第11回に登場するのは昨年に引き続き、攻守の要を担う印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)。ここまで春季オープン戦では好調を維持し、名実ともに主将としてチームを引っ張っている。ついに早大は最後の優勝から6季が経ち、東京六大学リーグ戦(リーグ戦)優勝を経験した選手がいなくなった中、主将はどのようにチームを頂点に導いていくのか。結果にこだわる大黒柱のラストイヤーに懸ける思いに迫っていく。
※この取材は3月30日オンラインでに行われたものです。
「沖縄でいい感覚をつかめた」
ーー浦添でのキャンプ、オープン戦などここまでを振り返っていかがですか
そうですね、順調にきていると思います。
ーーキャンプ前半悪天候が続きましたが、後半はいかがでしたか
前半なかなか思うような練習ができませんでしたが、後半に詰め込んで結構濃い時間を過ごすことはできたかなと思います。
ーーキャンプ中に行われた日本生命、エナジックとのオープン戦を振り返っていかがですか
やっぱり社会人のチームは投打ともにレベルが高く、そういったチームと試合ができること自体チームとしてプラスですし、その中で得た課題やいろんな収穫がありました。沖縄は暖かくて、なかなか2月でそういった気候の中で野球ができるっていうのもないことなので、個人としてもいろいろ収穫があったと思いますし、チームとしてもかなり収穫があったと思います。
ーー観光とかはされましたか
17日間キャンプ行きましたが、休みは1日もなかったので、基本的に午前中から夕方までひたすら練習して、宿舎に帰って食事とって、またミーティングしたり素振りしたりっていう感じで、そんな観光に行くような時間も体力もなかったって感じです(笑)。
ーー沖縄と東京では気温差が激しいですが、体調面で疲労の溜まり具合はいかがですか
帰ってきた時に寒波が来ていて寒くて、早同定期戦の時は特に寒かったので大丈夫かなと思いましたが、ケガ人も出ることなくやれました。沖縄は花粉が飛んでいないので、ちょっと花粉がすごいなっていうのが帰ってきてみんな言っていましたね。
ーー沖縄からAチームが帰京して別々の行動をしていたBチームと合流しましたが、チームとしてのまとまりはいかがですか
BチームはBチームで東京の方でB戦をして実戦感を養っていますし、Aチームも暖かい沖縄の方でリーグ戦に勝つためにいろいろ取り組んでいたので、場所は違えど野球に対して集中していたことに変わりないと思うので、AとBの全員で練習をすることはなかなかないですけど、Aチームのそういった姿がBチームのみんなにも届いてればいいなという風には思います。
ーーオープン戦では大学相手に負けなしですが、社会人チームとの対戦経験は生きていると実感しますか
やっぱり社会人チームはその打線としての線の部分がやっぱすごくあって、自分がキャッチャーとしてやりづらいというか、嫌なイメージはあります。それに比べると大学はまだアマチュアなので。社会人の方々は野球で稼いでいるというか、飯を食べている、セミプロという位置にあたるので、やっぱり能力とか体つきもですが、1球で、ワンプレーでレギュラーを奪われて、シーズン終わった後に首を切られるかもしれないということがかかっている人たちなので、そういった1球への執着心は大学生と桁違いなものがあります。そういった方たちと試合をさせてもらえることはすごくプラスになっていると思います。
ーー得点に絡む場面が多く見られますが、個人としてここまでのオープン戦での出来はいかがですか
昨年ずっと結果を残すことができなくて、チームの足を引っ張り続けたので、なんとかこの状況を個人としても打開しなきゃいけないなと思っている中で、沖縄でいい感覚をつかめたので、それを東京に帰ってきてからも継続していくための練習が必要だなと思っています。
ーーJFE東日本戦後のインタビューで「沖縄でいい感覚をつかんだ」とおっしゃっていましたが、バッティング面で意識していることや昨年から変えたことはありますか
1つはまず下半身で打っているのは特に意識しながらやっている中で、昨年少しトップが浅くなって手打ちになっている部分をかなり感じましたし、動画を見てもそうだなと思ったことです。しっかりとトップを作りながら下半身主導で打ちにいくことは今シーズン新チーム始まってからずっと意識してきた中で、沖縄ですごくいいものをつかめたかなと思います。
ーー目標の三冠王に向けてまだ足りないものだったり、これから強化していきたいことだったりはありますか
やっぱり1つは率を残すことが大事だと思います。そのためにはよりコンパクトで速いスイングが必要になるので、スイング力は、シーズン、シーズン以外関わらず求め続けなきゃいけないところだなと思います。
ーー捕手としては盗塁を阻止する場面もオープン戦でありましたが、捕手としての出来はいかがですか
やっぱスローイングは1つ自分の大きな課題だと思うので、それを意識して取り組んできた部分はあります。試合に勝つことがキャッチャーとしては一番大事なことなので、大学生相手に負けていないことは良いことだと思います。ただリーグ戦で戦うのは他の5大学なので、どれだけ準備してもいいと思うので、どれだけ抑えて自信があっても、結局神宮で打たれたら意味がないので。もうとにかくそれを意識して、ピッチャーにも意識させながらやっていくことが必要かなと思います。
「慎重かつ大胆に」
ーー今年の早大の打線を考慮して何点以内に失点を抑えたいですか
2、3点で抑えることができたら、基本的に4、5点取ることはできるかなという打線なので。ただ六大学は相手のピッチャーもいいので、2、3点とは言いながらもやっぱり0で抑えれば負けることはないので、そこをとにかく突き詰めてバッテリーとしてはやっていきたいです。
ーー4月に入っていよいよリーグ戦開幕までの最終段階ですが、残りのオープン戦をどういった試合にしていきたいですか
自分たちがやってきたことを出すだけだと思いますし、ここからそんなに大きく個人もチームも変わることはないので、きっちりと早稲田のスタイルの野球を貫いた中での結果を求められるように自分はやっていくだけだと思います。社会人の試合もまだ社会人対抗戦の試合も含めるとあと3試合、大学との試合はあと1試合ですが、本当に学ばせていただくという気持ちで。力の差があることはわかっているので、その中で自分たちがどういう試合ができるかっていうのがすごく大事だと思います。力の差があるので負けましたではなく、こういう収穫があったよねとか、ここは良かったよねっていうところをチームとして新たに確認したり、課題を見つけたりするための場だと思うので。もちろん全試合勝つ気で臨んでいくつもりですけどチームとして学ばせていただくというか、レベルの高い練習をさせていただくというようなイメージを自分は持って取り組んでいます。
ーー昨年の開幕前対談では、開幕が迫っていることに「楽しみな気持ちが強い」とおっしゃっていましたが、主将として迎える今年はいかがですか
やっぱりリーグ戦が本番ですし、本番を迎えるにあたって楽しみな気持ちは今年もありますけど、今年はキャプテンとして迎えるので、そういった責任を感じる部分もあります。ただ自分が主将に任命されたというのは、そういったものを背負って戦っていけという監督(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からのメッセージだと思うので、下級生の頃から試合にも出させていただいてるので、最後なんとか監督に結果で恩返しして卒業できるようにという思いはリーグ戦が近づくにつれてどんどん強くなっています。
ーー4番・正捕手・主将とどれか1つこなすだけでも大変なことですが、そこについてはどう感じていますか
どれも大事な役職というか立場で結果が求められる部分ではあります。なかなかそう簡単なことではないと思いますけど、逆にここまで任せてもらえることも簡単なことじゃないです。本当に野球人として幸せなことだと思うので、それを感じながらしっかりと準備して、自分の出せるものを神宮で出すだけだと思います。どれだけ気負ったところで、背伸びしたところで結果は良くなることはないので、地に足をつけてしっかりと自分のプレーをできるように開幕まで準備したいなという思いです。
ーープレッシャーはあんまり感じないタイプですか
今まで下級生で出てきたリーグ戦とはまた違ったところはありますし、プレッシャーを感じる部分もあると思いますし、それは多分これからリーグ戦で戦っていく中で感じてくるものなのかなという風にも思いますけど、ただ役職がついたからといって、もちろん高いものを求められていると思いますが、そこばっかり追い続けていても、背伸びするかたちになるというか、ふわふわした感じでリーグ戦を戦ってしまうかなと思うので。試合になったら一選手として集中して試合に入っていくだけだと思うので、試合で不安にならないように今しっかり準備しなきゃいけないなっていう思いは持っています。
ーー投手陣は浦添キャンプの時と比べていかがですか
バッターに向かっていく気持ちは先発陣を筆頭により出てきていると思います。その中でやっぱり人間が投げるものなので、ミスだったり失投だったりが出てくるので、そこをとにかくつぶして、神宮で同じシチュエーションを迎えた時に自分の中で頭を整理して、マウンドに上がって投球できる準備ができれば問題ないとは思います。今その準備段階にまだあたっている部分ではありますが、全体としては前に進んできていると思います。
ーー特に新戦力の髙橋煌稀選手(スポ1=宮城・仙台育英)、安田虎汰郎選手(スポ1=東京・日大三)は印出選手にどう映っていますか
1年生ですが度胸もありますし、バッターに向かってどんどん腕振っていく姿をキャッチャーとして何度も見ています。本当にリーグ戦経験がないって言ってしまえばそれまでですが、頼れる存在にこのリーグ戦でなってくれるかなと思います。
ーーこの冬、春を通じて大きく成長したと感じる選手はいますか
今レギュラーで出ている中村敢晴(スポ4=福岡・筑陽学園)はなかなか出場機会にも恵まれなくて、結構苦しい思いをしていたと思いますが、ここ最近のオープン戦で結果を出して打ち方とかもすごく良くなったなと思います。そういった風に監督さんやコーチの皆さんに評価されているので、敢晴には頑張ってほしいなっていう気持ちがあります。今、一番来ている選手かなと思います。
ーー近年、早大は春季リーグ戦では苦しいシーズンとなることが続いていますが、今年の春をどう乗り切っていこうと思いますか
そこには何か原因があると思うので、そういった不安要素が残らないようにオープン戦をこれまで戦ってきたつもりですし、これからも戦っていくつもりです。オープン戦と同じように戦っていければ、それがベストだと思うので。春勝てていないからっていう風になりすぎるのも全く別の新チームなので、そういう風になる必要はないのかなっていう部分と、でも実際そういった年が続いているっていうのも現実としてあるので、リーグ戦の入り方は慎重かつ大胆に行かなきゃいけないのかなと思います。
ーーご自身ラストイヤーですが、プロへの道は考えていますか
やっぱりプロに行きたい気持ちは強いです。
ーー印出選手は愛知県出身ということもあり、中日ドラゴンズは特別なチームですか
そうですね、小さい頃からやっぱり野球を見るとなったら、ナゴヤドーム(現バンテリンドームナゴヤ)でドラゴンズ戦ですし、自分が小さい時はドラゴンズ黄金期で地元で一番見てきたのはドラゴンズなので愛着はありますね。
「負けない早稲田を取り戻す」
ーー開幕戦は固くなることも多いと思いますが、開幕戦を特別意識しますか
痺れる展開の試合とかももちろんそうですが、やっぱり入りの部分が一番難しいというか、緊張したり、地に足がつかない、ふわふわしたりとかする感覚が一番あるのは1戦目だと思います。それは自分以外にも4年生の山縣(秀、商4=東京・早大学院)とか吉納(翼副将、スポ4=愛知・東邦)とか、下級生でも下級生の頃から出ている選手がいるので、わかっている選手もいると思います。やっぱり特別変に変えないっていうのが自分の中では大事かなっていう風に感じています。神宮だから、リーグ戦だから、初戦だからとかあんまり意識しすぎずに、いつも通りの準備をして同じ気持ちで入っていくことがリーグ戦は特に大事かなと思うので、自分以外の経験がない選手には特にそういった声掛けをして落ち着かせるというか、いつも通りのプレーができるようにサポートしたいなと思います。
ーー山場になると予想されるカードを教えてください
2カード目の明大戦と4カード目の法大戦かなと思いますね。この2つで勝ち点を取っておかないと、早慶戦での優勝を決めることは多分できないと思うので、明大と法大、この2つをしっかりと取っておくことが早慶戦にもつながると僕は思うので、この2つは早慶戦前のところではかなり山場になるのかなっていう風に思います。
ーーバッターとして意識する投手はいますか
やっぱり外丸投手(東眞、慶大3年)は去年やられているので、やり返してやりたいという気持ちがあります。
ーーキャッチャーとして特に警戒しているバッターはいますか
慶大の本間選手(颯太朗主将、4年)は去年ホームランを打たれていますし、それから法大の武川選手(廉副将、4年)も昨年の春、秋で打たれているので、そこはしっかりと打ち取っていきたいなと思います。
ーー昨年の新体制対談では「簡単に優勝しますと言ってはいけない状況」とおっしゃっていましたが、現在の状況、目標はいかがですか
もちろん早稲田は負けちゃいけないと思うので、そういった負けない早稲田を取り戻したい気持ちは強いです。ただ、やっぱり3年間優勝がなくて、あと1勝、あと1試合、あと1球というところで優勝を逃しているケースが在学中に何度かあったので、そこを勝ちきれずにここまで来たところは、チームとして重く受け止めなきゃいけないところだと思うので。今さら簡単に「優勝します、天皇杯取ります」と言ったところで、「また言ってるよ」みたいなふうに自分がもしファンだったら感じるので、変わった姿を神宮球場でOBの方々や早稲田ファンの皆様に見てもらって、今年はやってくれそうだなっていうのをまず示すことが大事だと思っています。挑戦者という気持ちを大事にして、リーグ戦には臨んでいきたいなっていう思いです。
ーー最後にリーグ戦への意気込みをお願いします
負けない早稲田を取り戻すことを実現したいと思いますし、もちろん優勝、天皇杯を目標にやっていることに変わりはありませんが、そんな上ばっかり見ているのではなく、目の前の一戦一戦を死ぬ気で戦っていって、その結果優勝をつかむことができるということが一番優勝するためには大事な心持ちだと思います。そんなに背伸びして、優勝だ優勝だ、ではなく、とにかく目の前の一戦一戦、立ちはだかる他の五大学をなぎ倒して、最後自分たちが表彰式で天皇杯をいただけるようにやっていきたいなという思いです。
ーーありがとうございました!
(取材・編集 丸山勝央)
◆印出太一(いんで・たいち)
2002年(平14)年5月15日生まれ。185センチ。愛知・中京大中京高出身。スポーツ科学部4年。昨年の悔しい思いを糧に春季オープン戦では好調を維持している印出主将。浦添キャンプ時、試合日の朝に小宮山監督から四葉のクローバーをもらって以来、打撃成績が向上したとのこと。東京に帰ってきた今でも大切に持っているそうです!