今春は早大を7季ぶりの優勝に、夏には大学日本代表の主将として2大会制覇に導いた印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)。「勝てるキャッチャー」を売りに勝利の原動力となってきた。そんな勝利への執念が人一倍強い印出主将の中でも宿敵との一戦への思いはまた格別だ。泣いても笑っても最後となる伝統の一戦への意気込みを伺った。
※この取材は10月24日にオンラインで行われたものです。
勝負強くリーグ戦を戦ってこれている
――ここまでのリーグ戦を振り返っていかがですか
立大に1敗してしまったんですけど、春同様に接戦をものにして、勝負強くリーグ戦を戦ってこれていると思いますし、その結果が勝ち点4につながっているかなとは思います。
――開幕の東大1回戦では20得点、完封でした。チームとしても開幕戦独特の緊張感はありませんでしたか
そんなに上がったりするようなチームじゃないので、落ち着いてしっかり自分たちの野球をやろうということで、開幕は東大戦でしたけど、しっかり自分たちの野球をやって、ああいった結果になったかなと思います。
――明大2回戦は死闘となりましたが、チームにはどのような声かけをしましたか
本当に力勝負というか、根比べになるっていうのは試合前から言っていました。1戦目はああいった形で先に先勝することができましたが、明大は1戦目取られた後の2戦目かなり勝っているので、みんなそこはしっかりと意識して前日勝ったことはもう頭に入ってなかったです。またしっかり2戦目も取るっていう気持ちで入っていった中で、拮抗した試合のまま引き分けたっていうところで、早稲田的には負けなかったことがすごく大きかったかなと思います。
――チーム打率が3割超えでリーグトップですが、チームの打撃力はいかがですか
上位、下位どちらからでも得点を狙える、あるいはチャンスメークができる、切れ目のない打線だと思います。個人個人の数字を見てもらってもわかると思いますし、あとは打率以外の部分で三振数が少ないことと、フォアボールの数がどちらともリーグで一番多い、あるいは少ないので、そういった細かい数字も見てもらえれば打撃が昨年と比べて向上していることは明確かなと思います。
――特に前田健伸選手(商3=大阪桐蔭)の成長が著しいですね
1、2、3番がよく出塁してくれるので、自分がつなぐ、あるいは返して塁に残ることで、 健伸が昨シーズンの個人的な数字の悔しさもあったと思うんですけど、そこをしっかりと払拭するぐらいの結果をここまで出してきてくれているので、自分も健伸につなぐ気持ちでも十分試合を有利に進められています。健伸が後ろにいるのは相手からしてもすごく嫌なんじゃないかなとは思います。
――チーム防御率も1点台でリーグトップ、投手陣はいかがですか
任された場面でしっかりと自分の投球を披露してくれていると思いますし、それがそういった数字につながっていると思います。
――今季から田和廉投手(教3=東京・早実)が復活して、実際受けてみて田和投手の球はいかがですか
やっぱり簡単には打てないですし、練習でのシート打撃とか紅白戦とかの中でも、田和のことを知ってる僕たちでも結構苦しむくらい捉えるのは難しいボールなので。リーグ戦のああいう終盤の場面で1イニングあるいは2イニングで田和を捉えていくっていうのはすごい難しいことだと思うので本当に頼もしい限りですね。
――特にどの球種が印象的ですか
まず強い真っ直ぐがあることですね。その真っ直ぐがあることによって、スライダーだったりシンカーだったり、いろいろなボールが生きてくるので。強い真っ直ぐを放れるところが、田和の持ち味である変化球につながっているとは思います。
――エース・伊藤樹投手(スポ3=宮城・仙台育英)が6勝無敗ですが、エースの投げっぷりはいかがですか
もう満点に近い数字と結果だと思います。樹の投球と僕らの攻撃がかみ合えば、こういったゲームを展開していくことができるだけの力を持ってるということはわかったので、早慶戦も気抜かずに行かなきゃなっていうところですね。
――特に3戦目にもつれた時の投球は相手を寄せ付けない印象ですが、伝わってくるものはありますか
正直3戦目まで突入してしまっているのは申し訳ないです。法大1回戦は引き分けでしたが、1試合目、3試合目投げるっていうのはそれだけ負担がかかるので、できれば避けたいんですけど、やっぱり相手も打倒・早稲田で来るので。それでも1戦目以上の投球内容を披露してくれる試合の方が多いですし、それだけ気持ちも入っているので、体は本当にしんどいとは思うんですけど、もう気持ちで、エースのプライドで投げているっていう印象です。
勝てないと意味がない
――ご自身の成績を振り返っていかがですか
打率は残っていて、東大以外のカードでもそれなりにヒットを出しているので、そこはまあまあっていう感じなんですけど、唯一あるとすれば、ホームランともうちょっと打点をつけたいなっていうところですね。
――打点はチーム2位の成績です
そうですね、でもやっぱりまだまだ日本一になるためには必要かなと思います。
――まだ本塁打が今季0本ですが、意識して打席に立つことはありますか
狙って打つのはあんまり得意ではないというか、甘いボールを振り切ってホームランを打つのは得意ですけど、吉納(翼副将、スポ4=愛知・東邦)みたいに打球がポンポン上がっていくタイプではないので。夏場は強い打球を打つことを意識してやってきた部分が強かったので、結果的に外野の間を割ったりして二塁打は増えていると思うので、その点やったものに対しての成果は出ているとは思います。
――捕手としてはいかがですか
防御率が六大学の中で一番低いっていうのは、一つ大切にしているところというか、大事な指標だと思っています。ピッチャーが投げてくれるからこそなんですけど、そこは良い数字が出ているのでいいかなっていうところと、今の六大学にいるキャッチャーの中で一番試合に出ているのは多分僕なので、いろいろなバッターをこれまで見てきましたし、何度も対戦したバッターとも最後のシーズン当たっているケースも多いので、その経験だったりが最後生かされた集大成のシーズンになってきているかなと思います。
――インサイドワークで意識していることはありますか
配球面で考えることは山ほどあるのですけど、大事にしてる言葉というか教訓みたいなのがありまして。投手の良さを引き出す配球、状況、場面に応じた配球、相手打者の弱点を使う配球っていう、この3つは自分の中の柱というか、試合でサインを出していく上でどういった配球でいくかっていうところをまずそこを軸に考えています。この場面は状況を想定してとか、この場面はピッチャーの長所を生かして、こういうピッチャーには長所を生かした配球の方がいいとか、コントロールがいいピッチャーで弱点をしっかりつけそうならそういう配球を選択するとか。まず軸となる自分の中でも考え方というか、そういう理論があります。
――その配球論は打撃でも生かされていますか
キャッチャーとして配球とか、バッターへの攻め方を学んでいったり、ピッチャーの表情をもう常に見るようになるので、そうすると打席に立った時も感じ取れる場面が多くて、配球を読んで仕掛けやすいっていうのはあります。
――改めて印出選手のご自身が思う強みは
1つはキャッチャーとしてはやっぱり勝てないと意味がないっていうのを何度か言ったこともあると思うんですけど、勝てるキャッチャーであるっていうことをこのシーズンを通して証明するということと、あとはやっぱり打てるキャッチャーっていうのも1つの魅力だと思うので、そこの両面ですかね。
やっぱり慶応には負けられない
――法明戦で明治が1敗した時点で優勝が決まりますが、ご自身的には早慶戦で決めたい思いはありますか
でも優勝が決まるっていうことに関しては、それは決まった方がいいに決まってるので(笑)。なんとも言えないんですけど、 やっぱり早慶戦で早稲田のOB、学生、ファンの方が見ている中で、優勝を決めたいっていう思いは4年間の集大成としてはあるので、やっぱりあの観衆の中で決めたいっていう思いはあります。
――早慶戦はリーグ優勝とは別物ですか
優勝がもし先に決まっていたとしても、早慶戦っていうのはもう切り離したものというか、やっぱり慶応には負けられないので。優勝が懸かっていなくても慶応にだけは負けられないっていう思いで下級生の時もやってきたので、優勝うんぬんの前に慶応に勝つことは何よりも意味があると思います。そこは必ず2連勝で勝ち点をあげて、結果的に完全優勝でいけるようにしっかり準備したいと思っています。
――前日に青学大が完全優勝を果たしましたが、印出選手にはどう映りましたか
もう舞台的には整ったかなという風に思っています。やっぱ神宮大会も組み合わせ上、最後に青学と当たるんで、自分たちがしっかりと優勝を決めて、本当は全勝優勝目指していたんですけど、それはちょっと叶わなかったので、しっかりと春秋連覇を決めて、もう一度青学にリベンジできるように一戦一戦戦っていきたいと思います。
――今季の選手宣誓では試合のできることへのありがたみを語っていましたが、改めてどのような気持ちで選手宣誓を行いましたか
自分が選手宣誓するにあたって、何を伝えようか、何を宣誓しようかと思った時に、やっぱり僕たち4年生がラストイヤーを迎えるにあたって、高校3年生の時の無力感、やるせない気持ちは今でも脳裏に残っているので、そういった思いを吐き出しきって、それと共に高校から大学でメンバーもガラっと変わっていますけど、引っかかっていたものを早稲田のユニフォームを着て大学最後のシーズンにぶつけていくことで、そういった思いも払拭していければなっていう風に、そういった思いを込めての内容でした。
――早慶戦での個人としての目標を教えてください
チームとしてはまず2連勝って先ほど申し上げたんですけど、個人としてはキャッチャーとしてのゲームメーク、ピッチャーのリードでしっかりと慶応の攻撃を封じて、早稲田の攻撃は自分が打線をしっかり引っ張っていって、早慶戦で今季1号と勝負強いところを最後までお見せできればなと思ってます。
――早慶戦でのキーマンを挙げてください
僕は梅村(大和、教4=東京・早実)だと思ってます。打線の巡り上、結構梅村でチャンス回ってくるパターンが今季は非常に多いので、梅が勝負どころで勝負強さを発揮してくれれば、試合をかなり有利に進められるかなと思っています。他の選手は基本的に数字を残している選手も多いですし、ピッチャーもかなり安定してきてるんで、あとは梅がやってくれればって感じです。
――梅村選手の好調の要因は
練習熱心なので、チーム練習もそうですし、自主練習とかも含めて本当によく練習するので梅は。だから守備でもまだ六大学で無失策なので、本当に勝負強い守備と攻撃の方はシュアな打撃と走力があるんで、今季はそこを存分に生かして良い数字を残していると思うので、チャンスで回ってきた時に梅の勝負強さが早稲田の勝利に大きく関わってくるかなと思っています。
――早慶戦では4年生が多く出ることが予想されますが、これまで一緒に過ごした仲間と晴れの舞台で戦えることはいかがですか
基本的に今ベンチに入っている4年生の多くは、もう1年生とか2年生の時からベンチに入ったり、チームの練習に入って一緒に頑張ってきたりした仲間がほとんどなので、そういったメンバーとも神宮大会まで合わせて最大で6試合ぐらいかもしれないですけど、一緒に頑張ってきた仲間と最高のかたちで終えられればなと思っているので、自分はそのために自分のできることを全うをしたいと思っています。
――早慶戦への意気込みをお願いします
優勝の結果については現時点では法明戦の結果次第のためわからないんですけど、早慶戦2連勝で勝ち点5で完全優勝っていうところを早稲田は目標にしているので、前のカードの状況に関係なく、宿敵・慶応をしっかりと2連勝で圧倒して優勝を収めて、「春の忘れ物」じゃないですけど、日本一というのをもう一度挑戦していけるように早慶戦でいい試合をしたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 丸山勝央)
◆印出太一(いんで・たいち)
2002(平14)年5月15日生まれ。185㌢91㌔。愛知・中京大中京高出身。スポーツ科学部4年。捕手。「勝てるキャッチャー」を自負する印出選手。勝利請負人としてチームを春秋連続の完全優勝に導きます!