季投げ合えなかったことと、外丸が2試合投げ切って早慶戦で負けてしまったので。1年生の頃から常に意識している相手ではあるのですが、立場が違った部分があった中で今季先発としてお互い投げて、すごく刺激される部分があったので、来春から投げて勝てるようにしたいなと思います。

鹿田 慶応に勝たないと優勝できないと思っているので慶応を意識しています。選手としては樹と一緒になってしまうのですが外丸選手です。先発として昨年の秋の早慶戦で、初回で降板して悔しい思いをした中で、今年すごい活躍しているところを見たので、自分と被るところを感じました。自分も今年ダメで来年どうにかしないといけないという立場なので、外丸選手のように投げられるようにコントロールを意識してやっていきたいです。

――お二人とも外丸選手を挙げられましたが、野手で抑えたい選手はいらっしゃいますか

伊藤樹 宗山さん(宗山塁、明大3年)が六大学で一番いいバッターだと思います。ずっと活躍している選手ですし、日本代表にも選ばれて活躍しているので、抑えないとチームの勝ちもないですし、自分の力量を測れる部分なので、そこに焦点を挙げながらやっていきたいなと思います。

鹿田 一緒です。(宗山選手が)一番いいバッターなので、日本代表というところで、対戦したことないので抑えたいです。

――投球スタイルで参考にされている選手はいらっしゃいますか

伊藤樹 好きな選手やプロ野球の球団とかはないのですが、僕はずっと金子千尋さん(元北海道日本ハムファイターズ)をモデルにしています。僕の理想像的に、五角形のメーターがあった時にできるだけ大きな五角形を作れように。全てのステータスにおいて、完璧にしたい気持ちがあるので、それに一番近かったのが金子投手かなと思って、そのようなイメージを抱いて投げています。

鹿田 普段メジャーリーグしか見ないのでメジャーの選手になってしまうのですが、ゲリット・コール(現ニューヨーク・ヤンキース)であったり、マックス・シャーザー(現ニューヨーク・メッツ)の全盛期のように高い出力を維持したまま9回を投げ切れるという中で強気の投球ができるというのが魅力の選手です。自分はコントロール悪いし変化球も微妙なので威力で勝負しなければいけないと思うので、そのような部分を見習っていきたいと思います。

――来年のリーグ戦をどのように見ていますか

伊藤樹 自分の中では明治が一番戦力的に整っているかなと思うので、攻守ともに警戒するのは明治です。法政も投手2人が残っているのでそこに対応できるような投手陣を作っていかないといけないと思います。明治の打線も変わらず打てるメンバーが残っているので対応できるようにしていかないといけないですね。攻守のバランスがいい明治とその次に法政や慶応が来る感じかなと思います。

鹿田 どこも強いと思いますし、最後勝たなければいけないので、来シーズンも混戦になると思っています。そうなったら最後慶応に勝たないといけないと思うので、(注目しているのは)慶応です。

――優勝するためにチームとして必要だと感じていることは何でしょうか

伊藤樹 秋のチームの防御率が最終的に2点代だったのですが、慶応戦で一気に防御率が上がってしまったので、来年はチーム防御率として0点代から1点代に乗せられるようにやっていかなければいけないなと思います。法政や明治と比べて先発の軸となる投手がいるわけではないので、経験しているメンバーも少ないですし、実戦経験のようなところにハンデがあるかなと思っています。練習試合を組みながら意識を高めていかないといけないなと思います。チーム防御率というところを意識しながらやっていかないと勝ちは来ないのではないか思います。

鹿田 野手は昨年から多く出ているメンバーが残るので、あまりガラッと変わらないのですが、投手に関して4年生が抜けて軸となるような選手がいません。全体的な投手力の中で、先発でイニングを食える投手が2人以上いれば、いい勝負になるのではないかなと思います。

――最後に来年の目標と意気込みをお願いします

鹿田 来年こそ優勝、春、秋、全国大会も優勝して早稲田の皆さんに喜んでいただけるように頑張ります。個人としては、先発にこだわりがあるので先発として春、秋の全カードで投げ切れることを目標に頑張っていきます。後、ヒット打ちます。

伊藤樹 チームとしては優勝を逃してしまったので、優勝するのが目標です。個人としては先発で投げる2季目になると思うので、タイトルを取るところを意識していて、最優秀防御率もそうですがとにかく勝ち星にこだわっています。早稲田以外の5大学相手に1勝以上あげていければ必然と目標に近づいていくと思いますし、僕の中でそのような目標を立てながらやっているので、そこを目指してやっていきたいと思います。

ーーありがとうございました!

(取材・編集 橋本聖、廣野一眞)

◆鹿田泰生(しかだ・たいせい)
2002(平14)年12月31日生まれ。187センチ、85キロ。東京・早実高出身。 商学部3年。投手。右投右打。秋季リーグ戦終盤に復活の兆しを見せた鹿田投手。来シーズンこそはチームを支える投球ができるか、期待が懸かります!

◆伊藤樹(いとう・たつき)
2003(平15)年8月24日生まれ。176センチ、78キロ。宮城・仙台育英高出身。スポーツ科学部2年。投手。右投右打。加藤選手から来年は「自分(伊藤樹選手)がエースとなって投げるんだよ」という言葉をかけてもらったという伊藤樹選手。来季は第一先発候補として早大を勝利に導きます!