東京六大学秋季リーグ戦は第8週まで終了し、早大は8勝1敗2分、全てのカードで勝ち点を獲得する好調ぶり。吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)も強力打線の中心として、ここまで本塁打はリーグ2位、打点はリーグトップの活躍を見せている。迎える学生最後の早慶戦で完全優勝を飾れるか。吉納副将の思いに迫った。
※この取材は10月25日にオンラインで行われたものです。
「とにかく早慶戦に向けての気持ちが強い」
――プロ野球ドラフト会議から一夜が明けましたが、改めて現在の心境は
まだ実感はないというか。いろんな人からお祝いのメッセージが来て、実感している部分もありますが、今はとにかく早慶戦に向けての気持ちが強いです。プロのことに関しては、その時期が来たらそちらにしっかりと気持ちを入れられればいいかなと思います。
――どのような方々からメッセージをもらいましたか
家族、親戚はもちろん、小学校、中学校、高校と野球のクラブチームに携わったチームメイトや指導者など、いろんな人からきました。
――小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からはどのような言葉を掛けてもらいましたか
指名されたときは(小宮山監督が)練習を見ていたので、(LINEで)「指名してきただきました」と報告したら、グッドポーズ(のスタンプ)だけきました。その後寮で会ったので、「おめでとう。頑張ってくれ」と言われたので、「頑張ります」と言葉を交わしました。
――大学の先輩の早川隆久選手(令3スポ卒=現楽天)や西垣雅矢選手(令4スポ卒=現楽天)には連絡しましたか
早川さんからは(連絡が)返ってきていないですが、西垣さんからは「分からないことがあったら何でも聞いて」という風に言ってくださいました。
――昨日の会見での色紙に書かれていた「泰然自若」という言葉にはどのような思いを込めましたか
プロの世界ではいろいろな状況に置かれると思いますが、どんな状況でも自分らしく堂々と落ち着いて、物怖じしないという自分の姿を見せていきたいなという気持ちで書きました。
――会見でも仰られていましたが「はつらつとしたプレー」を大事にされている印象があります。その原点は何ですか
やはり野球を始めたときから野球がずっと大好きというのは変わらないので、そこに対しての気持ちがとにかく強いです。当たり前のことだとは思いますが、好きなことに熱中できている状況がとても楽しいので、それをプレーで体現できているのではないかと思います。
――大学での4年間で成長したと感じる部分を教えてください
(大学は)本気でプロを目指す舞台だったので、走攻守全てを磨き上げられたと思います。また、人としての振る舞いといった部分もすごく成長できたのかなと思います。
――今年は副将を務めていますが、チームを引っ張る上で意識していることはありますか
自分は言葉で毎日選手に声を掛けてというのは印出(太一主将、スポ4=愛知・中京大中京)よりはできないタイプなので、プレーで示すのもそうですし、日頃から練習に対する取り組み姿勢を心掛けていました。
ここまでのリーグ戦について
――今季のリーグ戦について伺います。ここまでのチームの戦いぶりはいかがですか
出来すぎかなと思う反面、立大戦で一つ試合を落としてしまったのは、全勝優勝を掲げていただけに悔しい部分もあります。ただこの前の明大戦にしても、どんな状況に置かれても試合の中で勝ち越されず負けなかったというのは、強いチームの証だと思います。
――打撃陣は春季リーグ戦以上に打っています
春は投手が頑張って少ない点差で勝ってきたというのがあったので、秋は野手陣が打って勝つというのが求められていたと思います。そこに向かって一人一人が夏のキャンプでしっかりと鍛錬を積み上げた結果じゃないかと思います。
――吉納選手自身が夏の練習で意識していたことは
もちろん技量を上げるのは大事ですが、とにかく量をこなしてどのチームのどの誰よりも振ってきたんだという自信をつけましたし、チーム内でもそういう気持ちで普段の練習からできていたのは、お互いにとってすごいプラスになったのではないかと思います。
――投手陣に関してはどのように見ていますか
非常に守りやすいというか、安心して守っていられます。打撃にいいリズムを持ってこられているのは投手のおかげなので、すごく安心しています。
――リーグ戦序盤は爆発的な活躍をされましたが、振り返っていかがですか
打てて良かったなという部分もありますし、その反面もったいなかった打席も何打席かありました。それでもチームが勝てているところに自分が貢献できているのがうれしいです。
――吉納選手は今季から打撃フォームを変えた印象を受けますが、いかがですか
ボールの見方を少し変えたという感じです。夏から積み重ねてきたことが上手くできていると思います。
――ここまでの手応えは
まだまだだと思っています。先ほどは今は早慶戦の気持ちが強いとは言いましたが、まだ先があるのでそこに関してはもっと上げていかないといけないと思います。
――今年度は3番を打っていますが、3番という打順については
重要な役目のクリーンアップの最初として、なんとか下位打線までつなげていけるように自分が頑張りたいという気持ちです。
――チャンスにも多く回ってきています
1打席1打席で自分のスイングをすることを心がけているので、特にチャンスだから変えようというのはないです。先頭で回ってきたらチャンスメークすることを重要視していますし、チャンスだったらランナーを返すといった単純なことだけ考えています。
――今季ここまでに点数を付けるならば
もっとできる部分もあれば、やってきたことができているところもあるので50点くらいです。
「結果で恩返ししたい」
――早慶戦について伺っていきます。残り約2週間となりましたが、現在の心境は
とにかく学生野球最後のリーグ戦の2試合なので、自分がやってきた4年間を全て早慶戦にぶつけたいという気持ちでいます。
――2季連続の完全優勝まであと2勝となりましたが、どのように臨みたいですか
チームとして秋は日本一を取るということを目標に掲げている中で、連覇は必須です。春に取れなかった日本一を取るために今チームとしてしっかり戦えているので、神宮大会(明治神宮野球大会)の決勝戦で今年のチームの完成形を相手にぶつけたいです。
――学生最後の早慶戦となります。早慶戦への特別な思いはありますか
思えば1年生のときから早慶戦だけは観客の数も圧倒的に多くて、野球界的にも注目される試合です。そこで自分がスタメンとして試合に出られることがどれだけ幸せなのかというのを4年間で分かってきました。その感謝の気持ちと、あんなに素晴らしい景色はないので、しっかり目に焼き付けたいです
――これまでの早慶戦で印象に残っている試合はありますか
あと1勝すれば優勝という中で慶応に目の前で優勝させられた去年の秋と、逆にその悔しさを晴らした今年の春の2試合です。
――早慶戦はより一層注目度が高まると思いますが、吉納選手自身はどのようなところを見てもらいたいですか
やはり長打力を売りにしているので、本塁打は狙わないですが結果とし結果として本塁打になれば、その本塁打を見てもらいたいです。また、早慶戦で素晴らしいライバルを目の前にして優勝する瞬間をつかみ取るまで全力でプレーする姿を見てもらいたいです。
――目標にしていたベストナインへの思いは
早慶戦の1回戦でもうちょっと暴れて、獲得できたらいいなと思っています。
――早慶戦への意気込みをお願いします
春見た景色をもう一度早稲田のファンの方々に見てもらえるよう、早稲田大学野球部として戦います。連覇を達成して、本当にこれまで学生野球に携わっていただいた方々に結果で恩返ししたいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 沼澤泰平)
◆吉納翼(よしのう・つばさ)
2002(平14)年8月16日生まれ。180センチ、87キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部4年。楽天に5位指名を受けた吉納選手。登場曲についてはまだ決まっていないとのこと。登場曲が何になるのか今から楽しみです!